英語の動詞には、「意味が似通っている」上に「使いどころは異なる」種類の類似表現があります。対比して違いを把握し、混乱を防ぎましょう。
日本語の訳語を手がかりに単語の意味を理解する方法は、こうした紛らわしい表現に混乱させられがちです。動詞を「動き」や「方向性」「対象の有無」といった抽象的なイメージで捉えられるようになると、それだけでもかなり改善できます。
目次
意味は共通するが「自動詞・他動詞」の違いがあるパターン
英語の動詞には自動詞と他動詞という区分があります。目的語を取るか否か、という違いがあり、文型に影響します。
たいていの動詞は自動詞・他動詞どちらの用法もあり柔軟に使えるのですが、中には自動詞と他動詞で語形が変わる場合もあり、使い分けに困る要因になったりします。
このパターンに該当する語は、基本的に音感がよく似ていています。いちど把握できてしまえば、却って明確な表現として捉えられるようになります。
rise と raise
rise と raise はどちらも「下から上へ移動する」イメージを根幹とする動詞です。
rise は自動詞であり、自力で上昇する(自己完結する)ものについて用いられます。たとえば sun(太陽)などが主語に置かれます。
太陽は東から昇る
タバコの煙が上がった
raise は他動詞で、動作の影響を受ける対象(目的語)が上方へ向かう様子を表現します。
彼は注目を集めるために両手を挙げた
sit と seat
sit と seat は共に「座る」「着席する」イメージを根幹に持つ語です。
sit は自動詞で「座る」、 seat は他動詞で「座らせる」「座るように促す」という意味合いで用いられます。
seat myself と言って「自分を座らせる」すなわち「座る」と表現する言い方もあります。
満員電車で座れなかった
彼女はそう促される前に座った
lie と lay
lie と lay は「寝る」「寝かせる」という意味の動詞です。
lie は自動詞で「横たわる」、lay は他動詞で「横たえる」といった訳語が充てられます。
lie の過去形が lay であるため、 lie と lay の紛らしさは最高レベルです。字面だけでなく時制や目的語の有無なども判断材料として意識しましょう。
すごく眠たいからベッドで横になりたい
この重たいバッグを長い間背負ってきて、ようやくソファの上に置けた
ちなみに lie は「ウソをつく」という意味でも用いられます。この意味の lie は lie – lied – lied と時制変化します。これも lie と lay が最高に紛らわしい表現たる要因といます。
意味がだいたい似ているがニュアンスに差のある表現
意味は似ているがニュアンスには違いのある類語表現は、日本語に訳してしまうと同じ和訳が対応してしまって違いが分かりにくくなる場合が多々あります。
hear と listen
hear は物理的に音が聞こえるかどうか、 listen は意識的に耳を傾けているかという点で使い分けられます。
hear は「聞こえる」イメージ、 listen は「聞く」「聴く」のイメージで把握しましょう。
聞こえないよ
彼の話を注意深く聞いた
end と finish
end と finish は共に「終わる」「終える」というイメージで使われます。
end は単純に何かが終わるニュアンス、他方 finish は何かが成し遂げられるニュアンスで使われます。
end は stop と言い換えられる、finish は complete と言い換えられる、と考えると差がわかりやすいかもしれません。
その番組は7時半に終わるよ
宿題をやり終えた
spend と waste
spend と waste は共に「時間を使う(費やす)」イメージで使われますが、とりわけ waste には「時間を無駄遣いした」ニュアンスを込めて用いられます。
2時間ヨガの実践に取り組んだ
3時間もゲームに時間を費やした
take と bring
take と bring は共に「物を持って運ぶ」という基礎イメージがあります。話の中心地へ向かうときには bring 、話の中心地から離れるときには take を使います。
パーティーには何を持ってくる?
このパンフレット持って行ってもいいですか?
take と bring の違いは go と come の違いに共通するものがあります。go と come はそれぞれ「行く」「来る」の訳語に対応づけられがちですが、ニュアンスの焦点は話題となっている地点から離れるのか、あるいは近づくのか、という点です。出先から家に帰ってきた場合に come を用いる場合も多々あります。
いつ帰ってきたの?
This afternoon.
今日のお昼ごろかな
いつ名古屋に行くの?
Next Saturday.
来週の土曜日
look と seem
look と seem はどちらも「~のようだ」と訳される表現です。
lookはもっぱら外見を頼りに判断する意味合いで用いられます。他方 seem は外見だけでなく諸々の情報を総合して判断する意味を込めて用いられます。
たとえば、レストランでメニューに掲示されている料理写真を見て「このパスタおいしそう」というときには、 This pasta looks so nice. と表現できます。さらに料理の詳しい説明を読んだり聞いたりした上で「このパスタおいしそう」と述べるなら、 This pasta seems so nice. と表現した方が適切でしょう。
すごい背が高い!彼女はモデルとかそんな感じだろうな
あの話し方とあの服装、彼はフランス人っぽいね
deny と refuse
deny と refuse は共に「(~を)断る」という意味で用いられる表現です。どちらの単語も他動詞ですが、目的語として取る語の性質が異なります。
deny を使うときは、例えば警察からあらぬ疑いをかけられたりしたときなどであり、その根幹は「間違いを正す」イメージがあります。
私はその過失への責任を否定した
refuse を使うときは、例えば、「このかさ300円で買わない?」など何かを持ちかけられたときであり、根幹には「相手の申し出を断る」イメージがあります。
彼はその真珠が1万円といったが、完全にまがい物くさかったので、私は買わなかった
been と gone
been と gone は、それぞれ be と go の過去分詞で、「行った(ことがある)」という意味合いの表現で用いられます。もっぱら I have been to Kyoto. や He has gone to Kyoto. のように使用されます。
been は「行ったことがある」という意味で使われます。 gone は「行ってしまった」というニュアンスで使われます。
北海道へ行ったことありますか?
