おいしい食事は快楽そのものであり、食を通じたコミュニケーションは共感を生む絶好の機会です。おいしいと感じたら気兼ねなく表明しましょう。その一言が周りの人も幸せにします。
「おいしい」と表現する言い方は色々あります。まず思い浮ぶ言葉は delicious でしょうか。あるいは tasty なんかも思い浮かぶでしょうか。食事の場面や、どういう種類のおいしさを表現するかによっても、表現は使い分けできます。
「味覚」を表現する英語の形容詞
英語でどう言う?「料理が不味い(マズい)」
「美味しい」を伝える基本的表現
delicious:とても美味しい
delicious は「美味」を表現する代表的な言い方の一つと言えます。味わいの他に「おいしそうな香り」を評する際にも使えます。
ただし、delicious は豪勢な食卓や手間ひまをかけた一皿について述べる向きが強く、《非常に美味》《芳しい》というような堅めのニュアンスを伴う向きがあります。「いい味だね」程度の気さくなニュアンスのつもりで delicious と表現すると、ちょっと大袈裟に聞こえてしまいがちです。
delicious の省略表現として delish という言い方があり、こちらはスラングめいた気さくな使われ方をします。日本語の「ウマい」のような軽い言い方には delish がうまく当てはまるでしょう。
tasty:強い風味のある
tasty も「美味しい」という意味でよく使われる表現ですが、そのおいしさは《風味の良さ》という方向にかなり傾きます。風味がよくて香ばしい、そういった種類のおいしさを形容する言い方です。
これは本当に美味しいカボチャのスープですね
yummy:ウマー (子供ことば)
yummy は「とても美味しい」と表現する口語表現で、基本的に幼児語ですが、日常会話では大人も使います。気軽にうめーと言いたい場合に使えます。
yummy を短縮した yum や、 yum-yum と重ねて述べる言い方もあります。
ambrosial:神々しいほどの美味しさ
ambrosial は ambrosia の形容詞形で、第一義は「神々しい」、ありは「神々にふさわしい(食べ物)」(すなわち神饌)を指す語です。転じて「非常に美味なるもの」という意味でも用いられます。
神に捧げる供物としてふさわしいような極上の味わい、といったニュアンスが感じられます。
それを口に放り込んだら、信じられないくらい美味しかった
ちなみに、ambrosia の語が念頭に置いている神はギリシア・ローマ神話の神々(gods)です。
scrumptious:すばらしくおいしい
scrumptious は口語表現で「ステキな」「すばらしい」、「とってもおいしい」というような意味で用いられる表現です。「すてきな食事」といった訳語がうまくはまりそうな表現です。
省略して scrummy と言うと、より気さくでカジュアルに表現できます。
私たちは昨晩とても美味しいディナーを食べた
delectable:舌が愉悦を感じる味わい
delectable は基本的には「快い」とか「楽しい」といった意味のある表現で、食事の美味しさを形容する表現としても用いられる語です。
delectable が表現する美味さのニュアンスは、ほぼ delicious と同様といえますが、実際の使われ方は delicious よりも限られます。一般的に用いられる場面はあまりなく、シェフや料理評論家といった専門家に好んで用いられる表現のようです。
finger-licking:思わず指先まで舐めるような
finger-licking は、文字通りには「指をなめる」という表現。多くの場合 good を伴って finger-licking good(指を舐めたくなるほどグッド)のように用いられます。
finger-lickin’ という表記もよく用いられます。あるいは finga licking とも。
この「指を舐めるほど」という表現は、手で直接つまんで食べるような食べ方をする物を暗に念頭においた言い方です。特に骨付き鶏もも肉のフライやテリヤキなどを形容する言い方として用例が多く見つかります。
6種類のスパイスを使った手羽先は指を舐めたくなるほど美味しい
moreish:中毒性がある
moreish は主にイギリス英語の口語表現で、「美味しくて、もっと食べたくなる」という意味合いで用いられる言い方です。
おそらくは more+ish という成り立ちの語でしょう。「やめられない」「とまらない」「もうひとくち食べたくなる」という、中毒性のある美味さが示せる言い方です。
このナッツは食べだすと止まらなくなっちゃうよね
flavorsome:風味豊かな
flavorsome は、flavor+some で「フレーバーがある」という意味構成の語です。「良い味がする」「風味が豊か」といった意味合いで用いられます。
ワインのように馥郁とした複雑な味わいが楽しめる食べ物・飲み物を表現できる言い方です。
「香り豊か」という意味合いを表現するなら flavorful や full-flavored のような表現がよいでしょう。
その紅茶は温かくて風味豊かだった
piquant:ピリ辛で美味しい
piquant は香辛料などの辛味が効いているおいしさ、好ましい辛さを表現する言い方です。日本語でいう「スパイシーな味わい」のニュアンスに対応する言い方といえるかもしれません。
そのチーズには良い辛さがある
英語の spicy は「スパイスによる(強めの)味わいや風味が感じられる」という程度の意味で、それ自体に味の善し悪しは含まれません。(スパイスが効きすぎて辛い・マズいという意味でも使われます)。
スパイスの香りが舌や鼻を刺激して辛い、不快という明確なマズさは pungent と表現できます。
tangy:インパクトのある味わいのウマさ
tangy は、強い味、尖った味、強烈さのある味わい、を表現する言い方です。
なかなか日本語ではニュアンスを表現できない語彙ですが、「ガツンとくる味」のように訳してみるとしっくり来る場合がままあります。
ママンがレモンの効いた絶品タルトを作ってくれた
