英文読解の秘訣「和訳せずに読む」方法を身につけるための和訳のコツ

英語スキル向上の秘訣は、英語を英語のまま理解できるようになること。英文読解(リーディング)の学習では、文章を語順どおりに理解する読み方の訓練が大切です。

英語の文章を語順どおりに文章を把握するできるようになれば、英文を読む速度も理解力も格段に向上します。英語の言葉の感覚も身につくようになってきます。

前から読む読み方を身につけるには、練習と慣れが必要。具体的な練習法としては「スラッシュリーディング」がオススメできます。

学校英語の訓読式の読み方には限界がある

日本の学校教育ではおおむね「英語を読む → 日本語に訳す → 日本語で文意を理解する」という手順で英語を学びはじめます。日本語文章に落とし込んで理解する方法です。

日本語を手がかりに理解を図る方法は、英語をゼロから学ぶ手始めの方法としては十分に有意義です。不可欠ともいえます。しかしこれは手始めの段階に限った話です。

日本語をはさんで理解する方法では、理想的な英会話能力はおそらく身につきません。意思疎通は可能でしょうけど、会話に必要な瞬発力は得られません。英語の語調からニュアンスを感じ取るセンスも習得は困難。「英語で英語を学べる」という好循環も夢のまた夢。

あえて極論をいえば、学校の英語の読み方は、英語を日本語に直して日本語を読んでいるに過ぎないのです。
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英語と日本語の「語順の違い」が大きな壁

英語と日本語の顕著な違いは語順。ほぼ全く逆です。日本人なら誰もが最初は「英文の各単語を日本語化して前後順をひっくり返して~」という訳し方を経験したはず。

試しに英文をひとつ語順どおりに訳出してみましょう。

I saw a fat man running along the street.

日本語で表現する以上、限界はありますが、おおよそ
私は | 見た | 太った男を | 走っている | 沿って | 道に
というような感じになるでしょう。

これが学校で模範的回答とされるような日本語訳文だと
私は、太った男が、道に沿って走っているのを、見た。
というような語順になります。

後者の「私は、太った男が~」の訳文は、学校英語の丁寧な訳出法に沿った訳です。ここまで日本語を整えると、第三者(先生)が訳者の理解度を判定して採点・添削できます。

しかし丁寧に日本語に落とし込む以上、文章を日本語に再構築する分だけ思考が割かれます。かなり遠回りで非効率的です。

日本語として洗練された訳文は必要ない

ネイティブスピーカーは、目や耳から頭に入ってきた言葉を、入ってきた順に把握して理解します。もちろん外国語を経由して考えたりしませんネイティブスピーカー並の言語スキルを身につけた非ネイティブの人も同様です。英語でも日本語でも同じことが言えます。

英語学習の目標を「ネイティブスピーカー並の英語力」という点に定めるなら、そもそも日本語に直すプロセスは必要ありません。

もしも英語学習の目標を「英文を日本語で読めるように日本語に置き換える」点に据えるなら、また違った能力が求められますし、翻訳の技能を磨く訓練が必要でしょう。それでも英語を英語のまま理解する訓練が不要ということにはなりませんが。

和訳はあくまで補助と位置づけつつ、頼る

とはいえ、何の手がかりもなくイキナリ英語を語順どおりに読めるようになるわけではありません。

はじめのうちは、これまで通り、日本語に訳して理解を試みる方法で学習を進めることになるでしょう。

ただし、一見これまで通りの方法に見えても、その学習の意義や目的はすでに変わっています。

和訳は、英語を理解するために不可欠な要素ではなく、あくまでも英文を英文のまま理解するための補助として捉えましょう。いわば自転車の補助輪のようなものです。ゆくゆくは補助輪を外す前提で練習しましょう。


