英語で「お客」を表現する言い方は複数あり、「どういう種類の客か」という観点で言い分けられます。乗客・観客・訪問客といった表現それぞれに対応させる使い分けが必要です。
日本語では「訪問客」も「買い物客」も、広い意味の「客」に包含されますが、英語ではどちらかというと行動の方に焦点を当てて「訪問客」「買い物客」と表現する感があります。
目次
「招待客」は guest
家や催し事に招かれてもてなしを受ける客・賓客は、guest の語で表現します。いわゆるゲストです。
guest を招いた側・もてなす側は、guest の対比で host (主催者)と呼ばれます。
guest は「招待された人」という点よりも、むしろ「ホストがもてなす対象」という点に中心的ニュアンスがあります。客を歓待する精神を旨とするレストランやホテルといったサービス業も利用客を guest と呼びます。
どうぞご自由に
ご遠慮なく
私にお任せください
私は自分が招かれざる客であるような気がした
guest の主な訳語
- 招待客
- 賓客
- 貴賓
- ゲスト
- 泊まり客
- 滞在客
- テレビや映画やコンサートの「特別出演」枠
- お客様
招待客 = invitee とも表現できる
「招待を受けた」という部分に主軸を置くなら invitee(招待された人)とも表現できます。
invitee は inviter (招待する人)と対になる表現です。招く側が inviter 、招かれる側が invitee。これは employer と employee の関係と同じです。
「訪問客」は visitor
特にホスト側の招待を受けたというわけではなく訪ねてくる人は、visit(訪れる)+ -or (人)ということで visitor と表現します。いわゆるビジター。
ふいに家に訪れる、いわゆる「来客」は、基本的に visitor が最適な表現でしょう。病院の見舞い客も visitor で表現します。
visitor は、訪問する側が当人の目的のために(自発的に)人や場所を訪れる、というニュアンスを含みます。社交的な目的の場合も、観光目的の場合も、商売目的の場合なども含みます。
彼女はしょっちゅうロンドンへ旅する
昨日は不意の来客があった
visitor の主な訳語
- 来客
- 訪問客
- 客人
- 来訪者
- 観光客
- 来場者
- 見舞客
- お客さま
短時間の訪問・面会は caller とも
ちょっとした来訪のニュアンスでは caller と表現する言い方もあります。主に訪問客や見舞客などを指します。
ごめんくださーいと言って、あるいは呼び鈴を鳴らして、玄関先で用を済ませて帰るようなイメージで捉えてよいでしょう。
観光客は sightseer とも
観光・遊覧・物見遊山、すなわち sightseeing に興じている人は、「sightseeing している人」ということで sightseer と表現してしまう言い方もアリです。
「観客」は audience
映画や舞台における「観客」、コンサートなどにおける「聴衆」、あるいはテレビやラジオの「視聴者」などは audience (オーディエンス)と表現できます。
娯楽的なものを見物するために集まってくる人々、というニュアンスが通底しているといえるでしょう。テレビやラジオも集う必要がないだけで根本は同じです。
audience は集合的に扱われる(集団として捉える)表現であり、観客が複数人いようが大勢いようが基本的に単数扱いです。
audience として集った人の多さ少なさは large および small で表現できます。「人数の多寡」というよりも「規模の大小」と捉えましょう。
彼は観客の一人に質問した
聴衆は少ししかいなかった
audience の主な訳語
- 観客
- 観衆
- 聴衆
- 見物客
- オーディエンス
- 読者
- 視聴者
- テレビの前のみんな
- お客さん
見物人なら spectator とも
視聴・鑑賞よりも「見物」のニュアンスに重きを置く場合、spectator と表現した方がしっくり来る場合もあります。
spectator は主にショーやスポーツの試合を見る見物客を指す言い方です。特に「観戦」は audience よりも spectator の方が適した表現といえるでしょう。
「買い物客」は customer
商品を購入したりサービスを利用したりする顧客・買い物客は、 customer と表現できます。対価(つまり金)を支払って買い求める人々を指す言い方です。
customer は custom +-er という構成の語です。custom には「ご愛顧」「お引き立て」といった意味合いもあります。不特定多数の一見さんも、何度も利用する常連客・お得意さんも customer で表現されます。
この新サービスによりお客様は飛行機とホテルを一度に予約できます
以前バーバラはそのスーパーでよく買い物していた
customer の主な訳語
- 買い物客
- 利用客
- 利用者
- 取引先
- 顧客
- 得意先
- お得意さん
- 注文主
- 買い手
- お客さん
買い物客は shopper とも
場面によっては customer よりも shopper(買う人)の方が買い物客のニュアンスがしっくり来る場合もあるでしょう。
shop は名詞(「店」)の他に、動詞で「買い物をする」という意味もあります。
「顧客」は client
「顧客」は customer と共に client とも表現されます。client は主に弁護士やコンサルタントといった専門的な分野のサービスを利用する客であり、長期間にわたって関係が維持される顧客を指します。
「客」というよりは「依頼人」と捉えた方が理解しやすいかもしれません。
client は個人である必要はなく、企業などの組織に対しても使われます。
彼の顧客リストには多くの有名な政治家がいる
客・顧客という意味の他に、「サービスの提供を受ける・享受する側」という意味合いもあります。たとえば、社会福祉事業の庇護を受ける人。クライアントサーバシステム(client-server system)の client はこのニュアンスで(サーバーからサービスを受ける端末と)理解できます。
client の主な訳語
- 顧客
- 依頼者
- 依頼主
- 依頼人
- 相談者
- クライアント
- 発注者
- お客様
「乗客」は passenger
電車・船・飛行機といった乗り物を利用する客は passenger と表現されます。運転手や添乗員を含まない「乗客」「旅客」です。
その事故が起こった時、電車は脱線したが乗客は怪我を免れた
A線をご利用のお客様はリバプールでお乗り換え下さい
ちなみに passenger は、イギリス英語の口語表現では「集団の足を引っ張っている存在」「足手まといのヤツ」「お荷物」という意味用法もあります。ただ運ばれていくだけの(前進・推進には何にも役立っていない)お客様的なヤツという感じが伝わります。
passenger の主な訳語
- 乗客
- 旅客
- 船客
- 乗船客
- 搭乗者
- 搭乗客
「見込み客」は prospect
ちょっと毛色の違った「客」表現として、「これからお客さんになってくれそうな人」を指す「見込み客」という言い方があります。英語では見込み客を prospect と表現します。
prospect は基本的には「見通し」「展望」「有望なもの」といった意味合いの語です。