ビジネス英語での自己紹介の基本を覚えたい、という英会話初心者の人は多いです。ハズさない定番の話題と言い回しと合わせて、ちょっとだけ気の利いたプラスアルファの表現をストックしておきましょう。特に目立たなくてもいいから最低限きちんとした印象を与えたい、という人向けの基本的な考え方も紹介しています。
→「英語が分からない」初心者が最初に覚えるべき対応法と英語フレーズ
基本の考え方
初心者の人の中には、つい気負ってしまって苦手意識で頭がいっぱいになってしまう人がいます。どんな要素を優先して身につけておけばよいのでしょうか。まずは、定番の自己紹介をするためにがむしゃらに難しい単語や言い回しを勉強する必要はないことを知ってください。重要な要素はむしろ、語彙を増やすことよりも、固まってしまいがちな考え方を柔らかくすることにあります。
大事なのは英語の語彙よりも伝えようとする態度
英会話に苦手意識があると、ふとした瞬間に言葉がパッと出てこなかっただけで頭が真っ白になり、黙り込んでしまいがちになります。これは外国語を話すときに特有のものと思われがちですが、実はたとえば日本語でのスピーチでも同じだということに気づきましょう。
英語のスピーチも日本語のスピーチも同じだとすると、英語のスピーチでふと言葉が途切れたときの対策は、日本語のスピーチをするときのものとほぼ同じです。それは、「完璧でなくていいからともかく何か言葉を続ける」ということ。
「詩が書けない、詩が書けない、僕には詩が書けない」という内容の詩を書いた子どもがいた、というエピソードがあります。表現で大事なのはともかく表現することであって、その内容は自分の思う完璧でなくてもいい、という発送の転換の重要性を教えてくれていると思います。
日本語のスピーチでも会話でも、「緊張してるな」と思ったら「緊張しています」と口に出してしまったほうが言葉もつながるし、自分もリラックスできて場も和む、ということが言われます。英語のスピーチでも会話でも、同じことに心を留めてみましょう。
Well,
Let see…
Uh…
I’m nervous.
I’m getting stage fright.
※nervousには「いらいらしている」という意味合いもあり、文脈によっては意味を誤解される場合があるので、stage frightのほうを使うか、額の汗をぬぐうようなジェスチャーとともに使うとより安全です
I’m a shy person.
I forgot what to say.
内容はそれほどないし、プラスの内容でもないけれど、自分に正直だしその場をつなぐことができる、そんな言葉のストックをいくつか作っておくのがおすすめです。
きちんとした印象を与えるために避けなければならないのは、黙り込んでモジモジしてしまうことです。これは非常に子どもっぽい印象を与え、好印象にはつながりません。ともかく何か言葉を続けることができれば、周囲の人はそこからあなたという人間の像を描き出してくれます。語彙が豊かでなくとも内向的であっても精一杯表現しようと努力している、その姿に皆が好印象を抱いてくれるでしょう。
ボティランゲージが多くを語る
ボディランゲージは多くを語ってくれます。積極的に取り入れましょう。欧米人のような大きなボディランゲージを真似しろという意味ではありません。英語ネイティブでない私たちは、語彙や発音が完璧でないので、そこを補足して伝えやすくするためにボディランゲージを使おうということです。
日本語で話すときにも、「これくらいの大きさの」「とても遠い」「非常に良い」などを示したい場合、わかりやすくするためにボディランゲージを使うことがあると思います。それと同じ気持ちで、ボディランゲージの力を借りましょう。
たとえば日本人が苦手なrの音が含まれていて、別の単語と混同されることのあるrice(米), right(正しい、右), grass(草) などは、ジェスチャーや繰り返しの発音で誤解率を減らすことができるでしょう。不完全でもできるだけ伝えようとする努力は、聞く人に好印象を与えます。