英語を英語として読むためにまず行うべきこと

英語スキルに日本語は不要ということ。学習に日本語を活用するにしても最終的には手放すつもりで活用すべきということ。まずはこの2点をしっかりおさえておきましょう。

あくまでも英語を操るためには日本語を介在させないということであって、日本語の言語感覚や表現力をないがしろにしてよいというわけではありませんのでご注意。

英文を英語のまま読む練習の、第一段階として、まずは英語の文章の捉え方を把握しましょう。

英語の文章構造を理解する

英語は語順が日本語とは全く異なる言語です。語順通りに読めるようになるには、語順を、というか英語の構造をまず理解する必要があります。

英語は、はじめに文章の根幹となる主語と動詞を述べてしまい、文章として完結してから、さらに補足的な情報を後へ後へと付け加えていく構造の言語です。

I saw a fat man running along the street.

さっきの文を例にあげると、この文章は冒頭の部分だけでひとまず完結しています。

I saw a fat man. (太った男を見た)

I(主語)、saw(動詞)、そして a fat man(目的語)。これで文章として成立します。その後に続く語は補足にすぎません。

まずは文頭の要素を把握するだけでも及第点

英語の文章は主語動詞、および助動詞(can, will, may など)が最重要の要素といえます。そして、これらの語はまとめて文頭に配置されます。動詞が他動詞の場合は、目的語が動詞に次いて配置されます。

主語は動作主体を示し、動詞は動作内容を示す。目的語は動作に対象を示します。助動詞は文に込められた意志や判断を添えるため重視されます。

主語・動詞・助動詞が正しく把握できれば、致命的な読み誤りはまず起きません。この部分が把握できてしまえば、文章の根本はあらかた理解できたようなものです。

こうした英文の基本構造を意識しておくと、和訳精読に頼る(一度最後まで通して読み・聴きしてから日本語に落とし込む)学校英語的な思考のクセから脱却しやすくもなります。

英文の「意味上のかたまり」を意識する

英文の各語は「単語」や「句」という要素で分割できます。句のさらに細かい区分といった文法的要素はひとまず無視してしまいましょう。それよりも、単語の集まりを「句」として認識できる、意味上のかたまりを把握する感覚を身につけることが先決です。

英文の意味上のかたまりを把握できるようになると、文章の意味上の切れ目が分かるようになります。切れ目が分かると、意味上のかたまりごとに把握・理解できます。ここまで来れば「英語を英語のまま(英語の語順のまま)理解する」読み方が可能になります。


スラッシュリーディング法を活用しよう

英文の「意味上のかたまり」の判別も、慣れるまでは判別しかねて苦労するでしょう。

意味上のかたまりを把握するための練習としては、「スラッシュリーディング」と呼ばれる読解テクニックが便利です。

スラッシュを書き込みながら読む、またはノートを取る

スラッシュリーティングとは、文章中にスラッシュ( / ) 記号を書き込んで文を分割しながら読む方法です。文の意味上のかたまりを / 認識して / 明示する / 読解方法です。

スラッシュリーディングは、文章の構成要素を視覚的に分割できるため、文意の理解が捗ります。加えて、まずは区切った部分まで読んで意味を把握するという(「前から読む」)思考方法の訓練にもなります。

スラッシュを入れる箇所としては、動詞、冠詞、前置詞、関係代名詞などを目安と考えておくとよいでしょう。

スラッシュリーディングで英文を読むと大体このようになるでしょう。

I saw / a fat man / running / along the street.
私は見た/ 太った男を/ 走っている/ 道に沿って

スラッシュの挿入位置に正解はありません。人によっても、英語の理解度や読解力の度合いによっても違ってきます。はじめは細かくスラッシュを挿入していきましょう。慣れてくると、意味のかたまりを大きく取ることができ、スラッシュの数も減ってきます。

英文を見たらスラッシュリーディングで読んでいくことを習慣づけましょう。スラッシュリーディングでノートも作ります。普段使っているテキストや参考書などの英文をコピーしたりプリントアウトしたりしたものをノートに貼り、それにスラッシュを入れていくのも良いでしょうし、例文を手書きでスラッシュリーディングしながらノートに書きつけていくのも良いでしょう。

