2016年9月現在、来るアメリカ大統領選挙への世界の注目は日増しに高まっています。時事的な話題は実用的な英語の知識も獲得でき、英会話のネタとしても最適です。英語学習に活かさない手はありません。
2016年アメリカ大統領選で特に注目を集める存在といえば、共和党から出馬した候補者ドナルド・トランプ(Donald Trump)でしょう。元不動産王という圧倒的な経歴、強烈な人柄、歯に衣着せぬコメントでメディアを賑わせています。簡潔でインパクトの強い言葉を放つことでも有名です。Make America Great Again! (アメリカを再び偉大に)のスローガンはその典型でしょう。
トランプ氏の過激な言動は、しばしば大言壮語と受け取られ、物議を醸しています。イギリスの一般紙ガーディアン(the Guardian)は「 Lyin’ Trump:a weely fact-check」(嘘つきトランプ:週刊事実確認)と題するシリーズ記事(!!)を設け、トランプ氏の発言の虚飾の度合いに目を光らせています。
米軍の軍事予算拡大について
トランプ氏は9月7日、自分が大統領になったら2013年に行われた歳出削減を撤回して軍事予算を拡大すると宣言しました。
The lies Trump told this week: from military spending to his tax returns
“As soon as I take office, I will ask Congress to fully eliminate the defense sequester and will submit a new budget to rebuild our military. It is so depleted. We will rebuild our military,” – 7 September, Philadelphia
「大統領に就任したらすぐに、歳出削減の全面的撤回を議会に要請し、軍を立て直すための新予算を提出する。予算は枯渇している。我らの軍を立て直すんだ。」-9月7日、フィラデルフィアにて
ところが、氏は2013年には歳出削減(the sequester)に賛成の立場を示していたようです。the Guardianはこう報じています。
This pledge to restore military spending cut by the so-called sequester of 2013 is a reversal: that year he told Fox News that the budget cuts were not deep enough.
いわゆる2013年の歳出削減によって削減された軍予算を元に戻すという宣言は矛盾している。その年、彼はFOX Newsに予算の削減が十分でないと語っているのである。
氏は予算を削減することは国を偉大にするために必要だと語っていたようで、3年前の意見と現在の発言は全く逆の事を言っていることになります。
単語の確認
take office 職、任務、または位に就く
Congress 議会
sequester 歳出強制削減
budget 予算
military 軍隊
pledge 宣言
sequesterはここ最近出てきた新単語です。もともとは「隔離する」「仮差し押さえする」という意味の動詞でしたが、2011年に議会があらゆる予算の強制削減を決定し、2013年に実行されてから、sequesterは「歳出強制削減」を指す単語として使われています。
メキシコとの国境の壁建設について
トランプ氏は不法移民や武器の流入を防ぐためアメリカとメキシコの国境間に壁を建設する、しかも建設費用はメキシコに払わせる、と豪語していました。しかし、メキシコ大統領と対談してからは急に弱腰に。
The lies Trump told this week: who’s paying for the wall to immigration costs
「壁については議論した。壁の支払いについては話さなかった。それについては後日になるだろう。」-8月31日、メキシコシティ
トランプ氏は支払いについて議論しなかったと言いましたが、メキシコ大統領のエンリケ・ペーニャ・ニエト氏はメキシコは支払いをしないと断言していました。the Guardianではこう報じられています。
Mexican president Enrique Peña Nieto directly contradicted Trump’s account of their meeting on Wednesday, writing on Twitter: “At the start of the conversation with Donald Trump I made it clear that Mexico will not pay for the wall.”
Trump’s campaign later said the meeting “was not a negotiation”, meaning it’s possible neither man is lying and that payment for a wall was never “discussed” at length, though it was apparently at least raised by Peña Nieto.
メキシコ大統領エンリケ・ペーニャ・ニエト氏はトランプ氏の水曜の会議での発言に真っ向から対立した。氏のツイッターにはこう書いてある。「ドナルド・トランプ氏との対話の始めに、メキシコは壁の支払いをしないとはっきりと告げた。」
トランプの選挙運動勢は後日になって会議は「交渉ではなかった」と言い、それにより双方嘘をついたわけではない、そして壁の支払いは十分に「議論」はされなかったのだと主張した。(壁の支払い問題は)少なくともペーニャ・ニエト氏からは提起されていたようであるが。
単語の確認
payment 支払い
contradict 否認する
campaign 選挙運動
campaignは広く「運動」や「勧誘」を指す単語で、選挙の場面では特に「選挙運動」を指す単語として使われます。今回の例ではcampaignが取材に対して発言をしていることから、「トランプの選挙運動をする人々」という意味で使われていることがわかります。
イラク戦争について
トランプ氏はイラク戦争について最初から反対だったとの立場をとっています。
The lies Trump told this week: from his tax plan to the Iraq war
“I was among the earliest to criticize the rush to [the Iraq] war, and yes, even before the war ever started.” – 22 June, New York City
「私は(イラク)戦争に向かうのを最初に批判したうちの一人だったよ、そうさ、戦争が始まる前からそう言っていた。」-6月22日、ニューヨーク
しかし、実際には当時イラク戦争に賛成するような立場をとっていたようです。the Guardianはトランプ氏の過去の発言を探り、現在の立場との矛盾を暴いています。
Trump has repeated this false claim nearly every week for four months. On 11 September 2002, about six months before the invasion, Trump told radio host Howard Stern: “Yeah, I guess so,” when asked whether he supported the proposed war. He offered a similar answer to Fox News a few months later, saying George W Bush was “doing a very good job”.
トランプは4ヵ月ものあいだほぼ毎週この嘘の主張を繰り返している。2002年の9月11日、侵攻の6ヵ月前に、トランプはラジオ司会者ハワード・スターンにこう語っている。提案されている戦争について指示するか聞かれて、「うん、たぶんね」と。彼はFOX ニュースにも後日同じような回答をしており、ジョージ・W・ブッシュ大統領は「とてもいい仕事をしている」と言っていた。
単語の確認
the rush to war 戦争気運の高まり
claim 主張
invasion 侵攻
proposed war 提案された戦争
rushは「突進」や「感情の激発」を意味する名詞です。the rush to warは、テロを受けて急激に戦争の可能性が高まり、戦争に向けて準備が進んでいく様子を表しています。proposed warのproposeは「提案する」という意味の動詞で、形容詞形でproposedとなっているので、この時点で戦争の開始が提案されている状態ということです。
英語ニュースでトランプ氏の生の発言をチェックしよう
トランプ氏の発言はシンプルで英語ネイティブではない人にもわかりやすいものばかりです。大統領選まであと2ヵ月ほどですが、ニュースでトランプ氏の発言が取り上げられた際にはぜひその英語もチェックしてみてください。
Fujisan.co.jp では日本国内でもリアル紙媒体の「the Guardian」の定期購読が可能です。新聞紙で読む新聞記事は、やはりPCやスマホの液晶ディスプレイで文字を追う読み方とはまた違うものです。興味があればぜひ。