英会話の学習は実践こそが最大最強の学習法です。積極的に会話の機会を設けて、実践練習を重ね、そこで得られた知見や反省点を積み上げて行きましょう。
英語の学び始めの段階は、実践練習に手を伸ばすだけでも相当な勇気が要ります。しかし、そんな物怖じは不要です。英語が上手か下手か、なんて全然気にせず果敢に挑んでいきましょう。
しかしながら、「相手の英語が聴き取れなかったら」「相手の言っていることが理解できなかったら」という不安はなかなか払拭できるものではありません。そこで、「ごめん、よく分からない」と相手に伝える表現を、まずは覚えてしまいましょう。
→英語初心者でも好印象を!定番でハズさない英語自己紹介のコツ
目次
「分からない」にもいくつか種類がある
一口に「英語が分からない」といっても、どういう風に分からないのかは状況によって違います。分からない状況を打開するには、どのように分からなかったかを相手に正しく伝達する必要があります。
- 発言が聞き取れなかった
- 自分の知らない語彙だった
- 発言の意図が汲み取れない
- 適切な英語表現が見つからない
等々。
この「分からない」のニュアンスが誤解なく表現できる準備ができていれば、どんな場面でも恐れる必要はありません。
「英語に不慣れ」と開き直ろう
英語がペラペラでないという状況を打開する道は、今から練習を積んで克服するしかありません。デキるふりしてその場をごまかしても打開はできません。
実践を通じて英会話を学ぶためには、へたなプライドを守ろうしてその場しのぎの取り繕いに走ろうとする気持ちを捨てて、自分は初心者と開き直ってしまう心構えが第一に必要です。
英語はコミュニケーションのための重要なツールですが、逆に言えばひとつのツールにすぎません。英語力の有無が人間性を左右するわけではないと割り切ってしまいましょう。
私(筆者)は現在、英語の翻訳の仕事をしていますが、これまで数多くの(さまざまな種類の)「英語が分からない」場面に遭遇してきました。どれも一応は「乗り越えてきた」と言ってよいだろうとは思います。筆者のささやかな体験談も、「英語が分からない」場面の具体的状況の実例として、いくらか参考にして頂けるものがあるのではと思います。
英会話における「分からない」体験談
筆者には、高校時代にオーストラリア、大学時代にアメリカへの短期語学留学経験、社会人になってからタイへの1年ほどの長期滞在経験があります。その中で経験し、乗り越えてきた「英語が分からない」経験の実例を紹介します。
訛っていて聴き取れない
オーストラリアで目的地の空港に降り立った夜のことです。これからホームステイさせていただくおうちのホストマザーと対面しました。高校1年生だった筆者にとって外国人と話すのはほぼ生まれて初めてのことで、緊張でガチガチです。 Nice to meet you などといった決まりきった挨拶を経て、こうした会話が始まりました。
疲れてる?
はい、少し
フリートークの往復が成功してホッとしたのも束の間、ホストマザーはにこやかにこう言いました。
レッツタイクアファイタイ!
