英語のスラングの中には、「それ自体は性的な表現というわけではないが性的な意味を込めて用いられる」種類の隠語めいた言い回しも多々あります。
隠語の中には、それ自体が性的意味を示す場合もありますが、婉曲的な性的表現の多くは文脈からの推察と想像力がカギを握ります。語彙力よりも妄想力という構えで理解に挑みましょう。
英語で表現する「おっぱい」「お尻」ちょっとエッチな英語スラング
性的行為の意味で用いられることがある婉曲的表現
真面目な文脈で堅く「性行為」「性的交渉」のように表現する際には sexual intercourse という言い方が適切です。
sex も、 have sex (with) ~ のような言い方で行為としてのセックスを表現できます。ただし行為としての sex は sexual intercourse の略と見るべきであり、多分に口語的なニュアンスがあります。
be intimate with
intimate は基本的に「仲が深まる」という程度の意味合いの語です。たいてい be intimate with +人 の形を取り、普通は「親密になる」「懇意になる」くらいに訳されます。
しかしながら、男女が懇意な間柄になるという場合、どうしても肉体関係のニュアンスが想起されがちです。
とかく intimate は性的関係を連想させがちな語で、もはや純粋な友人関係よりも性的ニュアンスを含む意味合いの方が中心的な語意になりつつあります。
他意なく純粋に知人として「お近づきになった」と述べる場合は、intimate は避けて close (近しい)のように表現する言い方が好まれます。
have relations (with ~) も、「関係を持つ」という意味が転じて、男女が性的な関係を持つという意味で用いられたりします。
get laid
寝る
get laid は、婉曲的表現というよりは、むしろストレートに性的関係を指し示すスラングです。
基本的には「横たわる」という意味。日本語の「寝る」に相当する言い方と言えるでしょう。
get laid は英語圏では広く一般に浸透・定着している表現で、オックスフォード英語辞書は「get laid」を一個の独立した語彙として扱っています(定義は「Have sex.」)。ニュース系メディアも普通に使用しています。
go to bed with
ベッドを共にする
男女一緒にベッドに入るということが何を意味するのか。もはや婉曲的というよりは直接的な表現と言うべきかもしれません。
sleep with も、やはり大人の男女の夜の事情(というか情事)を暗に指す言い方です。
act of darkness
秘め事
暗がり(darkness)での行為といえば、大体やる事は限られます。
darkness には秘密・内緒といった意味合いもあります。暗がりで密かに営む行為といったニュアンスが感じられます。
get busy
get busy は文字通りに捉えれば「忙しくなる」あるいは「仕事に取りかかる」という意味の表現です。これらの意味合いでも一般的に用いられます。
これも文脈によっては「やることやる」「事にいそしむ」というようなニュアンスで用いられます。
make babies もセックスの意味で用いられます。
get down
get down は「降りる」、「一筆したためる」、「身をかがめる」、等々、幅広い意味で用いられる言い方です。
そして、セックスするという意味合いで用いられることもあります。
膝をついて身を屈めるという姿勢を取ることが、行為を連想させるのでしょう。多分。
occupy
occupy は基本的には「占有する」「占領する」という意味の動詞です。
「部屋を間借りする」とか「トイレを使う」といった意味の用法もあります。確かにトイレを使う際にはトイレを一時的とはいえ占有することになります。
occupy を性交の意味で使用した初出はシェイクスピアの「ヘンリー四世(第二部)」(Henry IV, Part 2)。となると、いわゆるひとつの「我がモノにする」といったニュアンスで納得してしまいそうになるから不思議なものです。
score
score の最も基本的な意味は「得点する」。派生的な意味合いとして、「成功を収める」「うまくやり込める」といった意味もあります。
そして score の俗な用法には「〈男性が〉うまく性交の相手を見つける」(「研究社 新英和中辞典」より)という意味もあります。
日本語で言うならモノにする、といった感じでしょうか。
have fun
have fun は「楽しむ」という意味の基礎的で一般的な表現です。これ自体が性的ニュアンスを含むわけではありません。
Have fun ! は「楽しんでね」という気さくなあいさつ表現です。
ただし、文脈によっては、「楽しいこと」といって念頭に置いている行為がアレな場合があります。
たとえば have fun with girls のような表現からは「女の子と戯れたい」という欲望が漂います。
have fun with me なんて言うと、「ぼくとイイことしない?」的な不埒な誘い文句に聞こえます。劣情を気取られないようにしましょう。
funny business
funny business は「いかさま行為」「ばかげた振る舞い」という意味合いを主とする言い方です。「不法行為」という意味合いもあります。
そしてセックスを指す場合もあります。「あんなコト」のようなニュアンスでしょうか。
hanky-panky
hanky-panky も funny business と同様に「いかさま行為」「いかがわしい行為」といった意味のある俗な言い回しです。そして性行為を指す場合もあります。
