「尊い」「尊い・・・」は英語でどう言う?

日本語の「尊い」に対応する英語表現としては、まずは noble 、次に precious が挙げられます。日本語で「尊い」と形容する文脈の大半は、実質的には precious が当てはまりそうです。

日本語表現の「尊い」は、かなり多義的です。趣旨を突き詰めて言い換えられるようになると、英語表現も適切に選べるようになるでしょう。「高尚・高潔」「きわめて意義深い」「掛け替えのない」あるいは「最高にグッと来る」等々。

「高貴・立派」の意味なら noble

noble は日本語の「尊い」「貴い」のニュアンスによく対応する表現です。根本的な語義は「高貴な家柄」といったところですが、形容される語の種類によって幅広い意味に転じます。

誤解を恐れずにいえば、尊い(とうとい)よりは、尊い(たっとい)という語感に近いかもしれません。

ただし noble はやや形式張った語であり、普段の会話に用いるには少々硬い表現です。日常会話で見聞きする頻度は低めです。

「貴人」「貴族」「名門」の意味も取る

人・血筋・出生を noble と形容する場合、「貴族」「高貴な家柄」「良家」という意味合いになります。

  • noble man 良家の人
  • noble birth 名門の出

「高潔」「高尚」「崇高」の意味も取る

性格・精神・思考などを noble と形容する場合、「高潔」「気高い」「崇高な」というニュアンスが中心的です。

I really think that he has noble mind.
彼は気高い心の持ち主だ、心からそう思う

「立派」「壮観」「素晴らしい」の意味も取る

建物や景観、あるいは仕事などを noble と形容する場合は「見事な」「立派な」「堂々たる」といった意味合いを取ります。

  • noble work すばらしい出来映え
  • noble building 荘厳な建築

卑金属に対する「貴金属」の意味も取る

metal(金属)を形容する noble metal の語は、特に日本語の「金属」に対応する語として用いられます。

ただし、この貴金属は「卑金属」の対義語としての貴金属、つまり「耐腐食性があり大気中で酸化しにくい(錆びにくい)」性質のある金属を指す語です。

「産出量が低くて宝飾的価値のある、高価な金属」という意味の「貴金属」は、precious metal と呼ばれます。

とはいえ、noble metal の意味でも precious metal の意味でも、代表例は金・銀・プラチナ等でありおおむね共通です。


「貴重・大切」の意味なら precious

precious は基本的に「希少で価値のあるもの」「貴重なもの」「高価なもの」を表現する語です。

ジュエリーとしての価値を持つ「貴金属」は precious metal、宝石は precious stone と表現できます。

稀覯本は貴重な(価値ある)本という意味で precious book と表現できます。単に貴重な本という意味で rare book とも表現できるでしょう。

「尊い命」「愛の尊さ」という場合の「尊い」

precious は、金銭的価値では計れない種類の「何物にも代えがたく大切なもの」を表現する語としても用いられます。

単に「貴重であり価値が高い」と表現する意味では valuable とも表現できますが、valuable は金銭的価値あるいは「使えるか否か」という観点を含みます。precious は、損得勘定の尺度を度外視した大切さのニュアンスを表現できます。

尊い命」「尊い犠牲」「家族愛の尊さ」といった種類の「尊さ」は、precious で形容すると上手くニュアンスが伝わるでしょう。

ネットスラングとしての「尊い」

2017年半ば現在、インターネットスラングとして「尊い」という表現が用いられることが微妙に割とよくあります。主に《萌》や《腐》の字に関係する界隈で使われています。

ネットスラングの用法における「尊い」の意味を厳密に定義することは中々容易ではありませんが、おおむね、「ケチのつけようがない程すばらしい」「ただただ見守っていきたい」といった感情の表現という風に言えそうです。

この「尊い・・」を敢えて英語で表現するなら、最もニュアンスの近い表現はやはり precious ではないでしょうか。

precious の含む「とても大切」、「すこぶる貴重」、「私にとっての宝物」といったニュアンス、そして、 my precious (私の大切な)という風にも表現できる感覚は、中々にぴったり来るように思われます。

That pairing is my precious.
あのカプがもう尊い

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趣旨に応じて言い換えましょう

まず日本語を思いついて、それを英語に言い換える、という場合、必ずしも日本語に基づいて辞書的・教科書的な訳語を探す方法が理想的とは限りません。

むしろ、訳語の対応関係に囚われず、本当に伝えたい趣旨に近い英語表現・言い換え表現を模索した方が、本当に言いたい趣旨を上手く表現できます。

ネットスラングの「尊い」にしても、もちろん通常の文脈における「尊い」にしても、同様です。

「尊敬すべき」と言いたい場合

もし、ネットスラング的「尊い」を「心から敬意を表したい」というニュアンスを込めて述べるなら、respect (尊敬)の語で表現してもよいでしょう。

「マジで素晴らしすぎる」と言いたい場合

既存の語彙では表現しきれないくらい素晴らし過ぎる、という(最高度の評価を表現する)意味合いを込める場合は、awesome と表現してもよさそうです。

awesome は「最高にすげぇ」という意味で用いられるスラング表現。もともとは「畏敬の念をもよおさせる」というような格式張った意味用法の語である、という点で、図らずも「尊い」に共通する要素のある言い方です。

「これは神」と言いたい場合

昨今の日本の若者言葉には、「非常に素晴らしい」という意味で「神」と形容する言い方があります。

実は英語にも、「神の」「神性の」という意味合いの語である divine を「神々しい」「非凡な」あるいは「すばらしい」という意味で用いる言い方があります。

divine を「すばらしい」という意味で用いる用法は、基本的に口語表現であり、もっぱら女性が用いる言い方とされています。もしかしたら腐女子の面々にはうってつけの表現といえるのかもしれません。


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