英語の前置詞「for」のコアイメージと具体的な用法・用例

英語の前置詞 for は、非常に幅広い用法のある語です。訳語も文脈に応じて大きく変わります。特定の日本語表現と対応づける考え方では到底、充分には捉えきれません。

for のように表面的な意味の幅が広すぎる語こそ、コアイメージを元に意味・用法を捉える考え方が重要です。根本的ニュアンスを通じて末端部分の具体的な用法・用例を理解していきましょう。

ということで、PEN英語教師塾の動画レッスン講義シリーズより、今回は前置詞 for を取り上げたレッスンをご紹介します。

前置詞 for
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前置詞 for のコアイメージは「対象を求めて指さす」

英語の前置詞 for の根本的イメージを、敢えて日本語で表現するとすれば、「対象を求めて」、その「求める対象を心理的に指さす」イメージと捉えられるかもしれません。

coreimage-for
対象を求め、心理的に指さすイメージ

指さしのイメージはかなり抽象的なものです。必ずしも「方向」を指すとは限らず、「時間の流れ」、「関係」、「観点の基準」を指すようなイメージと捉えるべき例も多々あります。

目的地に向かうイメージで基本を捉える

for の最も基本的な用法は the train bound for Hakata というような言い方でしょう。for のコアイメージに近い用法ともいえます。

bound for

the train bound for Hakata は「目的地としての博多に向かう列車」であり、博多を目指している、博多に向かってるというイメージで捉えられます。

This train is bound for Hakata.
この列車は博多行きです

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leave for

leave for ~ の for も bound for と同様「求めて」「向かって」というイメージで捉えられます。

leave は「去る」「出発する」という意味合いの動詞ですが、for に続く語は目的地です。

たとえば、leaving for London といえば、「ロンドンが目的地として指さされており、それ(そこ)を求めて場を離れる」という含意があると説明できます。

I’m leaving for London soon.
まもなくロンドンに向けて出発します

「目標の対象」を指すイメージの用法・用例

目的地・対象に向かって

「何かを求めて、それに向かって指さして」というコアから、「目的地に向かって」「(電話・手紙・贈り物など)に向けられた」といった意味を持つようになった用例があります。

This train is bound for Hakata.
この列車は博多行きです【目的地(博多)に向かって】
This is for you.
これ、君にあげるよ【あなたに向けられたもの】

目的・利益を求めて

「何かを求めて、それに向かって指さして」という同じコアから、「〜の目的で」「〜を得るために」「〜を求めて」という意味を示す用例もあります。

「目的」を表す例

I’m waiting for the bus.
私はバスを待っているんです【バスを目的として待っている】
Send for the doctor right away.
すぐに医者を呼びにやりなさい【医者を求めて人を遣る】
This device is for squeezing oranges.
この器具はオレンジを絞るためのものです【オレンジを絞ることを目的としている】

「利益(〜のために)」を表す例

Milk is good for your health.
牛乳は健康にいいよ【あなたの健康のためによい】
What can I do for you?
何をいたしましょうか? 【あなたのためにする】 ※店員が客に応対する言葉

「〜に賛成して」「〜にちなんで」

「対象を求めて、それに向かって」というコアから、「〜に賛成して(支持)」「〜にちなんで」を表すようになった例もあります。

「〜に賛成して」を表す例

アイデアやプランに賛成して、というニュアンスの用例があります。

Are you for or against the new welfare tax?
新しい福祉税に賛成、それとも反対?

「〜にちなんで」を表す例

He was named Martin for his grandfather.
彼は祖父の名にちなんでマーチンと名付けられた

同様の状況では after が一般的ですが、「祖父の後をうけて」のafter (順序性を表す)に対して、for は「祖父に向けて(敬意を表して)」の意味合いがあります。


「時間(の流れ)」を指すイメージの用法・用例

特定の日時に

「arrange the meeting for 日時」という表現では、「日時を指さす」感覚で for が使われていると説明できます。カレンダーの該当の日時を指さしている様子をイメージしてみましょう。

The next meeting is arranged for the fifth of June.
次の会議は6月5日に設定されている

「時計のアラームを特定の時間にセットする」ときに使うforはもっとイメージ的にぴったりくるかもしれません。Set the alarm for 5:30. というと、「5時半を目標にしてそこにアラームをセットする」という感覚だと言えます。

Set the alarm for 5:30.
5時半に目覚ましをセットしよう

期間

期間の for は用例としては親しみのあるものですが、コアの「〜に向かって・〜を求めて指さす」感覚とつなげるのはやや難しいかもしれません。for の意味世界の全体像をしっかり把握するために、ここで少し掘り下げてコアとつなげておきましょう。

I’ve studied French for three years.
私は3年間フランス語を勉強したことになる
I’ll study French for the next three years.
私はこれから3年フランス語を勉強する

for のコアの「指さす」感覚とつなげて理解するには、「『1年目、2年目、3年目』を指さしながら時間が流れていく中でフランス語の勉強が進展する」という感じに捉えると良いかもしれません。

意味方向を逆にして、for the past three years(過去3年間)という言い方も可能です。

同じ「期間」を表す前置詞に during がありますが、「流れゆく時間を指さす」感覚の forと違い、during が示すのはある時点からある時点までの明確な期間なので、the period of などといった期間設定の表現の追加が必要です。

I’ll study French during the period of next three years.
これから3年の間、フランス語を学ぶ

「関係の対象」を指すイメージの用法・用例を指す

「関係の対象を指す」カテゴリに分類できる for には、「代理・交換(〜の代わりに)」、「適合(〜に適した)」「割合(〜につき)」といった意味展開があります。

〜の代わりに

「〜の代わりに、〜を代表して」 代理を表す例

speak for the president(学長の代わりに話す) という表現では、話者が講話をしている状況と学長との関係を指さすところから「学長の代わりに」という意味が導かれていると説明できます。

