英語の形容詞は、語形も用法も幅広くてややこしい、その意味で英文読解のポイントになる要素です。形容詞の係り方や品詞そのものを読み誤ると、文章全体を誤読してしまいかねません。正しく読めるようになっておきましょう。
「英語は習うより慣れろ」がモットーの方でも、品詞の扱いについては文法的解釈を手がかりに把握・理解しておいて損はありません。形容詞の語形や用法のパターンをマスターすれば、語形や用法なんていちいち気にしなくてもスッと英語が分かるようになってきます。
形容詞の基本的機能と用法
形容詞の基本的性質を一言でいうなら「名詞を修飾する語」と言えるでしょう。形容詞には様々な用法があり、また名詞や動詞まで形容詞として使われることがあります。
形容詞の2つの役割
形容詞は、名詞を限定・説明するなどして修飾する役割があります。そして、名詞以外を修飾するのが副詞です。
形容詞には大きく分けて、2つの役割があります。1つ目は形容詞の限定的用法。名詞を限定する役割です。2つ目は形容詞の叙述的用法。こちらは名詞を説明する役割です。
限定的用法と叙述的用法は、形容詞の配置によって見分けられます。
- 名詞の前→限定的用法
- 名詞(+動詞)の後→叙述的用法
形容詞の限定的用法
限定的用法とは
限定的用法(attributive use)は、名詞の性質・属性・具有性を限定します。つまり、色や形や性格といった、「ソレはどのような代物なのか」を規定します。
たとえば a white dog (白い犬)という場合、white (白い)は形容詞の限定的用法です。
限定的用法は、使いみちが限られている用法という意味ではありません。「白い犬」と述べることで犬の毛色を限定する、つまり黒犬や茶褐色の犬である可能性を排除する言い方です。
限定的用法を重ねる順番
限定用法では、名詞の前に形容詞をいくつか並べることができます。そして、並べる形容詞の順番はほぼ決まっています。
- 限定詞:a、my、this、first
- 評価:clever、lovely、beautiful
- 大きさ:big、small
- 年齢:young、old、new
- 形:round、triangular
- 色:red、blue、white
- 所属:Japanese、European、Christian
- 素材:cotton、wood、metal
私の賢い大きくて白い犬
可愛らしく小柄な若い女性
この並び順は特に規則性の手がかりが見出しにくくて厄介です。まあ、この順番通りでないからといって、相手に伝わらないことはありません。あまり順序にこだわらず、ゆくゆくは感覚的に覚えてしまうつもりで多くの英文に接してゆく学び方が穏当でしょう。
限定的用法のみに使う形容詞
形容詞の中には、限定的用法のみにしか使えないものがあります。辞書では、attributive use(限定用法)の頭文字をとって【A】等と記されています。
- 名詞の意味を強める形容詞:only(唯一の)、mere(ほんの)、just(たった)など
- 「主な」と限定する形容詞:main(主な)、prime(第一の)など
- 語尾に er がつく形容詞:elder(年上の)、former(前者の)、upper(上の)など
- 語尾に en がつく形容詞:wooden(木でできた)、broken(壊れた)など
- 語尾に ly がつく形容詞:daily(毎日の)、weekly(毎週の)、monthly(毎月の)など
※特に時間の感覚を表す形容詞です。 - それ以外:medical(医学の)、financial(金融の)、precious(前の)など
形容詞の叙述的用法
叙述的用法とは
叙述的用法(predicative use)では、名詞の意味を説明します。叙述的用法では、限定的用法のように形容詞を重ねて使うことはできません。重ねて使う場合には、and や but などの接続詞を使います。
彼女は気難しいけれど、心根は優しい
形容詞を名詞の直後に置く場合
叙述的用法の場合、形容詞の位置は名詞+動詞の後、もしくは名詞の後です。形容詞を名詞の直後に置く場合は限られてきます。
名詞が something や someone などの場合
何か温かいものが飲みたい(hot が形容詞)
名詞の直前に all、any、every、no を置く場合
今日は全ての部屋が満室です(available が形容詞)
数量を表す名詞を修飾するとき
長さ10センチ(long が形容詞)
叙述的用法のみに使う形容詞
叙述的用法のみに使われる形容詞は、状態を説明することに特化しているものです。例えば、「~している」など状況を表す形容詞です。a から始まることが多いのが特徴です。
辞書では、predicative use(叙述用法)の頭文字をとって【P】等と記されています。
- asleep(眠っている)
- awake(起きている)
- ashamed(恥じている)
- afraid(恐れている)
限定的用法と叙述的用法で意味が異なる形容詞
形容詞には、限定的用法と叙述的用法のどちらでも使えて、しかも用法によって意味が違ってくる語があります。
certain
- 限定的用法:ある~、ある一定の
a certain moment(ある瞬間) - 叙述的用法:確かだ、確信して
I am certain that ~(私は~だと確信している)
present
- 限定的用法:現在の、当面の
my present job(現在の仕事) - 叙述的用法:出席している
Some students are present.(何名かの生徒は出席している)
ill
- 限定的用法:悪い、不徳な、不吉な
an ill news(悪い知らせを受け取った) - 叙述的用法:病気で ※sick と同様の意味。
I became ill.(病気になった)
late
- 限定的用法:最近の、近頃の
in late years(近年) - 叙述的用法:遅い