リスニング学習の併用もオススメ

スラッシュリーディングのやり方が掴めてきたら、平行してリスニングの練習も行うと、相乗効果が期待できます。

音声は、文字に記されたテキストとは違って、聴いたそばから消えていく媒体です。文章全体を記憶にとどめて和訳する方法にも限界があります。つまり、英文を前から順に読む方法が半ば強いられるわけです。

スラッシュリーディングの練習と平行してリスニングを行うと、リスニングで耳から入ってきた英語にも意味上の区切りをつけて順次理解できるようになってきます。実践トレーニングを通じて成果を実感できるとモチベーションも向上します。

日頃から英語で思考する練習を積もう

英作文の実践は、英語を意味のかたまりごとに捉えるための強力な学習法です。はじめは単語レベルで、それから単語に前置詞や修飾表現を加えて、表現のかたまりとして思い浮かべてましょう。これが「かたまり意識」の定着にかなり効きます。

さらに英語のかたまりを文章として組み立てられたら理想的です。

日頃から英語で考え、英文を自分で作るという取り組みは、英語で物を考える思考プロセスの訓練という意味でも大切です。

たとえば通学通勤で目にしたものを英語で表現してみる

英語思考は習慣化できると理想的です。習慣づけるための仕組みとして、毎日の特定のタイミングを引き金として練習に取り組むようにしてみましょう。

たとえば、電車に乗っている間は目にとまった光景を英語で実況してみる。もちろん、声には出さすに。乗客の挙動を描写してみたり、窓外の風景を描写してみたり。ぼんやり思い浮かんだことを文章化してみてもよいでしょう。

A young woman is using her smartphone.
(若い女性がスマートフォンを使っている)
An old man is sleeping on the seat.
(年老いた男性が座席で眠っている)

考えた英語の文章をノート等にメモしておき、スラッシュを挿入してみて、文章として適切かどうか確認してみる方法も、英作文の自己チェックとして有効です。

A young woman / is using / her smartphone.
若い女性が / 使っている / 彼女(自身)のスマートフォンを
An old man / is sleeping / on the seat.
年老いた男性が / 眠っている / 座席の上で

英語的文章感覚を活かした「英語的和訳」のコツ

英語を語順のとおり前から読み、スラッシュリーディングを通じて意味のかたまりを把握できるようになると、意外なことに、日本語の文章構成にも新境地が拓けます。

日本語は語順をあまり気にせず表現できる言語です。英語の意味のかたまりごとに前から述べても、けっこう日本語として通用します。そういう「英語的な語順の日本語」が使えるようになります。

I saw a fat man running along the street.
私は見たんです。太った男が道に沿って走っている姿を。

It is important for us to do our best.
大事なことは、私たちにとっては、ベストを尽くすことです。

We are very sorry to hear that.
私たちはとても悲んでいます、それを耳にしたことで。

まあ日本語としては洗練されているとは言いがたい、かろうじて文章の体をなしているような代物ですが、文意そのものはほぼ正確に伝達できます。

この考え方は同時通訳の手法でもあります。英語→日本語に瞬時に置き換える訳者さんの多くはこの英語的語順で日本語を組み立てる考え方を活用しています。本業の方の日本語はもっとずっと洗練されたものではありますが。

和訳が求められる場面もザックリ意訳でOKと割り切る

英会話において和訳は基本的に不要とはいえ、場合によっては英語の文章内容を日本語で伝達・共有する必要が出てくる局面もあるでしょう。

そうなると和訳が必要になってくるわけですが、そうした状況でも大半の場合はザックリと訳せれば目的が達成できることがほとんとです。

要は、文意の核心を読み誤らないという意味での「正確さ」が求められているのであり、一字一句を精密に精確に精緻に日本語に置き換えるような訳出までは期待されないのです。本気で精緻な訳出が求められる場合は専門家(翻訳業者)の出番です。

