英語の助動詞「will」はさまざまな場面で用いられる重要な単語です。その意味・用法はかなり幅広く、意味合いも文脈によってガラッと変わります。
言葉には、表面的な意味の内奥に、「コアイメージ」とでも呼ぶべき抽象的で多分に曖昧な意味合いがあります。英語の助動詞は、この抽象的なコアイメージの把握が欠かせません。
will =「~だろう」「~つもりだ」のように訳語を覚えるだけでは到底、will が示す本当の意味にはたどり着けません。ホンモノの英語の言語感覚を得るために、もう一歩踏み込んでみましょう。
助動詞「will」の基本的な捉え方・考え方
will は意志・意向を示す助動詞と捉える
英語の助動詞 will のコアイメージを、あえて日本語で表現するなら、《意志》が最もニュアンスの近い表現といえるでしょう。
will は名詞では「意志」や「遺志」を指すことですし、あながち見当違いの解釈ではないはずです。
will の表面的な意味合いは複数ありますが、いずれの意味用法においても「主観的に判断される」「動作主体の」「判断・意志・意向」というようなニュアンスが見いだせます。「見いだせる」というよりは「絡めて理解できる」といった方がよいかもしれません。
この「《行為主体の》《主観的な》《判断・意志・意向》」という言い方も、しょせんは便宜的な説明であり、コアイメージそのものを表現する言い方ではないという点には注意しておきましょう。
意志のイメージを他の意味合いと結びつける
英語辞書・英和辞書を引くと、助動詞「will」の意味はおおむね5~6種類に区分されています。辞書によって区分の数が増減することもあるでしょう。
will の主な意味用法は「推量」「未来」「習慣」「能力」のように説明されます。
一見すると各用法の意味合いはバラバラで共通点なんてなさそうにも見えますが、そこに共通点を見出すことこそが肝心です。各用法の各意味合いが共通して持っている抽象的な《何か》、それこそがコアイメージです。
will の中核的イメージを仮に「意志」と表現するにしても、「推量」「未来」「習慣」「能力」といった表面的意味合いを導き出せるニュアンスで把握する必要があります。will の中核を表現する「意志」は、通常の文脈で用いられる「意志」とはまた別モノです。
will の大まかな意味、ニュアンス別の文例集
言葉の中核、コアイメージを把握しようとは言っても、そこに迫るためには表面的な意味用法に接する方法しかありません。結局のところ学習方法は従来と大差ありません。
意味・用法を区分して学んだ方が、知識を整理して把握するためには効果的でしょう。ただし、最終的には意味の区分など取り払ることを目指すということをお忘れなく。
発話者の意志・意向(〜するつもりだ)
英語辞書などでは助動詞 will の第一義として「単純未来」を挙げている場合が多々ありますが、コアイメージを探るため、まずは「話者の意志」を示す用法から把握してみましょう。
この will は、動作主体(=主語)が、ある行動(=動詞)について積極的な姿勢を見せているさまを表現します。素直に「意志」の意味と解釈してよい意味合いです。
この will は気持ち・心の内を表明する言い方であり、主語はもっぱら1人称の I が置かれます。
わかりました、そこに行こうと思います
もし新しい仕事に就けたら新しい鞄を買おうと思う
彼に手紙を書こうと思う
主格の強固な意志(あくまでも ~ しようとする)
will をことさらに強調して述べると、単なる意志・意向とは少しニュアンスが変わって「あくまでも ~ しようとする」というような強い意志を示します。
文章そのものは単に意志を表現する意味合いと変わらず、語気を強めて意志の度合いを強調するような調子です。その意味で、意志の延長線上にある意味合いに過ぎません。
必ずや最善を尽くします
何と言われようが私はやる
傍目にそれと知れる意志(執着)
心の動向は、本人にしか知り得ないものですが、《強い意志》は示し方によっては第三者から見て判断できる場合があります。
助動詞 will の根幹イメージである「意志」に、「主観的に判断される」という要素を加えると、自分以外の誰かが固執している・意固地になっている(と思われる)「どうしても~しようとする」状況を will で表現する勘どころに少し近づけるのではないでしょうか。
彼は全てにおいてあくまで自分のしたいようにする
主語が2人称・3人称で《強い意志》を表現する言い方は、否定文で多く用いられる言い方です。無生物主語を取る場合も多々あります。
奴はあくまでも譲らない
ドアがどうやっても開かない
習慣・傾向・習性(よく〜する)
will には《習慣》《傾向》《習性》のような意味合いを示す用法もあります。
習慣・傾向・習性の意味合いは、「主観的に判断される」という要素を持ちつつ、対象の「意志」の要素はごく弱め。いっそ無生物の意志に近い種類の意志と捉えてみましょう。あるいは擬人化と捉えてる考え方もアリです。
筒状に丸めた紙が、伸ばされても元のように丸まろうとする、というように、「意志があるかのように」というニュアンスで納得できる部分があるはずです。
「習慣」は人物の行動・営みについて述べる表現ですが、ことさらに意識して(意志にもとづいて)行っているというものでもありません。無生物の意志~のニュアンスを経て捉えた方が感覚が近づけるのではないでしょうか。
習慣・傾向・習性の意味合いを示す文脈では、多くの場合 will に強勢を置いて発話されます。場合によっては頻度の副詞(always、often、sometimes など)を伴います。
《習慣》は人の半ば無意識的な営み
彼女は根を詰めて仕事をしていて夜更かしすることがときどきある
《傾向》は無自覚的な選択・摂理
男の子はどこまでも男の子だ
(多かれ少なかれやんちゃなものだ)
人はどうしても話してしまうものだ
