多忙をきわめる情況を、日本語では「時間が足りない」と表現しますが、英語でも lack of time (時間の不足)という言い方で同じ趣旨が表現できます。
もっとも、「足りない」という表現に固執するのでなければ、言い換えの余地はいくらでもありそうです。たとえば、「もっと時間の余裕が欲しい」とか、「多忙を極める」「めちゃくちゃ急ぐ」とか。柔軟な発想は表現のひとつのポイントといえます。
「時間が欠乏している」と表現する言い方
英語でも日本語と同様に「時間が – 足りない」という言い方によって多忙さを表現できます。
lack
lack 単語は「不足」あるいは「欠乏」という意味合いで用いられる名詞、もしくは動詞です。不足と欠乏とでは意味的な隔たりが大きいようにも思えますが、要は「必要なものが十分なだけない」ということを示しているわけです。
lack time
lack は名詞としても動詞としても使えます。動詞の用法には自動詞・他動詞どちらの用法もあり、他動詞として time を目的語に取れば、それで「時間がない」と表現してしまえます。
だめだ時間が足りない
lack of time
lack を名詞として扱う場合は、前置詞 of を伴って lack of time と表現すれば「時間の不足」あるいは「(十分な)時間の欠如」という意味が示せます。
lack of time は定冠詞 the を加えて the lack of time と表現する場合と、特に冠詞を用いず述べる場合と、どちらの言い方も見受けられます。どちらかといえば、定冠詞のある言い方が多く見られますが、冠詞を付けずに述べられている例も多く見られます。
しかし時間がなかったのでジェームスは個別に対峙することろまでは踏み込めなかった
―― RAPPLER, September 05, 2017
時間が足りなくて仕事を終わらせられなかった
short
short は「短い」という意味を中心とする形容詞で、これは距離・長さ的な短さだけでなく《時間的な短さ》を形容する文脈でも使えます。
be short of time
形容詞の叙述用法では「足りない」「不足している」という意味でも使えます。
我々には時間がない
この「足りない」という意味の short は、特に I’m a dollar short. のような言い回しでよく用いられます。これは会計・支払いの場面などで「1ドル足りない」と述べるフレーズです。
run short of time
動詞を、be動詞の代わりに go や run といった動詞に置き換えて述べると、「時間が足りなくなる」というニュアンスが表現できます。
もう時間がない
run short of ~ は「不足する」「足りなくなる」という意味合いで幅広く使えるイディオムです。覚えておいて損はありません。
あらやだお茶を切らしちゃってる
run out of
run out of ~ は「使い切る」「切らす」という意味合いのイディオムであり、「元々は結構あったのに段々となくなっていく」という意味合いが表現できます。「時間がなくなっていく」というニュアンスででピッタリはまる場面がありそうです。
run out of が示す意味合いは、今後のことについて「これから時間が足りなくなるよ」と述べるような場面と相性のよい表現です。現在進行形や未来表現を使った言い方がすんなり出てくるようになっておくと、忠告・警告に使えます。
そろそろ決断しないと、時間がなくなるよ
今すぐ出発しないと、もう時間がないんだ
run out of も、時間に限らずさまざまな場面で「もうない」と表現する意味で使える便利表現です。
ケータイの充電がなくなりそう
車がガス欠になったため彼は遅れて到着した
「十分な時間がない」と表現する言い方
英語で「時間が足りない」と述べる場合、「満足といえるだけの時間がない」というような切り口で表現すると、英語らしい自然な言い方が見つかります。
don’t have much time
don’t have much time は「時間を多く持ち合わせていない」といったところで「十分な時間がない」「時間が足りない」と表現する言い方です。否定語が不十分・不満足といったニュアンスを醸してくれます。
あんまり時間がないんだ
not enough
「十分にはない」「十分ではない」という意味では not enough も使えます。
たとえば There is no enough time. 、あるいは We don’t have enough time. という風に表現でいます。