筆者は不意打ちを食らって固まりました。えっ? とも言えず固まります。するとしばらくしてパシャパシャとフラッシュが焚かれ… ようやく気づいたのが、ホストマザーは
レッツテイクアフォト、写真を撮りましょう
と言っていたのだ、ということです。
オーストラリアの英語は訛っているということは聞いていましたし、十分に準備もしていったのですが、まさか初対面時に全く聴き取れないほどの訛りに遭遇するとは思ってもみませんでした。
1ヶ月半の滞在を終えて帰る頃にはかなり喋れるようになっていました。聴き取れなかったらどんなときでも Pardon me? (これは英・豪の英語で、米では Sorry? が一般的です)と素早く聞き返せば乗り越えられるということも習得しました。しかし初日のこの経験のことは、30代半ばとなった今でも強烈に覚えています。
速すぎて聴き取れない
大学時代にアメリカの大学に短期語学留学したとき、筆者たちメンバーは大学の寮に滞在しました。実はこのとき事務方の手違いがあって、筆者も含めた女子が男子寮に、男子が女子寮に入ってしまったのです。
ある日、筆者の滞在している部屋に電話がかかってきました。出ると若い女性の声です。最初、電話の相手はひどく怒っている様子で、何を言っているのかほとんどわかりません。
Sorry? Sorry? と聞き返しました。しかし、速すぎて半分ぐらいしか聴き取れません。しかたがないので、「私は日本人なのでもう少しゆっくり喋ってくれないか」と頼むと、「私はそこに住んでるはずの○○の彼女なんだけど、あなた何者? どうしてそこにいるの?」といったことをゆっくり話してくれました。ああやっぱりそういうことね…
そこで筆者も、「私は交換留学生でこの寮に滞在しているんだけれども、手違いで男子が女子寮に、女子が男子寮に入れられてしまった。いまこの階に男子はいないし、○○くんのことはまったく知らない」と落ち着いて話しました。すると相手は納得してくれたようで、取り乱してごめんね、良い滞在になりますようにといって電話を切りました。
いろいろな意味で冷や汗をかきましたが、なかなか面白く、かつ心温まるハプニングとして心に残っています。相手が取り乱しているときさえ、きちんと「分からない」と伝えれば通じる端緒をつかめる、ということを学んだ一件です。
自分がうまく喋れない
アメリカでの短期語学留学時の2つめのエピソードです。滞在中に本屋でどうしても欲しい洋書を見つけたのですが当時在庫切れか何かでした。当時は現在のように Amazon などもそれほど普及していなかったので、日本の自宅まで送ってほしいという申込の電話をしなければなりませんでした。
住所や電話番号などを伝えるとき、日本語のローマ字を正確に伝える必要がありました。手間をかけて申し訳ないと思ったので、最初に「私は日本人で英語があまり上手でないので、ゆっくりしか喋れないけどすみません」と伝えたのです。すると担当の人はとても丁寧に根気よく聞いてくれ、ゆっくりと確実に全てを復唱して確認してくれました。
帰国してしばらくして、無事に筆者が伝えたとおりの表記で本が届いたときには感激もひとしおでした。「うまく喋れないこと自体はまったく問題ではない、それでも伝えようとすることや、英語が完璧ではないということを相手にきちんと断る気遣いが大事なのだな」と学んだ経験です。
わかるフリをして自爆
タイ滞在時、衣料品店のレジで英語が分からなくて困っている様子の日本人女性がいました。彼女は「タイ語はわかりますか?」「英語は?」と訊かれても腰の引けた態度で首を横に振るばかりでした。
これはだめだ! このままでは日本人の印象が下がってしまう! と思った筆者は、慌てて即席通訳を買って出ました。しかし、相手のタイ人店員さんの英語はタイ語訛りなうえにペラペラとすごく早口だったのです。正直、何を言っているのかほとんどわかりません。
どういう文脈であったかは、「ちょっと分からないんですが、なんの話ですか?」と店員さんに直接確認すべきでした。しかし、なんとなくカッコつけてその場に入った筆者はカッコつけを解くことができず… 日本人女性が主張していた「キャンペーンがどうのって言ってる、私必要ないのに」という内容を鵜呑みにして、「彼女はあなたがたのキャンペーンは必要ないと言ってる」と言ってしまいました。
何か違った文脈だったらしいことは、店員さんの憮然とした反応を見たら理解できましたが、時すでに遅し。もはや「実は分からなくて」と言い出せる雰囲気ではなく、筆者はそそくさとその場を立ち去りました。
このエピソードは今でも思い出すだけで恥ずかしくて、ちょっと叫びたいような気分になります。筆者は当時すでに翻訳者としての仕事を開始していたのですが、それにあぐらをかいていたのだと思います。非ネイティブとして大事なのは、どれだけ英語を知っているかではなく、どれだけ謙虚に素直に「分かりません」と言えるかどうかなのだと痛感した体験でした。
英語で「分からない」場面の代表4つとその対処法
英語の何がどのように分からないのか、なぜ分からないのかを分析し、そのニュアンスを英語で表現できるように準備しておきましょう。分析して自分なり・場面ごとの「分からない理由」が見つかったら、それぞれに対して例文を練り、ストックしておきます。よくある4つの場面・理由ごとに対処法・例文を紹介します。
1.知らないから分からない(don’t know)
英語自体が分からないというよりも、話題になっていること、尋ねられていることについての情報・知識を持っていないために分からない場合です。これは、この話題が仮に日本語でなされていても分からず、場合によっては何か質問し返したくなるはずです。
ここで気をつけてほしいのは、「I don’t know」はときにぶっきらぼうで無責任に聞こえることがあるということです。知らないと言いたい場合には、「I’m not sure」と表現するのが無難です。
クジラとイルカの違いはなんですか?
