くだもの(fruit)は、形も色も味わいも種類によってさまざまな個性があります。英語には果物の特徴を比喩に用いた表現がたくさんあります。
くだものの端的な特徴や見た目を引き合いに出す表現もあれば、歴史的・文化的背景に基づく表現もあります。思わず「なるほど」と思えると同時に、西欧の果物に対するイメージが見えてきます。
目次
リンゴ(apple)に関する英語表現
リンゴ(apple)は西欧ではかなり古くから栽培され親しまれてきた果物です。フルーツの代表格、ほぼフルーツの代名詞的な存在です。apple を使った慣用句は、沢山あります。
Adam’s apple
のどぼとけ
Adam’s apple は「喉仏」を表します。Adam はキリスト教の聖書に出てくる人物です。このイディオムは、アダムが食べてはいけない禁断の果物(おそらくリンゴであると考えられている)を食べた際に、咽仏につっかえたという逸話から生まれたと言われています。
rotten apple
腐敗した奴
英語のことわざに、the rotten apple injures its neighbor(1人の悪いやつが全体に悪影響を与える)があります。腐ったリンゴ(果物)は、ガスを出して周囲の果物の完熟速度を早めることが由来です。rotten apple は、集団の中で周りに悪影響を及ぼす人、モラルのない人、堕落した人を表します。
the apple of one’s eye
とっても大切な人
the apple of one’s eye は「とってもお気に入りの人」、「誇りに思っている人」を指す言い方です。少し古めかしい言い方で、日常会話で見聞きする機会はめったにないかもしれません。
one は不定代名詞。辞書によっては the apple of someone’s eye あるいは the apple of person’s eye と記載されていることもあります。
美しい娘は彼にとっても自慢である
polish the apple
ゴマすり
apple-polishing で「ゴマすり」、polish the apple で「ゴマスリをする」です。このイディオムは、学生が先生に磨き上げたリンゴを渡してご機嫌取りをしていたことが由来であると言われています。
apple never falls far from the tree
親子は似る
apple never falls far from the tree は、血族における重要な特徴は、通常受け継がれていくことを意味します。日本語では「血は争えない」や「蛙の子は蛙」とも訳せるでしょう。同じ意味のイディオムでは、like father, like son という言い方もあります。
as American as apple pie
いかにもアメリカ的な
apple pie はアメリカでとてもポピュラーなデザートです。イギリスなど他の国でも食べられていますが、特にアメリカを代表する食べ物として見られています。そのため、as American as apple pie で「典型的なアメリカの文化や価値観」を指します。
(As) sure as God made little green apples
絶対確実
sure as God made little green apples は「確実だと述べること」を表します。extremely sure と言い換えることができます。sure の前に as を付けて As sure as God made little green apples とも言います。
彼こそが嘘をついている奴だって確信しているよ
How do you like them apples?
どう思うかね
How do you like them apples? は「どう思う?」と相手に意見を求める際のフレーズです。特に、あまり良くない状況について言及する場合に使います。「What do you think about that?」と同じ意味と考えてよいでしょう。
how about them apples? と言い換えることもできます。
ブドウ(grape)に関する英語表現
ブドウはワイン(ぶどう酒)の原料であり、やはり西欧で古くから栽培されてきた果物です。
英語表現の中では「ブドウ=酒」という認識が随所に見られます。酒を指して grape と言う場合すらあります。
in the grip of the grape
酒の虜
in the grip of the grape は、特にお酒に支配されている状態、つまり酔っ払っている状態を指して使われています。
in the grip of ~ は、良からぬものに支配されてしまっている状態を表現する言い回しです。もっぱら薬物、アルコール、犯罪行為などに関して用いられます。
belt the grape
したたかに飲む
belt the grape は酒を飲みすぎている様子、もしくは、飲み過ぎてべろんべろんに酔っ払った様子を指します。
父親はお酒を飲みすぎる傾向がある