だいたい同じ意味用法の表現に rumpy-pumpy という表現もあります。こちらは、もっぱら性交の意味で用いられるスラングです。
home run
もともとは野球におけるホームラン。転じて「成功」の比喩でもあります。さらに転じて「性交」の比喩でもあります。
おおむね hit a home run のような言い方で、性交に及ぶことを表現します。
go all the way
行くところまで行く、という意味の表現。「(男女関係が)行くとこまで行く」というニュアンスを含む場合があります。
go all the way は「完全に同意」という意味でも用いられます。意外と使い出のある言い方です。
想像力がモノを言う隠喩も甚だしい英語スラング
roll in the hay
roll in the hay はもっぱら性交を意味するスラングです。
hay は基本的には「干し草」を指す語ですが、hit the hay=「眠る」のように寝床のニュアンスで用いられる用法があります。
roll (in) の意味合いが「ベッドに転がり込む」なのか、それとも「ベッドの中で転がり回る」なのか、その辺はいまいち判然としません。おそらく前者、しかしどちらにしてもベッドの中で濃厚にいちゃつく様子が感じられる言い方です。
knock boots
性行為。特に、遊び感覚の(娯楽的手段としての)セックスという尻軽なニュアンスを多分に含む言い方です。
なぜ knock boots(ブーツをぶつ)という言い方がセックスの隠喩になったのか、語源は定かでありません。一説では、boots は尻(butt あるいは buttocks)が転訛した語であって交接・交合の際に肌が激しくぶつかる様子が knock とか何とか。
horizontal dancing
horizontal dancing も、もっぱら性交を意味するスラングです。
文字通りに解釈すれば、水平な(horizontal)ダンス。
horizontal mambo ともいいます。「夜の社交ダンス」感じが濃厚に漂います。語感も乙。
horizontal hula ともいいます。情熱的に腰を振るような感じが濃厚に。
green gown
green gown は16世紀頃の文献に用例が見られる古い言い方です。少女が純潔を喪失する「初めて」の行為の指す意味合いが多分にあります。
green gown は文字通りには「緑色のガウン」ですが、これは芝の上でくんずほぐれつして衣服を芝まみれにした状態を指します。
少年少女が家の裏手の秘密の花園で禁じられた遊び、のような情景を彷彿とさせます。
put the devil into hell
put the devil into hell も古い表現です。ボッカチオ(Boccaccio)の「デカメロン」に登場する言い方です。
悪魔を地獄にハメる(put into)という、挿入の隠喩。
in a biblical sense
in a biblical sense も性交の隠喩です。know someone in the biblical sense のような言い方で用いられます。
直訳すれば「聖書的な感覚を教える」といったところ。官能的な悦びを法悦になぞらえた表現というべきでしょうか。
日本語だと官能的な恍惚・絶頂と宗教的な法悦とは表現上区別されますが、英語ではどちらも ecstasy の語で示されます。つまり biblical sense とは、とりもなおさず、エクスタシーのことです。
「法悦」といえばベルニーニ(Bernini)の彫刻作品「聖テレジアの法悦」、その聖女の恍惚の表情が想起されますが、この「聖テレジアの法悦」は英語では「Ecstasy of Saint Teresa」といいます。
furniture moving
furniture moving は、家具が動いちゃうくらい激しいギシアン行為を指す言い方です。move furniture ともいいます。
隠語スラングも大体この辺になってくると、まともな文字媒体では用例が見つからない、スラング中のスラングという様相を呈してきます。
しかしながら、本当にそういう意味で使うのか?という疑問は無粋でしょう。辞書的に固定された表現というよりも、その場その場で臨機応変に編み出された婉曲的な言い方として捉えるべきでしょうから。
lay pipe
字面どおりにいえば「配管」。
おそらく、アレを水道管に見立てて設置(というか埋設)(というか挿入)して、水道管に液体を通す、というイメージでしょう。
feed the beaver
ビーバー(beaver)は英語における女性器の隠喩です。それに餌を与える(feed)、何か咥えさせるということで。
feed the kitty ともいいます。kitty も女性の陰部を指すことのある語です。
stuff the beaver ともいいます。stuff は「モノを詰め込む」くらいの意味と捉えてよいでしょう。
play doctor
いわゆるひとつの「お医者さんごっこ」。
本当に英語でもこんな風に言うのかと疑いたくもなりますが、そういうプレイ(sexual role-playing)と考えれば、まずまず納得。
nookie
nookie は直接的に「性交」の意味で用いられるスラングです。
語源は不確かではありますが、英語の f*ck に相当するオランダ語あたりの卑語「neuken」が英語に伝わって変化した語だろうという推察が定説です。
how’s your father
イギリス英語のスラング表現。「アレ」とか「あのこと」というような意味合いで名詞的に扱われる言い方です。
