いわゆる「英会話教室」のレッスンは「マンツーマンレッスン」の形式と「グループレッスン」の形式に大きく分けられます。
世間一般の認識としては、マンツーマンレッスンの方がグループレッスンよりも充実していて有利、という見解があるのではないでしょうか。確かにそうした側面もありますが、だからといってグループレッスンがダメというわけでも決してありません。
マンツーマンレッスンとグループレッスンの両方を試したことのある筆者が、多少の独断と偏見を交えつつ、両レッスンのメリットとデメリットについてお答えします。
目次
マンツーマンとグループレッスンの主な違い
生徒数が違う
当然ではありますが。
- マンツーマン → 先生と生徒の1対1で行います。2人きり。
- グループレッスン → 先生1名に対して複数名の生徒が授業に参加します。少ない所で2~3人、多い所では4~8人が主な人数構成といえるでしょう。
授業料にも差が生じがち
これも常識的な見解とはさほど違いません。
- マンツーマンレッスン → 比較的割高になる傾向あり
- グループレッスン → 比較的格安になる傾向あり
マンツーマンレッスンは先生を独占するわけですから、数名で授業を受けるグループレッスンと比較すればどうしても割高になります。その分、授業内容を個人に柔軟に変更できるといった利点もありますが。
授業内容の違いは直結しないかも
授業の形式や進め方は、色々とありますが、マンツーマン VS グループレッスンという構図では区分しにくいように思われます。
英会話スクールのレッスン形式は、先生が知識を伝授する講義型のレッスンと、会話を通じてスピーキング・リーディングを鍛える会話型のレッスンに大別できます。
グループレッスンは講義型レッスンが導入される傾向はやや強め、とは言えるかもしれません、
ただ、マンツーマンレッスンだから講義型を取ることはないとは言い切れませんし、グループレッスンだから講義型を取るとも言えません。
むしろ、教室によって、講師によって、受講生によって、いろいろな要素で適した形式が採用されると考えたほうがよいでしょう。
マンツーマンレッスンのメリット
発言回数が増える
生徒は自分のみ。発言の機会はグループレッスンの比ではありません。
授業の進め方や進み方も自分次第です。良かれ悪しかれ。
グループレッスンでは自分が発言しなくても 《誰かが回答するだろう》 という安心感が根底にあり、尻込みしたまま授業を終えてしまうこともできます。「自分はレッスン仲間のマンツーマンレッスンに協賛した立会人か」と自問したくなるような状況にもなり得ます。
マンツーマンレッスンでは先生が矛先を向ける相手は自分だけ。人任せにして逃げることはできません。これは英会話スキルだけでなく会話の積極性を身につける訓練にもなります。
この意味で、消極的で尻込みする傾向のある人はマンツーマンレッスンの方が成果が得られやすいと言えるでしょう。
私(筆者)もニガテな話題では逃げ腰になる傾向を自覚していましたが、マンツーマンレッスンを通じて消極性が克服できたと感じています。
疑問をその場で解消できる
レッスンでは自分の知識にない事柄も出てきます。疑問はできるだけ即時的に解消するのが学びの鉄則。マンツーマンレッスンでは、レッスン中でその場で「それはどういった意味でしょう?」などと質問して疑問を解消できます。
疑問からの質問が本質的な英語理解へ繋がることもあります。
グループレッスンでは、他の受講生の発言途中で自分の質問をぶつけるというのはなかなかできないものです。人によっては平気でやってくる人もいますが……、多くの人はその場ではやり過ごしてしまいます。
私などはマンツーマンレッスンでも、最初の頃は知ったかぶりをして会話を進めようとしていました。何か恥ずかしかったので。でも、先生はそんな知ったかなんてアッサリ見抜くものです。余計に恥ずかしかった記憶があります。
自分のレベルに合ったレッスンが毎回受けられる
グループレッスンは複数名の受講生を相手にする都合上、自分のレベルとは一致しない授業が展開される可能性が避けられません。もちろん英語習熟度に応じてクラス分けされますが、それでも完璧に避けることはできません。
マンツーマンレッスンなら見据える生徒は自分ひとり。先生は授業を通じてしっかりと自分のレベルを判断してくれますし、得意不得意に応じた配分調整なども柔軟に対応してくれます。
特定のテーマに関する話題はスラスラ~と話せるのに、それ以外の分野の話題になるとエビのように逃げ腰になる、というタイプの人もいるものです(私です)。そんな時には個人に合った考え方を指南してくれるマンツーマンレッスンならではのありがたみを痛感できます。
得意不得意が特になくても、たとえばTOEFLで達成しなければいけない点数があるというような特定の課題を見据えているなら、マンツーマンレッスンを通じて特訓してもらうことも可能でしょう。
