英語で「疲れた」を意味する語といえば tired がまずは思い浮かびます。tired は基本的で一般的な表現ではありますが、英語で「疲労こんぱい」を表現する言い方は他にもたくさんあります。
あ~疲れた、と言いたいとき、I’m tired. と表現しても良いのですが、より具体的なニュアンスを含んだ表現が使えると、疲れ度合いや体調やウンザリした心境などもニュアンス豊かに伝えられるようになります。
フォーマルでもカジュアルでも使える表現
疲れた~と表現する文章は、基本的には、疲労している当人を主語に位置づけ、動詞の過去分詞形(-ed)によって「疲れている」と形容する形を取ります。すなわち I’m tired. のような表現です。
tired は「疲れた」「もうたくさん」というニュアンス
おそらく最も基本的といえる「疲れた」表現は tired でしょう。
tired は他動詞 tire の過去分詞形です。「疲れさせられた」→「疲れた」というニュアンスが根底にあります。(これは他の過去分詞の表現でもおおむね同様です)
とても疲れている
疲れの原因について言及する場合は前置詞 from を添えて tired from ~ のように表現できます。
連日の激務で疲れてしまった
tired に of+名詞を続けて述べると、身体的疲労ではなく、飽き飽きしたとかウンザリしているといった心理的疲弊を表現する意味合いの表現になります。たとえば tired of waiting といえば「待ちくたびれた」という意味の表現、tired of exams といえば「試験はもううんざりだ」という意味の表現になります。
もう何もかもいやになった
tired out は「完全に疲れきった」ニュアンス
tired を強調して「すごく疲れた」と述べるなら、シンプルに強調表現を使って very tired と表現しても構いませんが、tired out のような熟語表現を使えば少しこなれた印象が出せるでしょう。
out は副詞で、「すっかり」「完全に」「なり果てた」といったニュアンスを添えます。「疲れきった」「疲れ果てた」「くたくたになった」というような疲れ度合いが表現できます。
彼女は徹夜をしてすっかり疲れ果てた
exhausted は「体力が底をつく」「疲れ果てた」ニュアンス
exhausted は「資源を使い尽くして底をついた」という意味の表現です。自動車なら「ガス欠」、井戸なら「枯渇」、疲労については「気力体力がもう残っていない」というニュアンスです。
家政婦は炊事洗濯で疲れきってしまった
worn out は「擦り切れてボロボロになった」ニュアンス
worn out は(服や靴などを)擦り切れてボロボロになるまで使い切った、という意味で用いられる表現です。人を形容する場合は、いわゆる「ボロキレのようになった」という比喩的な表現として疲労困憊を表現できます。
今日は家でパーティーを開いて料理をたくさんしたのでもうヘトヘトだ
彼女は子供達の世話をしていて疲れきってしまった
burnt out は「燃え尽きた」ニュアンス
burnt out (または burned out )は、燃え切った・燃え尽きたという意味合いの語で、ロウソクや燃料が最後まで燃焼した、あるいは電球が切れたといった状況を指す語です。継続的・持続的な燃焼の果てに底をついたというニュアンスがあります。
短期間の重労働による疲れ、というよりも、長期間にわたる労働や辛苦によって溜め込まれた・鬱積した疲労を表現する場面に適した表現です。
赤ん坊が夜泣きをするので、妻は睡眠不足で疲れきっている
彼は過労で疲れきってしまった
spent は「力が費えた」ニュアンス
spent は spend の過去分詞で「消費」「浪費」あるいは「散財」の意味合いで多く用いられる語です。疲労を表現する文脈では、体力や活力を使い込んでしまって疲れてしまったというニュアンスが表現できます。
その馬は働きすぎて疲れていた
長い一週間だったなあ。もう疲れちゃった
drained は「力を使い果たした」ニュアンス
drained は「排水する」「枯れる」といった意味を基本とし、富や資源などの蓄えを外部に出し尽くして失うというニュアンスも持つ語です。
exhaust のニュアンスが「使い尽くす」なら、drain のニュアンスは「出し尽くす」と対比できるかもしれません。
持てる体力・活力・精力を出し尽くした、もうこれ以上は絞り出しても力が出てこない、といったニュアンスで使えます。
彼はきつい仕事をして体力が尽きた
うつは気分が悲しくなるのに加えて、力がなくなってしまったような気持ちになります
weary は「身も心も疲れた」ニュアンス
