日本語の「ご了承ください」という表現は、相手に理解を求める意味を込めて用いられる場面と、相手が理解を示してくれることへの期待と感謝を示す意味合いで用いられる場面があります。その辺のニュアンスを意識して文意を組み立て直すと、上手な言い方が見つかります。
相手に理解を求める趣旨の言い方
日本語の「ご了承ください」という言い回しを字面通りに捉えれば、「どうか事情を受け入れてくださいませ」というお願いの趣旨と解釈できます。
お願いの趣旨なら相手に「ご理解ください」と伝える表現が無難に使えます。丁寧かつ控えめなニュアンスの出せる表現を選びましょう。
We kindly ask for your understanding.
We kindly ask for your understanding. は相手に理解を求める意味合いの表現です。素直に訳せば「何とぞご理解くださいませ」という風になるでしょう。
ask for は「求める」「要求する」という意味の句動詞 です。kindly は副詞で、この一語があると「どうか~願います」という懇切なニュアンスがいっそう加わります。
何卒ご理解くださいますようお願い申し上げます
I hope you will understand this.
I hope you will understand this. は「ご理解くださるよう願います」という意味合いの表現です。this 部分は指示代名詞でなく our situation(我々の状況)のように表現したり、あるいは具体的な事柄を明示的に述べたりもできます。
I hope you will understand ~ . は日本語の「ご了承ください」のような畏まった場面でばかり用いるとは限らず、I hope you will understand my feelings. (察して欲しいんだけど)というような言い方にも用いられます。
把握もしくは容認を求める趣旨の言い方
日本語の「ご了承ください」は、文脈によっては、「この情報を把握しておいてください」というような通知の意味合いでも用いられます。
Please kindly note that (~).
純粋に通知する意味合いなら、動詞 note が使えます。note は基本的には「書き留める」「注意する」といった意味で用いられますが、会話では「気に留める」「注意を向ける」という意味合いでもよく用いられます。
言及対象が明確なら Please kindly note that. だけでも十分ですが、that 以下に従属節を加えて具体的内容を述べる言い方もできます。
ご入場の際には別のチケットが必要になりますので、了承ください
Please forgive ~. または Please excuse ~.
forgive や excuse は「許す」「多めに見る」といった意味合いの動詞です。どちらも「ご容赦ください」と述べる場面で使えます。
forgive は軽微でない罪や過失を「赦す」というニュアンス、罪を憎んで人を恨まず的なニュアンスのある語です。excuse は、そこまで重大ではない失敗やポカを「勘弁する」というようなニュアンスが中心です。
その日は同行できません、ご了承くださいませ
欠席いたします事をご了承ください
相手の理解に対して感謝を示す言い方
文脈によっては、「理解を求める」よりも「理解を示してくれることに対して感謝する」という見方から捉え直した方が、より英語的にしっくり来る表現が見つかります。
Thank you for your understanding.
ビジネスメールや顧客への連絡・通知といった場面で「ご了承いただけますようお願い申し上げます」というように言い添える場合、英語では Thank you for your understanding. (ご理解のほど感謝申し上げます)というように感謝を表明する言い方が一般的です。
了承してくれることが想定されるというような状況で、文末などに添えるように用いられます。ビジネス関連のメールなどにおいて一般的に使われている表現です。
天候によって配送に多少の遅れが生じる場合もございます、ご了承くださいませ
もちろん、相手は必ずや理解を示してくれるという前提がないと、この(先んじて感謝する)表現は適切には響きません。相手は納得してくれるかもしれないし、納得してくれないかもしれない、可能性は五分五分、・・・・・・というような場合は、真摯に理解を請う表現を選びましょう。
I appreciate your understanding.
感謝の表現としては、thank you の代わりに I appreciate you と述べる言い方もできます。thank you よりも丁寧・懇切なニュアンスで感謝を表明できます。
thank you は前置詞 for を続ける形を取りますが、appreciate の場合は目的語を続ける形を取ります。
I would appreciate ~. と仮定法による婉曲的な表現を加味すると、「もしご理解いただけるなら・・・・・・」というへりくだったニュアンスをさらに色濃く表現できます。
本件につきましてご理解いただけますと幸いです
Thank you for your patience.
相手に多少の不便を強いてしまうような事柄についても、その不便が避けがたい(と相手も承知している)ような代物なら、感謝を述べる言い方で「ご了承ください」に換えられます。
たとえば、待ち時間が長い(長く待たせてしまう)ような場面で「ご不便をおかけしますが、なにとぞご了承ください」というような場合、patience (辛抱)の語を使って Thank you for your patience. と表現できます。
あるいは、「ご協力ありがとうございます」という趣旨で Thank you for your cooperation. と表現する言い方もアリでしょう。
Thank you in advance.
Thank you in advance. も「ご了承ください」の意味で使えるフレーズといえるでしょう。基本的にはビジネスメールにおいて、日本語のメールの結びの「よろしくお願いします」に相当する言い回しとして紹介されるフレーズです。
ご理解のほどよろしくお願いいたします
もっとも、この Thank you in advance. は相手の理解が得られることを完全に前提している(と相手にありありと伝わる)表現であり、使いどころによっては相手の意向を勝手に先取してしまっているような響きを伴う懸念もあります。乱用は控えましょう。
【ビジネス英語】「Thank you in advance」は便利だけれど要注意