彼女はアメリカへといってしまった
東京に居つつ「北海道に行ったことがある」と言うつもりで I have gone to Hokkaido. と表現してしまうと、「私は北海道へ旅立った」と述べる表現になってしまって会話と事実が食い違うことになります。
study と learn
study と learn は主に「(~を)学ぶ」と訳される表現です。
study には勉学に専心する、その勉学の活動そのものを指すニュアンスがあります。英語を学ぶ過程で暗記したり、練習問題を解いたり、あるいは専門分野の研究を進めたり、といった活動は study で表現されます。「勉強」のニュアンスが近い動詞です。
learn は学ぶ活動そのものよりは、学びを通して何か(知識や技術)を身につけるという結果に焦点を当てる語です。「習得」のニュアンスが近い動詞です。
私はたくさんの勉強を通して、英語で正確に意見を言えるようになった
数学をたくさん勉強したのに、何も得られなかった
他の語との組み合わせに応じて使い分けられる表現
意味合い上はどれを使っても適切そうな感じがあっても、実際には併用する語に応じて特定の語が選択される、という種類の動詞もあります。いわゆるコロケーションです。
日本語にもコロケーションは多々見られ、「下駄を履く」「ズボンを穿く」「床を掃く」という塩梅で使い分けられますが、英語と日本語ではコロケーションの発生する表現の組み合わせが異なります。
訳語を通じて把握すると混乱を招きやすい要注意パターンといえます。
play と go それに do
スポーツやアクティビティを目的語に取って「する」と述べる動詞には、 play と go そして do があります。
play と go と do の使い分け方には大まかな指針があります。
- 球技は全般的に play が対応します。
- skiing や camping のように -ing 形で表現される語は go で表現されます。
- 球技や -ing 形の表現でなければ do が動詞として充てられます。
初めて父親とゴルフをした
キャンプが好きな人の気持ちが知れない
子供のころから空手をしている
rent と borrow
rent と borrow はどちらも「(~を)借りる」という意味で用いられます。rent は対価を支払って借りるものを指します。
borrow は金銭的やりとりを伴わない貸し借りにおいて用いられます。たとえば友達から鉛筆を借りるというような時。
彼女の気を引こうと、ドライブのためにレンタカーで高級車を借りた
ペン借りていい?
lose と miss
lose と miss は共に「失う」という意味で用いられます。失う対象の性質によって使い分け方が決まります。
lose は実体のあるモノを失う場合に用います。「なくす」「逸失する」という意味合いが中心です。
miss は特に実体はない抽象的なものを失うニュアンスで用いられます。「逃す」と捉えるとよいでしょう。
miss には動作を「し損なう」「やり逃す」、あるいは「不在に気づく(寂しい)」という意味合いもあります。いずれも抽象的なものについて言及している共通点があります。
鍵が見つからない。きっと失くしちゃったんだ
彼女の電話番号を聞きそびれた
たった今飛行機に乗り遅れちゃったんだけど、新しい航空券手配してくれない?
飛行機自体は実体のあるものですが、ここでいう my flight とは「飛行機に乗ること」を指しているので、 miss を使って表現します。
フォーマルさ度合いに応じて使い分けられる表現
ほとんど同じ意味で用いられる類義語で、たいていの場合どちらの語を使っても意味が通る、ただし「フォーマルな場面では一方が他方よりも好まれる」という性質のある組み合わせパターンもあります。
この手の表現は意味上用法上の適切・不適切といった違いは特にないので、「紛らわしい表現」という括りには当てはまらないかもしれません。場面に応じて「より適した」表現を選ぶという点では共通していますので、同じ流れで把握してしまいましょう。
begin と start
begin と start は共に「始める」という意味で用いられます。ニュアンスの違いは特になく、どちらの動詞を使ってもよいケースがほとんどですが、フォーマルな場では begin の方が似つかわしい表現とされます。
(試験で)では始めてください
私が7歳のとき野球を始めました
ただし、自動車などの「乗り物」を主語に取る場合は決まって start が用いられます。
車が動かない。きっと壊れているに違いない
speak と talk
speak も talk も前置詞 to を伴って「(~と)話す」という意味で用いられる動詞です。speak と talk は大抵の場合どちらを使っても文意が通ります。
ただし talk には「親しい人と打ち解けて話す」といったニュアンスが含まれるため、フォーマルな場では speak to ~ の表現の方が好まれます。
森さんとお話できますでしょうか?
マイクとめちゃくちゃ話したい気分だわ
speak には「発話」そのものを指すニュアンスがあり、talk には相手を前提とした「会話」のニュアンスがあります。この際 tell や say なども含めてニュアンス差を把握しましょう。