「髪型」は英語で hairstyle や hairdo といいます。hairdo は主に髪結い(髪の結い方)を指す語です。では具体的な髪型は英語でどう表現するのでしょうか。
日本語のヘアスタイルの呼び名はたいてい横文字で、英語由来です。英語としても適切な表現が多い一方、日本語の言い方ではイマイチ通じない表現もあります。「角刈り」「おかっぱ」のような日本語表現は対応する英語を見つける必要があります。
目次
髪の長さを表す表現
ショート、ミディアム、ロングは通じる英語表現
髪の長さの程度を示す形容詞表現は、日本語でもショートやロングと言いますが、これは英語でも無難に通じます。
短い髪(ショート)は short、長髪(ロング)は long 、長短どちらでもない中間的な長さは medium と表現できます。
「ショートボブ」(short bob cut)のようにヘアスタイル名を形容して表現する言い方は、英語でも一般的であり、よく使われます。より具体的な髪型が表現できます。
セミロングは和製英語
日本語ではミディアムを「セミロング」と呼ぶこともありますが、この「セミロング」は英語ではほぼ全く使われない表現です。
国語辞書(たとえば三省堂大辞林)は「セミロング」を和製英語として紹介しています。
semi- は「半分」を意味する英語の接頭辞で、semi-long と表現しても意味は通ります。semi long という表現が使われた例も、皆無というわけではありませんが、極めて稀といえる部類です。
ちなみに、semifinal (セミファイナル)は一般的に用いられる表現です。
セミロングは、shoulder length hair (肩くらいの長さ)と表現すると万全です。あるいは、単にミディアム(medium)と言い換えてしまってもほぼ通じるでしょう。
ベリーショートも和製英語
ベリーショートも英語ではヘアスタイルの用語としては用いられません。和製英語と見なすべき表現です。
物事を very short と形容する言い方そのものは一般的であり、さまざまな文脈で多用されています。
ベリーショートに対応する英語表現としては extra short があります。
カット方法に関する表現
カットの特徴を表す形容表現も、髪の長さの表現同様に各ヘアスタイルと組み合わせて使えます。美容院でどんなふうに切ってほしいのか、イメージを詳しく伝えるためにも知っておきたい表現です。
おかっぱ ≓ ボブ
いわゆるおかっぱ頭は bob あるいは bob cut と表現できます。いわゆるボブカット。
bob は「短く切る」という動詞としても使えます。
ボウルカット
おかっぱ頭にも色々ありますが、特に前髪から後頭部まで同じ長さに切り揃えた髪型は bowl cut(ボウルカット)といいます。ボウルは「お椀」を指す語です。
マッシュルームカット
ボウルカットの一部は、頭部のシルエットがマッシュルーム(きのこ)型ということで mushroom cut(マッシュルームカット)と呼ばれることもあります。
ボウルカットとマッシュルームカットの区別は多分に曖昧です。敢えて区別するなら、ボウルカットは全体の裾の長さを揃える髪型であり、基本的には後ろの襟足を潔く切り揃えるので、襟足付近のシルエットを柔らかい曲線に仕上げる切り方をマッシュルームカットと呼び分けることはできるかもしれません。
ワンレン
髪の長さを全体的に揃える髪型を、日本ではワンレングスヘアー(略してワンレン)と呼ぶことがあります。英語でも one-length haircut のように表現することがあります。
「全て同じ長さ」という意味で haircut of uniform length と呼ぶこともあります。
刈り上げ
いわゆる刈り上げは、英語では undercut がおおむね対応する表現といえます。
undercut そのものは「下方を切り取る」という意味の語で、髪型の関連では主にツーブロックやモヒカンのような(襟足やサイドを刈り上げる)髪型の刈り上げ部分を指します。
こめかみ部分の刈り上げスタイル