I’m speaking for the president.
私は学長の代わりに話をしています

「〜の代わりに、〜と引き換えに」 交換を表す例

exchange yen for dollars という表現では、円との交換において指さされている対象がドルになっていると説明できます。交換先をforで示しているわけです。

Let’s exchange yen for dollars.
円をドルに交換しよう

〜に適した

This is a good place for (a) camp.
ここはキャンプに向いた場所だ

「〜に適した」という意味から、「〜向けの」「〜に合った」という派生的意味を持つ用例もあります。

We offer good TV programs for children.
私たちは子ども向けのよいTV番組を提供します【子どものことを指して(考えて)作成した番組】
Wear a dress appropriate for a formal party.
フォーマルパーティーに合ったドレスを着なさい

〜に対して、〜につき(割合)

割合を示す for もあります。割合の for は特にコアを押さえていないと意味がとりづらいので、しっかり確認しておきましょう。

one divorce for every four marriages という表現では、1件の離婚の差し向け先が every four marriages 、という形で使われていると説明できます。

According to a recent survey, there is one divorce for every four marriages.
最近の調査によれば4件の結婚に対して1件の離婚がある

for は差し向け先、to は向かい合う対象を示し、ニュアンスがよく似ているので、割合の for は to に差し替えることも可能です。

According to a recent survey, there is one divorce to every four marriages.

「判断の観点」を指すイメージの用法・用例

「判断の観点」を指さす for にも豊かな意味展開があります。「〜にしては(基準)」「〜にとって(判断の差し向け対象)」「〜の理由で、〜のせいで(理由・原因)」といった用例があります。

「〜にしては、〜するには」 基準の例

cool for this time of year(この時期にしては涼しい) という表現は、「この時期を基準として指さした場合、それよりも涼しい」といった感じの成り立ちだと説明できます。

It’s very cool for this time of year.
この時期にしてはすごく涼しいね

「〜にとって」 判断の差し向け対象の例

Christmas is a big deal for us.(クリスマスは私たちにとってとても大事なことです) という文では、「クリスマスが大事である」という判断が「us」に差し向けられている、と考えることができます。

基本的に同じ構造だと言えるのが、good for health という表現です。

Milk is good for your health.
牛乳は健康によい

「牛乳はよい」という判断が「your health」に差し向けられている、と説明できます。

少し構文の違う、ややわかりにくい用例を見てみましょう。

It is important for him to be more patient.
もっと辛抱強くなることは彼にとって重要である

学校英語などでは「It is〜 for him という文の for him は意味上の主語」と説明されることがありますが、この for him は Christmas a big deal for us と基本的に同じで、話者の判断の差し向け先であると考えるべきです。

話者の判断(重要である)を for によって him に差し向けることで「彼にとってitが重要である」という意味合いが表現され、続く to be more important で It の内容を示すという構文です。It is 構文を使わず、Being patient is important for him. と言い換えることが可能です。

big deal for us, good for your health, important for him は基本的に同じ構造であると考えることができます。3つを並べて見比べて、for 以降を心の中で指さす気持ちで読んでみましょう。

Christmas is a big deal for us.
Milk is good for your health.
Being patient is important for him.

「〜の理由で、〜のせいで」 理由・原因の例

known for 〜、praised for 〜 といった表現では、for によって「知られている理由を求める」「褒められる理由を求める」といった「(指さして)求める」感覚があると言えます。単に機械的に日本語の「〜の理由で」と訳すだけでなく、「(指さして)求める」コア感覚をイメージして、身体に馴染ませましょう。

This is a school known for its computer courses.
ここはコンピュータ学科で知られている学校だ
He was praised for saving her life.
彼は彼女の命を救ったことでほめられた

「〜にとって」と訳されるforとtoの使い分け

日本語だと同じ「〜にとって」と表記される文でも、英語にすると for を使うか to を使うかの判断に迷う場合があります。少し掘り下げて、しっかり使い分けができるようにしておきましょう。

「それは私にとって大切なことだ」という日本語の英訳としては、That’s important to me. というふうに to を使うほうが一般的です。

いっぽう、「牛乳は健康にいい」という日本語の英訳としては、Milk is good for your health. と for を使うのが自然です。

important to me, good for your health という使い分けには、to と for のコアの違いが関わっています。to は「対象に向き合って」というコアから単純に対応関係を示す「〜に対して」というニュアンスを持っています。一方 for は「〜に向かって・〜を求めて指さす」コアから、「〜のために(有益・必要)」というニュアンスを持っています。

直接「〜に対して」という場合には to を使い、「〜のために有益・必要」という意味が含まれると for を使う、というふうに理解しましょう。

もう少し用例を見てみましょう。

  • 「彼女は僕によくしてくれる」

She is good to me. が自然です。直訳すると「彼女は僕に対してよい状態である」という単純な対応関係を示している、と説明できます。to のコアは「対象に向き合って」なので、人と人が向き合っている対等な感じが出ています。

仮に for を使った文例 She is good for me. を考えてみると、直訳は「彼女は僕にとってよい状態である」という感じになり、彼女が僕にとって対等な行為者ではなく、僕に利益をもたらすモノとしての存在であるかのようなニュアンスになってしまうと考えられます。

  • 「彼女を知っているといろいろいいことがある」

Knowing her is good for me. が自然です。主語となっているのが彼女という人ではなく、「彼女を知っていること」という事物なので、for を使うのが適していると言えます。


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