「直す」という表現には、いくつかの意味合いが含まれます。英語で「直す」と述べる場合、訂正・修正・改良・変更といった具体的な意味合いまで念頭に置いて表現を選びましょう。
日本語表現は、訓読み+送り仮名の和語よりも、漢字だけで構成された漢語に基づく表現の方が、意味が具体的かつ限定的であり、英語と対応させやすい傾向があります。「直す」のような表現も「訂正」「修正」といった語に一度置き換えてみると、対応する英語表現が見つけやすくなるでしょう。
特定のニュアンスを含めないなら「変更」と表現する
日本語で「直す」と述べる場合、たいていは「誤りを正す(訂正)」とか「内容に磨きをかける(改良)」といった意味合いを込めて用いられるといえますが、他方で、そういうニュアンスを特に込めずに「現状に手を加える(変更)」という程度の意味で用いられることも多々あります。「修正」も単に変更の意味だけで用いられることがあります。
特定の意味合いやニュアンスを込めずに単に「変更する」という意味合いで「直す」と述べる場合、英語では change もしくは alter といった語で「変更する」と表現するとよいでしょう。
「change」は「変更」の意味で汎用的に使える語
change は「変える」「変更する」「変化」といった意味をもつ最も基本的で一般的な単語です。文脈によっては「取り替える」とも訳せます。
change は名詞としても動詞としても使えます。自動詞としても他動詞としても使えます。
部分的に変える(一部変更)
change はどちらかといえば、調整・修正・加味・加筆といった上乗せ型の変更よりも、むしろ交換によって別物に変えるというニュアンスのある語です。たとえば「話題を変える」という場合、それは微調整でなく大きな転換です。
変更箇所がごく一部に限られるような部分的・局所的な変更の場合、 change a part (of~) と表現できます。
今から計画を一部変更することは可能でしょうか
名詞として扱うなら partial change (部分的変更)がお決まりの言い方です。
部分的な変更は change よりも alter の語で表現した方が、ニュアンスを表現しやすいかもしれません。
大きな変更(大きく変更する)と述べる場合
英語で「大きな変更」を表現する場合、major や significant あるいは drastic といった語を加えるとうまく表現できます。どちらも「重要な」「主要な」という意味合いの語です。
change が名詞なら、 major change や significant change のように《形容詞+名詞》の形で表現できます。change を動詞として扱うなら、change ~ significantly、や change ~ drastically のように副詞形が使えます。
「大きな」を big change と表現する言い方もできますが、これは「変更」や「直し」というよりも「変化」「変動」「変革」という意味合いで用いられやすい表現なので、文脈によっては語弊が生じる場合がありそうです。
小さな変更(少しだけ変更する)と述べる場合
「小さな変更」は、 minor change、slight change のように表現できます。また、「ある程度」を意味する some や certain を使って表す言い方もあります。
テーマが大幅に変更した
新しい製品は、使いやすくするために若干変更する必要がある
急な変更(急遽変更する)
「急な変更」は、突然というニュアンスなら sudden change のように表現できます。動詞なら change suddenly 。「緊急(急を要する)」というニュアンスなら change urgently 、「急いで修正する」というニュアンスなら change in a hurry などの表現もよいでしょう。
急な変更は誰にとっても望ましいものではありません。ビジネス上で突発的に変更の必要が生じたような場面では、連絡の際に関係者へお詫びのひとことを添えておきましょう。
皆様に急な変更をお詫び致します
英語ビジネスメールでは理由なきお詫びやお礼は不要ですが、この手の(理由のある)お詫びの一言は重要な要素です。
変更済み、すでに変更されている
すでに変更が加えられている(変更された状態になっている)ものは、change の過去形 changed で表現できます。名詞で表現するなら change の過去分詞 changed を形容詞的に使って表現できます。
動詞の過去形 changed が目的語に取る語が、過去分詞の形容詞的用法 changed の係る名詞になります。
変更済みデータを教授に提出した
「alter」は部分的変更を表現する語
