英語の前置詞 within は、意味も使いどころも in に似ており、区別や使い分けの難しい単語です。特に時間について述べる場合は、 within と in の違いはちょっと注意して読み分ける必要があります。
要点を一言でまとめるなら、日本語の感覚における「時間的《以内》」を指す表現は within の方であって、in は「以内」よりもむしろ「後」と訳した方が適切な場合が多々ある、という点がポイントでしょう。
within と in の基本的な意味
ちょっと遠回りするようですが、はじめに within と in の基本的な意味合いをそれぞれ確認しておきましょう。
within は「範囲内」を基本とする語
within の根本的なイメージは「中に」あるいは「範囲の中に」のように捉えられます。内部と外部を隔てる境界が意識されていて、その境界の内側に留まるイメージがあります。
範囲となる対象は、どちらかというと《時間》《距離》《量》《規則》といった抽象的なものごとが主です。「常識の範囲内」(within reason)というような言い方もできます。
物質的な存在の内側(たとえば「建物の中」)を示す意味合いも within で表現できます。この場合は in よりもむしろ inside(の前置詞としての用法)と同義と捉えられます。
君はこの論文を1週間以内に仕上げなくてはいけないよ
私が戻ってくるまで建物の中にいてね
やりたいようにやればいいよ、ただし常識の範囲内でね
in は「空間内に収まっている」ようなニュアンス
in は最も基礎的な英単語の一つであり、意味合いも広範に及び、用法も多岐にわたります。根本的はやはり「中に」というところですが、in は対象が空間の中にすっぽり収まっているようなイメージで捉えておくと、対比しやすいでしょう。
in は物理的空間(の中)も、比喩的な「空間的イメージ」(の中)も表現できます。fall in love のように、かなり抽象的な表現もありますが。空間的なイメージで捉えられることも難しくはないでしょう。
彼女に恋をしている
あちらに向かってお進みください
僕は日本で教育を受けた
彼は二三日すれば帰ってくるよ
within は内外の「境界」がわりと意識されますが、in はさほど意識されません。
時間の表現における within と in の使い分け
時間を指し示す表現の中で前置詞 in が用いられる場合、日本語なら「(時間)が経過した後」とでも訳すべき時点を示します。
たとえば in 5 minutes といえば基本的なニュアンスは「5分後」です。
「5分以内」と述べる場合には、5分という範囲の中という意味を込めて、within を使って within 5 minutes のように表現した方が適切です。
リサは5分後に戻ってくるよ
リサは5分以内に戻ってくるよ
前置詞 in が「~後」を意味する感覚の背景
Oxford Dictionaries による in の定義 を参照すると、次のような記述に出会います。
Expressing the length of time before a future event is expected to happen(Oxford Dictionnaries)
未来の出来事が起きる前の時間の長さを表現している
すなわち、 Lisa will be back in 5 minutes. という例文ではリサが戻ってくるまでに5分ある(5分という時間が収まっている)という含意があります。
期間を経ることが前提されているため、時間が前倒しされることも特に想定されていません。
前置詞 within が「~以内」を意味する感覚の背景
前置詞 within は「範囲内」に焦点を当てた表現です。英英辞典では次のように定義されています。
Occurring inside a particular period of time(Oxford Dictionaries)
ある特定の期間の内に起こっている
before a particular period of time has finished(Cambridge Dictionaries Online)
ある特定の期間が終わる前に
within は、in とは逆に、対象期間を過ぎた後(後ろ倒しされること)が想定されていません。
また、対象の範囲内における遅速は問われていません。リサが戻ってくるのは今すぐかもしれないし、3分後かもしれません。きっかり5分後かもしれません。しかし6分後となると想定外です。
within と in は厳密に区別されない場合も割とある
in と within はニュアンスが異なり、使い分けるべき語彙ではありますが、実際のところは特に違いをハッキリ意識せず(曖昧な区別のまま)使われる場合もままあります。
たとえば、本来は within が妥当と言うべき「~以内で」のニュアンスで in が用いられる場合があったりします。
事前の認識では「5分後に(in 5 minutes)戻る」と思っていたけれど、実際には5分も経たないうちに戻ってきた、という場合は珍しくありません。結果論的に文章の整合性を質すとすれば前置詞 in は不適切だったと言えなくもありませんが、そのように断罪する人がまずいません。使い方を違えてもそうそう不都合は生じないものです。
「時間厳守ですから絶対に超えるべからず」という場合や、「必ず5分以内に戻ります」という場合にように、断言のニュアンスを加える場合は、使い分けを強く意識してみるとよいでしょう。