英語表現「have to」は2語まとめて一個の助動詞として用いられます。主に「義務」、「確信度の高い推量」、その他いくつかの用法があります。
「義務」にしても「推量」にしても、must などの(もっと使用頻度の高い)助動詞が持っている意味合いであり、must で代用されることも多々あります。単独で用いられる have との区別もつきにくい。なかなかにハードルの高い助動詞です。
しっかりと基本の用法を押さえておきましょう。
英語の「助動詞」を本当に理解する学習のコツ(急がば回れ)
英語の助動詞表現「have to」の基礎イメージと覚え方・使い方
義務を表す(〜しなければならない)
主語が一人称の場合
現在形で1人称( I や We)を主語とする文において、have to は話者本人の義務感を表します。
もうおいとましなくてはなりません
我々は今学期のあいだ一生懸命努力しなければならない
主語が二人称三人称の場合
2人称や3人称を主語とする文では、have to には「命令」のニュアンスが出てきます。基本的には上の立場の人から下の立場の人へ命じる意味合いです。
ものごとを決断する前によく考えなさい
おおむね指導者や年長者が目下の者に言うような表現です。ビジネスシーンでは、ほとんどの場面において適さないと考えてよいでしょう。
未来表現の場合
have to は助動詞 will を伴って未来の事柄を表現できます。この助動詞と併用できる点は must にはない大きな特徴といえます。
彼女はクラス1位になるためにこれから一生懸命努力しなければならない(だろう)
現在進行形の場合
have to は現在進行形になって be having to〜 という形も取れます。意味は「〜しなければならなくなっている」「〜しなければならない状態だ」という塩梅です。
彼らは困難に直面しなければならなくなっている
過去形の場合
have to を過去時制にすると had to の形を取り、「〜しなければならなかった」という意味を示します。
彼は若い頃お金を稼ぐためにとても一生懸命働かなければならなかった
完了形の場合
have to が完了形で使われると、完了形のもともと持っている「完了」「継続」「経験」といった意味合いに「義務」の意味合いを加えて並立させた表現が可能です。
彼女は今まで長いこと彼を待っていなければならなかった
これは「彼を待つ」という義務的行為が叙述時点の直前まで継続していた、けど今は完了した、という状況を表します。
彼は20代の頃2つの仕事を掛け持ちしなければならなかったことがある
これは「20代の頃」のさる時点に、仕事の掛け持ちをしなければいけない状態が続いていた(経験がある)ことを表します。
否定形の場合
have to に否定語を添えて don’t have to のように表現された場合、不必要(〜しなくてもよい)という意味になります。
自分を責めなくてもいい
この部分は must との顕著な違いです。must も義務を表現しますが、must not は禁止(〜してはならない)を示し、全然ニュアンスが違ってきます。
推量や不満を表す
確信度の高い推量(〜に違いない)
have to は推量の意味合いを示す際に用いられることがあります。多くの場合は be動詞を伴います。
推量の確信度は高く、「きっと~であろう」「~に違いあるまい」くらいのニュアンスを示します。
彼はスミスさんに違いない
彼女は声からいって10代に違いない
もう遅い時間になりつつある。彼は何かトラブルに巻き込まれているに違いない
不満・苛立ち(なぜ〜しなければならないのか)
have to のニュアンスが「腹立たしさ」「不満」を表す場合もあります。これは must にも同種の意味用法が見られます。義務の意味合いが転じて「どうして私がやらないといけないんだ?」と述べるような感覚でしょう。
不満や立腹の意味合いで have to を用いる文章には、大抵それらしい文脈やキーワードが含まれます。たとえば why など。用法を把握していれば読み分けることは難しくはないでしょう。
なんだって我々はこんな雨の日にピクニックに出かけなきゃならないんだ
私が忙しいときに限って彼がやってきて邪魔をするんだよなあ
have to と must の違い
have to も must も、義務を示す助動詞(的)表現であり、意味も用法も大分よく似ています。ただしニュアンスには違いがあります。
なんとなくわからないまま放置してしまいがちなので、一度しっかり押さえておきましょう。
「話者の意志の有無」に特徴的な違いがある
have to と must は、義務感の強弱も多少は違います(must の方が強め)が、まず「話者の意志の有無」という点で大きく区別できます。
must は積極的な自分の決意
must は話者本人の意志を示します。それだけに積極的な、強い意志を示します。
たとえば「タバコをやめないと」の一文を I must quit smoking. と表現する文脈では、話者本人が自覚症状などを経て「タバコをやめよう」と決意しているような状況がうまく当てはまります。
タバコをやめなきゃなあ、最近よく咳が出るもんな
have to は外部から負わされた格好の義務
have to には話者本人の意志はあまり関与していません。他者の意向や、やむを得ない事情などによって、そうしないとならない状況になっている様子を示します。どちらかというと消極的に受け入れて義務を背負っている感じ、それだけに義務感の意識も弱、めです。
たとえば「タバコをやめないと」の一文を I have to quit smoking. と表現する文脈では、配偶者にやめろと言われたとか、健康診断の結果がよくなかったからとか、そういった外側的な事情によって義務がもたらされた状況が当てはまります。
どちらかというとしぶしぶ「タバコをやめなければ」と言っているかもしれない、というニュアンスが読み取れます。話者は本心ではタバコをやめるつもりがない場合もあり得ます。
タバコをやめなきゃ、妻にやめろって言われたからなあ
タバコをやめなきゃ、健康診断の結果がよくなかったものなあ