人の考えている事について英語で「自分は知らない・分からない」と述べる場合、表現を少し注意して選んでみた方がよいかもしれません。
安直に I can’t understand のように述べると、場合によっては「理解に苦しむ」「腑に落ちない」というニュアンスに響いて誤解を招きかねません。
「自分には分からない」という言い方には固執しすぎず、柔軟に視点を変えて表現を変えてみましょう。そうすれば上手い表現も見つかりやすくなります。
目次
「自分は知らない(情報を得ていない)」と述べる言い方
率直に他意なく「何を考えているか分からない」と述べるなら、I don’t know what he’s thinking. といった叙述が最も無難でしょう。
日本語の「分かる」「分からない」は、情報を得ている(知っている)か否かといった意味で用いられることも多々あります。この点を意識して対応する英語表現を使い分けましょう。
聞かされていない、とも表現できる
まだ特に知らされていない(共有されていない)ので、その人の考えている内容を自分は知らない、というような場合、I don’t know ~とも表現できますが、I haven’t heard ~(まだ聞いていない)のようにも表現できます。
彼が考えていることをまだ耳にしていない
彼が何を考えているのかまだ聞かされていない
「自分には理解が追いつかない」と述べる言い方
情報そのものは聞かせてもらっているが、その内容が難解で、今ひとつ理解が追いついていない・・・・・・というような場合、I have no idea ~ もしくは I have no clue といった表現が使えます。
I have no idea も I have no clue も、「理解の手がかりとなるような糸口がない」というニュアンスで「理解できない」「さっぱりわからん」と述べる言い回しです。相手を非難するようなニュアンスを含めず、素朴に「自分には分からない」と表現できます。
彼が考えていることはさっぱりわからない
口語表現としては figure out も同じ意味でよく用いられます。
彼の考えてることが理解できないなあ
understand は少しだけ使いにくい表現
「理解(する・しない)」という意味では最初に understand を思い浮かべるところですが、understand は「考えている事が分からない」のように述べる文脈では少し使いにくい語です。
I can’t understand (~). と述べると、「自分には理解しかねる」「理解に努めても到底できるものか」というようなニュアンスがこもりがちです。
I don’t understand (~). と述べると、 can’t ~ よりは穏当ですが、「まだ理解できていない」「分かってない」というようなニュアンスがこもりがちです。
understand は「理解できない状態から理解する状態へ移行する」という変化を示す動詞です。その意味で「考えていることが分からない」と述べる表現とは少し相性が悪いのでしょう。
「理解が追いつかない」と述べる言い方
教わっている・説明してもらっている最中に頭の中がゴチャゴチャしてきて理解できなくなる、というような場合は、少し大胆に表現を換えた方がうまく表現できます。
たとえば「話に付いて行けずにいる」とか、「迷子状態だ」といった表現は、話を理解できていないさまを述べる表現として十分に相手に通じます。
こうした表現は、「(相手の話の展開が早足すぎて)追いつけない」という場合はもちろん、「内容が突飛すぎて信じられずにいる」といった場合の戸惑いを示す意味でも使えます。
待って、いまちょっと困ってる(あなたの言ったことを理解するのに)
完全に迷子になってる
まだ理解できていない
ついていけてないです
「思考回路が信じらんない」と述べる言い方
驚きと多少の非難を込めて「考えていることが分からない」と述べる場合、「頭は大丈夫?」と問いかけるような表現を選んでみてもよいでしょう。
「頭が変になっちゃったの?」的な表現
相手の発言や、その脈絡が、あまりに突飛で衝撃的なら、多少奇抜な相づち表現もアリです。
頭おかしいんじゃない?
気でもおかしくなったの?
どうしちゃったの?
「私には到底理解しかねる」的な表現
相手に「正気?」と問う言い方は攻撃的な響きが出てしまいますが、自分に焦点を当てて「私には無理」という風に述べると攻撃的な響きは和らぎます。
どうしても理解できない
for the life of me は否定文を強調する際に用いられる慣用表現です。直訳だと「命が懸かっていたとしても」という意味になります。
とても彼を理解できない
言ってることはわかるけど賛成はできないよ
君のことが全然わからないよ
make(人)out で相手を理解するという意味になります。
彼女の行動が理解できない
wrap one’s head around は「理解する」という意味の慣用表現です。
「何をしでかすか分かったもんじゃない」と述べる言い方
「何を考えているのか分からない」という言い方は、日本語では「次の行動が読めない」「変な事をしでかさないとも限らない」といった意味を込めて用いられることもあります。
そういった趣旨は、I don’t know what he’s thinking. でも表現可能ではありますが、(I haven’t heard ~ だと少し厳しいでしょうけど)、明示的に「予測できない」という風に述べた方が明確に伝わるでしょう。
彼の考えは予想がつかない
彼の頭の中はさっぱりわからない
なお、「予測できない(人)」と端的に表現できる形容詞もあります。
- inscrutable (感情を表に出さないので何を考えているかわからない)
- unpredictable(読めない)
- temperamental(気まぐれ)
- mysterious (謎に包まれた)
「悪だくみを企てていそうな感じ」的な表現
「変な事をしでかさないとも限らない」という含意をより強調するなら、「何か企んでいる」「下心がありそう」という風に表現してしまっても良いかもしれません。
腹に一物ある感じだ
彼女は内心何か企んでいる
彼には下心がある
「凡人の考え及ぶ範囲を超越している」的な表現
あくどい事を考えているのではないが、常人の理解の及ばない事を考えている、非常に高度な・高邁なことを考えているなあ、という場合、beyond や exceed のような語を用いるとニュアンスが伝わりそうです。
これは私の理解の及ぶところではない
これは私の理解を超えている
このアイデアを理解できる者はいないのではという気がする