質問されたけれど答えられない場合、回答を持ち合わせていない場合。日本語ならひとまず「わからない」と返答するでしょう。英語では I don’t know. あるいは I don’t understand. といった表現があります。特に意識せず(あるいは迷って) know と understand と適当に使ってはいけません。どちらの語を用いるかで返答の意味合いが全然違ってきてしまいます。
使い分けのポイント
- know は静的な、知っている「状態」を指す
- understand は動的な、理解する「動作」を指す
I don’t know. は「知りません」
know は事実や情報を知っている状況・状態を意味します(know は状態動詞とも呼ばれます)。情報や知識が頭の中に収納されて置かれているという静的なイメージです。
know はすでに知識がある、もともと知っている状況で使われます。make known は「知らせる」「宣言する」という意味の語ですが、これは相手がそれを知っている状態にするというニュアンスです。
I don’t know him.
私は彼を知りません
I know where it is. Just follow me.
どこにあるか知ってるよ、ついてきて
He made it known to his group that he was gay.
彼は自分がゲイであるとグループ内で公言した
I don’t understand. は「分かりません」
understand は事実・情報を認識して頭の中に取り込むという動きを表す語です。知識が外から頭の中に入ってくる動的なイメージがあります。
もともと知らなかった事を知るようになった、今まで分からなかったが理解した、という状況ではこの understand が使われます。知識の内容や方法に主眼を置くときにも understand で表現します。
make oneself understood (自分の考えを人にわからせる)という使い方もできます。
I’m sorry, I don’t understand.
ごめんなさい。意味が分かりません
Now I understand!
よーしわかったぞ!
Her explanation was difficult to understand.
彼女の説明は分かりにくかった
I couldn’t make myself understood.
自分の言いたいことをうまく伝えられなかった
【失敗例】誤用はこんな誤解を生むぞ!
know と understand を使い分けないとヘンな状況に陥ります。たとえば、I don’t know. と回答すべき場面で I don’t understand. と答えてしまった場合、こんなチグハグさが生じます。
(電話で)
A. May I talk to Mr.Sato?
佐藤さんはいらっしゃいますか
B. He’s out at the moment.
ただいま外出中です
A. When will he be back?
いつお戻りでしょうか
B. I don’t understand.
あなたの仰っている事が分かりかねますが
A. えっ
B. えっ
AさんはBさんに佐藤さんの帰社時刻についての情報を「知っているかどうか」を訊ねています。ここではBさんの頭の中に情報があるか否かに焦点が当たっています。この状況で回答が I don’t understand. だと、相手は「この人は質問の意味が理解できないってか」と認識することになります。
Aさんは質問の内容を繰り返すか言い換えるかして訊ね直してくれるでしょうけど、内心は穏やかでないはずです。
イメージの図形化がポイントかも
know と understand のような「動き」にニュアンス差のある語彙は、図形的なイメージを育てておくと、間違う余地を減らせます。たとえば「頭脳」をタンス等の収納スペースになぞらえて、 know は収納されて鎮座している物体、 understand はその収納スペースにぶち込まれる矢印のイメージで捉えてみると良いかも知れません。