文字通りに捉えれば「御尊父はご機嫌いかが」のような意味でしょう。
how’s your father が、どうしてセックスの意味で用いられるようになったのか、由来や出所は不明であり諸説紛々としている状況です。
bury the bone
もともとは、犬が穴を掘り獲物の骨(bone)を埋め(bury)て隠す行動を指す言い方です。
bone は男根(の硬直した状態)を指す場合があります。boner ともいいます。
chimney sweeping
chimney sweeping は「煙突掃除」を指す語。
煙突掃除は、棒状のブラシを煙突の穴に挿入してピストン運動によって内壁をこすりススをかき落とす行為です。
smack the salmon
smack は「音を立ててキスをする」という意味のある表現です。
salmon(鮭)が薄桃色の肉ということであれに見立てられているのでしょう。
fill the cream donut
ドーナツの中にクリーム(フィリング)を注入するという、視覚的な生々しさのある隠喩表現です。
ドーナツは大抵の場合は donuts(または doughnuts)と複数形で表記しますが、ここでは敢えて単数形が用いられている点にも注目しましょう。
play Tetris
「テトリス」で遊ぶという意味。
まあ落下ピース(テトリミノ)の I 字型ピースを挿入して4列消しする図は、喩えに使えそうという気持ちは分かりますが。
shuck the oyster
字面通りに受け取れば「牡蠣殻を剥く」、カキの殻をはぎ取る、という言い方です。
日本語にも、女性の陰部を「秘貝」と表現する文語的な言い方があります。
tunnel patrol
トンネルの警備巡回。
言わんとすることは辛うじて分かる。
性的関係や状況を明に暗に表現する英語スラング
old flame
かつて肉体関係のあった相手・元恋人
old flame は以前の恋人、特に性的関係にあった恋人という意味のある言い方です。
flame は基本的に「炎」を意味する語彙であり、転じて「情熱」、「激情」、さらに口語表現としては「恋人」の意味でも用いられることのある語です。《情愛の対象》というニュアンスが感じられます。
friend with benefits
セフレ
friend with benefits は、肉体関係(性行為)を目的とした交際、つまり「セックスフレンド」とか「ヤリ友」と呼ばれる関係を指す言い方です。
恋愛感情による精神的なつながりがなく、もっぱら性的欲求を満たすという利益(benefit)によって成立している交友関係、といったところでしょうか。
いわゆる「ヤリ友」をストレートに表現する語としては fuck buddy という表現もあります。文字通り、fuck(ヤる) buddy(相棒)。
play the field
二股・三股の関係
play the field は、口語表現では「手広く色々な事に手を出す」、「複数人と同時に関係を持つ」という意味で用いられる言い回しです。いわゆる浮気、ふたまた、同時交際。
もともと play the field は、競馬において「(人気馬以外の)全ての出走馬に賭ける」賭け方を指す言い方です。そう考えると「みんな本命だよ」とうそぶくような思惑すら透けて見えそうな気もします。
facts of life
性の知識
facts of life は文字通りに捉えれば「生の実態」。文脈によっては「性の実態」、すなわち、どうやったら赤ちゃんができるのかというような生殖がらみの性知識を特に意味します。
birds and the bees
花とミツバチ。facts of life の初歩的な例として引き合いに出されることの多い組み合わせです。
on the game
売春
on the game は主にイギリス英語において「 prostitute (娼婦)として働くこと」、すなわち売春行為を指す言い方です。
売春行為の意味の他に「盗みを働く」という意味でも用いられます。どちらにしても、賤業に身を落とすニュアンスがありそうです。
in the club
孕んだ
in the club はイギリス英語のスラングで、妊娠(している状態)を指します。get や put の語と共に get her in the club(彼女を妊娠させる)のように表現されます。
in the club は、妊娠は妊娠でも、未婚の女性が妊娠した(できちゃった)状況を指す意味合いを強く含みます。
なお、一般的には、妊娠(している状態)は pregnant と表現されます。
In the family way
妊娠する
「家族になる」的な言い方です。
定冠詞でなく不定冠詞を用いた in a family way という言い方は、主に「くつろぐ」「打ち解ける」という意味で用いられます。
Netflix and chill
やらしい目的で家に誘う
Netflix and chill は、下心満載で異性を家に呼び込む場面を指す言い方です。「ウチでDVD観てかない?」という感じで誘って、まったり映画なんか見てイイ雰囲気になって、その後はムフフ……という展開を期待するような情況です。
派生的な言い方で Netflix and jill という表現もあります。jill は自慰を指すスラング。つまり、独りでエロビデオを鑑賞して独りで済ませることを指します。
pitch a tent
勃起
文字通りにいえば「テントを張る」という意味の語。
勝手に起立した柱は bone または boner 。boner には「へま」「バカなこと」といった意味合いもあります。まさに愚息。