必要・不必要を表現する英語の形容詞は沢山あります。たとえば necessary、needed、required、indispensable、などなど。何がどう違うのかと混乱しがちですが、その混乱の元は各単語を必要性や重要性の「度合い」で比較しようとしているからかも知れません。
必要性や重要性に関する英語表現は、単純に一列に並べて序列をつけられるものでもありません。少し見方を変えて、「どういう種類の必要性か」を把握すると、区別や整理がはかどります。
「事実として必要」と「きっと必要(と判断)」の区別
単に「必要」と表現できる性質を、【1】「明らかに(疑いなく)必要である」と言えるものと、【2】「これは必要だろうと判断できるもの」に大きく分けて考えてみましょう。
【1】明らかに(疑いなく)必要であると言えるものは、「それが無ければ物事が成り立たなくなる」種類のものと言い換えてもよいでしょう。
【2】これは必要だろうと判断できるものは、「最悪それが無くてもやっていけるかも知れないもの」と考えることができます。言い換えれば「あると助かる」程度のものです。
「事実として必要」を示す単語
【1】事実として必要であり、無くてはならないもの。たとえば生物にとっての「水」のようなもの。日本語でいえば「必要不可欠」にあたる必要性。このニュアンスがある英語にには vital、crucial、essential があります。
vital は生死にかかわる重要性
vital は「命にかかわる」つまり「それが無ければ持続不可能」という種類の重要性です。生命や生命維持活動(に喩えられる活動)の形容として多く用いられます。
a vital question
死活問題
GSK is on the mend but still lacks vital ingredient for growth
GSK(グラクソ・スミスクライン)は回復しつつあるが、依然として成長に不可欠な要素が欠けている
(the Guardian, 6 May 2015)
vital はもっぱら肯定文で使われる言い方で、否定文では基本的に使われません。
crucial は成否にかかわる重要性
crucial は「成否の鍵を握る」「成功の行方を決定づける」という類の重要性を指す意味合いで用いられます。
crucial は「十字」(cross)に由来する語で、十字路=交差点に設置された道標(fingerpost)の喩えを背景としているようです。
essential は本質にかかわる重要性
essential は essence (本質)の形容詞形です。「欠けてしまったらそれがそれでなくなってしまう」という根本的・本質的な重要性を指す意味で用いられます。
necessary は実現にかかわる重要性
necessary は「目的を果たすためには不可欠だが、目的を果たさなくてもよいなら無用」という類の重要性を指す意味合いで用いられます。「無くては成らない」という日本語がしっくり来る単語です。
性同一性に関する新しい報道ルールは時宜にかなっており必要なことでもある
(The Independent, 3 December 2015)
否定の接頭辞 un- を付けた unnecessary は、「それがなくてもできる」という意味での「不必要」を表します。
「きっと必要(と判断)」を示す単語
【2】これは必要だろうと判断できるもの。あれば大いに助かるが、最悪それが無くてもやっていけるようなもの。
helpful は有用・有益な重要性
観光地を遊覧する際には観光マップが必要です。とはいえ、地図が無ければ観光できないというわけではありません。ただ地図があれば格段に便利になる、助かる、というだけ。
helpful は、こうした「何かを行うために役立つ」という意味での必要性・重要性を表現します。
否定の接頭辞をつけて unhelpful とすると「あっても何の助けにもならない」という種類の「不必要」を表します。
meaningful は有意義・価値ある重要性
「国際機関が調査した食糧難に関する統計データ」は、世界の貧困状況を知るためには重要な手がかりとなります。世界の貧困状況を調べるにあたり町のパン屋の売り上げはあまり価値がありません。情報の重みが違うといってよいでしょう。
meaningful は、このような「価値がある」「重視されるべき」という意味での必要性・重要性を表現します。
否定の接尾辞 -less をつけて meaningless とすると、「何の意味も価値もない」という意味の「不必要」を表します。
important は最も汎用的な表現
重要性や必要性の種類区別を踏まえて、これらを包括し得る総合的・汎用的・一般的な表現はやはり important でしょう。
価値の程度や意義の有無、成功につながる、より良くなる、等々、あらゆる意味合いにおける「重要性」(必要性)を表現する場面で impotant が使えます。
ひとまず使い分けに困ったら important を使ってしまえば大抵の場面では無難な表現となります。