意外?納得?日本の小説&マンガの英語タイトル7選

海外の小説が翻訳されて日本の書店に並ぶように、日本で出版された書籍も海外で翻訳されて読まれています。古典から現代小説、マンガに至るまで、幅広いジャンルの本が英語をはじめとする諸言語で少なからず愛好されています。

日本語はただでさえ他の言語に翻訳しにくいのに、作品のタイトルともなればなおさら単純素朴には訳せないケースが増えます。それだけに、作品タイトルの訳には、名訳、珍訳、新たな発見を示唆してくれる含蓄ある訳にも多く出会えます。

太宰治『人間失格』

No Longer Human

もはや人間ではない = 人間失格という、意味を汲み上げた訳し方といえます。

英語で「失格する」というと、 be disqualified (資格を剥奪させられる)や be eliminated (除外・除名される)のような、受け身形の表現が主となります。安易に翻訳したなら《人間失格》のニュアンスは失われてしまいそうです。

ちなみに『走れメロス』は「Run, Melos!」。直訳とはいえ、なかなかどうして、走れメロス感(?)にあふれた良題です。

夏目漱石『吾輩は猫である』

I am a Cat

日本語は一人称だけで、その人の「人となり」を十分に演出できるという長所があります。英語タイトルでは「私は猫だ」というストレートな訳を敢えて選択したことで、明朗なインパクトのあるタイトルとなっています。

漱石の小説はほとんど英訳されており、『吾輩は猫である』は最も人気がある作品のひとつです。

ちなみに『坊ちゃん』は「Botchan」。意外にも音写です。まあ boy も young man も greenhorn も作品の雰囲気にはそぐわない気はします。『こころ』も heart などではなく「Kokoro」。

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谷崎潤一郎『細雪』

The Makioka Sisters

細雪(ささめゆき)は、まばらに降る細かい雪のこと。詩情ゆたかな語です。他方、英語タイトルは「蒔岡姉妹」であり、原題を匂わせる要素はありません。『細雪』は蒔岡家の姉妹をめぐる物語ということで、タイトルが考量されたことがうかがえます。

ちなみに『刺青』は英語では「The Tattooer」。イレズミそのものではなくて彫り師の物語であることが分かるタイトルです。同じく『私』は「The Thief」。身バレですね。

村上春樹『羊をめぐる冒険』

Wild Sheep Chase

村上春樹は世界中で驚異的な知名度を誇るといって過言ではありません。小説は世界数十か国の言語に翻訳されており、国を問わず若者の心を引きつけています。『羊をめぐる冒険』は、村上春樹作品で初めて翻訳された作品でもあります。chaseは、「追いかける、捜し求める」という意味の動詞や「追跡」という意味の名詞として使われます。

ちなみに『ノルウェイの森』 Norwegian Wood 。これは原題がビートルズの曲「Norwegian Wood」から採られたとされており、英語に訳するにあたって特別にヒネる必要がなかったとも推測されますが、スペイン語では「東京ブルース」(Tokio blues)、フランス語では「不可能のバラード」(La Ballade de l’impossible)というような、ユニークなタイトルで出版されています。

小川洋子『博士の愛した数式』

The Housekeeper and the Professor

『博士の愛した数式』は2003年に刊行され、数々の文学賞を受賞した作品です。英語のタイトルは、直訳すると「家政婦と博士」になります。物語の主人公である家政婦と数学者がタイトルに反映されています。

青山剛昌『名探偵コナン』

Case Closed

マンガやテレビアニメで長年愛されている『名探偵コナン』。英語版のタイトルは「解決した事件」といった意味の case closed です。The case is closed.(その事件は一件落着だ)のようにも使われます。

英語版タイトルにはコナンのコの字もありませんが、もしかすると「C」の響きや形が「コ」に通じるという感覚があるのかも(邪推)。

英語版「名探偵コナン」では登場人物の名前が大幅に変更されています。工藤新一はジミー工藤(Jimmy Kudo)、毛利蘭はレイチェル・ムーア(Rachel Moore)、毛利小五郎はリチャード・ムーア(Richard Moore)など。事件の推理をするという内容柄、英語版名探偵コナンの文章は少々難しめです。

角野栄子『魔女の宅急便』

Kiki’s Delivery Service

スタジオジブリが映画化したこと広く知られる作品。原作はいわゆる児童文学で、2009年にシリーズが完結し注目を集めました。

「魔女」は英語では witch ですが、英語タイトルでは主人公キキの名前に置き換えられています。邦題原題にも「ハウルの動く城」のような例があるので違和感はありません。やはり西洋あたりでは「魔女」というと本場のハロウィンのような姿が連想されるのでしょうか。

宅急便を意味する英語表現には、(express) home deliveryという言い方もあります。

ジブリ映画はの英語タイトルには、どうも「引き算」式の名付け傾向があるようです。

  • Castle in the Sky(天空の城)
  • Ponyo (ポニョ)
  • Spirited Away (神隠し)
  • Pom Poko  (ぽんぽこ)

海外アニメファンの間では日本語そのまま「Majo no Takkyuubin」とか「Tonari no Totoro」といった呼び名が使われていることもしばしば。こよなく愛されている様子が伝わってきます。

お気に入りの作品を「読み返し」て英語を勉強できる

日本語作品の英訳を読む試みは、英語の勉強法としても非常にオススメできる方法です。日本語で読んで大まかな内容を把握してから英訳版に挑戦すると、日本語のこの表現は英語でこう言えるのか、英語に訳しにくい言い回しはこう表現するのか、といった発見に多く出会えます。日常会話表現にも多く出会えるでしょう。自分の好きな作品ならモチベーションも続きますし、読む際の注意力・集中力も段違いです。

ただ、翻訳者選びには少し慎重になったほうがよい場合もあるでしょう。なるべく人気があって売れている作品を選んだ方が、品質の高い翻訳が期待できそうです。


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