側頭部をこめかみ部分までしっかり刈り上げるスタイルを、temple undercut と呼ぶことがあります。temple は「こめかみ」を指します。
髪を下ろしていると何の変哲もないボブやミディアムワンレン、髪を上げるとうなじ部分が大胆に刈り上げてある、という髪型は nape undercut といいます。nape は「うなじ」の意。
部分的に極端に短く刈って地肌を露出させ、それで模様を描くこともあります。
ツーブロック
上部はある程度の毛量を残して左右は刈り上げる、いわゆる「ツーブロック」は、そのまま two-block と表現して通じることもあるようですが、英語では一般的に shaved sides と表現します。
フェードカット
裾から頭頂部に近い方へ徐々に刈り上げの長さを増していく(襟足に近いほど短く刈る)ような刈り上げ方を「フェードカット」といいますが、これは英語でもそのまま fade cut で通じます。
髪を少し長めに残して刈り上げるフェードカットは特に high fade と呼ぶことがあります。長くも短くもない程ほどの長さは mid fade、かなり短い場合は law fade、さらに地肌が見えるくらい極端に短い場合は skin fade といいます。
フェードカットは男性向けのクラシカルな理容スタイルであり、理髪店の髪形の代名詞的なスタイルです。その意味で barber cut と呼ばれることもあります。日本語でも「バーバースタイル」がオトコの定番ヘアスタイルとして紹介されることがままあります。
坊主頭(丸刈り)
いわゆる「丸刈り」は英語で buzz cut(バズカット)といいます。buzz は「ぶ~ん」という擬音表現(オノマトペ)で、主に蜂の羽音やブザー(buzzer)の音などを表現しますが、ここではバリカンの駆動音を表現しています。
バリカンを使って刈るということで部分的な刈り上げ(undercut)を指す場合もあります。buzz cut はバリカンを使った髪型の総称といってもよいでしょう。とはいえ、基本的には、単に buzz cut といえばバリカンで全体的に刈り上げたボウズ頭を指します。
率直に「短く刈った髪」という意味で close-cropped hairstyle のように表現する言い方もあります。
角刈り・スポーツ刈り
坊主に近い髪型に「角刈り」があります。角刈りのスタイルは英語圏では「船乗りの典型的な髪型」というイメージを伴い、crew cut のように呼ばれます。crew は「船員」のことです。
military cut 、GI cut 、flattop cut などのように呼ばれることもあります。それぞれ「軍」「米兵」「航空母艦」を指す語。いずれにしても武人を連想させます。
角刈りの角をすこし丸めた「スポーツ刈り」という髪型もありますが、英語では特に区別する言い方がなく、スポーツ刈りも crew cut に含めて表現されます。
長さの注文などを細かく伝えたいときは、バリカン(razor または clipper)のアタッチメントを指定すると良いでしょう。No.1 が日本でいうところの 3mm、No.2 が 6㎜ です。
スキンヘッド
毛髪を剃って地肌をさらす、いわゆるスキンヘッドは、英語では shaven head (剃った頭)と表現しましょう。
英語にも skin-head という表現はあるのですが、これはチンピラ・ギャング・愚連隊というような暴力的危険因子のイメージを込めて用いられる表現です。何かと語弊があります。
なお禿頭(ハゲ)は bald head といいます。毛髪が1本残らず失われてツルツルの無毛スキンヘッドになった状態は shinny bald head のように呼ばれます。
「巻く系」スタイリングの英語表現
パーマ
いわゆるパーマは、英語でも perm と表現できないことはありませんが、髪を巻いた場合は curl と表現した方がしっくり来る方が多いでしょう。ちなみに perm も curl も動詞として使えます。
髪の毛巻いたの!
