英語の名詞は基本的に単数(singular)と複数(plural)を区別して扱います。たいていの場合、単数形と複数形は綴りが微妙に変わりまが、中には単数形でも複数形でも形が変化しない単語(単複同形名詞)があります。
日本語の大抵の名詞は単複同形です。しかしコレが英語の中に登場すると意外と厄介な混乱のタネです。
単複同形名詞として扱われる単語の大まかな区分を把握しておくだけでも、面食らう機会はだいぶ減ります。今のうちに押さえておきましょう。
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単複同形名詞の特徴と傾向
単複同形名詞は、文法上は単数形と複数形とを区別して扱うタイプの名詞なのに、単数形と複数形の綴りが変わらない、という点で特徴づけられます。
単複同形で扱われやすい語彙は、ある程度のパターンに区分できます。
- 基本的に群れ単位で扱われる動物や魚
- 発音上の区別がつきにくい語、発音が面倒くさくなる語
- 比較的新しい外来語
ただし例外は膨大にあって、単複同形名詞の方が少数派だったりするので、完璧な把握を目指すならどうしても個々の事例ごとに確認していく必要はあります。
英語の言語感覚が身について来れば、おおよそ感覚的に判断できる場合も少なくなさそうです。とはいえ最初のうちは知識として把握しておく必要はあるでしょう。
不可算名詞はもちろん単複の区別はない
不可算名詞は、単数形・複数形という区別を設けない名詞です。複数形がなく、常に単数形を取る、ある意味で単複同形名詞に扱いの似る名詞です。
不可算名詞は、ひとつふたつと数え上げることのできない、いわば個体の概念を伴わない名詞です。複数形もなく、数詞や不定冠詞を付ける機会もありません。
不可算名詞をあえて数え上げる場合には、a piece of や a glass of のような単位を示す形容詞句を加えて表現します。
単複同形名詞が多く見られる分野
基本的に群れ単位で扱われる動物や魚
魚や羊のように群れで生息する動物は、単数形も複数形も区別せず扱われる場合が多く見られます。
- deer(鹿) one deer、two deer、three deer
- fish(魚)
- salmon(鮭)
- sheep(羊)
- trout(マス)
おおよそ、狩猟の対象として認識される動物や魚、あるいは、家畜として多頭飼育される動物、といった共通イメージが見いだせるかもしれません。
しかしながら、ニワトリ(chickens)、ヤギ(goats)、ヌー(gnus)等々、普通に単数形・複数形で別の形を取る語の方が多数派です。
漁師さんがしょっちゅう私に魚を沢山くれる
公園に1000頭のシカがいる
発音上の区別がつきにくい語、発音が面倒くさくなる語
英語の複数形は、原則的には、語尾に –s (あるいは -es )の字を加える形で表現されます。
そして、語尾に-s や -es の語を加えても単語の発音がほぼ違わない語、あるいは、s なんか付けると違和感を感じるレベルで発音しにくくなったり間延びしてしまったりするような語は、単複同形になる傾向が見られます。
・means(手段)
・series(シリーズ)
・species(種類)
この「発音しにくいので」という括りは、ちゃんとした基準とは到底言えない大ざっぱな切り口です。とはいえ、ひょっとして単複同形かな? というアタリを付ける手がかりにはなるでしょう。
-ese 型「~人」の表現は該当しやすい
国名・地名に接尾辞 -ese を加えて「人」を指す言い方、すなわち Japanese(日本人)、Chinese(中国人)、Vietnamese(ベトナム人)のような語は、単複同形の場合が多く見られます。
- Japanese(日本人)
- Chinese(中国人)
- Portuguese(ポルトガル人)
- Vietnamese(ベトナム人)
- Sudanese(スーダン人)
ついでに Swiss(スイス人)も単複同形です。
3人の日本人がノーベル賞を受賞した
地名+接尾辞で人を指す言い方が必ずしも単複同形とは限りません。米国人は Americans 、デンマーク人は Danishes と、複数形が別途あります。
比較的新しい外来語
他国語から英語に導入された外来語は、単数形・複数形という英語の規則を逸脱して単複同形になっているパターンが多く見られます。
・sushi(寿司)
・sukiyaki(すき焼き)
・tempura(天ぷら)
・yen(円)
kimono(着物)などは複数形を kimonos と言う場合もあれば、単複同形で複数形も kimono と言う場合もあります。
外来語の複数形の扱いは、バッチリ決まっているとは言えません。今は単複同形で扱われている語も、やがて英語として十分に浸透・定着した後には、複数形が別途編み出されるのかもしれません。
語末に -craft のつく語
単語の語末が -craft の語も単複同形で扱われます。例はごくわずかですが。craft の語そのものも単複同形です。
- craft(船舶)
- aircraft(飛行機)
- spacecraft(宇宙船)
- hovercraft(ホバークラフト)
ついでに、語末が -ware の語も複数形がありません。ただし、-ware は、もっぱら不可算名詞として扱われるためです。
・hardware(ハードウェア)
・software(ソフトウェア)
・ironware(鉄製品)
単複同形の単語が主語になる場合には、動詞を一致させるときに注意が必要です。単語が単数形であっても、複数形を示す数詞などがある場合には動詞も複数形に対応します。