和製英語に注意
和製英語には注意しましょう。全ての和製英語を勉強しようとすると膨大になってしまって挫折しますから、まずは自分の自己紹介を日本語でざっと考えてみます。横文字の単語が出てくるようならその単語を一度ネット検索して和製英語でないかどうか確認する、という方法が効率がよいでしょう。
日本語の中には、というは日本社会の中には、英語をもとに作られた通じない英語(和製英語)が沢山あります。日々あらたな和製英語が作られている状況です。日本語の中で見聞きする英語(っぽい)表現は必ずしも英語として正確な(通じる)表現とは限らない、という点は留意しておきましょう。
日本語はわかりやすく伝える
特に名前や地名などについて言及するとき、日本語をそのまま発音することがあります。日本語の発音は外国人にとって慣れないものなので、まずはゆっくりはっきりと発音します。
余裕があれば、名前なら英語にすればどういう意味なのか、地名ならば日本のどのあたりとかいった関連情報も盛り込んでみるのがおすすめです。親切ですし、印象にも残るでしょう。
自分なりの定型文のストックを
日本語のスピーチやプレゼンでも、言うことをメモしておいたり、繰り返し練習したりすることがあると思います。定番でハズさない自己紹介を1つのテーマにつき1つ程度用意しておき、できれば最低1文ずつが滑らかに出てくるまで練習しておきましょう。
この記事で紹介する自己紹介のテーマは8つ。単純にこの1テーマにつき1文ずつ話したとしても8文となり、それなりのボリュームになります。実際に話すさいには1テーマ1文でもいいですし、割り当てられている時間によって数テーマから1テーマのみに絞って掘り下げてもよいでしょう。
つまり、自分なりの「定型文」のストックを作っておくということです。教科書や参考書の例文を覚えたように、自分なりに組み立てた「定型文」を蓄積しておきましょう。
会話の中では簡潔に、スピーチの場合は話題をふくらませて
自己紹介する場面は、会話の中でお互いが自己紹介する場合と、一定の時間を与えられて一人で喋るスピーチがあります。
会話の場合は簡潔に1文ずつ話し、「あなたは?」と問いかけたり間を作ったりするなどして、代わる代わるに自己紹介するリズムを作りましょう。1つずつの話題は会話の中で双方が興味を持ったものがおのずと掘り下げられていきます。
スピーチの場合は、はじめから1つから数個のテーマを自分で続けて掘り下げていく形になります。どの程度の時間話すか、どの程度情報を盛り込んで自己開示するかは、周囲の状況を見ながら合わせていきましょう。この点は日本語でのスピーチでも同じです。
実践編
ビジネスシーンで定番の、英語自己紹介の話題を8つ紹介します。自分なりの定型文のストックを作るのにお役立てください。
名前とニックネーム
自分の名前を述べる英文としては、 I’m ~. のような表現が一般的です。日本の英語教科書で学ぶ My name is〜 は、日常英会話ではあまり一般的とはいえない表現です。
学生仲間やプライベートの集まりといった気さくな場では、ファーストネームで自己紹介する言い方が合いますが、ビジネスシーンや畏まった場ではラストネーム(名字)を述べた方が適切です。あるいはフルネームで自己紹介してもよいしょう。
I’m ~. と名乗ったあとに、さらに話題を続けるなら、名前の由来や意味、英語に直訳した場合にどんな意味になるか、といった話題は自然な話の流れとして続けられます。
I’m Yoko. Yo means ocean, and Ko means child or person. My parents named me in the hope that I would be a generous child like the ocean.
Call me ○○.