sour grapes
負け惜しみ
sour grapes (すっぱいブドウ)は、自分の望みが叶わなかったため怒ってボロクソに貶すという言動を指す言い方です。
すっぱいブドウはイソップ寓話に基づく表現です。キツネが木に生っているブドウを取ろうとしたが取れず終いで、「どうせあのブドウは酸っぱくてマズい(だから取れなくてもいい)んだ」と負け惜しみを言って去った、という話に由来します。
ただの負け惜しみじゃない。あの仕事は本当に自分にあっていないと思っているんだ
hear through the grapevine
草の根ネットワーク
grapevine は「ブドウの蔓」を指す語であり、蔓のように全方向的に地味に伸びてゆく情報網のたとえです。
hear through the grapevine は「噂を耳にする」という意味の表現です。
バナナ(banana)に関する英語表現
バナナには「ばか」「おかしい奴」といった否定的・嘲笑的なニュアンスのものが少なくありません。バナナ自体は親しまれており、関連する表現も多種多様です。
banana-head
馬鹿者
banana-head はアメリカのスラングで「ばか」を意味します。
banana oil
たわごと
banana oil もアメリカのスラングで、「たわごと」、「戯れ言」を意味します。
banana skin
失態
banana skin を直訳すると「バナナの皮」です。「見苦しい失態」、「恥ずかしい失敗」を表します。
go bananas
いかれる
go bananas には2つの意味があります。1つ目が、「狂ったようになる」、「ばかになる」です。2つ目が「とても興奮する」、「狂ったように怒る」です。go の代わりに be を使って be bananas とも言います。
その光景を見たら、間違いなく君は激昂するよ
top banana
主役
top banana は「主役」や「リーダー」を表す表現です。big cheese とも言い換えられます。ちなみに、主役になれなかった「脇役」や「ナンバー2」は second banana(2番目のバナナ)と言います。
make like a banana and split
別れる
make like a banana and split は「別れ」や「立ち去ること」を意味します。
banana split (バナナスプリット)はバナナの上にアイスクリームなどをのせたデザートです。
この make like a banana and split という言い回しは、「別れ」を意味する split とデザートの banana split をかけた、掛けことば、一種の言葉遊びです。
banana republic
貧国
banana republic はバナナ生産に頼るモノカルチャーの国。つまり「弱い国」「崩壊寸前の国」という意味で用いられる言い方です。
基本的に見下し・軽蔑混じりの表現なので、使用は避けましょう。
サクランボ(cherry)に関する英語表現
小さくて色つやの愛らしい実が生るサクランボは、英語の慣用句でもおおむねポジティブなイメージで使われています。「貴重なもの」というイメージもうかがえます。
cherry-pick
おいしい所をいただく
cherry-pick は、たくさんある人や物のなかから、ベストを慎重に選ぶことです。
多くの調査員は、好ましい情報を選んで使っている
a bite of the cherry
好機
a bite of the cherry は誰もが皆手に入れられるわけではない「貴重な機会」、「良い機会」を意味します。
似たような形の表現に another bite of the cherry があります。こちらは「別の機会」を意味します。another の代わりに a second が使われることもあります。主にイギリスで使われています。
a bowl of cherries
楽しみ
a bowl of cherries は「とびきり楽しい」ことを表すイディオムです。通常、悪い状況を皮肉ったり、面白おかしく言うときに使います。
私の人生は全く楽しいものではなかった
レモン(lemon)に関する英語表現
レモンは厚く硬い外皮と強い酸味が特徴のくだもの。英語のは慣用句にはネガティブな意味合いの言い回しが多く見られます。レモンに恨みでもあるのか?と言いたくなるところですが、きっと恨みがあるのでしょう。少なくとも好印象ではなかったはず。
ただし、レモンに対するボロクソなイメージはアメリカ英語に特有のものだそうで、紅茶王国イギリス英語にはレモンをことさらネガティブに扱う表現はないようです。
lemon
ポンコツ
lemon はバカバカしい人や物を表します。主にアメリカでは「欠陥品」「オンボロ車」など、物に対して使います。一方、イギリスでは「ばか」「ふざけた奴」など人に対して使うようです。like a lemon だと「できそこない」「役立たず」を意味します。
do me a lemon
ウソだろ?
