英語の助動詞 must には、義務、当然、推量といった意味・用法があります。文脈によっては固執、希望、勧誘のニュアンスを表現する場合もあります。
助動詞 must がどういう使われ方をする(場合がある)のか、表現の幅を一通り知っておくだけでも、理解力が格段に違ってきます。
目次
義務・必要(〜しなければならない)
英語の助動詞 must の中心的な意味用法として、「~するべき」「~しなければならない」という半ば強制的な促しの意味合いが挙げられます。
must には、おおむね「そういう義務がある」「その必要がある」というような、他の選択肢などないというような、断定的なニュアンスがあります。使い所も目上の人が下の者へ命じるような場面が中心です。
今すぐ彼女に電話しなければ
もう失礼しなければなりません
一生懸命勉強しなさい
公共の場ではお行儀よくしなさい
義務・強制の must はどちらかというと改まった書き言葉に用いられます。会話では響きが強すぎるのであまり使われません。
義務の強さは shall ≧ must > その他
「義務」を表現する英語の助動詞は複数あります。shall、should、have to 、ought to など。最も意味の強い語は shall 。
must は shall に次いで強い、あるいは、ほぼ同じくらいの強さを示すニュアンスがあるといえます。
shall は、死語というわけではありませんが、今日の日常表現ではあまり用いられません。とすると must は一番強い義務ニュアンスを表現する語といってもよいわけです。
shall と should と must のニュアンスの違い
shall は運命・天命・啓示により得た義務、といったニュアンスに基づく語です。自分の意志いかんにかかわらず、そう定められている、そうして然るべきである、というニュアンスがあります。
should は shall が時制表現によって1歩だけ婉曲的になった表現で、根本は shall の「して然るべき」という意味と共通していますが、相手に履行を強いるニュアンスは若干弱めです。
must は、あえて言うなら話者の内面的判断にもとづく義務の表現と言ってよいでしょう。強い推奨、断定的な指示、というようなニュアンスが根っこの部分にあり、義務の強さは shall と同程度、という感じと言えるでしょうか。
禁止を表す(〜してはならない)
must が否定語 not を伴って使われる場合、強い否定・禁止の意味になります。
式典の最中はおしゃべりしてはいけません
車を運転する前にはお酒を飲んではいけません
強い勧誘を表す(ぜひ〜しなさい)
強い勧誘のニュアンスを込めて must が用いられる場合もあります。
あえて強い意味を持つ must を使うことで、押しの強さ、そのくらい気兼ねなく勧められるという親しみのニュアンスの込められた表現です。
ぜひパーティーに来てください
さあさあチョコレートを召し上がれ
強い希望を表す(ぜひ〜したい)
強い希望を表現する意味合いの must の用法もあります。強い勧誘と似た使い方で、やはり親しい関係ならではの押しの強さを感じさせる表現です。
ぜひあなたとランチに行きたい
ぜひあなたと少しだけでも話したい
主張・固執を表す(〜すると言って聞かない)
must には頑迷な主張とでも言うべき意味合いを示す用法もあります。訳語としては「すると言って聞かない」のような感じが妥当でしょう。
文章的な特徴は義務の意味を示す用法と変わらず、なかなか見分けがつきません。その意味で誤読しやすいクセのある用法です。
頑固さの表現として must が用いられる場合、たいてい one’s own way、always、stick to といった表現を伴います。こうした語が判断の手がかりになるでしょう。
一部の人たちは彼らなりのやりかたに固執する
彼はいつも自分のやりかたを貫くと言って聞かない
君はなぜ自分の意見にこだわろうとするんだ
当然・必然を表す(必ず〜するはずだ)
当然や必然といったニュアンスの用法もあります。使用場面は限られ、格言あるいは格言風に述べる言い方で用いられます。
人はみな必ず死ぬ
腹立たしさ・不満を表す(なぜ〜する必要があるのか)
口語的な使い方で、腹立たしさや不満、苛立ちを表すmust もあります。
なぜ私たちはこんな雨の日にピクニックに出かけなきゃならないんだ
なぜ君の質問に答えなきゃいけないんだ
確信度の高い推量を表す(〜に違いない)
かなり確信度の高い推量(〜に違いない、きっと〜だろう)を表すmustの使い方もあります。こうした用例があることを理解していないと義務のmustと混同してしまいがちなので注意しましょう。
ご冗談を
あなたはスミスさんですね
声からして彼女は10代に違いない