「仕事ができない」を英語で表現する場合、ずばり「できない」と述べるよりも「すごくデキるという程ではない」と表現する発想を持つと、英語らしい自然な言い方が見つかります。
たとえば He is not so productive. とか、She is not so good at the job. のような叙述は英語らしい言い回しです。叙述も穏便で配慮の感じられる大人らしい表現として響くでしょう。
あえて直接的に「できない」と述べる、たとえば He cannot do the job well. (仕事ぶりがよくない)のような言い方もできないわけではありません。でも色々と無理がある感は否めません。
そういう有能無能の話題じゃなくて、「手が回らない」「仕事する余裕がない」という意味合いで「仕事ができない」と述べる場合、これは I can’t do my work. のように直接的に「できない」と表現してしまえます。
主に「能力不足」という意味で「仕事ができない」と表現する英語の言い方
人の職能について「仕事ができない」と述べる話題は、根本的に人をネガティブに評する話題です。
まずはそういう事を言わなくて済む状況に話題を運ぶことを考えてみるのが先決かもしれません。
できるだけ婉曲的な表現を、と考えると上手い英語が思いつく
仕事が「できない」という言い方は、日本語的な言い方をそのまま英語に置き換えるよりも、ひとつ工夫をして「仕事をそこまで上手くこなせていない」「最強の人材というわけではない」という風に間接的に表現する方向で考えましょう。
この「あまり~でない」という言い方には《 not + so +形容詞》の言い回しが幅広く使えます。
not so ~ は婉曲的否定(緩叙法)に幅広く使える英語表現
《 not so +形容詞》の形を使って、形容詞の部分に「有能」「デキる」と表現する語を置くと、「そんなに有能でもない」「すごくデキる方ではない」という趣旨が表現できます。
形容詞は何でも適用できます。
- not so productive (仕事が)あまり生産的でない
- not so quick (仕事が)あまり早くない =仕事が遅い
- not so good at ~ ~(仕事内容)があまりうまくない
- not so skilled at ~ ~(仕事内容)にあまり長けていない
マイクはプレゼンがそんなに上手でない
形容詞そのものは肯定的で前向きな内容の語彙となるため、言葉探しの過程では気持ちがやや前向きになれます。
not (be) up to (much) と表現するとこなれた英語に聞こえる
not up to ~ という英語表現も、not so ~ と同じ意味合いで使えます。
「up to」という英語の連語表現は、文脈に応じてさまざまな意味合いを表現します(訳語は大きく違ってきます)が、否定語を伴って not up to ~ の形で用いられる場合 ―― とりわけ not be up to much の形を取る場合 ――、これは大抵「(仕事)があまり上手くない」という意味で用いられます。
not be up to much は「仕事ができない」という意味の定型的な言い回しと捉えてしまってもよいでしょう。
Oxford Learner’s Dictionary によれば、not be up to much はイギリス英語の表現です。
up to ~ は非常に幅広い意味で用いられる言い方です。意味・用法の幅は、ざっと知っておきましょう。でないと初見で戸惑います。
ずばり直接に「できない」と表現する言い方も英語として通じないことはない
日本語の「仕事が-でき-ない」という文章構成をそのまま踏襲して、逐語訳的に英語に置き換えたとしても、英語として通じないわけではありません。
日本語そのまま英訳すると、たとえば cannot(can’t)を使って、He cannot do the job well. のような言い方になるでしょうか。これも一応は「仕事をうまくできない」という趣旨の叙述として成立します。ただし文末に well のような語を補足してやる必要はあるでしょう。
本当に「仕事ができない」をそっくりそのまま英語にすると He can’t do the job. くらいの文章になるでしょうけれど、これはもはや日本語的「デキない」のニュアンスではなく、「この仕事は担当できない」「任せられない」「無理だわ」という「文字通りの意味で、できない」という趣旨に到達します。当然といえば当然ですが。
平叙文で「仕事ができない」と表現する場合の英語の形容詞は大体かなりキツくなる
英作文においては、基本的には、否定語を含む文章は否定語を使わない肯定文の形にするように考えると、平易かつ自然な英語の文章にしやすいものです。たとえば「雨は降っていない」を「晴れている」と言い直す要領です。
しかし人物などの評価に関する話題に限っては、この「否定語を用いない言い方に転換する」という発想は、あまり有効とはいえません。むしろ積極的に「否定語+肯定的な形容詞」の形を用いた方が得策です。
平叙文で「仕事ができない」と述べる場合、人を「できない」と評するような形容詞を使うことになります。この手の形容詞には incompetent 、useless 、あるいは damn といった語が挙げられますが、どれもほとんど罵倒まじりのキツい表現として響きます。
人の能力についてどうこう評するのは基本的にして「仕事ができない」とどうしても言う必要のある場面などでは、はっきりと断言するより、できるだけ事を荒げずに婉曲的・緩和的に言う方が好まれます。英語表現として好まれる以上に、発言者の発想・人間性が好まれるでしょう。
敢えて辛辣に「無能な人」と批評するなら英語のキツい否定的な形容詞を使う言い方もアリかも
「仕事ができない」にあたる意味を英語ひと言で表すやり方もあります。incompetent、useless、good for nothing、damnといった英語表現は、人物に対して使った場合「無能」「つかえない」「のろま」などに直接的に対応する言い回しです。
書き言葉的か話し言葉的かといった違いはありますが、英語としてもどれもあまりにキツい言い方で、良くても相当に険悪な雰囲気になるでしょうし、下手をすれば相手への暴言・誹謗中傷としてとられかねません。
- incompetent 能力に欠ける
- useless (会社にとって)要らない
- good for nothing 何にもならない
- damn 役立たず
こうした言い回しは把握しておく分には損はありませんが、「無能」などの日本語の感覚と同様に、英語でも仕事上の人間関係の中で使うべき言葉では決してないでしょう。
用事や邪魔などの要因で「仕事が進められない」という場合の英語表現
「仕事ができない」という言い方は、文脈によっては、能率や生産性の評価でなく、「仕事に手が回せない」「仕事以外の用事を先にせざるをえない」という意味で用いられることもあります。
こっちの「できない」は逐語訳的な英語の方が自然に聞こえる
- 雑事ばっかりやっていて(本来の)仕事ができない。
- 緊急事態が発生したため(当初の)仕事ができない。
こういう趣旨で「仕事ができない」と表現する場合の「できない」は、日本語の逐語訳の要領で I can’t do my work. という風に表現できます。not so ~ とかよりも cannot (can’t)を使った方がしっくり来ます。
忙殺されて手が回らない~という旨は単なる状況説明であり、誰かを傷つけないようにといった配慮が不要です。
端的に busy と表現するのも英語として自然
否定語を含む文章は否定語を使わない形に直すと平易かつ自然な英語の文章にしやすいものです。
忙しくて手が回らない、という趣旨を述べるなら、「仕事ができない」と表現するよりもむしろ「忙しい」と言ってしまった方がスッキリ平易で端的な言い方になるでしょう。