father(父親)は、中学英語で習う基礎的な英単語の一つです。father’s day(ファーザーズ デイ) と聞けば、英語を深く学習した人でなくても「父の日」を連想できると思います。
では、father of our group はどうでしょうか。father of our group は「私たちのグループの父」ではなく、「私たちのグループの長」と訳せます。この場合、father は名詞として「年長者」を意味しているのです。fatherの持つ複数のニュアンスと用法を確認しておきましょう。
father の名詞的用法
father は「父親」の意味で広く知られますが、実は「父親」以外にも名詞としていくつか意味を持っています。
father: 父性
father は親族関係としての父親という意味の他に「父親らしさ」つまり「父性」という意味でも用いられます。
父性について述べる場合は the father in Mike のように表現されます。「内なる父性」のイメージです。
ちなみに親子関係の意味で「マイクの父親」と述べる場合は father of Mike と表現します。
father: 創始者
father は「創始者」や「発明者」と訳される意味で用いられることもあります。
キリスト教(カトリック)では、創造主である神を「heavenly father(天なる父)」、神に仕える神父を「father」と呼びます。
father: 長老・最年長
father が「年長者」を意味することもあります。グループなどの古株も同様に「father」と呼ばれます。
father の動詞的用法
father は名詞だけでなく動詞として用いられることもあります。
動詞としての father は fathering、fathered、fathered、fathers のように語形(活用形)を変えます。
father: ~の父となる
father は「(~の)父となる」という他動詞の意味があります。出産に関するニュースなどでもよく用いられる用法です。
father の目的語はもっぱら son(息子)、 daughter(娘)、あるいは children(子供)といった語が置かれます。
father: ~を創始する
動詞 father は「何かを始める」「設立する」という意味で用いられることもあります。この用法の father には「~を始めた責任がある」というニュアンスも含まれるようで、少しひねった意味で「~の責任を負わせる」と表現することがあります。
彼はそれを私のせいした
また、この用法の father に「本」などを目的語に取った場合、「物語を始めた責任者」というニュアンスで「~の作者とする」と表現できます。
father を使ったイディオム
イディオム(慣用表現)の中で使われるfatherも、名詞的用法のニュアンスを受け継いでいます。名詞 father が持つイメージを意識しながら、それぞれのイディオムの意味を確認しましょう。
The child is father of the man
三つ子の魂百まで
The child is father of the man. は、日本語の「三つ子の魂百まで」にほぼ対応する意味のことわざです。
「子供はその人自身の父親である」と述べることで「子どもの時分の性質がその人の性分を左右する」「幼少の性格はいつまでも変わらない」という含蓄を示す、少しひねった表現です。
Like father like son.
この親にして、この子あり
like father like son は日本語の「この親にしてこの子あり」あるいは「親が親なら子も子」に対応することわざです。親子は性格や行動が互いに似るものだ、という意味合い。
old enough to be somebody’s father
親子ほど歳の離れた
old enough to be somebody’s father は、男女で世代が異なるくらい歳の差があるカップルについて、その年上の男性を「彼女の父ほど年がいっている」と表現する言い回しです。
彼女の彼氏を見たことある?彼女のお父さんかっていうくらい年が離れてるんだよ
not your father’s
前世代とは一線を画する
not your father’s は「最新の」「最先端の」という意味で用いられる言い回しです。
父の世代と子の世代とでは、取り巻く環境が異なります。分野によっては、父親世代の製品は前世代・旧世代です。not your father’s は「君のお父さんの(時代の)ものじゃないよ」と述べることで時代の最先端を表現するわけです。
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―― ZDNet, May 25, 2017
the father of ~
はなはだしい
the father of ~ と表現される場合は、文脈によっては「とても大きい~」「とても厳しい~」という程度表現として用いられている場合があります。
of のあとに「all」を加えて the father of all ~ と述べると「全ての~よりも大きい(厳しい)」というニュアンスになります。
ただ、the father of ~ を程度表現として用いる例はかなり稀です。大半の文脈では「~の父親」という意味で用いられています。