マンガやアニメの界隈では「日常系」というジャンル区分がしばしば用いられますが、この「日常系」は英語では slice of life と呼ばれています。「日常系アニメ」なら slice-of-life anime と表現できます。
日常系は、おおむね平凡な日常、その中で起こる普通の出来事を抜き出して淡々と描くような作品ジャンルです。slice of life(人生の1コマ)という表現は中々に言い得て妙といえるでしょう。
「日常系アニメ」を英語で表現する言い方
日本語の「アニメ」は英語の animation(アニメーション)の略ですが、英語圏では今や日本のアニメが Anime という半ば固有の呼び方で定着しています。言葉が逆輸入された格好です。
slice of life が半ば定番の英語訳
マンガやアニメのジャンルとしての「日常系」に対応する英語表現としては slice of life が半ば定訳と捉えてしまってよさそうです。
slice of life という表現そのものは必ずしもマンガアニメ界隈のジャンルを指すとは限りませんが、まあ、他の文脈で用いられることもそうそうありません。
テレビドラマやラジオドラマであれば、日常生活を切り取った1話完結型の作品シリーズは海外にも沢山ありますが、そうした作品は sitcom(シットコム)と呼ばれています。
sitcom は situation comedy の略。日常系ドラマは多分にコメディ寄りに脚色されるのがお決まりともいえます。
ただし slice of life = 萌え とは限らない
日本では、「日常系」に該当する作品の大部分は基本的にキャラ萌え要素が尊ばれるタイプの作品です。多くの人は、たとえば「サザエさん」を「日常系」と区分することには抵抗があるでしょう。
英語では「サザエさん」のような作品も「日常を描いた作品」という限りにいおいて slice of life と説明される場合があります。
サザエさんは日本の主婦・フグ田サザエを中心とする、家庭の何気ない日常を描いた作品である
―― The Lost Media Wiki
とはいえ英語でも slice of life anime といえば大抵の場合は日常系萌えアニメを指すわけで、この辺の感覚はなかなか言葉では説明しがたいところです。
comedy もおおむね無難な選択肢
あえて slice of life という区分を避けて、もっと一般的なジャンル区分に当てはめるなら、comedy(コメディ)が穏当な選択肢になるでしょう。
少なくとも tragedy(悲劇)ではないし、soap opera(昼ドラ的メロドラマ)でもないでしょう。サザエさんも、ちびまる子ちゃんも、コメディには区分し得るわけです。
ちなみに、「ホームドラマ」というのは和製英語です。
アメリカで制作されているテレビアニメの代表格「スポンジ・ボブ」(SpongeBob)は、ジャンルとしてはコメディに区分されル場合が多いようです。
sitcom もあながち的外れではない
comedy まで広げずに sitcom と表現してしまう手もあります。「日常系アニメ」の趣旨はほぼ伝わるでしょう。萌え要素以外は。
アメリカのテレビアニメでいうと「ザ・シンプソンズ」(The Simpsons)などは animated sitcom と区分される場合がままあります。
「セカイ系アニメ」を英語で表現する言い方
日常系と対をなす、というわけではありませんが、日常系とは対極的な性格のジャンルとして、いわゆる「セカイ系」が挙げられます。
この「セカイ系」に対応する英語表現は、なかなか見出しがたいところです。「日常系」に対する slice of life のような穏当さのある訳語は、恐らくないといってしまえるでしょう。
どうも「セカイ系」という概念そのものが、今のところ、いまひとつ英語圏に浸透してないといえそうな状況です。
英語ではセカイ系は SF に包含されることが多い
セカイ系は「地球や人類が終末へ向かっていく極端な非日常の世界」や「世界救済のカギを主人公の少年少女が一身に引き受けるという極端な構図」などで特徴づけられるジャンルといえますが、基本的には SF(サイエンスフィクション)的世界であり、英語圏ではSFに区分する扱い方が一般的です。
セカイ系とは特に関係ありませんが「風の谷のナウシカ」なども SF として扱われることがままあったりします。あるいはファンタジーか冒険活劇(アドベンチャー)か。
ものによってはロボットアニメ(Mecha)に包含される
セカイ系の主要作品の中には、主人公が巨大ロボに乗って敵と戦うものも多くあります。それらの作品はロボットアニメ(mecha anime)に区分される場合も多々あります。
mecha という語は英語の mechanism を略した日本語表現が、マンガ・アニメの文化と共に英語圏に逆輸入される形で定着した語でです(英語辞書にも載っています)。つまり anime と同じ性質の「英語で通じる和製英語」です。
文脈によっては Sekaikei と扱われることも
あえて「セカイ系」を論じる文脈では、あえて既存の英語に訳さずに Sekaikei の語で扱っている例も見受けられます。
ここまでくると半ば学究的というか、日本のサブカルチャーを真面目に考察する態度が根底にあるといえそうです。日常英会話の文脈で Sekaikei といって通じるか否かといえば、まず通じるとはいいがたいところでしょう。