そうですね… すみません、海の哺乳類には詳しくないんです
※ちなみにクジラとイルカは、「漠然と大きさで分けられている」そうです。
IPS細胞についてどう思いますか?
すみません、iPS細胞ってよく知らないんです。どういったものなのか教えていただけますか?
2. 聴き取れなくて分からない(couldn’t catch)
話題になっていることや文脈について情報・知識を持っていて理解しているけれども、たまたま聴き取れなくて分からない場合です。
聴き取る、はcatchで表現するのが一般的です。
すみません、聴き取れませんでした。もう一度言っていただけますか?
※聴き取れなかった場合全般に使えます。
すみません、聴き取れませんでした。ゆっくり話していただけますか?
※速すぎて聴き取れなかった場合に有効です。Could you speak more slowly? はこういうときによく紹介される表現ですが、場合によっては少し嫌味に取られる場合もあるので、上の言い方のほうが無難です。
3.理解できなくて分からない(can’t understand)
聴き取れているけれども、その単語を知らないために意味が分からない、または、文脈も使われている単語も理解できているけれども、相手がどういった意図でそう言っているのか分からない場合です。
そこでバックドラフトが起きたんだ
すみません、バックドラフトってなんですか?
※ちなみにバックドラフトとは、火災の現場で起きる爆発現象のことです。
傷つけたら申し訳ないんだけど、言わなきゃな、ええと…
すみません、どういう意味ですか?
※こういう持ってまわった言い方をするのはどちらかというとイギリス人に多い印象です。
4.英語でどう言うのか知らなくて分からない(don’t know how to say)
言いたいことがあるけれども、それを英語でどう言うのか分からない場合です。
うーん、ええと、すみません、これを英語でなんて言うのか分かりません
英語が「分からなかった」体験を英語学習に生かそう
次も同じ状況に陥らないために、この場面を英語学習に生かしましょう。相手が急いでいないこと、過大な負担でないことを確認しながら協力をお願いし、教えてもらったらきちんとお礼を伝えられると好印象を与えられます。
すみません、少しお時間ありますか?
すみません、英語についていくつか質問しても構いませんか?英語を勉強中なんです
1.知らないから分からない(don’t know)
○○ってなんなのか教えていただけませんか?
○○ってなんですか?
2.聴き取れなくて分からない(couldn’t catch)
もう一度言っていただけますか?
どう発音するんですか?繰り返していただけますか?
3.理解できなくて分からない(can’t understand)
○○ってどういう意味ですか?
4.どう言うのか知らなくて分からない(don’t know how to say)
○○を英語ではなんと言うのですか?
英語が苦手でも恐れずに、いつものあなたのままで
英語が苦手でも、恐れる必要はありません。英語が完璧でないために相手に悪印象を与えるのは、分からないことを隠そうとして分かるフリをしてしまったり、モジモジしたり、笑ってごまかしたりした場合だけです。筆者のように英語を使った仕事をしている人間でさえ、うっかり背伸びした場面では相手に嫌な印象を与えてしまった苦い経験があります。ここから言えるのは、「大事なのは英語力そのものではない」ということです。
あなたのありのままの姿で、背伸びせずに、ただ伝えたいという熱意と誠実さだけを持って英会話に臨めばそれでいいのです。悪印象を与えないばかりか、「この人は日本人なのに積極的だな」「英語ができる人だな」という好印象を与えることができるでしょう。
失敗は進歩の糧。怖がらずにどんどん実践を重ねていってください!