パーマの強弱は形容詞で表現できます。
- うねり感のある毛先パーマは wavy
- がっつり毛を巻くパーマは curly
アフロヘアーは Afro-textured hair 、Afro hair、または単に Afro と表現できます。
ストレートパーマ
いわゆるストパー(ストレートパーマ)は、英語でも straight perm と表現できます。「ストパーをかける」と動詞的に表現する場合は単に straighten と表現できます。
彼女ストパかけたみたいよ
パンチパーマ
パンチパーマは戦後日本の理容業界で考案・命名された特殊な髪型です。特に海外で普及しているわけでもなく、対応する英語表現は確立していないといえる状況です。
日本のヤクザ文化を紹介する文脈では punch perm と表現している例が見られます。the Japanese Punch perm というような特殊な扱いです。
縦ロール
いわゆる縦巻きロール型の髪(パーマ)を指す英語表現としては spiral curls が挙げられます。
直訳するなら vertical curly hairstyle ですが、spiral curl の方が自然な表現です。
ただし、spiral curl と言うと細くチリチリ気味のカールが想起されがちです。必ずしも、日本人が「縦巻きロール髪」で想像する(日本の少女マンガなどで描かれる)(「私立なんちゃら女学院」的な)(お蝶夫人や姫川亜弓のような)縦ロール髪と一致するとは限りません。
いわゆるひとつの「あの縦ロール」
日本の少女マンガ的な縦ロールを念頭に置くなら、loose curly hair、あるいは smooth curly hair のように表現すれば、ニュアンスはだいぶ近づくでしょう。しかしながら、これも「あの縦ロール」を一意に特定できる言い方というわけではありません。
なお、ゆるふわな縦巻き髪は、多分に「花嫁姿に似つかわしい髪型」と認識されている節があります。
特別なヘアスタイルと位置づけるべきなのかもしれません。日本における文金高島田のような。
外巻き・内巻きを言い分ける場合、外巻きは curl outward 、内巻きは curl inward と表現できます。
「結わく系」スタイリングの英語表現
ウェディングやパーティルックで女性が行う、襟足を束ねた髪型を。updo または upstyle といいます。
ポニーテール
ポニーテールは、そのまま ponytail と表現できます。おおむね日本語のポニテと同様です。
結う位置を下げて(うなじに近づけ)単なるまとめ髪に近い場合もあります。そうしたポニテは特に low ponytail と呼ばれることもあります。
結う位置を敢えて側方にずらし、房を肩にかけるようにする髪型は、side ponytail といいます。
結う位置を下げて、側方にずらして、さらにゆるく巻いたり編んだりした髪型(curl / braid low side ponytail)は、ゆるふわ縦ロールと同様、ブライダルヘアスタイルの定番です。
ツインテール
いわゆるツインテールは和製英語であり、英語ではいまいち通じません。対応する英語表現としては、左右で髪を束ねる「二つ結び」を指す bunches が挙げられます。
bunch は元々は「房」を意味する語で、a bunch of grapes(ひと房のブドウ)のように使われる表現です。左右一対になるので複数形で bunches と表現する必要があります。
ただし bunch も頭のてっぺん付近で結う髪型を指すとは限らず、肩付近まで結う位置を下げた髪型を指すことが多々あります。さらに、必ずしもまっすぐ髪とは限らず、ふたつ結びにして編んだりおだんごにしたりする髪型も含みます。
pig tails あるいは piggy tails と表現する言い方もあります。特に小さい女の子のチョロッとしたふたつ結びを指すことが多いようです。
ツインテールは、日本のサブカルチャーにおける「萌え文化」の要素として海外の一部界隈に伝わっています。マンガ・アニメ・アキバ関連に造詣の深い方なら、the Twintail hairstyles を理解してくれる期待は持てます。
おだんご
おだんごヘアは bun といいます。
あえてゆるくまとめたおだんごは messy bun、あえて側方にずらしたおだんごは side bun といいます。
髪を半分下ろして半分だけまとめ上げるスタイルを ハーフアップ(half-up)と言いますが、ハーフアップにしておだんごにした髪型は half-up + bun で hun と呼ばれたりもします。
お下げ、三つ編み、編み込み
三つ編みや編み込みのような髪形のことは braid と呼びます。braid は「編んだ髪」を指す名詞としても、「編み込む」という意味の動詞としても使えます。
一般的な編み込みは特に french braid と呼ばれることがあります。裏編み込みは dutch braid 。いわゆるフィッシュボーンは fishtail braid と呼びます。
いわゆる「おさげ」は、三つ編みのふたつ結びという意味で braid bunches と表現できます。ただし、braid bunches は側頭部から編み込み始める髪型も含むので、日本のお下げ髪とバッチリ対応するとは言い切れません。