I was late for work yesterday.(昨日、仕事に遅れてしまった)
able
- 限定的用法:有能な
She is an able teacher.(彼女は有能な教師だ) - 叙述的用法:可能だ、できる
She was able to carry all bags.(彼女は全てのバッグを持ち帰ることができた)
訳語はガラリと変わっても、基幹イメージは変わらないので、英語の言語感覚に慣れてくれば特に意識せずに使いこなせるようになるでしょう。
形容詞の語形パターン
接尾辞で見分ける
品詞を見分ける際に便利なのが「接尾辞」です。接尾辞は単語の末尾に添えられて特定の意味を加える要素があります。ちなみに接尾辞がつく対象となる「単語の中心的な部分」を「語基」と言います。
形容詞と一緒によく使われる接尾辞があります。-ive、-ical、-ious、-ful、-y、-ar、-ic、-able、-ible です。これらが語尾についているときには、基本的に形容詞であると考えてよいでしょう。
- -ive(~の傾向がある、~の性質を持つ)
attractive(魅力的な)、native(本来の) - -ical(~に関する)
musical(音楽の)、geometrical(幾何学の) - -(i)ous(~の多い、~に似た、~の特徴がある)
generous(気前の良い)、dangerous(危険な) - -ful(~に満ちた、~の性質がある)
beautiful(美しい)、forgetful(忘れやすい) - -y(~の状態)
happy(幸せな)、jealousy(嫉妬した) - -ar(~の性質の)
popular(人気の)、familiar(見慣れた) - -ic(~の、~のような)
economic(経済の)、heroic(英雄の) - -able、-ible(~できる、~するに足る)
enjoyable(愉快な)、eatable(食べることのできる)
名詞に -less が付いた語は、「~のない」「~を欠く」という意味の形容詞と判断できます。また、動詞に -less が付いた語は、「~しがたい」という意味の形容詞と判断できます。
- -less(~のない、~しがたい)
homeless(家のない)、endless(終わりのない)、ceaseless(絶え間のない)
語尾に -ed がつく形容詞
動詞とおぼしき語彙で末尾が -ed の字になっている単語は、十中八九、動詞の過去形または過去分詞です。過去分詞は、名詞の前後に置かれた場合、形容詞として機能します。これを「分詞の形容詞的用法」といいます。
過去分詞も、名詞の前と後、どちらに置くのかで意味が変わってきます。
1語の場合は「単独修飾」として名詞の前に置かれる
修飾語として1語だけ単独で用いられる分詞は「単独修飾」といい、名詞の直前に置かれて《分詞+名詞》という並び順で用いられます。
退職後の生活
年配の男
予約された席
もとの動詞が自動詞である場合は大抵《完了》《状態》について述べる形容詞として機能します。訳文では「~した」と訳せます。もとの動詞が他動詞と判断できる場合は《受身》の意味合いが主になるといえます。訳文では「~された」と訳されることが多いでしょう。
複数語の場合は「集団修飾」として名詞の後ろに置かれる
形容詞(を中心とする修飾語)が複数語のカタマリを成して名詞に係る場合、「集団修飾」と呼ばれ、名詞の後に《名詞+分詞その他》という並び順で用いられます。
色刷りの本
日本で話されている言語
名詞の語尾に -ed を付けることも
名詞に -ed が付いた語は、「~の特徴を持つ」という意味の形容詞と判断できます。この形は分詞と似ているため、「擬似分詞」とも呼ばれます。
形容詞として使われる名詞は、もともと、属性や特性を示すものです。
ヒゲ面の男
羽飾りのついたドレス
ハイフンで2つの言葉をつなげて作る複合形容詞でも、擬似分詞は頻繁に使われます。
親切な女性
短気な教師
腕の長い熊
-ing で終わる形容詞
現在分詞は、動詞の原形に -ing を付けた形をしています。名詞の前後に置き、名詞を修飾します。形容詞的な働きをするため、「分詞の形容詞的用法」と呼びます。
現在分詞も、名詞の前と後、どちらに置くのかで意味が変わってきます。
名詞の前は単独修飾
現在分詞を名詞の前に置くことを、単独修飾と呼びます。このとき、形容詞は進行や継続を表し、「~している」と訳されます。
わくわくする映画
驚くべき出来事
営業中の会社
名詞の後は集団修飾
現在分詞を名詞の後に置くことを、集団修飾と呼びます。分詞が単独ではなく、補語、目的語などを伴うときに、名詞の後に置かれます。
オフィスで何かを印刷している女の子
私に話しかけている女の子
名詞の形容詞的用法
形容詞ではないのですが、名詞が名詞を修飾する場合があります。例えば、、vegetable soup(野菜スープ)は、vegetable がどんな soup なのか修飾していると考えられます。名詞が形容詞として使われる場合、その名詞は単数形となります。
シルクのシャツ
革のベルト
複合形容詞
名詞等をハイフン(-)を用いて一つにつなげて形容詞として使う場合があります。この形容詞を、複合形容詞と呼びます。
名詞と名詞をつなぐ場合
内容物や材料を示す名詞の場合、ハイフンは使いません。(例 vegetable soup)また、2語で1語とみなされている表現にもハイフンは使いません。 (例 police office、high school、vice president)
名詞の形容的用法の場合と同様に、名詞が形容詞として使われる場合、その名詞は単数形となります。
父の規則、家の掟
3時間のショー
5歳の男の子
名詞と分詞をつなぐ場合
私たちは多くの英語を話す人々を見た
仕事に関連する死についてのニュースを聞いた
形容詞と分詞をつなぐ場合
彼らはみな、よく教育されている
彼は心の広い女の子と出会った
親切な男性は、孤児院に金品を寄付した