英語の「助動詞」を本当に理解する学習のコツ(急がば回れ)

英語の助動詞(can、will、may などの法助動詞)は、英語の文章表現に頻出する重要な要素です。他方、助動詞は扱いが複雑で意味も理解しにくい、英文読解の鬼門ともいえる部分でもあります。しっかり理解して使いこなせるようになりましょう。

助動詞の厄介な部分は、文法的な複雑さもさることながら、文脈によって意味が大きく変わるという点でしょう。《can=できる》では全然理解が足りません。こうした語彙は訳語を覚える方法ではなく、英語そのものの中核的イメージ感覚的な把握が必要です。

中核的イメージの把握には、それなりの学習時間が必要です。明日の試験には活かせない遠回りの学習。しかし長い目で見れば、それは英語をスラスラ読み書きできるようになるための最短の道です。

英語における助動詞とは

助動詞は、文字どおり「動詞を助ける」品詞です。主に、動詞に話者(主語)の「意志」や「判断」を添えるために用いられます。

(日本語文法にも助動詞という品詞分類はありますが、英語の助動詞とは扱いがかなり違っているので、別物と割り切ってしまいましょう)

日本人向けの教科書や参考書による文法的解説や訳語も、知識を得て整理する取っかかりとして重要です。ただし、文法的知識はそこそこの把握にとどめ、あとは実例に接して英語の助動詞のニュアンスを直接に掴むための学習に取り組みましょう。
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【文法】助動詞は動詞のお株を奪って機能する

あくまで便宜的な不完全な文法論という前提ではありますが、英語の助動詞は動詞の立場を奪い、動詞を従える形で機能すると考えてみましょう。

助動詞を伴う文では「主語+助動詞(&動詞)+目的語」というように、助動詞がメインに出張ってきます。動詞は助動詞を補佐する位置に身を引きます。

平叙文と疑問文の「語の位置」

通常の文章では助動詞が動詞の直前に置かれます。つまり主語の直後に置かれます。動詞の「主語の次に重要」という立場を奪ってしまうわけです。

You can make it.
君ならできる

そして、動詞の位置や語形が変化する文章では助動詞が動詞の機能を肩代わりして変化します。

疑問文では動詞の代わりに助動詞が文頭に出てきます。
Can you make it?
できますか?

助動詞を伴わない疑問文の場合、文頭に do を置きます(たとえば You make it. を単純に疑問文にすると Do you make it ? のような形になります)が、この do も実は助動詞です。と言うより、疑問文に登場する do や完了形に用いられる have こそが純粋な助動詞であり、can や will や should のように話者の意思を添える助動詞は「法助動詞」と呼ばれる特殊な区分です。

時制による変化

時制が変わる場合、動詞の代わりに助動詞が時制に従って語形変化します。動詞は時制にとらわれなくなり、常に原形です。

You could make it.
やればできたのにね

can が時制に従って過去形の could に変化し、動詞 make は原形のままです。

主な英語助動詞のリスト

主な英語の法助動詞の数は、解釈によっても増減しますが、次の15個を把握しておけば基本的には十分でしょう。いちおう一覧表を用意しましたが、この表を覚えよとは推奨いたしません。

どの助動詞にも、基本となる意味・ニュアンスと、そこから発展的・応用的に生じた意味合いがあります。基本の意味を「コアイメージ」として把握し、コアの意味を保ちつつ発展的意味も理解することがコツです。でないと到底把握しきれません。

助動詞 中核的な意味(コアイメージ) 実際に使われる表面的意味
can (能力・可能)~できる (可能性)~でありうる
could ~できた
※canの時制一致による過去形
~でありうる
※canの時制一致による過去形
may (許可)~してよい
(推量)~かもしれない
※canより形式ばった言い方
(容認)~してさしつかえない
might ~してよい
〜かもしれない
※mayの時制一致による過去形、または現在のことの弱い推量)
(非難)~してもよさそうなものだ
will (意志)~するつもりだ (現在の傾向・習性・能力)~するものだ
~のはずだ(現在の確信度の高い推量)
would (過去の強い意志)どうしても~していた
※willの時制一致による過去形
疑問文で:丁寧な依頼など
※willの過去形
shall ~するつもりだ
※willより文語的な言い方
※現在ではあまり使われない
(約束・予言・規定)あらかじめ~と決まっている
should (義務・必要)~すべきだ
※ought toより意味が弱い
(推量・当然)当然~のはずだ
ought to (義務)~すべきだ
(推量・当然)当然~のはずだ
※should より意味が強い
※原義はowe toの過去形とも言われる
(完了の予想)~してしまったはずだ
(事実に反する結果)~したはずだったのだが
have to (義務)~しなければならない
※mustより客観的で、強制の意味が弱い
(推量)~に違いない
must (義務・強要)~しなければならない
※話し手が積極的に強制
(推量)~に違いない
had better ~したほうがよい
used to (過去の習慣的な動作)~したものだった
(過去の継続的な状態)かつては~だった
dare あえて~する ~の勇気がある
need ~する必要がある