表現の「言い換えの幅」の中に落とし込めれば大成功

同じ趣旨の物事を述べるにしても、だいたい複数通りの言い方で表現できます。これは日本語でも英語でも同様です。

たとえば、日本語で「最高に幸せです」という趣旨のことを表現する場合、そのまま「最高に幸せ!」と言ってもよいし、「こんなに幸せなことってない!」と言っても、「今まで生きてきた中で一番嬉しい気持ち」と言ってもよいでしょう。多少のニュアンスの違いは誤差の範囲内です。

これを「日本語から日本語への意訳」と捉えると、英語から日本語への落としどころもまた違った捉え方ができるようになります。

たとえば I couldn’t be happier! は、直訳すると「私は(今より)もっと幸せな状態になんてなりえない」という感じになりますが、意味の芯をとらえて意訳すれば「最高に幸せ!」と表現してしまえます。

Say hello to Mr. Yamada. という言い回しは英語独特の表現で、逐語的に直訳すれば「Yamada さんにこんにちはと言ってください」な感じですが、意味の核心が掴めれば「山田さんによろしく(お伝えください)」と訳せるはずです。定型フレーズとして把握していなくても、です。

ビジネスシーンで依頼と共に用いられる Thank you (in advance). のようなフレーズにいたっては、意訳したほうが原文のニュアンスに忠実に再現できるとすら言ってしまえるでしょう。

スラッシュリーディングは日本語の伝達力も伸びる

日本語は、基本的には、重要な要素を文章を後ろに置いて述べる言語です。しかし同時に、日本語は語順にわりと頓着せず、かなり柔軟に語順を入れ替えても文意が通る、自由度の高い言語です。

そのため、英語に近い語順で重要な事柄を先に述べてしまう(あとから補足情報を付け加えていく)ような構成でも、かなりの程度まで許容できてしまいます。

「AがBした」→「BしたのはAだった」

会話表現では英語的語順が日本語でも役に立つ

日本語の基本構造は、文意の根幹が最後方に配置されやすく、性急なコミュニケーションには不向きな側面があります。言い終わるまで文章の核心が把握できず、否定語を伴う場合は文末で内容がひっくり返さるわけですから、早計による行き違いが誘発されやすくなります。

英語は重要項目を最初に述べてしまう、ある意味せっかちな言語です。英語の語順を参考に日本語の文章構成を工夫できると、ビジネス上の伝達なども誤解なく、遅滞なく、ストレスなく進めやすくなります。

たとえば会話の要点を述べる場合、普通の日本語文章では「~が大事です」と叙述します。これを英語に習って「大事なことは~です」と述べてみましょう。文意は変えずに「今から大事なポイントを伝えるよ」とあらかじめ伝達して、相手に聞く姿勢を作ってもらえます。

スラッシュリーディングで使った英文で和訳を練習してみる

I saw /a fat man /running /along the street.
私が見たのは、太った男でした。(その男は)走っていましたよ、道に沿って。

I can see / a young woman/ using / her smartphone.
ここから見えるのは、若い女性です。使っているものは彼女自身のスマートフォンです。

I’m looking at / an old man /  sleeping / on the seat.
私がいま目にしているのは、年老いた男性です。眠っていますね、座席で。

否定語を伴う文章は「否定語を導く副詞表現」を効果的に使う

否定語を伴う文章は特に注意が必要です。日本語では否定表現「ない」は動詞の後ろ&文章の最終盤に置かれるため、しばしば早合点や聞き逃しによる誤解を招きます。即断即決を重視するビジネスシーンでは死活問題になることもあり得ます。

日本語には、文頭に前置きして否定語とセットで用いられる副詞表現がいくつかあります。この手の表現を使うことで、今から述べる内容が否定表現を伴うということをあらかじめ示すことができます。「〜ない」という否定表現そのものは文末で登場するのですが、誤解を招く余地はかなり減らせます。

  • 決して
  • 絶対に
  • 少しも
  • なかなか
  • めったに
  • そんなに
  • あまり

「ぜんぜん大丈夫です」のように怪しい日本語の誤解の余地までは、さすがに防ぎきれません。

 


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