クリスマスソングの定番といえば、ワム! (Wham!)の「Last Christmas」ですよね。1984年リリースのナンバーですが、誰でも1度は耳にしたことがあるはず。
曲名「Last Christmas」について「最後のクリスマス」と解釈していませんか? これは「去年のクリスマス」を意味します。
「Last Christmas」は、タイトルだけでなく歌詞にも実用的でこなれた表現が満載です。曲も穏やかなポップスなので英語が聞き取りやすく、リスニング教材としてもうってつけです。
そして内容がけっこう切ない恋の歌と理解したとき、「Last Christmas」に込められた哀愁があらためて心に響くはずです。クリボッチならなおさらです。
予備知識
ワム!は80年代を通じて人気を博したイギリスの男性デュオです。「Last Christmas」はワム!の人気絶頂の最中に発表された曲で、発表当時すでにワム!の人気は確立されていましたが、「Last Christmas」はワム!の代表曲として、あるいは1980年代の音楽を代表する曲のひとつとして、今も愛されています。
歌詞全容
YouTube公式チャネルの動画に歌詞が掲載されています。
Last Christmas
I gave you my heart
But the very next day you gave it away.
This year
To save me from tears
I’ll give it to someone special.
Once bitten and twice shy
I keep my distance
But you still catch my eye.
Tell me, baby,
Do you recognize me?
Well,
It’s been a year,
It doesn’t surprise me
(Merry Christmas)
I wrapped it up and sent it
With a note saying, I love you,
I meant it
Now I know what a fool I’ve been.
But if you kissed me now
I know you’d fool me again.
歌詞解説
I gave you my heart
去年のクリスマスは
僕は君に真心をささげた。
I gave you my heart
give+目的語+目的語でSVOO、いわゆる第4文型。
けど君は次の日にはもう
それをどこかにやってしまった。
veryは程度ではなく強意を示す表現。まさに次の日。
しばらく経ってからじゃなくて次の日だぜ!? という雰囲気が伝わります。
To save me from tears
I’ll give it to someone special.
今年は、もう泣かないようにね
だれか他の特別な人に贈ることにするよ。
To save me from tears
自分を涙から守るために=泣かなくていいように、という意味。
I keep my distance
いちど痛い目にあえば次は慎重になる。
僕は距離を置くようにしている。
「Once bitten, twice shy.」は英語の慣用句で、失敗経験から必要以上に用心してしまうさまを指す表現。
日本のことわざ「傷弓の鳥」「あつものに懲りてなますを吹く」に近い言い回し。
I keep my distance は、多くの場合《from +距離を置く対象》が後に続く(けどここでは省略されている)表現。
でもやっぱり君に目を奪われるんだ。
原文に忠実に訳するなら「君は僕の目を捉える」。
「僕」がどうしても「君」に目を向けてしまうという(不可抗力的な)ニュアンスの感じられる言い方。
Do you recognize me?
ねえ教えて、
君はそんな僕を意識しているかな。
「recognize」は「それと認める」「認識する」という意味で、文脈によっては「評価する」という意味にも。
まあ去年のクリスマスには会っていた「僕」が誰か分からなくなることもないでしょうから、ここは「僕(が「君」を視線で追っていること)」をそれと認める(気づいている)のかな、という問いかけかと。
It’s been a year,
It doesn’t surprise me
まあね、
1年も経ってしまっているから、
別に驚きやしないけれど。
この「It’s」は「it is」ではなく「it has」の略。
It doesn’t surprise me =「それは僕を驚かせない」=「驚くほどの事ではない」あるいは「無理もない」。
it が指す対象は判然としないものの、前段の流れ全体を受けているのでしょう。
With a note saying, I love you,
I meant it
ラッピングをして贈ったんだ、
愛してる、って言葉を添えて。
本当に、そう思っていたんだ。
I meant it は「本当だよ」「うそじゃないよ」と念押しする決まり文句。
it は最初に登場した「僕のまごころ」とも、登場していない具体的なプレゼントとも取れる感じ。
But if you kissed me now
I know you’d fool me again.
今なら自分がどれほどバカだったか分かるよ。
でも、もし今きみがキスしてくれたら
きっとまたバカになっちゃうだろうけど。
you’d は you would の略。will の「非現実」の用法。
ここで最初のパートの繰り返しに入ります。
歌詞はまだまだ続くよ!
曲全体はここまで挙げた歌詞の反復が大部分を占めますが、全く同じではなく、後半にちょっとしたアレンジが挿まれます。
ちょっとした波乱というか「僕」の心の動きにドキッとする展開もあります。それは敢えてお楽しみに取っときましょう。ぜひ聞いて味わってみてください!!!!