「微妙」「微妙な」「微妙に」と英語で表現する言い方

日本語では「微妙な」「微妙に」といった表現がとかく便利に使えます。英語では subtle あたりが日本語の「微妙」に近い語彙といえそうですが、文脈によってうまく対応する語は違ってきます。

日本語の「微妙」も、「微妙に食い違う」「微妙な問題」「微妙なニュアンス」「微妙な出来映え」「出来るかどうかは微妙なところ」という風に、文脈によってニュアンスが微妙に違います。その辺を意識しつつ、上手な英語表現を探ってみましょう。

「微妙に(少しだけ)違う」という風に表現する言い方

動詞に係る副詞として「微妙ズレている」と述べる場合の「微妙」は、ほんの少し・わずかに・僅差で・若干といった意味合いがもっぱらです。

slightly

「少し」「わずかに」といった意味なら、副詞 slightly が「微妙に」の意味合いを無難に表現できます。

A and B are slightly different.
AとBは微妙に違う

subtly

subtly は形容詞 subtle の副詞形で、「若干」「かすかに」といった意味で、slightly と同様「微妙に」の意味合いで使えます。繊細さを感じさせるニュアンスが多分にあり、ややカタい響きもあります。

In most cases, the criminal impersonates the buyer’s solicitor in a masked or subtly changed email address — […]
たいてい、犯人は偽装メールアドレスもしくは微妙に本物とは違うメールアドレスでもって買い手の法務弁護士になりすます
―― Financial Times, JULY 14, 2017

「微妙な(複雑な)心理状態」という風に表現する言い方

名詞を修飾する形容詞として「微妙な」と表現する場面では、「複雑」「言葉にしづらい」「いわく言いがたいような部分のある」といったニュアンスを含む場合が多々あります。

日本語の「微妙」に近い語彙としては subtle が挙げられますが、場面に応じて delicate のような表現を選んでもよいでしょう。

subtle

subtle は「微細な」「緻密な」という意味、および、「言葉にできない」「つかみづらい」といった意味があります。

いわく言いがたい、名状しがたい、何とも言えない、というような繊細なニュアンスを表現できる言い方です。日本語の「微妙」の持つニュアンスにも通じるところがあるといえそうです。

It’s frustrating when I can’t get the subtle meaning of English words.
英単語の微妙な意味合いを理解できないときはもどかしいものだ

subtlety

subtle は形容詞ですが、副詞の subtly もよく使われます。さらに名詞の subtlety も「微妙さ」「微妙なもの」といった意味でよく用いられます。

subtlety of mind
心の機微

delicate

delicate (デリケート)は日本語では「繊細な」と訳されることの多い語で、細かく複雑に入り組んでいる様子を指します。

一言ふた言では容易に説明できない状況や、扱いに細心の注意を要する事柄などを形容できます。

The reporter stepped into that delicate problem.
その記者は例の微妙な問題に切り込んでいった
I’m in a delicate situation right now.
微妙な立場に立たされている

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complicated

complicated は日本語でいえば「複雑な」に対応する語です。状況が入り組んでいる・込み入っているため容易には言い表せないといった意味合いの「微妙さ」が表現できます。

He and I have a complicated relationship now.
いま彼とは微妙な関係になっている

mixed feelings

mixed feelings は、気持ち・感情の複雑さ、雑多な感情が入り交じった心境を表現する慣用的な言い回しです。いわゆる「複雑な心境」というやつです。

I have mixed feelings about our new leader.
新しいリーダーに関して微妙な気持ちでいる

mixed は感情に限らず複数種類からなる(混在している)状況を形容する語として使えます。雑多にゴチャ混ぜになっているニュアンスがあります。

unclear

unclear は「不明瞭」「不確か」「はっきりしない」といった意味の語で、どっちつかずの返答を「微妙な返事」と表現するような場面の「微妙さ」を表現できます。

Her answer to my proposal was unclear.
僕のプロポーズに対する彼女の答えは微妙なものだった

「微妙な(良いとも悪いとも言いにくい)出来」という風に表現する言い方

なんだかビミョー、と述べるような文脈における「微妙」は、良い・悪い、好き・嫌いといった端的な判断を下しにくいといった意味合いで用いられます。

「両極端のどちらとも言いにくい」というニュアンスなら、考え方を転じて「並」と表現してしまってみてもよいでしょう。

判断を避けたいという思惑が主なら「どちらとも言いかねる」と言ってしまう手もアリでしょう。

mediocre

mediocre は「平凡な」「凡庸な」「並の」といった意味の形容詞です。

良いとも悪いとも言い切れない(可もなく不可もなくといった)感を表現するには手頃に使えます。

My test score was mediocre.
テストの点が微妙だった

I can’t say.

「どう思う?」と評価を求められて、言葉に迷う(言葉に詰まる)状況で「ちょっと微妙・・・・・・」と述べるような場面では、I can’t say. と回答する手もあります。何も言えないと述べて良い・悪いといった評価を回避するわけです。

評価を求められて I can’t say. と返答する方法は、基本的には避けるべき、最終手段です。基本的には(ひどい出来だったとしても)何かしら良い点を見つけて It’s good. と評価してあげる、難点があれば褒めた上で指摘する、という姿勢を持ちたいものです。

I can’t really say. といえば「あまり言えない」「なかなか言えたものではない」というような軟化したしたニュアンスにできます。 It’s hard to say. 、It’s difficult to say. と表現して「できない」ではなく「言及し難い」「言いにくい」というニュアンスにするのもよいでしょう。

「まだ微妙な(判断しかねる)ところ」と表現する言い方

答えがない、まだ答えが出ていない、判断しかねている、といった状況を示す意味の「微妙」は、「あやふや」と言い換えてみましょう。

iffy

iffy は不確かでアヤフヤな状況、疑わしい・怪しい状況を形容する語です。結果や答えがどうなるか(本当に)予測できない状況や、一抹の不安が残る状況などを示すにはちょうどよい表現です。

That’s iffy. という風に言い切る形で述べると、疑念や不安を濃厚に感じているニュアンスが出てきます。一抹の不安を感じているとか五分五分かなと感じている程度なら That’s a bit iffy. という風に程度を軽く表現しましょう。

Yes and no.