ドレッドヘアは dreadlocks といいます。 lock は髪がほどけないほど絡まった状態になることを意味します。
「固める系」スタイリングの英語表現
スパイキーヘア
髪を立たせて毛先のツンツン尖らせたヘアスタイルは、spiky と形容されます。
通称ウニ頭と呼ばれるパンクな髪型も該当しますが、それに限らず、毛先感を際立たせた髪型全般が spiky hairstyle と呼ばれます。
モヒカン刈り、ソフトモヒカン
モヒカン刈りは、アメリカ英語では Mohawk haircut の呼び名が主流です。イギリス英語では Mohican haircut の呼び名が主流。
Mohawk(モーホーク)も Mohican(モヒカン)も、どちらもネイティブアメリカンの部族の呼称に由来する語です。日本にはイギリス発のパンク・ムーブメントを通じて(イギリス経由で)入ってきたためイギリス英語に寄っているのだとか。
モヒカンあるいはモーホークは、意外と幅広いスタイルを含みます。必ずしも、革ジャンと肩パットを着用しないと様にならないとは限りません。
ソフトモヒカンという呼び名は和製英語です。対応する英語表現は特にありません。ソフトモヒカンもモヒカンに含まれるかもしれません。あるいはツーブロック、フェードカットに該当するかもしれません。
リーゼント
リーゼントという呼び名はイギリスの地名「Regent」に由来しますが、これは日本で命名された独特の呼称です。英語圏では通じません。日本語でリーゼントといって想起される髪型はおおむね pompadour(ポンパドール)に該当します。
エルヴィス・プレスリーの髪型は、ポンパドールに ducktail(ダックテール)を組み合わせた髪型です。
ポンパドールは前髪を高く盛って後頭部にかけてなだらかに低くなるようにセットする髪型です。ポンパドールそのものは男性の髪型とは限らず、女性の前髪を盛る髪型を指すことも多々あります。
ダックテールは髪を撫でつけるようにして側方から後頭部の真ん中へ寄せる髪型です。前髪付近はポンパドールになりがちです。
日本で 1970年代から1980年代頃にかけて流行したリーゼントスタイルは、エルヴィスと同様 pompadour と ducktail の合わせ技が主流でしたが、今日「リーゼント」といって想起されるヘアスタイルはポンパドール単体を指しているといっても過言ではないでしょう。
ポンパドールは必ずしもプレスリー的な髪型を指すとは限らないため、特に rockabilly Pompadour hairstyles のように表現される場合がままあります。
オールバック、横分け、七三分け
前髪から全体的に髪を後ろに撫でつける、いわゆるオールバックは、英語では slicked back hairstyle と呼ばれます。all-backは和製英語です。
前髪を左右に分ける「横分け」は、side parted hairstyle といいます。左右の配分・比率は問わない言い方であり、いわゆる七三分けも side parted hairstyle に含まれます。7:3 のような比率を指定する英語表現は特にありません。
毛先のニュアンスに関する表現
shaggy(シャギー)
日本語のいわゆる「シャギーカット」は、毛先を不揃いにして軽さを演出する切り方を指します。英語の shaggy は本来「くしゃっとした」「毛むくじゃらの」といった意味の語です。
多くの場合、結果的に同じイメージに落ち着くようですが、伝え方・伝わり方次第では全く違ったニュアンスで伝わりそうな懸念が残ります。
layered(レイヤー)
髪の下方を長めに残し、頭頂部に近い髪を短めにして、髪の層が際立つようにカットする髪型をレイヤー(ド)といいます。これは英語でも同様で layered と形容されます。
choppy(チョッピー)
髪を束ねて切ったようなザックリした毛束感のあるカットは choppy と形容されることがあります。
blunt(ブラント)
毛先をザックリ切りっぱなし風にしてラフ感を演出するカット方法を blunt といいます。
blunt は「無遠慮」「ぶっきらぼう」といった意味合いの形容詞です。
前髪に関する英語表現
前髪のある髪型
前髪は、アメリカ英語では bangs 、イギリス英語では fringe と呼ぶ言い方が主流です。
いわゆる「前髪のある髪型」は、hairstyles with bangs と表現できます。
前髪があると別人みたい!
前髪ぱっつん
日本のいわゆるパッツン前髪は、単に bangs と呼ばれていることが多く、一意に特定できる英語表現はなかなか見つかりません。
blunt、fringe、straight といった形容詞は、パッツンを形容する語として多く用いられている割合が高めです。特に blunt bangs はかなりパッツンに近い意味で用いられているといえます。
前髪を立てる(バングアップ)
前髪をちょっと立てる髪型は「バングアップ」と呼ばれることがあります。これは英語の bang up を借用した語でしょう。英語でも前髪を上げる髪型は bang up といえば通じます。
日本で(女子の)バングアップというと、前髪を左右に分けるようにな形で立てるスタイルを念頭に置きますが、英語で bang up というと全体的に後方に流す(オールバックに近い)髪型も含みます。