英語には色々な助動詞があります。「have to」も助動詞として機能する表現です。他の助動詞よりも扱いがややこしい部分があります。意味と用法を改めておさらいしましょう。
have to は主に「義務」や「確信度の高い推量」などの意味で用いられます。似た意味は must をはじめとする他の助動詞でも表現できます。さらに have to は、時制に合わせて語形を変えるという厄介な要素があります。
「have to は助動詞」という捉え方を少しだけ緩めて、「have+to の組み合わせで助動詞的に用いられる(言うなれば準助動詞的な)表現」という風に捉えてみる方法はアリでしょう。そうすると have to の意味・用法の異質さが少し和らぐはずです。
英語の「助動詞」を本当に理解する学習のコツ(急がば回れ)
英語の助動詞表現「have to」の意味・用法・用例おさらい
have to を「(責任を)持っている」と捉えてみる
have to の根本にある意味合いをイメージ的に捉え直すとすれば、「その行為をする責任がある」「責任を負っている」「責任を持っている」という風に捉えられるかもしれません。
have to の意味を根本的に理解するなら、辞書的な表面的な意味を訳語で覚える学び方はホドホドにして、英語としてのそもそもの意味を掘り下げて自分なりに捉える試みが大切です。
普通の単語なら、複数ある語義の共通点を探してみたり、語源をさかのぼってみたり、といった方法で根本の意味を探る方法が基本です。have to の場合、have + to(+動詞)という構成の表現なので、まずは have の意味を捉え直す切り口が無難でしょう。
敢えて言えば、have to は助動詞の一つとして紹介されはするものの、「have to という助動詞がある」というわけではなくて、「have の用法として to+動詞 が続く場合は助動詞のように扱われる」という代物です。そう考えてみると結構スッキリする部分があります。
have の意味と to の意味
have は「持っている」という意味合いを中心とする語です。持っているものはモノとは限らず、コト(事柄)の場合もあります。
to は動詞を伴って「to+動詞」の形を取る場合、「~すること」という、動詞を動詞以外の品詞として機能させます。
have to はもっぱら(他の助動詞と同様)、動詞を直後に続けて「have to +動詞」の形で用いられます。あえて安直に考えれば、「have to+動詞」は「動作(すること)を持っている」という意味の表現と捉えられます。
持つことを止めれば落ちて損なわれてしまう状況、今の形を維持するためには自分がしっかり持ち続けている必要がある状況。そんなイメージを思い浮かべてみると、have to の根底に「責任」のニュアンスがあることも腑に落ちるのではないでしょうか。
責任のニュアンスがあるなら、文脈次第で(責任の向け方に応じて)「~に違いない」という推量のニュアンスも出てきます。
自分なりの感覚をつかむ試みが大切
この「責任がある」という理解も、「~することを持っている」という原義の捉え方も、あくまでも捉え方の試みのひとつに過ぎません。これが正解というわけでも、定説というわけでもありません。あくまでも理解の一助として参照ください。
コアイメージの捉え方は人それぞれ、十人十色です。正しいイメージは直接には言語化できません。それらしい感覚をつかんだら、あとは実例に接してイメージのズレを少しずつ修正・是正していきましょう。実例と向き合えば、最終的には語彙そのものに通底する本当のコアイメージを獲得できます。
have to の中核イメージごとの使用例
義務
have to do を「行為(タスク)を自分が持っている」と解釈するなら、その状況が「自分の義務である」というニュアンスは無理なく理解できるでしょう。
have to の意味用法の中でも特にこの「義務」の意味合いは多く用いられます。
そろそろおいとましないと。もう遅い時間ですし
皆で彼を探しにいかないと
主語が2人称3人称の場合は上からの物言いになる
自分について(自分に義務があると)述べる場合はさておき、相手や第三者(you、he、sheなど)を主語にして have to を用いた場合は、立場が上の者から下の者へ「それが義務だ」と言い渡すニュアンスが含まれます。
親が子へ、あるいは先生から生徒へ、という何かを指示・命令するような場合は適切でしょうが、それ以外の文脈ではあまり適切でない場合の方が多いといえます。ビジネスシーンでは使い所はないと考えた方がよいでしょう。
公共の場ではおとなしくなさい
have の語形は時制や人称に応じて変わる点に注意
have to の have は文章の時制や主語の人称に応じて語形変化します。
ちなみに、助動詞 must は無変化の語であり過去形などはありません。
彼女は一生懸命勉強しなければならない
彼女は一生懸命勉強しなければならないだろう
彼女は一生懸命勉強しなければならない状態だ
彼女は一生懸命勉強しなければならなかった
否定語を伴うと「禁止」ではなく「不必要」を示す点に注意
have to に否定語 not を加えて not have to と表現した場合、義務の意味合いが否定されて「する義務は特にない」「義務があるというわけではない」という不必要の意味に転じます。
助動詞 must の場合は、否定語を伴って must not と表現されると、義務の意味合いが否定されて「してはいけない」「しない義務がある」という禁止の意味に転じます。
そんなに一生懸命頑張らなくてもいい
確信度の高い推量
have to には「確信度の高い推量」を示す用法もあります。
have to の「義務」の意味から、「しなければならない」→「しないわけにいかない」→「きっとする」「するに違いない」という風にニュアンスが変遷したと考えてよいでしょう。
have to は大抵「義務」の意味合いで用いられることもあり、「確信度の高い推量」という用例があることは忘れられがちです。しかも、推量の意味で用いられている文章を義務の意味合いで読んでみても、さほど不自然ではなく意味が通じてしまいそうな文章も多かったりします。誤読しないようきちんと用法を押さえておきましょう。
彼女がスー博士に違いない
彼は声からしてまだ幼い男の子だろう
不満・苛立ち
have to には、不満や怒り・苛立ちのニュアンスを込めて用いる用法もあります。
これは日本語で「どうしてそんな事をしないといけないんだ?」と表現するようなもので、義務がある(という前提)を問いただす、半ば反語的な表現です。
おおむね why などの語と共に用いられるので、意味用法の判別は難しくありません。
なんだって私はこんないい天気の日に一日中働かなきゃいけないんだ
編集部注:一部内容に疑義ありとのご指摘を受け部分的に取り下げ致しました(2017/04/19)