日本語の「なんとか」(何とか)という言い回しは、場面によって意味合いが大きく異なる表現です。日本語の「なんとか」の意味が明確にできれば、対応する英語表現は比較的容易に見つかります。
「なんとか」の主な使いどころは、手段を尽くして辛うじて実現した状態、満足とは言い切れないがひとまず納得できる状況、および、冗長だったり明言しかねたりする部分をボカシて述べる際の代替表現、の3点に分けられます。それぞれ対応する主な英語表現を見ていきましょう。
目次
何とかして(どうにかこうにかして)と表現する言い方
「なんとかなった」、「なんとかする」、「なんとかなる」といった言い回しで用いられる「なんとか」は、経過・過程はどうあれ「どうにかこうにか」結果オーライといった意味合いと解釈できます。
manage (なんとかする)
manage は動詞で、「経営する」という意味でも用いられますが、manage to do の形をとる場合は「どうにかこうにか」「結果としては首尾よく」といった意味・ニュアンスで用いられます。
manage to do はたいていの場合「なんとか~する」と訳せば意味が通じます。過去形で managed to do なら「なんとか~できた」と訳せます。
テレビライブインタビュー中に息子が乱入してしまったゲストがなんとか平静を保とうとする
This guest managed to keep his composure when his children interrupted his live @BBCWorld TV interview pic.twitter.com/3x5tgsVR8R
— BBC News (World) (@BBCWorld) 2017年3月10日
somehow (なんとかして)
somehow は副詞で、「なんとかして(~する)」「どうにかして(~する)」と訳されることの多い語です。somehow 単独でも用いられますが、 somehow or other という言い方で用いられることも多々あります。
somehow も manage と同様、幅広い場面で使える語です。manage は動詞であり、somehow は副詞なので、文の形式に応じて使い分けられます。manage と併用する手もあります。
in some way(何かしらの方法で)
in some way は somehow と相互に代替可能な副詞的フレーズです。in some way or other と表現する場合もあります。
way は手段・方法という意味で用いられています。
彼らはどうにかしてうまくやっていこうと試みた
one way or another(あの手この手で)
one way or another は、「あれやこれやで」、「何とかして」を表す表現です。直訳すると、「こっちの道やあっちの道」のようになります。
いろいろなやり方を試してみる、という感覚を持つとイメージしやすいでしょう。
どんな手を使おうと北朝鮮を軍縮させねばならない
―― Niagara Gazette, Jul 20, 2017
just barely make it (どうにか乗り切る)
just barely make it は、文字通りに訳すると「ぎりぎりでやり遂げる」といった意味合いのフレーズです。just barely が「ぎりぎりのところで」という意味合いを示します。just を除いて単に barely だけ用いても意味は通じます。
途中でよもやと思われることもあったが、最終的にはどうにかなった・なんとかなった、結果オーライ、というニュアンスにうまく対応します。
そこをなんとか(お願いします)と表現する言い方
頼み事の際に「そこを何とかお願いします」と言うような場合の言い方は、日本語の意味合いは「どうにかこうにか」に通じますが、このニュアンスは manage や somehow では表現できません。
Come on! (頼むよ)
「そこをなんとか」と頼み込む言い方は、懇願、懸命にお願いする言い方です。その意味で、英語で表現するなら Come on! が一番しっくり来るでしょう。
come on は自動詞と副詞からなる句動詞で、さまざまな意味で用いられますが、「さあ」といって相手を促す意味で用いられる場合が多々あります。懇願している場面なら「ねえ、いいじゃない、頼むよ」という(許諾了承を促す)ニュアンスで使えます。
I beg you please. (どうかお願いします)
Come on! は多分に口語的でくだけたニュアンスがある言い方です。すこし丁寧に述べるなら I beg you please. と言ってもよいでしょう。場面や相手に応じて使い分けましょう。
何とか(辛うじて)生きています、と表現する言い方
「何とか生きていてます」という風に述べる場合、manage や somehow の語を使って manage to live や live somehow のように表現できます。
manage to live というと「懸命に生活を維持している」「暮らしぶりは決して楽ではないが一応は口に糊している」というような場面が想定されます。
be still alive (まだ息がある)
「なんとか生きている」の意味合いが「大きな事故に巻き込まれて危篤だけれど生きている・息がある」「死にかけている状況だがまだ命を保っている(死んではいない)」という意味合いの場合、「死の危機に瀕している」ということで、 be dying、be on the verge of death、be still alive という風に表現できます。
「あの何とかというやつ」と表現する言い方
言及対象を明示せずにボカシて表現する際に、代わりの語として「なんとか」と述べる場合、manage や somehow とは違った解釈が必要です。
something (あれ)(あの人)
something は「何か」を代替する表現として幅広く使える語です。モノ(何か)を指す語としても、人(誰か)を指す語としても使えます。ど忘れして言葉が出てこない場合の代替表現としても、直接明示できないモノをボカシて述べる場合にも使えます。
お母さん!誰かから電話があったよ。名前はマイク・・・マイク何とかさん
なあ、そのハンバーガー美味しそうだな、どこで買ったんだい
? Ah…That was Burger Something.