質問されて「自分でも回答が分からない」という場合は Yes and no. という言い回しで返答する手があります。「どちらとも言える」といったニュアンスで、どっちつかずな状況を述べる言い方です。

質問に対する Yes and no. という返答は、それだけでは話が何も広がらない、質問した側にとっては不本意な返答です。回答を保留するフレーズと心得た上で、その理由を補足するようにしましょう。

? Did you like the movie?
映画は気に入った?
? Yes and no. I liked the music, but the story was a bit lame.
微妙なところ。音楽は好きだけどストーリーがお粗末だったかなって

Maybe, maybe not.

yes and no に似たニュアンスを醸すフレーズとしては Maybe, maybe not. という言い方も挙げられます。

Maybe, maybe not. 「たぶん、たぶんだけど、ダメかも」といって予防線を張りつつ否定的見解を示唆するような言い回しです。ちょっとダメかも路線が濃厚な微妙さを表現できます。

? Are you coming with us this weekend?
今週末、一緒に来る?
? Maybe, maybe not. It depends on what my mom says.
それが微妙なの、お母さんがなんて言うかによる

It has not been decided.

決めごとがなかなか進まず宙ぶらりんになっているような「微妙さ」を表すのには、特別なフレーズなどを使うよりはそのまま説明してしまう方が良いかもしれません。

It has not been decided. というと「それはまだ決まっていない」と端的に表現できます。

have not made up one’s mind

まだ答えが出ていない、決意が固まっていない、という意味での「微妙な」状態のことは have not made up one’s mind という言い方で説明できます。

She hasn’t made up her mind about whether to keep going on.
彼女が続けるかどうかはまだ微妙である

I’m not sure yet.

まだ確定ではない、まだ決めていない、という場合には I’m not sure yet. という言い方が使えます。カジュアルな表現だと言えるので、使う場面には注意が必要です。

また言い方によっては、「行けたら行く」のように多分に否定の意味を含んでいるようにも聞こえてしまうので、さっぱり言い切るようにしたり「すぐ答えられなくてごめん」のようなセリフを補足するとコミュニケーションが円滑になるでしょう。

A: You wanna go out tonight?
今夜出かけない?
B: I’m not sure yet, but let me check.
ちょっと微妙、でも確認させて

「う~ん、微妙(ムリ)!」と表現する言い方

日本語の会話表現としては、つとめて穏やかに否定・拒絶する表現として「微妙」と言う場合があります。

誘いを婉曲的に断ったり、否定したりする意味での「微妙」は、婉曲的に断る表現として考えるとよいでしょう。

I don’t know about that.

良いよね?良いと思わない?? という風に同意を求められたものの、同意しかねる、実際べつに良いとは思えない、というような状況で、角が立たないように返答する場合、I don’t know about that. というフレーズが使えます。

I don’t know about that. は文字通りの意味では「それについては知らない」といったところですが、暗に「それはどうかなあ(、違うんじゃないかなあ)」という思惑を込めて伝えられます。

I’m not sure about that. とも言い換えることができます。

? Isn’t this hair awesome!?
この髪型サイコーだと思わない!?
? I, I don’t know about that.
ん~、び、微妙かな

not so great 、only so-so

not so great は「そんなに素晴らしいというわけではない」という微妙さ加減を表現する言い方です。

only so-so は「まあまあといったところ」というような意味合いの表現です。

not so great も only so-so も、どちらも「ダメ( bad )とは言わないが賞賛したいとも思わない」という塩梅で、好意的な印象が希薄、どちらかといえば否定的な見解を抱いているニュアンスを醸します。

ドチラの表現も、日本語において否定的な意味合いで「微妙」と述べる場面の大部分において、ぴったりハマります。

Everyone says this movie is the best, but to me, it’s only so-so.
みんなこの映画がスゴイっていうけど、個人的には微妙なんだよね

「微妙な(気まずい)空気」と表現する言い方

「微妙な空気」「微妙な気持ち」といった言い回しで「微妙」という表現はよく耳にしますが、それはつまりどんな空気かというと「気まずい感じ」「なんとなく居づらい雰囲気」というような空気だと言い換えられるでしょう。

awkward

awkward は「気まずい」という状況を表現する基本的な語です。「不器用な」「ぎこちない」「落ち着かない」といった意味もあります。

Since the teacher scolded him, the classroom was filled with an awkward atmosphere.
先生が彼を叱ったので、教室は微妙な雰囲気になってしまった

uncomfortable

uncomfortable も「気まずい」「心地悪い」といった意味で使うことができます。awkward よりも不快に思っている様が強調される単語です。

Why do you stare at me like that? It’s making me uncomfortable.
なんでそんな風に見てくるの?微妙な気持ちになるんだけど…

 




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