「仕事」を意味する英単語は日本語にもカタカナ表現として多く用いられています。ジョブ(job)、ワーク(work)、タスク(task)、などなど。しかしながら各語彙の意味の違いや、英文の中でどのように用いるかという部分は、カタカナ語からは分かりません。
日本語の「仕事」には複数の意味合いがあります。意味合いごとに英語表現と対比させると、理解がはかどります。まずは job と task の語を中心に、文脈に応じた細かいニュアンスを分析しつつ、各ニュアンスを英単語と対比して把握してみましょう。
目次
「job」と「work」の共通点と相違点
job と work は、共に日本語で「仕事」と訳されることの多い単語です。意味がおおむね共通しているとはいえ、相互に入れ替えて使える表現というわけではありません。具体的な意味や使い方には違いがあります。
おおざっぱな理解としては、job は「職」、work は「作業」の意味合いを中心とする語と考えておいてよいでしょう。
また、job は可算名詞であり、work は不可算名詞であるという点、および、work には動詞としての用法もあるという点も念頭に置いておきましょう。これは差異の認識にも役立ちます。
job は「成果を得る」ための「具体的な」仕事
job で表現される「仕事」は、勤務先(職)、その勤務内容(作業)、あるいは自分の行うべき任務(つとめ)、といった意味合いを中心とする語です。
job には何らかの成果や対価を獲得するための取り組み、というニュアンスが根底にあります。また、個別の具体的な仕事内容や、具体的な従事する人の存在が暗に前提されています。
job はもっぱら可算名詞として用いられます。(動詞の用法がないわけではありませんが)。不可算名詞の用法はありません。
職業・職種・勤め先
job は第一に「職業としての仕事」を表現します。具体的な職業・職種に言い換えられる概念。いうなれば求人情報誌で探す種類のシゴトです。
仕事を探している
東京ではいろいろな職種のアルバイトを見つけることができる
彼は給料のよい仕事に就きたい
作業内容・働きぶり
職業や職種ではなくその作業内容を指して job と表現する場合もあります。good job のようなフレーズはこの意味合いといえます。
実は「作業内容」そのものを指す表現は job よりも work の方が一般的です。その上で、あえて job を使って作業内容を指す場合、その作業は成果を左右するものだったというニュアンスが込められています。
いい仕事したな!これでこのプロジェクトは成功間違い無しだ
役目・役割・すべきこと
必ずしも賃金を対価としない、義務感や使命感に由来する行動も job で表現できます。仕事というよりも「務め」と表現した方がしっくり来るかもしれません。
何らかの成果を出すことを目的に行われる点、具体的な仕事内容が想定されている点、取り組む人物の存在が前提されている点などは、従前の job と同様です。
誕生日プレゼントの調達は君の役目だよって言ったじゃんか
work は「能力を発揮する」意味合いが中心
work は仕事というより作業・労働・働きといった訳語で理解した方が把握しやすいかもしれません。対価の有無は前提されず、作業の取り組みそのものに焦点が置かれた表現です。
個別の具体的な職務内容は前提されておらず、むしろ労働全般・抽象的な「労働というもの」に焦点を当てています。労働という概念を指すといってもよいかもしれません。
肉体や頭脳を従事させる「活動そのもの」
work が指し示す「仕事の内容」は、職種を指すものではなく、「勤務」「従事」「労働」といった活動そのものです。
work は動詞(「仕事をする」)の意味でも用いられます。動詞の意味と関連づけて「仕事をするということ」と認識してしまってもよいでしょう。
きつい労働
どうもご苦労様でした
日々の業務
「仕事が一段落した」というような場面で用いられる「仕事」のニュアンスは、作業(労働)そのものを指すため、job でなく work で表現します。
職業・職業・勤め先
work も job と同じように「勤め口」や「勤務先」「会社」あるいは「職業」の意味で用いられることがあります。使われ方はほぼ同様ではありますが、work で表現すると「対価を得るための活動」というニュアンスが除かれます。
work は job とは違って不可算名詞なので、文法的扱いは異なります。特に「職」「勤め先」という意味で用いる場合は冠詞がつかない(無冠詞)表現をとる場合が一般的のようです。
まだ仕事がみつかっていない
正社員にはなりたくない
work as 職種
職業について述べる文脈で work as ~(職種)のように表現すると、「~の業務に従事する」「~の仕事をしている」という意味になります。
スポーツ記者をしています
動詞 work は「取り組む」「機能する」のニュアンス
work には動詞の用法もあります。(主に自動詞として用いられますが他動詞の用法もあります)
基本的には work は日本語の「働く」に対応する単語と認識されますが、単純素朴に「work = 働く」と対応づける覚え方は危険です。work は文脈によっては「勉強する」、機械が「駆動する」、薬が「効く」といった意味でも用いられるためです。
work は「対象に働きかけて自分の能力を発揮する」「大なり小なり機能する」といった図を根本的なイメージとして思い描くとよいでしょう。仕事に対する work は労働。学習に対する work は勉強。機械装置に対する work は動作・駆動。計画に対する work なら順調に進んでいる状況、というように。
パソコンが動かない。修理に持っていかなきゃなあ
「職業」「職務」の言い換え表現
occupation
occupation は「職業」の意味で用いられる語です。
occupation は job や work よりも形式ばったニュアンスの色濃い表現です。公的機関の書類ではむしろ好んで用いられています。
(ビザ申請用紙に)現在のご職業
vocation
vocation は、いわゆる「天職」を指す語です。これこそ自分が取り組むべき使命だ!と直観して邁進するような取り組みを指します。
vocation の原語は「神のお召し(声)」のような意味があります。つまり天啓のニュアンスが根本にあります。
会計士が私の天職と悟った
「業務」「仕事内容」の言い換え表現
task
task は日本語における「タスク」に近い意味合いで用いられる語です。「割り当てられる作業」というような、単位の小さい作業を指す向きがあります。
task は名詞(可算名詞)のほかに動詞(他動詞)の用法もあります。動詞の意味は「人に作業を割り当てる」といったところで、前置詞 with を使って作業内容を添えます。
このタスクに取り組んでほしいんだけど、時間ありますか?