(人は総じて口が軽い)
事故はどうしても起こるものだ
《習性》は主体の意志・意識によらない理
油は水に浮くものだ
油は水と混ざらない
発話者の推測(きっと ~ だろう)
現時点のことがらに触れているということが明確な文章で助動詞 will が用いられる場合、「(今)〜だろう」という、発話者の主観的な推測を表します。
推測ではあるものの、「きっとそうだろう」「そうであれ」という強い志向がある点がポイントです。
玄関のベルが鳴っている。きっと伯父だ
彼が店にいないって?それなら事務所にいるでしょうね
彼は今ごろもう彼女に会っているでしょう
やらなければいけないことはもう終えているんでしょうね
現時点のことに言及しているかどうかは、状況説明の文に現在形や現在進行形が使われているかどうか、本文に by now や already などの副詞が使われているかどうかなどで判断します。
能力や性能を示す(〜できる)
モノを主語として、その能力や性能を表現する際に助動詞 will を用いる場合もあります。
このヒーターは部屋全体を温めることができる
この乗り物は6人乗れる
表現する意味合いは「性能」ではありますが、感覚的な把握としては《習性》(無生物の意志)や《主観的推測》を折衷したようなニュアンスで捉えた方が、しっくり来ます。
そのヒーターはやろうと思えば部屋全体をぽかぽかにできる。その乗り物はその気になれば6人まで乗れる。そんな風に捉えてみましょう。訳文は破綻しますが、will の根底の意味と連関して把握できるようになります。
単純な《未来》を示す用法(〜だろう)
will の用法として普通は第一に挙げられる「未来」の意味合い。他の複数の意味用法を踏まえてみると、意志という括りの範囲に含めて捉えることができるはずです。
意志は意志でも、第三者視点の主観を多分に含み、さらに無生物的な意志のニュアンスを多分に含む意志。そして「きっとそうなるに違いない」という志向を中心とする意志です。
彼女はこの12月に20歳になる
彼はその試験に合格できないだろう
あなたが元気になりますように
今日の午後はオフィスにいますか
疑問文の勧誘・依頼は「意志確認」
助動詞 will を使った疑問文 ( Will you〜? )は、勧誘および依頼の表現として用いられます。勧誘も依頼も、どちらも、つまるところは相手の意志を問う表現です。
率直に意志があるかどうかを確認するニュアンスで用いられる場合もあります。ここに勧誘や依頼のニュアンスを見出すことも可能でしょう。
明日、パーティーにいらっしゃいますか
Won’t you ~ ?
疑問文の場合、あらかじめ否定語 not を含めて Won’t you ~ ? の形で表現する言い方も使えます。Won’t you ~? は相手からの肯定的な返事を期待するニュアンスがあり、より遠慮のない表現・くだけた表現になります。
すこし休憩しましょうや
Would you〜?
Would you〜? はWill you〜? よりも丁寧な依頼表現です。would は will の過去形で、時制を隔てることで婉曲的度合いを増す言い方です。
ドアを閉めてもらえますか
Would you ~ の疑問文の末尾に please を付けると、より丁寧な表現になります。ただし、多少イヤミっぽく響く場合もあるようです。
ドアを閉めていただきたいのですが
依頼表現としては Would you ~ ? と同様 Could you 〜 ? の表現もよく用いられます。どちらかといえば would の方が親しい関係で用いられやすく、目上の人や親しくない人への依頼・勧誘表現としては could を使ったほうが適切な場合が多いとされます。
否定文は意志を強調した表現
助動詞 will に否定語を加えると won’t と表現されます。これに強勢を置いて読まれる場合、「どうしても〜しようしない」「断固しない」といった拒絶の強い意志を表します。対象が生物か非生物かにかかわらず、テコでも動かないというニュアンスです。
ドアがどうやっても開かない
彼はどうしてもそのパーティーに行こうとしない
彼女はあなたの言うことはまったく気にしない
彼は自分のやりたくないことは絶対にしようとしない
コアイメージは人それぞれ
英語の助動詞は、細かい意味の区分や訳語にとらわれず、自分なりの根幹のニュアンスを把握することが、攻略のコツといえます。
助動詞の根幹イメージそのものは言葉にできません。あえて「意志」と表現したとしても、それは便宜的なものに過ぎず、助動詞の根幹イメージそのものではない、という点に留意ください。
必ずしも「意志」がキーワードであるとも限りません。「will = 意志」という理解は、あくまでも試みのひとつであり、真理ではありません。
コアイメージをどのように捉えるかは人それぞれです。人によっては「ベクトル」とか「指向」のような語を手がかりに捉えてシックリ来ることもあるでしょう。
言葉の根幹の意味を正しく把握するには、多くの用例に接して外郭を見極める他ありません。多種多様な例文に触れて、その全ての用例に共通するニュアンスを探ること、これが最も堅実な学習法でしょう。
テスト対策には「意志」のニュアンス把握が奏功する
英語の試験で will の意味が問われる場合、will を「〜だろう」「〜つもりだ」という素朴な訳語だけで理解していないかどうか、という観点で出題される場合がままあります。
特に won’t を使った表現は、引っかけ問題の常連です。「未来」や「自分の意志」という理解だけでなく、「断固しない意志」という感覚を掴めていないと、答えを誤ります。
コアイメージを把握する学習法には、気の長い学習姿勢と地道な取り組みが必要です。明日のテストには間に合いません。しかし将来的に英語の言語感覚を体得するという点を目標とするなら、間違いなく最も効果的・効率的な学習法です。