トンカツは多くの日本人が好物として挙げるであろう人気料理。専門店も多く、家庭料理としても親しまれています。
トンカツは西洋料理の「カツレツ」(cutlet)の調理法を導入して日本風にアレンジした、いわゆる「洋食」です。発祥は明治時代までさかのぼります。お察しの通り、トンカツは「豚カツ」すなわち「豚のカツレツ」を略した言い方です。
西洋にもポークカツレツ自体はあるので、単にポークカツと言うよりも Japanese pork cutlet(日本式ポークカツ)と付け足した方が親切な紹介といえそうです。
昨今では海外にもトンカツの美味さが知れ渡りつつあります。それに伴い徐々に英語でも「Tonkatsu」の固有名が認知されつつあります。
トンカツには「ヒレカツ」「ロースカツ」といった下位区分(?)があります。さらにはカツ丼やカツサンドのようにさらに一手間加えたアレンジ料理もあります。
トンカツ、ヒレカツ、ロースカツ
トンカツ
pork cutlet 、deep fried pork fillet 、または Tonkatsu
洋食の「カツ」と西洋料理のカツレツ(cutlet)は、厳密にいえば少し調理法が違います。
カツレツの調理方法はフライ(fry)。使用する油の量はトンカツよりもずっと少なめ。普通はフライパンを使います。トンカツは天ぷら同様たっぷりの油で泳がせるようにして揚げる。これはディープフライ(deep fry)と呼ばれます。
ヒレカツ
pork fillet cutlet 、fillet pork cutlet 、Hirekatsu、あるいは Tonkatsu
ヒレカツは「ヒレ(fillet)の部位を使ったトンカツ」を指し、主にロースカツと区別する場合に使う呼び方です。ヒレカツもロースカツも共にトンカツです。
あえて「ヒレ」の語を含めて述べる言い方としては、「pork fillet cutlet」の言い方が比較的多く見られます。ただし、まだ英語名として定着しているというレベルではありません。
豚肉のヒレはテンダーロイン(tenderloin)とも言いますが、ロースカツとの混同を避けるためか、使用例はあまり見られません。
ロースカツ
pork loin cutlet 、 loin pork cutlet 、Rosukatsu 、あるいは Tonkatsu
「ロースカツ」もヒレカツ同様、トンカツの詳細な分類です。「ロース」はおおむね英語の loin に該当する部位ということで、あえてロースカツと言う場合には pork loin cutlet のような表記が用いられています。
トンカツの海外認知度が高まってきたとはいえ、そのなかの細かい区分までは気にされないというのが現段階での実情といえるでしょう。その意味ではヒレカツもロースカツも Tonkatsu と説明した方がむしろ便宜が図れるように思われます。
例えるならラーメンが「Ramen」として英語に定着した一方で「Miso-ramen」はいまいち定着していないといった事情と同様でしょう。いつかヒレカツも Hirekatsu で通用する日が来るでしょうか。
チキンカツ、メンチカツ、ハムカツ
チキンカツ
chicken cutlet または Chickenkatsu
チキンカツレツと呼ぶべき料理は(ポークカツと同様)西洋にもあります。日本のチキンカツは基本的にはトンカツの調理法と同じで、西洋の chicken cutlet とはやはりフライの方法が違います。
チキンカツを英語で紹介する場合も、トンカツ同様、簡略に述べるなら chicken cutlet、洋食としてのチキンカツと明示するなら Japanese chicken cutlet、と呼んだ方が無難でしょう。
海外では意外と和風チキンカツの知名度が高く、Chicken Katsu の呼び名もすでにけっこう多く用いられています。チキンカツカレー(Chicken katsu curry)の愛好家が海外に多いことも一因と言えそうです。
Chicken katsu curry – BBC Food Recipes
メンチカツ
minced meat cutlet 、 fried meat cake 、 または Menchi-katsu
「メンチカツ」の語は一般的には「mince+cutlet」の和製英語(が訛った形)とされています。mince (ミンチ)は挽肉等の細かく刻んだ肉のこと。
トンカツ同様「カツレツ」の語を転用して minced meat cutlet 、あるいは、肉をまとめて固め(=cake)て揚げるという意味で fried meat cake のように表現されたりします。意外とユニークな料理のようで、Menchi-katsu と固有名で読んでいる例も多々見られます。
ハムカツ
ham cutlet 、または Ham-katsu 、Hamukatsu
ハムは英語でも ham 。カツはトンカツと同様に cutlet と表記したり、または洋食のカツとして katsu と表記したりします。
カツを katsu と表記する場合には、「ハム」は英語式に ham と表記する場合と日本語風ローマ字表記で hamu と表記する場合に分れます。どちらが正解というわけではありません。
カツ丼、カツカレー、カツサンド
カツ丼
pork cutlet bowl 、pork cutlet rice bowl 、 pork cutlet on rice 、あるいは Katsudon
丼= rice bowl の語を使って直訳的に表現するか、「ご飯の上にカツ」のように説明的に表現するか、あるいは日本語由来の外来語として Katsudon と言ってしまうか。
カツカレー
katsu curry 、pork cutlet curry rice 、curry rice with a cutlet
カレーもカツも日本的洋食ということもあり、カレーライスにカツをあしらった料理(curry rice with pork cutlet)のような説明的な表現でも違和感はありませんが、katsu curry (特にチキンカツカレー)が奮闘して知名度を上げています。
カツサンド
pork-cutlet sandwich、Tonkatsu sandwich、Katsu-sando
カツサンドはトンカツを具に用いたサンドイッチで、英語の呼称は比較的素直に「ポークカツ(トンカツ)のサンドイッチ」のような言い方をします。
サンドイッチを(ウィッチを略して)「~サンド」という言い方は英語にはありません。
【通じない英語】 ミックスサンド はネイティブが使わない和製英語
日本語をそのまま外来語として表現する場合には、Katsu-sandwich ではなく Katsu-sando と表記する例が大半です。