※○○にはニックネームを入れます。
ニックネームは、本名を外国人にも発音しやすい名前に変えたり、意味が同じ英名に置き換えたりしましょう。
英語圏の人たちは「子音+母音」の発音が3つ以上並ぶ名前の発音が苦手です。あなたの名前がこういった構成である場合には、「子音+母音」の並びを2個以下に抑えましょう。
- Yasuko→ Yakko
- Takahiro→ Taka
母音続きの名前も苦手なので、これもどこか変えるのがおすすめです。子音を加えたり、意味から英語に置き換えるなどします。
- Aoi→ Ciao(チャオ、イタリア語でこんにちは), Yao
Ai→ Chai(チャイ、お茶の意味), 愛さんならLovely(ラブリー), 藍さんならIndigoなど
チョコレートが好きならCoco(ココ)など、好きな食べ物からアイデアを得るのもいいでしょう。ただし、日本語の響きをクールだと感じる人も多いので、英語に置き換えてしまうよりもどこかアジア的な響きを残したニックネームにしたほうがいいかもしれません。
ときどき、名前やニックネームが英語で妙な意味だったりする場合があるので、念のため調べておくと安心です。Google翻訳では音声入力ができるので、英語→日本語の状態でマイクのアイコンを押し、調べたい名前を発音してみます。音声入力ができたら翻訳結果を見て、どんな意味なのか確認しましょう。
仕事や役職
まずは基本の例文を紹介します。
I’m a ○○.
※○○は職種
I work in ○○.
※○○は業界名
I work for ○○.
※○○は会社名
自分の業界名や職種名、会社の英語名などは事前に調べて、パッと出てくるようにしておきましょう。横文字の会社名や役職名を持っている人も、それが和製英語である可能性もあります。あらかじめ正しい言い方・表現の仕方を調べておくと万全です。
学校での専攻
欧米では学問の専攻は非常に重視されます。学生の場合は初対面のときに必ずといっていいほど「What do you major in?(何を専攻してるんですか?)」と質問されるほどです。大学の構造が日本と違う(入るのが簡単で卒業するのが難しく、必死に勉強しなければいけない)ところが多いのもあって、学問の専門性というものを非常に重視するのです。
※majorは自動詞なので、必ず専攻名の前にinが必要なことに注意してください
出身地・住んでいるところ
I live in ○○.
定番の表現に加え、気候や文化、美味しい食べ物なども合わせて表現できると話題が広がります。たとえば、「埼玉県には夏に日本で最も暑くなる都市があります」「香川県ではうどんが有名です」など。
性格
日本語の自己紹介では自分の性格に触れることはあまり一般的ではありませんが、英語の自己紹介では一般的です。
※○○には性格が入ります
趣味
趣味を紹介するときには、基本的には「I like 〜ing.」という言い方をします。「My hobby is ○○.」という、日本でよく見かける言い方は実はあまり一般的ではありません。
趣味は英語で「hobby」?聞く人の興味をひく自己紹介のコツ
家族
日本のビジネスシーンでの自己紹介では、家族の話に触れることは少ないですが、欧米では違います。家族を大事にする人はビジネスシーンでも好印象を持たれます。休日に家族と過ごすのが好きな人は、「I usually spend time with my family in free time.」などと、ファミリー派をアピールしましょう。
子どもについての話題の展開の仕方を過去記事に紹介しています。
年齢・誕生日
年齢を伝えるときは、years old をつけずに「I’m 35.」などとシンプルに言うのが一般的であることを覚えておきましょう。
生まれた年月日を伝えるときは、アメリカ英語では
というように、「in 月日, 年」という言い方をします。表記する際には年数の手前にカンマを打ちます。
イギリス英語では日、月、年 の順番で日付が書かれます。カンマは使われません。
話題を広げたい場合は、その国の(好感度の高い)有名人を調べておいて、○○さんと同じ年齢・誕生日です、などと言うのも喜ばれるかもしれません。
相手に歩み寄る気持ちがカギ
自己紹介の本質は、文字通り「自分を紹介すること」です。それは結局、自分を知ってもらいたい、そして相手のこともよく知りたい、すなわち互いに互いを理解し合いたい、という気持ちの表れです。
自己紹介の定番の話題や鉄板ネタのようなものは、自己紹介の作法を効率的に把握したり、自己紹介で効果的にアピールする方法を学んだりする意味ではとても有益です。でもそれは手がかりに過ぎません。本質的には、個々人の人間性と、伝えたい気持ちがモノを言うのです。