英語の助動詞の覚え方のコツ

あえて日本語訳は捨てる覚悟を持ちましょう

英語スキルを本質的に向上させるには、「英語を英語のまま覚える」取り組みが非常に重要です。これは英語学習全般にいえることではありますが、とりわけニュアンスが幅広い法助動詞を使いこなすためには特に重要といえます。

「can」は「できる」ではなく「can」と覚えるものと心得ましょう。無茶な物言いに聞こえますが、大丈夫、きっとできます。

日本語を捨てるよう推奨するワケ

英語をスラスラと読める・話せるようになるためには、英語の言葉の意味合いを英語の抽象的イメージのままモノにする必要があります。

日本語に訳し得る表面的な意味よりも、その奥にある中核イメージ(コアイメージ)を、自分なりに、獲得する必要があります。

日本語による(教科書的な)文法解説は、最初の導入部分の手がかりとしては非常に有益です。しかしながら、いつまでも日本語を通じて解釈する方法を続けていては、英会話の即座の受け答えに必要な瞬発力は身につきません。

日本人が日本語の読み書きスキルを磨こうと考えるなら、多くの人は、国文法をおさらいするよりも名著・名文に多く接する方法を選択するでしょう。そうして直接には言い表せない「なんとなく」の理解のまま、正しい理解を深めていくのです。英語の理解も同じ方法が一番効きます。

「コアイメージ」を探れ

英語の助動詞は文脈によって意味合いが大きく変わります。とはいえ、それは表層の部分に過ぎません。語意の根底・根本・中核には、語そのものが持つ普遍的な意味があります。

この「語意の根底にある普遍的な意味」を、中核的イメージ、コアイメージと呼びましょう。

コアイメージはとても抽象的なもので、それ自体は言葉で言い表しきれない代物です。言い表せたとしても実際の文章にそのまま適用はできません。

多くの事例に接して、その多くの例に潜む共通点を抽象的に把握することが、この学習法の目標です。

助動詞「will」のコアイメージと意味の展開

will のコアイメージは、敢えて表現するなら「行為主体の主観的な判断や意志・意向」というようなニュアンスといえるでしょう。これをしっかり掴んでおくと、幅広い用法に対応しやすくなります。

意志・意向のコアイメージ → 「私は断じて行う」という意味の用法に発展します。

I will win the prize.
私は絶対に賞をとるつもりだ

※ただし、will にアクセントがある場合

will の中の「意志」のニュアンスは非常に重要です。will は名詞では「意志」という意味。そして一般的な教科書などに書かれている推量(〜だろう)や未来(これから〜する)といった類の用法は、「意志」というコアイメージからの発展に過ぎません。

ここを理解するには、否定形の例文に触れると効果的です。

The door won’t open.
ドアがどうしても開かない(ドアが開こうとしない)

この例文を読もうとするときに単純に「〜だろう」という日本語しか頭にないと、「ドアは開かないだろう」という訳文になってしまいます。完全な間違いまでとは言えませんが、学校の試験で「〜だろう」と訳したら不正解と判断されるでしょう。

ただ、同じ won’t を使う文章でも、文脈やアクセントの位置でニュアンスが変わってくる場合があります。

He won’t go there.

このような文章の場合、文脈やアクセントの位置で、「どうしても行こうとしない」なのか「行かないだろう」なのかが変わってくるのです。won’t に強めのアクセントを置いたり、前後に「何度も促したんだけど」「行きたくないと言っていた」といったようなニュアンスの文章があったりすれば、それは「どうしても行こうとしない」の意味になります。won’t にアクセントがない場合は、前後の文脈によっては「行かないだろう」の意味になります。

→ 疑問文にすれば「そのようなつもりはありますか」という意味にもなります。

マイケル・ジャクソンの曲にWill You Be There という曲がありますが、これも「あなたはそこにいてくれるつもりがありますか」というようなニュアンスが感じられます。

→ 「きっと〜に違いない」「まず間違いなく〜になる」といった意味にも展開します。

映画ターミネーターの有名なセリフに「I’ll be back(俺は戻ってくる)」がありますが、これは戻ってくる強い意志とともに、必ず戻ってくるだろうというニュアンスも感じられます。

shallのコアイメージ

willとよく似た使い方(きっと〜に違いない)をする助動詞にshallがありますが、shallはwillよりも文語的な言葉です。shallのコアイメージは「(神に対して)義務がある」。厳かで断定的なイメージから聖書などを中心に使われています。

We Shall Overcome (日本題:勝利を我等に 直訳:我らは打ち勝つ)というプロテストソング(反戦歌)は世界的に有名ですが、この題のニュアンスは「我々が打ち勝つことは予め神の意志に定められている」といったような、どちらかというと「予言」に近いものになります。

→命令・禁止といった意味に展開します。これも聖書の言葉です。

You shall love your neighbor.
汝、隣人を愛せ=汝、隣人を愛す義務を負う
You shall not kill.
汝殺すなかれ=汝、殺さない義務を負う