書類整理のタスクを任されたが、実際はやりたくない
labor
labor は労働の中でも肉体労働を特に指し示す語です。労働そのもの、および、肉体労働に従事する労働者の意味でも使えます。
根本的なニュアンスとしては「労苦」「勤労」「骨折り」といった意味合いで把握しておくとよいでしょう。
なお labor はアメリカ英語における表記で、イギリス英語では主に labour と綴られます。
移民である彼にとって生活費を稼ぐための唯一の方法は肉体労働だった
肉体労働者として働きたくなかったため、彼は必死に勉強した
「義務」「使命」の言い換え表現
duty
duty は「義務」や「本分」などと訳される場合の多い語です。仕事・労働の文脈で duty を用いる場合は、仕事上全うすべきこと、職務、任務、といったニュアンスの伴う仕事内容を指します。
on duty (勤務時間内)、off duty (勤務時間外)、hours of duty (勤務時間)などの表現はこのまま覚えてしまってもよいでしょう。
熟語表現・共起表現・その他
job も work も日常で一般的に用いられる表現であり、さまざまな熟語表現、よく組み合わせて用いられる言い回しがあります。一緒に覚えてしまいましょう。
job と work を形容する頻出キーワード
- full-time 正社員の
- part-time アルバイトの
- manual 肉体労働の
- non-manual 肉体労働ではない
- boring 退屈な
- difficult 大変な
- highly-paid 給料のよい
- badly-paid 給料の悪い
- 9-5 (9時5時)
- regular 一般的な
- permanent 終身雇用の
- temporary 短期の、単発の
勤務中・出張・転職を表現する語
「仕事中」は at work
ジューンどこ?
B She is at work.
彼女なら仕事中だよ
「仕事中」「仕事に従事している」イメージです。
「出張」は business trip
出張でパリに行くことになったんだが、妻にとても多くのお土産を頼まれてしまったよ
前置詞には on を用います。
「転職する」は a new job 、 another job、などいかが
転職しようと思っています
転職は change job のように表現できます。名詞としての「転職」は career change と表現できます。
給料がこちらの方が断然よかったので、この会社に転職したんだ
特にニュアンスを込めずに平板に述べるなら change job で十分でしょう。でも「これから転職する」という場合、せっかくなので(?)新しい仕事という雰囲気を添えて a new job や another job のような表現を使ってみてはいかがでしょうか。
なお、change が目的語にとる名詞が可算名詞の場合、その目的語は複数形が用いられます。job (可算名詞)は必ず change jobs と複数形で表現されます。
スペインへ行くためにドバイで飛行機を乗り換えた
仕事にまつわるハンディ英会話フレーズ
「~の仕事をしています」
機械の修理の仕事をしています
船舶会社で働いています
仕事自体に名称があるならなら I am a doctor や I am a teacher などを組み合わせましょう。そうでなければ I work のあとに具体的な業務内容を明示しましょう。
「お仕事は何ですか」
お仕事は何をしていますか?
お仕事は何ですか
what do you do は「お仕事なんですか」と尋ねるときの定型表現です。 what is your job に比べて「仕事」ということは明言していないため少しソフトな表現です。
みんなの回答:お仕事は何ですか?は英語でどう言うの?
「いい仕事を探しています」
~な仕事を探しています
いい仕事というのは漠然としているので、ただ good job と言うのではなく、 well-paid job 「給料のよい」や challenging job 「やりがいのある」など自分の求める仕事に適切な形容詞を付けましょう。
「その日は仕事でして出席できません」
その日は仕事のため、申し訳ありませんが、それに出席することは叶いません
on duty で「仕事がある」こと表すことができます。また I have to go to work や単純に I work とも言い換えることができます。上記した at work ですが、「仕事中」「業務に取り組んでいる最中」であることを表すので、ある日に会社に出勤するかどうかが問題になっているこの場面においては適切ではありません。
「お仕事は儲かってますか」(要注意)
お仕事儲かってますか
lucrative は profitable とも言い換えることができます。給料を表す salary や wage は数字にまつわる単語なので high や low で儲かっているかどうかを示します。
ただし、財産・収入・儲けといった事柄は非常に繊細な話題です。欧米では特にこの手の話題は忌避される傾向があります。よほど時宜にかなった場面でも、直接尋ねたら相手の心証を損ねる可能性が濃厚です。
表現そのものは知っておいて損はないとはいえ、実際の英会話ではタブーと心得ておきましょう。