他の生徒の目を気にしなくて良い
世の中にはどうしても人の目が気になってしまうタイプの人がいます(私です)。
グループレッスンでは、同級生の流暢な発言と自分を見比べて劣等感を抱いてしまったり、うまく言葉にできずマゴついて自己嫌悪したり、あるいはレッスン内容に理解できない部分があるのに知ったかぶりしてしまったり(私です)というケースがあり得ます。
その点、少なくともマンツーマンでは、恥をさらす相手は先生だけです。これは見方によってはかなり楽です。だって先生に醜態さらすのは当然のことですから。
「自信」は英会話スキルに密接に関係する要素です。自信をもって胸を張って発言できるかどうかは、英語の(巧拙にかかわらず)コミュニケーションの成否を左右します。
グループ内で自分が話せる方だと認識できた場合にはポンポンと言葉が出てくるのに、やたら流暢に英語を話す人がいるとチンアナゴみたいに引っ込み思案になるという人もいます(むろん私です)。
人目が気になる性向はグループレッスンを通じて克服する方が本質的かもしれませんが、そんなのぜったい無理という印象が頭をよぎる方は、まずはマンツーマンレッスンで改善への準備を整えましょう。
マンツーマンレッスンのデメリット
準備不足が授業の「丸損」を招く
マンツーマンレッスンは良かれ悪しかれ自分次第です。準備やモチベーションの度合いが授業の充実度を左右します。
マンツーマンレッスンは生徒の状況に応じて柔軟に教授内容を変更できます。これは逆に言えば、前回の授業をまったく復習しておらず丸で頭に入っていなかったとしたら、改めて前回の授業をやり直すハメになるということでもあります。
所定の履修コースが想定されている授業では、復習が不十分なら授業そのものに支障をきたしてしまいかねません。
グループレッスンなら、今回は何とかやり過ごして次回で挽回するという取り組み方もあるかもしれません。マンツーマンレッスンではそれができません。
長所が伸びて欠点がおろそかになりがち
レッスンにおいて先生は基本的に生徒に合わせてくれます。好きな話題を掘り下げるということは英会話上達のひとつのセオリーでもあります。
しかしながら、これが続くと、毎回話している特定テーマについては英語知識が豊富になり、違うテーマについてはぜんぜん話せない、という極端な事態が起こりえます。
私はマンツーマンレッスンで担当してくれた先生と同じサッカー好きということが分かってから、ずっとサッカーの話題ばかりしていました。結果、サッカーに限っていえば英国パブでも現地スタジアムでもどんと来いくらいの自信がついたものの、その他の話題では依然としてチンアナゴのように引っ込む、という状況がしばらく続きました。
モチベーションの維持が難しい
マンツーマンレッスンでは生徒(受講生)は自分だけ。周りに比較対象はいません。そのため、自分のレベルを相対的に把握しにくいという側面もあります。
先生も自分のレベルに合わせて会話レッスンを進めてくれます。するとどうなるか。今くらい話せていれば問題ないんじゃない?という満足感を抱きがちになります。
満足感はそれ自体は悪くないものですが、後に英語スキルの不足を感じた場合の揺り戻しがヒドくなります。
できるだけ英会話レッスンの他に自分の英語スキルを客観視できる手段を用意しておきましょう。これは実力アップの定点観測としても役立ちます。
グループレッスンのメリット
グループレッスンにもマンツーマンレッスンでは見出しにくい利点・メリット・長所があります。
同志との出会い+切磋琢磨
英語学習のつらさや悩みを共有できる仲間は見つけにくいものですが、共感し合える仲間がいると頑張る意欲も湧いてくるものです。
グループレッスンでは共にレッスンに励む仲間と出会えます。同じレッスンで苦楽を共にする仲間。これは意外と心強いものです。
レッスン後に皆で復習し合えば、学習補完の成果も格段に違ってきます。
英会話レッスンでは生徒間の相互インタビューをよく行います。これが日本語では質問しないであろう内容に及んだりして、結果、いつも以上に仲が深まったりすることがままあります。
英語レッスンを受けに来る人は世代も職業もさまざまです。人との交流が好きな人にはうってつけの環境かもしれません。
比べることで自分が見えてくる
人の個性や得手・不得手は他者を通じて見えてきます。自分と同レベルの仲間がいると、自分は何が得意で何が出来ていないのかといった分析が格段にはかどります。
みんな基礎レベルは同じ程度だけれど、話せる内容に違いがあるような場合。たとえば、
- あの人はキッチリした英語を話すが発音は日本人くさい
- あの人は全身で表現力豊かに話すが文法的に少し怪しい
- 自分はサッカーの話題は意気揚々と話すが他はまるで……
こんな素朴な所感は日々の英語学習の意識の向け方に意外と効果を及ぼします。
ライバルの存在は学習意欲の維持・向上につながる