助動詞のコアイメージ獲得のコツ・方法は「急がば回れ」

とにかくたくさんの例文に触れる

英語助動詞のコアイメージをネイティブのように身につけるには、覚えたい英語助動詞の使われている例文にとにかくたくさん触れることが必要です。たくさんの例文に触れることで、助動詞の使われ方のパターンにより多く接することになります。結果的に漠然と助動詞の全体像をイメージで掴めるようになってきます。

この方法の難点としては「英文を日本語で記述したり説明したりする能力がなかなか身につかない」という側面があります。しかしながら、英語での意思疎通を図る英会話の中ではわざわざ日本語を挟む必要が出てくる機会はまずありません。気にしなくて大丈夫です。

効率を上げるためには、できるだけ多様な助動詞の用法の含まれる例文に接することが重要です。 その意味では、英英辞書に記載されている例文に手がかりを求めることをおすすめします。英英辞書は英語で英語を言い換えるものなので、自ずといろいろな用法の英語に触れることができます。

特にOxford Dictionariesなどは、例文が豊富でとても役に立ちます。

Oxford Dictionaries – Dictionary, Thesaurus, & Grammar

thesaurus(類義語辞典)は、同じ意味の単語や、少し違う意味の単語同士の共通点や相違点がわかりやすく、とりわけ使い勝手が良いのでおすすめです。

日本語はあくまで補助の位置づけと捉える

英語文例に触れるにあたり、初めは英和辞書を引くなどして、訳語・意味・解説を(日本語を手掛かりに)参照しても構いません。いきなりハードルを高く設定しすぎて手のつけようがなくなる状況だけは回避しましょう。

ただ、多少なり英文の意味を把握することができそうだなと思えるようになってきたら、そこからは英文と英文を突き合わせて、英文を全体としてのイメージで捉えていくようにしましょう。「日本語を挟まない思考」の訓練の開始です。この段階でも、日本語に頼ってはいけないということはありません。つまづきそうになったらコケる前に日本語の解説に頼りましょう。

英語学習における日本語は、いわば補助輪やビート板のようなものです。不慣れなうちには用いたほうが捗るが、行く行くは手放さなくてはいけません。補助輪を外した当初は転んでしまうでしょう。ビート版を手放せば水を飲んでしまうでしょう。しかしながらそれは身体的に(感覚レベルで)要領をつかむためには欠かせない段階でもあります。

英文から訳文への「100%の翻訳」は幻想です

英語助動詞のひとつひとつの用法を、「これは日本語のこの意味」と厳密に規定することは到底できません。再三同じことを言っているようですが何度でも念押しします。

北海道方言に「あめる」という語があります。主な意味は「食品が傷む(腐る)」とか「ネジの山が削れてばかになる」とか。この「あめる」の語を標準的な日本語で1対1に対応させることは中々困難です。しかし「あめる」の語の根底には「変質して悪くなってダメになって使えなくなる」というイメージがあります。中核的イメージをつかめば、「あめる」の語の使い方・使い所が理解できます。

日本語の方言と標準語ですら感覚的把握なくしては使いこなせない語彙があるのですから、いわんや英語をや、というものです。

英語の助動詞をはじめとする各語彙の、使い方や解釈は、文脈やアクセントに応じて大きく変わります。さらに語り手や読み手によっても微妙にニュアンスが違ってきます。語り手も読み手も多くの使用例に触れて中核的ニュアンスを掴んでいるからこそ、正しい伝達が実現しているのです。

英語のコアイメージを掴むことは「急がば回れ」の近道

英語の根本イメージを掴むという取り組み方は、助動詞に限らず、英語ネイティブ並の言語感覚を身につける学習方法として全般に適用できるものです。

英語を英語で理解しようとする学習法は、英語ネイティブ脳を赤ちゃん状態から構築しようとするようなもので、確かにかなりの手間がかかります。英語学習の全ての要素でこうした学習法を行うと膨大な学習量となってしまうことは避けられません。それでも、いつまでも日本語に置き換えて理解しようとする方法よりはずっと効率的に、ある程度の英語スキル水準に到達できるはずです。

コアイメージを掴む学習法は、英語学習の最短距離と豪語できるかどうかはわかりませんが、ショートカット学習を謳うへたなメソッドよりも近道であることは確実です。あとは、焦らず、あきらめず、少しずつでもコツコツと学習を続けていくことが大切です。


曖昧な理解でもOK 、たくさん積み重ねて

英語の助動詞をマスターするとなると、つい文法用語とにらめっこしてしまい、小難しさに挫折してしまう人も多いです。しかし、文法をきっちり覚えなければと気負う必要はありません。英語ネイティブの赤ちゃんが繰り返し英語に触れるうちに自然に英語をマスターしていくように、日本人の英語学習ももっと自然でいいのです。曖昧な理解のままでOK、ともかくたくさん触れることで感覚やイメージを掴んでいきましょう。しばらくすると、スラスラと英語を操っている自分に気づけるかもしれません!

各助動詞の基礎的な意味・用法とコアイメージ集

will

would

should

shall

must

have to


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