日本語の「どうでした?」あるいは「いかがでしたか?」という一言は、さまざまな場面で使える汎用の質問フレーズです。感想を訊ねたり、状況や結果を訊ねたり、評価を求めたり、問う内容に左右されません。しかし英語ではそうはいきません。
英語では質問対象やその具体的内容によって主語や動詞あるいは疑問詞を適切に選ぶ必要があります。語彙の選択を誤ると質問の趣旨が正しく伝わりません。
日本語の「どうでした」はいったん思考から除いて、場面ごとに英語ではどのように訊ねたらよいか確認してみましょう。英文そのものはどれも簡単なフレーズです。使い方のコツが分かれば難しくはありません。
まずは「何を尋ねるのか」を明確に意識する
適切な英語フレーズを探す第一歩は、日本語表現に対応させる考え方を脱して、英語そのものの意味から英語表現を構築することです。
これは初歩でもありますが同時に究極でもあります。感覚をつかむまで地道な努力を要しますが、くじけず進めていきましょう。
疑問符は how と what があり得る
日本語の「どうでしたか」に該当する質問は、英語でいう how (どのように)、および what (何を)の両要素どちらも表現できます。
英語で訊ねる際には how と what は区別されます。まずは質問内容がどちらに区分されるべき内容なのか意識して疑問詞を使い分けましょう。
「どう?」と聞く質問フレーズは、たいていは how で表現できます。その中に what で訊ねるべき種類の質問が紛れ込んできます。
「どう思う?」は what
たとえば、議論の場などで自分が意見を述べてからその意見に対する考えを相手に問う場合、What do you think ~? のような訊ね方が適切です。
これについてどう思われますか
日本語なら、この場面でも「いかがでしょうか」と質問できます。英語で表現する際の考え方のコツは、「これについて何を考えますか」=「この件に関してあなたが考えることは何でしょうか」というように質問することです。
もし、自分の見解について How did you think? のように訊ねたとしたら、それは相手の意見を訊く(「あなたはどう思いますか」)フレーズではなく、自分の見解にどのようにしてあなたはたどり着きましたか(あなたはどうやって考えを出しましたか? という奇妙な質問になってしまいます。
場面別「いかがでしたか」
how とwhat を具体的にどう使い分けるか、場面ごとに考えてみましょう。ついでにカジュアルな(やや略式の)表現とフォーマルな(丁寧な)表現の違いも見てみましょう。英語の表現の勘所がつかめてくるはずです。
感想をたずねる時の聞き方
どうでしたか
How was it ? は最もシンプルで広範に使える基本フレーズです。相手の立場に関係なく使えますが、丁寧さの度合いはややカジュアルです。
すでに体験し終えた事柄に関する質問なので時制は過去形です。
いかがでしたか?
同じく感想を訊ねる際に使える基本フレーズです。誰に対しても使えます。How was it ? に比べるとやや丁寧な表現で、フォーマルな場面にも使えます。
飲食店などで評価を求める場合
お店で食事やサービスの感想を訊ねる場合、「どうでしたか」(いかがでしたか)という問いの真意は「十分に堪能していただけたでしょうか」という確認です。
ご満足いただけたでしょうか
~はお楽しみいただけましたか
いかがでしょうか
How is everything? は飲食店などでも感想を求める際のフォーマルな表現としてよく用いられますが、その他の場面でも「どうでしょうか」の意味でよく使われる表現です。対象を限定せず、というよりも総体的な評価を求めるフレーズとして使えます。everything (万事)が単数扱いなので is を伴う点に注意しましょう。
ご期待に添えましたでしょうか
「期待どおりでしたか」と訊ねる、やや丁寧な表現。それ(it)は貴方の期待したところのものだったでしょうかと訊く内容で、how は疑問詞ではなく関係副詞の扱いです。
状況・様子をたずねる時の聞き方
「~の様子はいかがでしたか」と質問する言い方でも how と what の使い分けは留意する必要があります。
どんな様子でしょうか?と訊ねる場合は what が基本です。「何事か?」の感覚で捉えると理解しやすいかもしれません。
様子はどうでしょうか
ここで How does it look like? と訊ねると、「どのようにして見えますか」という質問と受け取られてしまいます。
結果をたずねる時の聞き方
物事の結果を知りたくて訊ねる場合、How was it? のような問い方でも趣旨は伝わるでしょうけれど、より具体的に「結果はどうでしたか」のように質問した方が意思疎通が捗ります。
たとえば What is the result (of ~)? のように訊ねると、結果について訊ねていることを明示できます。場面によっては result (結果・結末)の代わりに outcome (成果・収穫)の語を使ってもよいでしょう。
ご検討の結果はいかがでしたでしょうか。
I am wondering ~ のような形をとると質問が婉曲的になり、より丁寧なニュアンスを表現できます。
日本語で省略されている要素を意識しよう
日本語は主語を省いて表現できる言語です。「日本語には主語がない」とする見解もあります。時制も厳密ではなく、多少ブレても文章は破綻しません。
ところが英語では主語+動詞は文章に必須です。対象に応じて主語も変われば時制も適切に表現しなければなりません。
日本語は、ただでさえ文法的な曖昧さを享受できる言語です。しかも、そんな日本語を母国語としてほぼ無意識的に使いこなしている日本語ネイティブスピーカーは、英語の持つ文法上の規則の理解にかなり手こずります。英語と日本語を切り離してしまって「英語は英語として」学び直す、という考え方が実は一番の近道なのかもしれません。少なくとも、日本語を手がかりに考えていては中々解決しない種類の英語表現があるという点は意識しておきましょう。