イギリス発祥の英語のことわざに Strike while the iron is hot. という言葉があります。そのまま訳せば「鉄は熱いうちに打て」。この日本語のことわざは、西欧から伝わったものと考えられるわけです。
ただし日本語の「鉄は熱いうちに打て」と、英語の Strike ~ は、含蓄が多少異なります。鉄は熱して鍛えるものという認識は普遍的な知恵でしょうし、一概に英語由来のことわざとは断定しきれない部分もあります。
英語の「 Strike while the iron is hot. 」の趣旨
日本語と全く同じ意味というわけではない
日本語の「鉄は熱いうちに打て」は、一般的には、伸びしろのあるうちに鍛えておけ、若いうちに頑張って能力を高めよ、といった意味合いで用いられます。
国語辞書には2つの意味が載っています。ひとつ目が、「若い時代に教育を施すべき」という旨。ふたつ目が「対処できるうちに対処せよ」という旨です。
英語のことわざ Strike while the iron is hot. の含蓄は、もっぱら、ふたつ目の「対処できるうちに(手遅れにならないうちに)やっておけ」という意味です。日本語のことわざが含む「若いうちに~」という意味合いは、特にありません。
「手遅れになる前に実行しろ」「好機を逃すな」
英語の strike while the iron is hot について、オックスフォード英語辞典は「機会を即座に利用せよ」という趣旨であると述べています。
Make use of an opportunity immediately
機会を即座に利用しろ、ということ
使い所は「絶好のチャンスを逃すんじゃないよ」と呼びかけるような場面が主にになるでしょう。
彼女、ボーイフレンドと別れたって言ってたよ。今晩デートに誘いなよ。チャンスを逃しちゃいけない
英語で「若いうちにやっておけ」と表現するなら
英語の Strike while the iron is hot. には、日本語の「鉄~」にあるような「成長できる若い頃にちゃんと学ばせなさい」という含意が特にありません。この趣旨を英語で述べるなら他の言い方を用いた方が無難でしょう。
You can’t teach an old dog new trick.
たとえば、 you can’t teach an old dog new tricks という言い回しは、「若いうちにやっておけ」という人生訓の表現として使えます。英文の直接の意味は「老犬に新しい芸当を教えることはできない」。老いると考え方も生き方も容易に変えられなくなる(から、若い内にやっておけ)と諭す言い方です。
君がおばあちゃんに携帯電話の使い方を教えるのは良いアイディアじゃないと思う。老いてから新しいことを学ぶのは難しいんだ