英語では基本的に「人」を person、「人々」を people といいます。《人》と《人々》という関係は単数形と複数形のように思えなくもありませんが、person と people はどちらも単数形で、それぞれ複数形が別個にあります。すなわち、person の複数形 persons 、および、 people の複数形 peoples です。
persons も peoples も使い所はそう多くなく、初歩的な英会話で使う機会は稀ですが、英語の単数形・複数形の感覚を理解する材料としてはうってつけです。
person は「個人」
person は基本的には「人」あるいは「人間」と訳されることの多い語です。特に「ひとりの人」を指す向きが濃厚です。
ケンブリッジ英語辞典によれば、person の定義は「a man, woman, or child」(男性、女性、もしくは、子ども)。それぞれ単数形であり、かつ不定冠詞も付いているということからも、person の語が「個人」を念頭においていることがうかがえます。
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person は、単に人の頭数を数える語という以上に、個人の「特徴」や「性格」について言及する脈絡でもよく用いられる語です。たとえば book person といえば「本好きの人」(person who likes books)を指す、という具合です。
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person と human の違い
person と混同しやすい英単語に human があります。
person と human の違いとしては、person は《大勢と個人を分ける》ために用いられる語であり、human は《動物と人間を分ける》ために用いられる語である、という感覚で捉えてよいでしょう。human は大抵「人間」と訳され、person が「人」や「個人」と訳されるのも、この感覚と矛盾しません。
people は「集団」
people は「人々の群れ(群衆)」や「大勢の人」を意味します。集団を指す語であり、単数形だけど複数扱いされる、少々ややこしい単語です。
一般的な認識としては、people は person の複数形に相当する語として扱われます。
厳密にいえば person 複数形は persons です。しかしながら、14世紀の初め頃にはすでに person の複数形として people が使われるようになっています。今日では、persons はきわめて限られた文脈でのみ用いられる語であり、普通は person =単数形、people =複数形、という対応関係で扱われています。
多くの人は低賃金と長時間労働で苦しんでいます
the people は「国民」「庶民」「起訴する人」
people を、定冠詞 the を付けて the people と述べる場合、ただの「人々」ではない意味合いが出てきます。意味は3つあります。1つ目が「国民」、2つ目が「庶民」、3つ目が「起訴する人」。
定冠詞 the は対象を特定する意味合いを付与する語です。the people というと、漠然と「人々」を指す表現ではなくなり、「あの(何処其処の)人々」と具体的な対象を指示する言い方になります。訳語としては「国民」や「民衆」のような語が適切になります。
逆にいえば、「日本人」のように特定の国民・民衆を指す場合には、 the Japanese people 、 the people in Japan 、 the Japanese 、という風に定冠詞を付けて述べるべきということになります。
また、the people は「庶民」「一般大衆」という意味合い、すなわち貴族階級に対する平民階級を指す語としても用いられます。社会的に特別視される立場ではない人々というニュアンスといえます。
例えば man of the people のようなイディオムは、「大衆の味方」といった意味になります。
one’s people は「支持者」「従業員」
one’s people を直訳すると「(誰か)の人々」です。特定の人に属する人々を指して使います。日本語では「支持者」や「従業員」などと訳されるようです。また、古い言い方ですが my people は「親族」や「両親」を指して使われていました。
people person は「人付き合いの良い人」
people person を見て、「人々の人」?と疑問に思うかもしれません。これは、「人付き合いの良い人」を表す表現です。ケンブリッジ英語辞典では「someone who is good at dealing with other people」(他人と上手に付き合える人)と説明されています。
我々には彼が必要です。彼は人付き合いが上手くていつもチームの士気を高めてくれるんです
person と people、それぞれの複数形
persons は少し古くて堅い言い方
persons は「個人」を表す person の複数形なので、複数の人間を指していてもあくまで個人に焦点を当てた表現だと言えます。
people に近い「人々」のような意味合いで persons を用いる方法は、古くて堅苦しい表現であり、主に法律や法執行の文脈、もしくは限られた英語表現の中でしか使われていません。
- persons of interest(複数の利害関係者)
- displaced persons(亡命者)
- missing persons(行方不明者)
100万人以上の難民と亡命者が我々の国へ逃れてきた
つまり、複数の人間を「集団」としてとらえる場合は people を用い、複数人いる中でもその個人を対象にした文脈では persons を用いると適していると言うことができます。
4人で寝るにはこの部屋は狭すぎるよ
その4人はそれぞれに個性を持っていた
peoples は特定の集団や民族を指す言い方
peoplesは people の複数形です。people という複数名詞にさらに s のついたpeoples という単語に違和感を覚える人もいるとは思いますが、要するに「複数の集団」という意味です。
主に the と共に、特定の国民や民族、集団のメンバーやそのメンバー全体を指して使われることが多いと言えます。
オーストラリアの先住民族らの歴史について学んだ