do me a lemon は「まさか」「冗談だろ」という意味のスラングです。誰かの発言が信じられないとき、ナンセンスなときに使います。
何言ってるんだよ!もう食事代は支払っただろう
suck a lemon
失せろ
suck a lemon もしくは go suck a lemon は、怒りや軽蔑を表すスラングです。日本語では「どこかへ行ってしまえ!」と訳せます。主にアメリカやカナダで使われている表現です。
モモ(peach)に関する英語表現
モモの特徴はみずみずしさ、甘美な味わい、ほほに赤みが差したような色味と柔らかさ。英語では大分ポジティブなイメージで扱われています。
peach
すてきな人
peach は、果物の「モモ」という意味の他に「素晴らしい(excellent)」という意味でも使われます。物にも使えますが、人に対して使われるほうが一般的です。peach と聞くと可愛らしいイメージがありますが、女性だけでなく、男性に対しても使われます。
彼のこと知ってる?本当に素敵なの
また、誰かを褒めるとき、感謝するときに you are a peach と言ったりします。
コーヒー持ってきてくれたの?君って最高!
peaches and cream
紅顔の
peaches and cream は、桃色(血色がよい)で健康的な顔色を意味します。
彼女は、桃色で血色の良い顔色を保っている
crazy as a peach-orchard boar
狂気を装う
crazy as a peach-orchard boar は、正気でないように振舞うことを表します。boar は去勢していない、雄豚、雄のイノシシのことです。アメリカの中でも、テキサスなど、主に南の方で使われている表現です。同様の意味のイディオムには、crazy as a loon があります。
彼はどうしちゃったんだ?正気とは思えないような振る舞いだ
オレンジ(orange)に関する英語表現
compare apples and oranges
見当違いの比較
compare apples and oranges もしくは compare apples to oranges は、根本的に全く異なるものを比べることを表わします。リンゴもオレンジも同じような大きさですが、全く異なる果物です。
go gathering orange blossoms
婚活
go gathering orange blossoms は、お嫁さんを探すことを表しています。これは、orange blossom(オレンジの花)が花嫁の純潔を象徴する花であることが由来しています。
イチジク(fig)に関する英語表現
not give a fig
どうでもよい
not give a fig は「興味がない」「どうでもいい」という意味で使われます。古めかしい言い方です。fig の代わりに damm や shit が使われることもあります。
彼が来ても来なくても、どうでもいい
メロン(melon)に関する英語表現
melon
たわわに実った……
melon はスラングで「大きな胸」を意味します。下品な言い方なので、使い時には注意しましょう。
melon head
まぬけ
melon head は「ばか」や「まぬけ」を意味します。idiot person や foolish person と同じ意味です。主にオーストラリア、アメリカで使われています。
banana head も同じ意味で用いられます。中身が軟弱すぎるという点が共通点として挙げられそう。
スモモ(plum)に関する英語表現
plum
とっても素晴らしいもの
plum は、人がうらやむほどの良い(very goodな)事柄を指して用いられることがあります。特に仕事(職業)関連の文脈で用いられるようです。
どうやってそんなに割りの良い仕事を見つけたんだ?
ナシ(pear)に関する英語表現
ナシ(梨)には和梨と洋梨という区分があります。英語で単に梨といえば洋梨を指します。
和梨を英語で表現するなら Asian pear が無難でしょう。特に日本産の梨を指すなら Japanese pear と表現してもよいでしょう。
pear-shaped
メタボ体型
pear-shaped は「ナシ形」ということで、洋ナシのように腰回りが肥え太った体型を表します。
go pear-shaped
頓挫する
go pear-shaped で「計画などが失敗すること」を表します。go wrong と言い換えることができます。主にイギリスで使われている表現です。
計画の全てが失敗したので、上司はそれを取り消した
パイナップル(pineapple)に関する英語表現
the rough end of the pineapple
冷遇される
the rough end of the pineapple は、不当もしくは辛い待遇を受けている状況のことです。主にオーストラリアで使われているフレーズです。しばしば、動詞 get を用いて get the rough end of the pineapple の形で使われます。
ストライキをした後なのに、彼らは依然として不当な扱いを受けている
フルーツ(fruit)に関する英語表現
fruit
実り
fruit はラテン語に由来する語で、元々は「産物」「収益」「収穫して享受できるもの」という語義をもつ語です。
英語では基本的には果物・フルーツを指す語ですが、結果・結実という意味でも用いられます。
たとえば bear fruit は「結果を生み出す」、fruit of one’s labor は「努力の結果」といった意味で用いられます。
彼女はついに、努力の結果を得ることができた
forbidden fruit
禁断の果実
forbidden fruit は、聖書における「禁断の果実」を指す表現です。転じて、「とても魅力的だが(社会的には)許されざること」という物事を指す言い方として用いられることがあります。