すでに述べた事柄に再び言及する場合、「前にも言ったけれど」「先ほども申し上げたように」というような前置き表現を用いると効果的な場合があります。英語では場面に応じていくつかフレーズが使い分けられます。
比較的カジュアルな表現から、丁寧な印象の出る表現まで、言い方によって印象が少し変わります。あえて「前にも言った通り」なんて言わないという選択肢もあります。いずれにしても、まずは表現を一通り把握してしまいましょう。
基本となるキーワードは接続詞の as
「前にも言ったように」のニュアンスを伝える言い方は、おおむね2通りの構成に分けられます。もちろん例外もありますが。
- as + 主語(主に I ) + 動詞の過去形(「言う」を意味する語)
- as + 他動詞の過去分詞形(「述べる」を意味する語)
接続詞 as には、他の情報を引き合いに出す用法があります。たとえば as you know(ご存知のように)。この用法の as に「述べる」関連の表現を加えることで、「(すでに)(私が)述べたように~」という意味合いが表現できます。
主語をことさら明示しなくても、動詞の過去分詞形を(受動態の形で)用いれば、「すでに述べられた通り」という風に表現できます。これなら自分の発言でない事柄にも言及できます。(ただし受け身の形で使える語は他動詞に限られます)
as I said
「前にも言ったように」「以前申し上げた通り」という意味合いの代表的な表現として as I said, が挙げられます。
as I said はこれはカジュアルな場面とフォーマルな場面のどちらでも無難に使える表現です。表現自体に特に含みもなく、ニュートラルに使えます。
前にも言った通り、次の土曜にここを離れるよ
「前に」とは明示してもしなくてもよい
as I said は文字通りに捉えれば「言ったように」という意味で、字面上は「前に」とは明示していません。
as I said before あるいは as I said earlier のように表現すれば、「前に」と明示的できます。
とはいえ、動詞が過去形で用いられている以上、時間的に前の事柄に言及していることは明らかなので、ことさら「前に」と明示する必要はありません。あってもなくても大差ありません。
as I mentioned
say(said)を mention(mentioned)に置き換えると、よりフォーマルな響きの表現になります。
mention は「少し話に出す」という控えめなニュアンスの動詞で、語意が比較的限られていることもあり、フォーマルな場面にふさわしい表現です。書き言葉でもよく使われます。
先ほども申し上げましたが当店は7時で閉店致します
have を挿んで完了形にして as I have mentioned, (すでに申し上げたように)としても意味は変わりません。ただし、earlier は過去を表す語であり「have mentioned」との併用は適切できないとする見解もあるので、完了形で表現する場合は earlier の語は省いた方が無難でしょう。
as I told you
as I told you は比較的カジュアルな場面で使われるフレーズです。
前も言ったけど、私は仕事を辞めたのよ
tell は通達・指示・命令といった上から目線のニュアンスを伴って響くことがあります。フォーマルな場面では避けたほうが穏当です。
言い方によっては「ほら言った通りだろう」というイヤミな言い方に聞こえることがあります。
- I told him to clean the room. 彼に部屋を綺麗にするよう言った
- I told you so. 私の言った通りだろう
as mentioned previously
as mentioned previously は、受け身の形を取り「前にも言及されたように」といって言及した主体を明示しない言い方です。
自分の発言はでない既出事項にも言及しやすい、使い出のある表現です。mention はもちろん previously もフォーマルな響きのある語なのでビジネスシーンにも最適です。
前にレポート内で言及されていたように、わが社は展覧会で試作品を展示いたしました
mentioned の箇所を stated に置き換えて as stated previously と表現しても同じ趣旨が表現できます。
as を用いない言い方、繰り返しに陥らない言い方
「前にも言ったように」という趣旨を伝える言い方は、接続詞 as を使うと手軽に表現できますが、必須のキーワードというわけではありません。他の言い方で同じ趣旨を伝えることも可能です。
同じことをただ繰り返すだけの発言は、あまり発展的とはいえません。前述の事項を引き合いに出しつつ、表現を変えたり情報を付け加えたりといった工夫ができれば、会話は前進します。
like I said
like I said は比較的カジュアルな場面で用いられる表現です。日常会話では多用されます。
like I said も(as I said と同様に)ことさら含みを持たない表現であり、文脈を問わず幅広く使えます。
私が言ったように、君はもっと勉強すべきだ
この like の意味・用法は as と同じ、ただし、この like の用法は文法的に曖昧さの残る口語的な用法であり、多分に略式の、口語的な、くだけた表現です。フォーマルな場面では as I said 等の言い方が適切でしょう。
back up a bit
back up a bit は「ちょっと前に戻ると」という意味で使えるフレーズです。back up は「後援」「支援」といった意味もありますが「(話を)戻す」という意味でも使えます。
もう少し言葉を費やして Let me back up a little bit. と表現する言い方もあります。「少し話を戻しましょう」という程度の意味合いです。
Back up a bit. は「前にも言ったように」の趣旨をそのまま表現する言い回しではありませんが、既出の内容に言及して再確認するような場面では意外と使い出のある表現といえます。
referring to my previous comments
referring to my previous comments は、直訳すると「私の先ほどの発言を参照しますと」のような感じで、おおむね「先ほど申しましたことと関連いたしまして」という趣旨を述べる言い方です。
refer to ~は「(~を)参照する」もしくは「引き合いに出す」「触れる」という意味合いの表現です。「言い及ぶ」くらいのイメージで捉えておいてよいでしょう。
先ほど申しましたことと関連いたしまして、開発チームはもう少し予算が必要かもしれません
referring to ~ のフレーズは、あくまでも前述した内容に触れる言い方であり、前述の内容をそのまま繰り返す場面では適しません。前に言った内容を喚起しつつ、表現そのものは別にする場面では便利に使えます。
my previous comments (私の先ほどの発言)部分は remark (見解)、 statement (陳述)、our discussion (この議論)、 our conversation (一連の会話)等、場面に応じて柔軟に言い換えられます。
further to my previous comments
further to my previous comments は、further to ~(~に付け加えて)と述べて、前述の内容を呼び起こしつつさらに情報を付け加える言い方です。
先ほど申し上げたことに付け加えまして、ハイブリットカーへの需要も急増しております
「それは前にも言ったけど」のようなセリフは、英語であれ日本語であれ、たいていの場面では省いてしまえるセリフです。あまり多用すると面倒くさい人という印象を持たれやすくなります。その点、further to ~ は発展的・建設的に前進する雰囲気を込めて使えます。
いずれの表現にしても、使用場面はここぞという時に限り、乱用を控える、という姿勢で臨んだ方が得策でしょう。
編註:ご指摘を受けて一部記述を訂正致しました。この場を借りてお詫び申し上げます(2017/04/02)