おおむね似たレベルの生徒が集い切磋琢磨することは学習効率にもけっこうな効果を及ぼします。グループレッスンを受けたからといって絶対に出会えるような代物ではありませんが、ぜひ「好敵手」と書いて「とも」と読むような、あるいは「仲間」と書いて「ライバル」と読むような、そんな成長を競う相手を見つけてください。
クラスによっては英語レベルのかけ離れた受講生と一緒になることもあります。
その人が英語のデキる人なら「憧れの先輩」として、あるいは「打倒すべき目標」として、こっそり到達目標に見据えましょう。もちろん相手も成長するのでこちらは全力で頑張らねばなりません。
その人が英語のデキない人だったら先輩として何事か伝授する立場になるのもアリです。センパイの役回りを取る=「教わる」から「教える」立場に立って学ぶことは、より広範で網羅的かつ詳細で正確な知識を身につけようという意識を奮起させてくれます。
グループレッスンのデメリット
疑問がその場で解消しづらい
そのまんまマンツーマンのメリットの裏返しではありますが、グループレッスンの場合は他の生徒が言った単語や表現が分からなかったときに雰囲気的に聞きづらいという点が地味に痛い部分です。
教室の約束事として禁じられていなければ、カットインして質問してもよいのです。でも事あるごとに話に割って入るようになってしまうと、それは確実に邪魔です。大局的に見れば自分にとっても進行遅延などのデメリットが及びます。
対策としては、授業中にメモをとっておき授業後に復習することが最良でしょう。授業後に先生に質問できる機会があれば利用しましょう。
授業の進行に関わるような部分は臆せず質問した方がグループレッスン全体の進行を円滑にする場合もあります。
コミュ力や空気を読む力が問われる
先生はできるだけ公平を期して、生徒の発言回数もなるべく均等になるとう立ち回っています。でもそれにも限界があります。猪突猛進な生徒とエビのように逃げ腰の生徒がいたら、先生がどう頑張っても発言機会の差が出てしまいます。
及び腰の受講では、本来期待できる成果も満足に得られないという場合が十分にあり得ます。
これは、自分が及び腰のエビでなくむしろ猛進する猪の側だった場合でもやはり同様に気をつけなくてはなりません。他の生徒が揃ってチンアナゴ状態だからといって、まるでマンツーマンレッスンのように振舞ったなら、その時に得られたものは大きかったとしても、後のレッスン時間が他の生徒のフォローに大きく割かれることなります。
初動は焦らずじっくり検討すると吉
英語や英会話のレッスンは、数限りないほどの種類がありますが、向き不向きは人それぞれ、単純一概にメリットやデメリットを求めて判断しようと思っても難しい側面があります。プライベートレッスンもグループレッスンもしかり、独学もしかり。
レッスン形態別のメリットやデメリットに加えて、各教室の特徴や個性、さらに先生の個性といった要素が上乗せされてくる点も顧慮しないわけにはいきません。
ありがたいことに、昨今の英会話教室は、たいてい無料の体験レッスンを用意してくれています。ある程度の一般論を踏まえたら、次は実際にレッスンを体験受講してみましょう。導入前の検討は慎重すぎるくらい慎重になって損はありません。
他の選択肢と合わせて相互補完を試みる
英会話の学び方は市街地の英会話教室に足を運ぶタイプのレッスンだけとは限りません。いわゆる「英会話カフェ」や英会話サークル、その他いろいろと英会話を実践的に学ぶ機会はあります。
うまくやり方を組み合わせることで、マンツーマンレッスンとグループレッスンのメリット・デメリットを補う学び方も実現可能です。
- 英会話の基礎はマンツーマンレッスンでじっくり
- 集団での会話の練習として英会話カフェを別途利用してみる
- 英会話の基礎はグループレッスンで仲間と切磋琢磨
- 会話の回数・頻度の底上げとしてオンライン英会話を利用してみる
英会話カフェもオンライン英会話も手頃な値段で利用でき、併用のお試しとしても手頃です。
レッスンでは積極性が何よりも重要
半ば個人的見解ではありますが、英会話教室でのレッスンを通じて最も痛感したことは積極的に発言していくことがスピーキング能力向上には不可欠ということです。
これはマンツーマンでもグループレッスンでも同じです。自分から話しに行くという姿勢が、意思疎通にとっても英語能力の向上にとっても極めて重要といえます。
日本人は全体的にシャイな気質で、言いたいことがあっても明言するよりは雰囲気に頼りがちです。その結果、英会話でも人前での発言が苦手という傾向が出がちです。
ここはひとつ「英語文化は日本語と違って発言してナンボ」と認識を新たにしてみましょう。どうせ英会話初心者だし間違えるのは当然、くらいの軽い気持ちで発言できるよう気持ちを切り替えられれば、それだけで英会話の向上度合いはかなり違ってくるかもしれません。