enough は語義上「目的を遂げるために十分な」という意味合いを含みます。そのため、not enough で「時間がない」と表現する場面は、特定の何事かを念頭において「(それをするには)時間が足りない」と述べるような場面が念頭に置かれます。
忘れ物を取りに一度帰宅しようかとも考えたが、それには時間が足りなかった
never have enough time (時間がいくらあっても足りない)
not enough time に関連する表現として、ついでに never have enough time という言い方も把握してしまいましょう。
never have enough time は、文字通りにいえば「十分なだけの時間を得ることは決して叶わない」といったとこで、これは日本語の「時間がいくらあっても足りない」に通じる言い回しです。
絶対に時間の余裕などできっこないような、常に時間に追われて忙殺されているような、そういう情況を表現できます。
have no time to spare
have no time to spare は「時間を割くだけの余裕がない」「そんな暇はない」と述べる言い方です。spare は「(~に時間を)割く」という意味の動詞。
昨日とても面白そうな本を見つけたのだけど、今は読書に割いている時間がないんだ
time to spare は、それ自体「空き時間」「暇な時間」「時間の余裕」という意味で幅広く用いられる言い方です。「have no 《time to spare 》」というカタマリ感で把握しておきましょう。
have no time to spare は、時間を割く対象を特に想定せず、漠然と「暇がない」と述べる言い方にも使えます。
最近はさっぱり時間に余裕がない
「時間がもっと欲しい」と表現する言い方
「時間が足りない」という表現は、「もっと時間があれば足りる」ということの裏返しです。率直に「時間がもっと必要」と表現してしまえば、ほぼ同じ意味合いが表明できるわけです。
need more time
「時間がもっと必要」を素朴に英語で表現すれば need more time のような表現になるでしょう。実際これで十分に英語として通じます。
完成・完遂が目前にあるのに、その前に時間切れが訪れてしまう、というような場面がシックリ来る表現といえます。
締め切りが迫ってるんだ、あー時間が足りない!
I wish I had more time
具体的な目途を見据えているわけではなく、漠然と「もっと時間があったらいいのに」というような意味で「時間が欲しい」と述べるような場合、wish のような語で願望の表現として述べると、うまく意味合いが示せるでしょう。
動詞 wish といえば「反実仮想」の構文。wish +動詞の過去形 、という組み合わせで、現在の情況について「時間が欲しい」と(仮定的に)言及する表現になります。「時間があったらいいのに」→「どうせ時間は足りない」という諦観のニュアンスまで醸します。
もっと準備の時間があったらなあ
「急いでいる」「忙しい」と表現する言い方
「時間が足りない」という表現は、突き詰めれば、「忙しい!」「やることが沢山ある!」という趣旨を述べる言い方です。単純素朴に busy と表現したり、I have a lot to do. と表現したりすれば、結局は同じ趣旨が伝わります。
busy
busy は日本語の「忙しい」におおむね対応する表現です。副詞を加えて I’m so busy. 、あるいは too busy とか super busy なんて表現すれば、「時間がいくらあっても足りない感」が出せるでしょう。
busy(形容詞叙述用法)に続けて doing つまり動詞の現在分詞を加えると、「 (doing によって)忙しい」という、理由を言い添える言い方にできます。
試験の準備でおっそろしく忙しい
I’m busy to death. という言い方もあります。これは「死ぬ(ほど)忙しい」「忙殺」に通じるニュアンスで使えます。
have a lot to do
have a lot to do は「やらくてはいけないことが沢山ある」と言って「だから忙しいんだよ」と伝える言い方です。
a lot に前置詞 of を加えて I have a lot of work to do. のように表現すれば、すべき事柄の種類が明示できます。
今日は用事がてんこ盛りだ
in a rush または in a hurry
時間がなくてドタバタしている情況を表現するなら、in a rush 、あるいは in a hurry のような言い回しが使えます。
rush も hurry も、「大急ぎ」「急いで(慌てて)行う」といった意味を示せます。
彼は急いで部屋を掃除した