えっと、何ちゃらバーガーなんとかってお店
stuff(アレ)
モノに限っていえば something の他に stuff とも表現できます。
stuff は漠然と「もの」を指し示す語であり、かなり抽象的で捉えどころのない表現です。ニュアンスを言葉で説明することは容易ではありませんが、要するに、日本語で言うところの「アレ」に相当する語です。
味噌汁に入ってたアレが美味かったな
? What’s “that stuff”?
「アレ」ってなんだよ
? I forgot the name.
名前忘れちゃった
Mr.So and so(だれそれ)
人名に限って用いられる表現としては Mr.So and so という言い方があります。「誰それ」「何某」「何とかという人」という程度の意味合いです。
ちなみに手紙や電子メールで、名前を知らない担当者に宛てて連絡する場合、宛先の書き方としては Dear Sir or Madam, といった表現が適切です。
ビジネス英語で「担当者」を正しく表現する単語・フレーズ・表現集
whatchamacallit(あの何とかってヤツ)
名前の思い出せない人・モノ、あるいは何と呼ばれているか不明な代物などは、通俗的に whatchamacallit と表現されることもあります。
whatchamacallit は what you may call it もしくは what you might call it が連なって一体化した表現です。gotta (got to)や wanna (want to)のような、一体化した語彙の極端な例といえるでしょう。発音は「ワッチャマコリ」のように聞こえます。
今年ベストセラーになった、あの何ちゃらって本を買ったよ
whatchamacallit は口語表現であり、書き言葉で敢えて「whatchamacallit」と綴る場面はそう多くありません。日常会話を忠実に再現した会話文などでは目にする可能性はありますが、まじめな文章の中ではまず遭遇しません。
whatchamacallit 的な言い方は他にもたくさんある
whatchamacallit と同様に「あの何とかってやつ」という意味で用いられる表現は他にも色々とあります。いずれも口語表現で、複数の語をまとめて一個の語彙のように短縮・一体化している共通点があります。
- whatsit = what’s it
- whatsitsname =what’s its name
- what-d’you-call-it =what would you call it
人の名前が思い出せないという場合いは、 what’s-one’s-face とも表現できます。
昨日友達を見かけたんだ、えーと、名前は何だっけ、バスケ部に所属していた女の子なんだけど
「~とか何とか」「云々」と表現する言い方
話の中で冗長な部分や些末な部分を省いて「~とか何とか」と述べるようなニュアンスは、blah-blah-blah がうまくハマります。
blah-blah-blah
blah は「たわごと」という意味合いのある語で、blah-blah-blah と繰り返して述べると日本語の「云々」「かくかくしかじか」に近い意味合いの言い回しになります。
blah-blah-blah は基本的に「特に聞く価値のないどうでもいい内容」というニュアンスがあります。
親がまた勉強しろとかゲームやるなとかなんとか言ってきてさ~