ハーフ(half)は「半分の」という意味で、日本語でもよく用いられますが、英語の half と日本語の「ハーフ」では意味にも用法にも少なからず隔たりがあります。
両親が国際結婚であり、異なる民族の血を引いている、という意味合いは、英語の half にはありません。また、「何の(半分)なのか」という対象・全体を明示せず単独で half と述べる言い方もありません。
英語の half と日本語の「ハーフ」は、同語源ではあるとしても、全く別の語彙である、そう心得て把握し直しましょう。
「ハーフの人」と英語で表現する言い方
日本語で混血という意味で「ハーフ」と言う場合、おおよそ容姿端麗というような好意的なニュアンスを込めた表現として用いられますが、この先入観は日本だけで通用するものです。
多民族国家では民族間の婚姻は珍しくないことも多々ありますし、欧米では血筋に関する話題に触れることは差別的な扱いに準じるデリケートな話題ですらあります。発言機会には慎重になる必要があります。
half そのものに「混血」の意味はない
名詞として用いられる場合、「半分」以外の特別な意味を持つことは基本的にありません。特定の文脈において、「~の半分」という意味で代名詞的に用いられる場合がほとんどです。
形容詞として half が用いられる場合も、すぐ後ろに何の半分なのかを補足する用法が一般的です。
つまり「私はハーフです」と言おうとして起こりがちな間違いである、 I am a half. という文章は成り立ちません。形容詞的に用いて I am half. としたところで、何の半分なのかが述べられていないため意味は伝わりません。
half は使えるが half だけでは伝わらない
日本語で「ハーフ」と言うときはたいてい外国と日本の血が混ざった人のことを指し、多くの場合その人たちの見た目やスペックを褒める意味で使われます。しかし英語で half の一語がそのような意味を持つことはまずありません。
血筋に関して half という単語を用いる場合は、half Japanese half American のようにどこの国とのハーフなのかを補足しながら述べると、誤解なく伝えることができます。このときの half には副詞的用法が使われています。
より広い意味で使えるのは part
2種類以上の血筋を引いている人については、part が便利に使えます。
half は2つの国の血筋しか引いていない場合に使える単語ですが、多国籍国家においてはもっと多くの人種が混ざり合うことも大いにあり得ます。
例えばアメリカなどは特に先祖の出身が様々に異なることが多いため、傍から見たら同じアメリカ人に見える人たちの中にも多様な起源を持つ人々が混在しているのです。
このような多くの血筋をいっぺんに説明する際には、 part を half 同様副詞的に用い、I’m part Italian, part Spanish, and part Chinese. のように形容詞の前につけることで表せます。 この場合の part はpartly にも言い換えが可能です。
最近の主流は mixed
人種というデリケートな話題において差別的な意味を避けるために、近年好んで使われているのが mixed です。日本でも「ハーフ」をやめて「ミックス」と言い換える動きがあります。
I’m mixed. と一言述べるだけで複数人種が混ざっていることを相手に伝えられます。どこの国が混ざっているのか説明する場合は、with で続けて後ろに補足します。
彼女は日本とイギリスのハーフなんだよ
また mixed-race という表現が「混血」の正式な呼称のように用いられている例も多くありますが、良い意味で用いられているかというとそうとも言えず、この用語の持つ意味合いは未だ議論の的となっています。
かたく表現するなら dual heritage
より文語的な英語表現で「ハーフ」を表す場合は、dual heritage というフレーズがよく用いられます。
dual は「2つの」、heritage は「遺産」「引き継ぐもの」という意味です。異なる人種や経歴を持つ両親の間に生まれ育つことを意味するフレーズで、血筋だけでなく文化の側面にも言及しています。
―― Oxford Dictionaries
「ハーフ&ハーフ」は一応そのまま使える英語表現
日本ではピザを半分ずつ違う味にすることを、ハーフ&ハーフと呼ぶ場合が多くあります。
英語にも half-and-half というフレーズはあるのですが、一般的に何のハーフ&ハーフを指すのか、というところが国や地域によって異なるようです。
何の half-and-half かを明確に
half-and-half は、何かが半分ずつ混ざっている状態を表す場合にいつでも使えます。
つまり「ハーフ&ハーフと言ったらピザでしょ」という日本の感覚は英語圏では通じません。ピザの話をしているのだということを明言する必要があります。(ピザ屋さんに電話をかけているときは必要ないと思いますが)
彼女と僕は違うトッピングが食べたかったから、ハーフ&ハーフのピザを頼んだ
地域によって異なる half-and-half が意味するところ
アメリカで half-and-half というと、ミルクとクリームが50%ずつ混ざったコーヒークリームのことを指すようです。またピザの頼み方としての half-and-half は、日本ほどメジャーではないような印象があります。
またヨーロッパのように隣国同士であっても、地域ごとに特有の half-and-half が違います。お酒だけでも、ベルギーではシャンパンと白ワインのミックス、デンマークでは淡色ビールと濃色ビールのミックス、ボスニアヘルツェゴビナではワインと炭酸水のミックスを意味するなど、枚挙にいとまがありません。
お酒以外にも、スイスのドイツ語圏ではリンゴとオレンジのミックスジュース、オランダでは豚肉と牛肉の合い挽き肉を意味するなど、half-and-half が実に様々なものを表すことがわかります。
「半々」は fifty-fifty と訳せる
日本語で「半々」「半分ずつ」と呼ばれる状況のことは英語で fifty-fifty と言います。100%を2つに分けて50%50%である様を、percent を略して言った形が定着し、fifty-fifty という形容詞または副詞ができたと考えられます。
何かを半分に分けることや費用を折半することなどは、ほとんど go fifty-fifty で表せます。また2つの対立する意見に半々で折り合いをつけよう、といった場合にも go fifty-fifty が使えます。
ショルダーチャージに折衷案を
―― Liverpool City Champion, November 23, 2012
2014年にはフィギュアスケートの浅田真央さんが、現役続行の可能性を「ハーフハーフ」と答えて話題になりましたが、これも海外メディアでは fifty-fifty chance と訳されたようです。
「ハーフ」を英語にするなら half だとすぐに考えてしまいがちですが、意外と fifty-fifty の方が意味を正しく捉えられるようです。英語を身に着けるにはこの発想の転換が必要なのかもしれません。