英語で「疲れた」を意味する表現の多くは、exhausted にしても drained にしても、動詞の意味を転用して(半ば比喩的に)疲れを表現する言い方です。そんな中で weary はほぼ純粋に「疲れた」という意味を表現する語彙といえます。かなり古い語のようで、一般的には他の表現の方が多く使用例を見かけます。
weary は、体力的な疲れと共に精神的な疲れも表現できます。気落ちするような経験をして心も体も弱ってしまったような状況ではしっくり来そうです。tired と同様「うんざりする」「飽き飽きした」という意味合いでも用いられます。
私は体も心も疲れているのを感じた
当時私はすでに戦争に疲れきっていた
カジュアルな場面限定の俗語表現
「疲れた」という言い方はカジュアルな場面でも多用されます。スラングめいた言い回しの中にも、多くの表現が見られます。
どの表現もやや語気を強めて言います。
dead tired
tired (をはじめとする「疲れた」系の語彙)を強調する表現として 、「dead」を副詞的に用いる言い方があります。機能としては very と同様に「疲れた」の度合いを強める意味を添えます。
日本語よろしく「死ぬほど疲れた」と表現する言い方です。
しぬほどくたびれた
bushed
bushed は主にアメリカ英語の口語表現で、おおむね exhausted(疲れ果てた)に相当する意味合いの表現として用いられます。
bush は「茂み」「藪」あるいは「未開の地」といった意味の語で、bushed は「藪に覆われた」という意味もありますが、これが疲労とどうつながるのかは今ひとつ定かでありません。
beaten
アメリカ英語のスラングでは beat の過去分詞形 beaten も「疲れた」という意味で用いられます。もともと「打ち負かされた」「打ちのめされた」といった意味でも用いられる語なので、連想しやすい表現ではあります。
pooped
poop は基本的には「うんこ」を意味する語ですが、tire と同じく「疲れさせる」という意味もあります。pooped も tired と同じく「疲れた」という意味で使われます。
poop(ed) もアメリカ英語の口語表現です。
tired out のように pooped out (すごく疲れた)という言い方もできます。
ちなみに、poop の語そのものは「うんこ」の他に複数の意味を持つ表現です。まあ日常生活では下品な語とみなされるでしょうけれど。
knackered
knackered はイギリス英語の口語表現です。「~をくたくたにさせる」といった意味で用いられます。knackered out の形で用いられることも多いようです。
元の語である knacker /nækə/ は、イギリス英語で「廃船または廃馬の買い入れ業者」を指します。
「分詞」によるニュアンスの違いに注目
英語で「疲れた」と表現する言い方はだいたい形容詞で叙述されます。その多くは、動詞が分詞の形を取って形容詞化した表現です。たとえば tired は tire の過去分詞形です。drained も exhausted も pooped も同様です。
ただし、文脈によっては必ずしも過去分詞形で表現されるとは限りません。同じ動詞が現在分詞の形で用いられる場合もあります。
過去分詞で表現される場合と、現在分詞で表現される場合とでは、文章における焦点の当て方が異なります。
過去分詞(-ed)は疲れた当人に焦点を当てる
tired や exhausted をはじめとする「-ed」の形を取る形容詞は、話者本人または文章の主語・主体となる人物が疲れていることを文の中心に据える表現といえます。
たいていの場合、「疲れている当人」が文章の主語に位置づけられますが、a tired man のように形容されたり、It makes me tired. のような叙述されたりもします。
現在分詞(-ing)は疲れの原因に焦点を当てる
tired や exhausted と同じ動詞を使い、現在分詞「-ing」の形を使って tiring や exhausting のように表現する方法もあります。
現在分詞を用いた表現は、もっぱら「疲れの要因となっているもの」「人を疲れさせるもの」を形容します。
フルマラソンを走るのはとても疲れる
この使い方ができる表現はいずれも基本となる動詞がどれも他動詞であるという点がポイントでしょう。
この辺のニュアンスは日本語ではなかなか説明しがたい部分ですが《過去分詞―受動態―疲れる自分》vs《現在分詞―進行形―疲れの要因をまさにもたらす物事》という感じで、英語の過去分詞と現在分詞のニュアンスをつかむ手がかりになりそうな気がします。