日本語の「そんなことないよ」という表現は、相手の見解を否定する言い方ですが、反論とは限らず、相手を慰めたり、褒められて謙遜したりする場面でも多く用いられます。英語にも同様の場面で使える言い方がいくつかあります。
英語で「そんなことないよ」と表現できる言い方も、おおむね反論・慰め・謙遜の各趣旨で使えます。それぞれニュアンスは微妙に異なるため、より適切な表現を選べるようになりましょう。
みんなの回答:そんなことないよ。は英語でどう言うの?
幅広く使える「そんなことはない」的表現
That’s not true. (そうじゃないよ)
That’s not true. は「それは事実とは違う」「本当はそうではない」という意味合いで「それは違うよ」と表現する言い方です。
相手の発言を真実ではないと述べる言い方なので、相手の発言内容にかかわらず幅広く使えます。
- 議論中なら「それは事実と異なる」という指摘に
- 相手の自虐的・弱気な発言には慰めの言葉として
- ホメてもらった際には「いえ、まだまだです」と
褒められた際に「いえいえ」と謙遜する返し方は、語弊も生じやすいので注意しましょう。むしろ、素直に「褒めてもらえて嬉しい」と率直な気持ちを伝えた方が得策です。
英語で表現する「褒められたときの返し方」ありがとう、お上手ね
I don’t think so. (そうは思わないな)
I don’t think so. は「私はそういう風には考えていない」といって異を唱える言い方です。主語が一人称であるだけに、That’s not true. の言い方と比べると主観的なニュアンスを色濃く感じさせます。
この言い方も、反論にも慰撫にも使えます。謙遜の意味でも使える場面はありそう。ただし、いずれの趣旨で用いるにしても、理由・根拠を併せて提示しないと相手の心証は多少モヤるでしょう。これは That’s not true. でも同様ではありますが。
Not at all. (全然そんなことはない)
Not at all. は「全くもってそうじゃない」という、強い否定を表現するフレーズです。
文章に組み込んで I’m not interested in baseball at all. (野球にはまったく興味がない)という風に用いる場合もあれば、Not at all. の一言で「どういたしまして」とか「滅相もない」という受け答えの表現として用いられる場合もあります。
Not at all. を独立したフレーズとして用いる場合は、既出の内容を完全否定する意味が主となります。相手をフォローする場面が最も似合う表現といえるかもしれません。
またやっちゃった、私ってほんとバカだ.
? Not at all! It happens.
全然そんなことないよ、よくあるミスだよ
It happens. は「そういう事よくあるよね」という意味合いで用いられる常套フレーズです。
No way. (んなわけない)
No way. も Not at all. と同様に強い否定を表現する言い方です。ただし俗な表現であり、もっぱら家族や友人といった親密な間柄でのカジュアルなやりとりで用いられます。
弱気な発言を明るく吹き飛ばすような場面では最適な表現といえるかもしれません。
No way. は文脈によって幅広い意味を取り得ます。たとえば「マジかよ」「まさかそんな」「とんでもない」「ありえない」「絶対にイヤだ」というようなニュアンスで用いられることが多々あります。英語は簡単な語彙ほど奥深いのです。
特定の場面でうまくハマる表現
Don’t be silly. (ばか言っちゃいけない)
Don’t be silly. は「愚かな振る舞いはよしなさい」「馬鹿げた事を言うものじゃありません」という意味合いで相手をいさめる・たしなめるフレーズです。
弱気・弱腰になって泣き言を連ねているような人をビシッと励ますにはよい一言でしょう。
Don’t be silly. は文脈によっては「ふざけた事を言うな」とか「冗談じゃないぞ」あるいは「お前いいかげんにしろよ」といった意味を込めて用いられることもあります。異議を唱える場面や謙遜するような場面には適さない表現と心得ましょう。励ましの意味で使うにしても、目上の人への言葉としては適しません。
わたし子育てに向いてないわ。ぜんぜん我慢強くもないし
Don’t be silly. Danny is waiting for you in the kindergarten.
? バカ言わないの、ほらほらダニーが幼稚園で迎えを待ってるよ
Not really.(そうでもないよ)
Not really. は、字面上の意味合いは That’s not true. や Not at all. に通じる「そうではない」的な否定表現なのですが、特に「いや別に」「それほどでもない」「そういうわけでもない」というような(うやむやにするような)ニュアンスを多分に含む言い方です。
Not really. は謙遜の意味でうまく使える場面が多々あります。「いやあ、それほどでも」という微妙な響きを伴いやすい点には留意しておきましょう。相手のフォローには使わない方が得策です。
君いつもかわいいよね、うらやましい!
? Not really. I don’t care about cloth so much.
そんなことないよ。服とかそんなに気を使ってないし
定型表現で終わらずに具体的な補足を
「そんなことないよ」に対応するフレーズ自体は、相手の見解に異を唱える言い方にすぎません。より円滑で広がりのあるコミュニケーションを実現するためには、定型フレーズで終わらずに、相手の発言に即した自分なりの言葉を続けて表明するべきでしょう。
特に相手が自虐的・自嘲的なことを言って沈んでいる場合には、うわべだけの慰めはうつろに聞こえます。何を根拠に「そんなことはないよ」と言うのか、具体的な点を挙げてあげれば、相手も自信を取り戻しやすくなるはずです。
例
私ってブスよね → 十分に魅力的と思うよ
はぁ、もっとかわいかったらな
? You are attractive! You’ve been just unlucky for men recently.
魅力的だよー、最近は男運がないだけだよ
おれ気遣い下手で → そんな事ないって知ってますよ
俺っていつも周りが見えてないんだよね
? I know you are very cautious about it. I remember you helped Takuya a few days ago.
僕は先輩が気遣い上手って知ってますよ。この前もタクヤを助けてたじゃないですか
言葉の巧拙よりも気持ちを伝えることが大切
定型表現は便利で使いやすい反面、真意を余すことなく伝えることは難しいものです。
自分なりの言葉は、言葉を紡ぎ出す苦労を伴いますが、発言者の心をかなり伝えてくれます。英文として破綻したべらぼうな言葉でも心意気は伝わるものです。
最終的に人の心に届くのは心からの言葉です。まずは定型表現でとっさの一言を発する、その間に自分なりの言葉を用意する。そのくらいの心構えで定型表現を使いこなしましょう。