口の中を水などですすぐ「うがい」(嗽)は、英語では gargling あるいは rinsing (out one’s mouth) のように表現できます。動詞として扱うなら語形は gargle よび rinse となります。
いわゆる「鼻うがい」は、nasal irrigation (鼻洗浄)とも表現できますが、日常語彙を使って nasal washing と表現する例も多く見られます。「うがい」から離れて「鼻腔をすすぐ」と捉えるとよさそうです。
「うがい」を英語で表現する言い方
うがい(嗽)は口に含んだ水を勢いよくかき回すようにして口腔内をすすぎ流す行為です。
「うがい」に対応する英語の語彙としては gargle および gargling がまずは挙げられるでしょう。
gargle および gargling
gargle は日本語的「うがい」を指す語です。動詞としても名詞としても使えます。ただし、「うがいをする」という動作を名詞的に扱う場合は一般的に gargling の形が用いられます。
うがいに用いる水等の液体を明示して述べる場合には、前置詞 with を伴って gargling with salt water のように表現します。
gargle の語そのものはフランス語由来の語彙のようですが、gurgle と同源であり、擬音語的オノマトペ的な語彙と解釈できそうです。
OxfordDictionaries による gargle の定義を参照すると、Wash one’s mouth and throat […] という記述が見られます。
Wash one’s mouth and throat with a liquid that is kept in motion by breathing through it with a gurgling sound.
息をしつづけゴボボと音をたてながら口腔や咽喉を液体で洗うこと
― OxfordDictionaries
「がらがらうがい」も「ぶくぶくうがい」も両方とも該当する
日本語で「うがい」というと、口を開いて上を向き、がらがらと咽頭を漱ぐようにする動作をひとまず思い浮かべますが、口を閉じて頬を膨らませるようにして口の中をぶくぶく言わす動作も「うがい」に含まれます。
喉をガラガラいわせるうがいは、いわゆる「ガラガラうがい」。口をブクブクいわせるうがいは、いわゆる「ぶくぶくうがい」。
英語の gargling の対象も《 mouth and throat 》ですから「ガラガラうがい」と「ぶくぶくうがい」の両方を含むということになります。
動詞 gargle はもっぱら自動詞として扱われるため、「喉を」というような形で目的語を取る言い方は基本的にできません。throat gargling という風に表現する言い方はアリといえばアリですが。
wash (one’s mouth and throat)
OxfordDictionaries による gargle の定義には《Wash one’s mouth and throat […] 》という記述があります。となれば、動詞 wash を使って gargle と同じ「うがい」の趣旨を表現することも十分に可能であるわけです。
単に wash one’s mouth と述べるだけだと、歯磨きに伴う口すすぎを指すのかなと思われる可能性がないわけではありませんが、mouthwash あるいは mouth-washing といえば「うがい薬」を指すこともあり、「うがい」のことと捉えてもらえる期待は持てます。
wash だけで「洗う」という意味が表現できますが、副詞 out を添えて wash out と表現すると「洗い落とす」というニュアンスを表現できます。
rinse out (one’s mouth and throat)
動詞 rinse は「すすぐ」「すすぎ落とす」という意味合いで、「うがい」に対応する動詞としては wash よりも有力な候補として挙げるべき語でしょう。
とりわけ副詞 out を添えた句動詞 rinse out は「うがいする」という動作を指す定番表現のひとつといえます。
動詞 rinse は基本的に自動詞としては用いられず、もっぱら他動詞として用いられます。それだけに、目的語に mouth を明示しつつ rinse out one’s mouth という風に述べれば、まず「うがい」であることは誤解なく表現できます。
「鼻うがい」を英語で表現する言い方
「鼻うがい」とは、鼻に水などを通して詰まりを解消することですが、これは「うがい」つながりで考えるよりも「鼻洗浄」という発想で捉え直したほうが、手頃な英語表現を見つけやすくなります。
「鼻」を形容詞的に扱う語彙は nasal (鼻の)が定番です。他には sinusも、鼻腔内を指す語としてよく用いられます。
日本語的に「鼻+うがい」という構成を鑑みると、 nasal gargling と表現できるのでは? と考えたくなります。そう表現している例も皆無ではないのですが、どうしても一般的な英語表現とはいいにくいものがあります。
nasal irrigation
通称「鼻うがい」を「鼻洗浄」と捉え直した場合に、英語表現の候補筆頭に挙げられる表現は、nasal irrigation でしょう。
irrigation は農業における「灌漑」を指す語であり、同時に、医術としての「洗浄」を指す語でもあります。nasal irrigation は《鼻-洗浄》にぴったり対応する語彙といえます。
nasal lavage 、nasal douche
洗浄・洗浄法を指す語としては lavage や douche のような語も挙げられます。nasal irrigation と同様、nasal lavage もしくは nasal douche のような表現でも、鼻うがい=鼻洗浄を示せます。
とはいえ irrigation も lavage も douche も日常会話レベルの基本語彙とはいえない点が微妙な難点です。
nasal wash
鼻うがい → 鼻洗浄 → 鼻を洗う・洗浄する、と考えれば、wash (洗う)と表現してもよさそうです。
実際、鼻洗浄を nasal wash あるいは nasal washing と表現している例は少なからず見つかります。
nasal rinsing
rinse も「鼻うがい」の意味で使える語です。「うがい」つながりの語というよりも、「洗い流す」という根本的な語義に基づく表現です。
rinse または rinsing の語に関しては nasal よりも sinus の語を組み合わせた sinus rinsing のような表記例の方が多く見られます。
nasal flushing
鼻うがいは動詞 flush を使って表現される例もまま見られます。
flush は「押し流す」「どっと流す」という意味合いのある動詞です。鼻の中を多量の水で洗い流して、鼻づまりの原因となっているもの等を一気に排出する、そういう爽快感を感じさせそうです。