alter は通常「少しの変化」を表します。「一部変更」「部分変更」のようなニュアンスで、 alter の訳語も往々にして「一部変更」などのように訳されます。つまり partial change とほぼ同義です。
我々の取引先は、契約内容を一部変更した
alter は衣服のサイズを変更(というか調整)するという意味でも用いられます。衣服に関する文脈では、change はたいてい「着替える」という意味合いで用いられます。
alter はもっぱら動詞で、名詞としては alteration が用いられます。
より適切・適正になるように直す(修正)
不十分・不適当と思われる箇所を改める、より適切な内容になるよう手を加える、という意味合いを含む「変更」は、change とはまた違った語で表現できます。
「modify」はちょっとした修正
modify は、何かを少しだけ修正してよりよい方向へ向かわせるさまを表現できます。
多くの場合は計画・意見・法律・立ち居振る舞いなどを修正するという文脈で用います。ビジネスシーンでは機械や道具の改造・改良という意味合いで modify の語が使われることがあります。
その装置を個々のユーザーに合うよう修正することができる
「correct」は誤りの修正・是正
correct は、正しくない箇所・間違っている箇所を指摘した上で正す、というニュアンスの修正を表現します。make right と言い換えることもできます。
いわゆる修正の意味だけでなく、言葉(発言や発音)の訂正の意味でも使われています。
教師は生徒らの発音を訂正した
会議の後、問題点を修正した
情報の誤りを正す(訂正)
「訂正」は、誤りを正しく直すこと、特に言葉や文字、文書の誤りを正しくすることを表します。
「amend」は法的文書の訂正
amend は、文章中の言葉を変えること、特に法律や法的文書における言葉を訂正する際に使われます。
12行目、「man」は「person」に訂正したほうがいい。
「revise」は印刷物の訂正
revise は、改善するために再考したり変えたりすることを表します。特に、本や辞書など、印刷物の文章を変えるときに使います。「訂正」や「改訂」が定番の訳語です。
明日までに資料の訂正をお願いしてもいいでしょうか?
その辞書は1999年に出版され、2010年に改訂された
TBR(To Be Revised)
ビジネスシーンでは TBR という表現が用いられることがあります。これは、To Be Revised(要訂正)を略した頭字語と解釈できます。
ただし、To Be Read(未読)の略である可能性もあります。脈絡に応じて慎重に意味を見定めましょう。
より良い内容へと高める(改良)
「改良」とは、悪いところを改め、前よりも良くすることです。「修正」や「訂正」との違いとして、間違いを正すだけに留まらず、良いことを新しく付け加えることが挙げられます。
「improve」は改良の意味で使える基本的表現
improve は一般的には「改良」「改善」「進歩」などと訳される語です。すなわち、「より良くする」という意味で広く用いられる表現です。
improve は大抵の場合 make better と言い換えられます。
improve は日本語の「改良」「改善」に近いニュアンスで使えますが、「良くない部分を潰す」「悪い箇所を改める」というようなニュアンスは特にありません。
我々はあなた方が提案した改良方法を検討した
これらのサンプルは改良品ですか、それともすでに私達が知っている品ですか
「enhance」は圧倒的に改良して高める
enhance は「高める」「充実させる」といった意味で用いられる動詞です。すでに品質は良好といえるモノについて、質・量・内容などを、より一層の高みに引き上げるようなニュアンスを含みます。改良・改善の程度は improve よりも上といえるでしょう。
我々はチェック機能を改良して、小さなミスを防ぎます
「polish」は文章に磨きをかける(推敲)
polish は「磨く」という意味の動詞です。日本語と同様、比喩的・抽象的な表現でも用いられます。特に「(文章を)推敲する」という意味で用いられることがあります。
polish の過去分詞(形容詞用法)である polished は、文章の推敲に限らず、「上品な」「洗練された」という意味合いでも多々用いられます。
「elaborate」も推敲の意
文章の推敲を意味する語としては elaborate (on ~) も挙げられます。やや硬い形式張った表現です。
elaborate には「精緻に作り上げる」という意味合いもあります。「計画を練る」(elaborate on a plan)といった言い回しでも用いられます。推敲というよりも「練る」「練り上げる」と捉えた方がよさそうです。