tangy は「おいしい」という好ましい評価を前提とする表現です。いくら味わいが強烈でもマズいと感じるものは tangy とは表現されません。
luscious:甘い美味しさ
luscious /lʌʃəs/ は、「好ましい甘い味」および「水分を豊富に含んでいるさま」を表現する言い方です。「甘美な」という表現がいちばんしっくり来る訳語でしょう。特に飲み物を形容する場合が多いようです。
luscious は元々は delicious が短縮された言い方です。
祖父母からたくさんの熟れた美味しいブドウをもらった
succulent:とってもジューシー
succulent は、とてもみずみずしい(ジューシーな)さまを形容する表現です。juicy も同じ意味で使われます。したたるような水気を感じさせる表現です。
luscious はもっぱら果物のような「甘さの味わえる飲食物」を形容する表現ですが、succulent や juicy は果汁に限らず、たとえば肉汁あふれるステーキなども表現できる言い方です。
彼は肉汁あふれる大きなステーキの一切れを口いっぱいに頬張る
dainty:繊細な味わい
dainty は、「華奢な」「繊細な」という意味合いの形容詞です。そのまま食べ物を形容して「繊細な味」という表現に使えます。
単なる味の濃さ強さではなく、むしろ抑制の活かされた絶妙な加減の味わい。高級食材や珍味の品のある美味しさを形容する場面に適した表現です。
太った老人は毎日贅沢な食べ物を食べている
「好き」「良い」を使って表現する「美味しい」
「美味しい」と言わなくても、「私はこれが好き」「これってすごく良いよね」と言えば美味しいことが伝わります。「好き」「良い」を使った表現の方が簡単で使いやすく、口語表現では好まれて使われます。
「好き」を使って「美味しい」
I like it:これ好きだな
I like it で「これが好き」と訳せます。「好き」=「美味しい」ことが分かります。I like it をもっと強調したいのであれば、I really like it と言いましょう。
このパイどう?―とっても気に入ったよ!
I love it:これ大好き!
I love it で「これが大好き」と訳せます。自分がとっても気に入っていることを表せるので、ただ「美味しい」と言うよりも気持ちが伝わるでしょう。誰かに作ってもらった料理などには、この表現を使うと良いでしょう。
これが私の得意料理なの―これ大好きだよ!
ちなみに某社のコピーである I’m lovin’ it. は、英語としては不正確で、一般的な口語表現というわけでもない(I love it. のほうが一般的に使われている)というクセのあるフレーズです。微妙な違和感が催されるからこそ印象に残るという意味では商業的にはものすごい名文句です。
「良い」を使って「美味しい」
good:まあまあいいね
good は、美味しいときにも、さほど美味しくないときにも、両方のシチュエーションで使える単語です。使うときには、言い方や表情に注意しましょう。nice も、美味しいときにも、美味しくないときにも使える単語なので同様の注意が必要です。
さして美味しくなさそうに good と言うと
美味しくなさそうな表情や声音で good と言うと、「べつに美味しくはないけど文句を言うほどではない」「まあ許せるかな」というニュアンスが出ます。
美味しそうに good と言うと
美味しそうな表情や声音で good と言うと、「まあいいんじゃない!」「意外とイケるじゃん」というニュアンスが出ます。
つまり、good だけでは「美味しい」という意味は表現できず、表情や語調などでポジティブなニュアンスを加味しなくてはなりません。
ただし so を付けて so good と述べると、これは「とても美味しい」という積極的な意味を伴います。sooo goood のように so を延ばして使うことで、さらに美味しいと思っている気持ちを表現できます。また、really を添えて really good と述べる場合も、「とても美味しい」というポジティブな意味合いが加わります。
アイスクリームすごく美味しい!
great:とても良い
great は、good を強調した単語です。日本語では「とても良い」と訳せます。食べ物に対して使うときには、「美味しい」という意味で使えるでしょう。
これ本当に初めて作った料理なの?とっても美味しいよ!
amazing:驚くほど、感動的な
amazing は、「驚くほど」「感動的な」を表す形容詞です。通常、良い意味で使われます。食べ物に対して使われるときには、「驚くほど美味しい」「感動的なほど美味しい」を意味します。いつも食べ慣れているものには使いません。
その国の果物は全て素晴らしく美味しかった
awesome:めっちゃ美味しい
awesome は、スラングで「とても良い」「素晴らしい」を意味します。食べ物に対して使われるときには、「めっちゃ美味しい」となります。
このケバブ食べてみなよ。めっちゃ美味しいよ
best:最高
少し大袈裟な表現になりますが、best を使うことで最上級に美味しいことを表せます。
今まで食べたピザの中で最高に美味しかったです!
「美味しそう」を意味する英単語
食べる前であっても、その見た目や匂いで食欲が刺激され、「美味しそう」「美味しいはず」と思うことがあります。
look:(美味しそうに)見える
look(見える)を使って、look tasty(美味しそうに見える)、look delicious(とても美味しそうに見える)と言います。
あのケーキ美味しそう。取ってくるね
mouth-watering:よだれが出てくる
mouth-watering は、とても美味しそうな見た目や匂いで食欲をそそる食べ物を表します。日本語では「よだれが出るような」とでも訳せるでしょう。
この部屋でよだれが出てくるような良い匂いがする
appetizing:食欲をそそる
appetite は「食欲」を、appetizing は「食欲を刺激するような」「食欲をそそる」を意味します。
鉄板上のジュージュー音をたてるベーコンは食欲をそそる