英語の「助動詞」は、意味が幅広く、文法的にも複雑、しかも頻出するというやっかいな要素です。特に should はクセ者です。助動詞 shall の過去形の顔した、もはや別個の助動詞です。
should ほど意味区分の幅広い語は、辞書を引くにも一苦労です。まずは、英語辞書などに採用されている語義の区分を全体的に眺めて、英語の助動詞 should にどんな用法・意味合いがあるのか把握しましょう。
英語の助動詞をきちんと理解するには、さまざまな用法・用例に接して、文章の背後にひそむ抽象的なニュアンスを自分なりに把握しなくてはいけません。いわゆる「コアイメージ」の獲得です。
コアイメージを探る試みに先立って教科書的な区分を把握しておくことは、実はそう悪いことではありません。知識があれば、あとは知識を体系的に整理することでコアイメージを悟れます。
目次
提案・義務(~するべきだ)
should の典型的で最も一般的な用法は「提案」もしくは「義務」でしょう。「~した方がいいよ」という意味合いを表現する使い方です。
義務を表す助動詞には must や ought to などもあります。should が示す義務感の強さは、must や ought to よりは少し弱い程度です。
提案・助言(〜したほうがいい)
通常の文章に助動詞 should が用いられる場合、多くは提案・助言の意味合いです。
義務というよりも「常識としてアドバイスする」程度の雰囲気・強さと解釈してよいでしょう。「絶対にそうしなさい」的な強制のニュアンスや、「しないとえらいことになるよ」的な脅しのニュアンスは、特にありません。
カミュの小説を読むことをお勧めしますよ
年長者を敬いなさい
授業中はおしゃべりをしてはいけません
必要(〜するように)
advise 、 suggest、 request といった、提言や要求・要望を意味する動詞を使った文は、続く that節の中で should を使って「必要」の意味合いを示す場合が多々あります。
彼女は彼に仕事をやめるようにアドバイスした
父は私にもっと勉強したらどうかと言った
彼らはそのイベントを延期するよう求めた
後悔・非難(〜するべきだったのに)
過去のことについて後悔・非難する文脈で should が使われる場合もあります。この場合 、should は「〜するべきだったのにしなかった」という、後悔や非難を含むニュアンスを醸します。
私はそのミーティングに参加すべきだった
そんな決断をすべきでなかったのに
推量(~のはずだ)
不確かなことについて推し量る文章に should が用いられることも多いです。ほかの推量の用例のある助動詞と比較すると、推量のshouldの確信の強さはmust>should>mayといった順序で並べることができます。
見た目からすると彼女は20歳かそこらのはずだ
彼は午後2時までには駅に着くはずだ
完了の推量(〜したはずだ)
推量の should が have+過去分詞とともに使われると、完了したことについて推し量る「完了の推量」となります。
彼らはあんなに早くに出発したから、もう目的地に着いているはずだ
意外性(〜するとは)
It is 〜 that … の構文で should が使われると、「誰々が何々するとは〜(感情)だ」での意味となり、意外性を表します。わかりやすい構文をとるので比較的判別しやすいでしょう。
彼女がそんなことを言うとは悲しい
彼がそんなことをするとは面白い
あなたが政治学についてそんなに知っているとは驚きです
反語的感情(どうして〜なのか、そのはずはない)
Why や How などで始まる疑問文で should が使われる場合、「どうして〜なのか、そんなはずはない」という、反語的な言い回しで強い感情を示す言い方(反語的感情)になります。
日常会話で使うとかなりキツい感情的ニュアンスを伴って聞こえるので、使いどころは見極めが必要です。
どうして私があなたのためにそんなことをしなくてはいけないんですか?
「彼女はどこ?」「私が知るわけないでしょう」
用心(〜しないように)
for fear、so that not、lest などの表現と一緒に用いられる場合、「そうならないように」という、用心の意味合いを表現します。
用心、の意味で用いられる用法は、文語的な言い回しであり、使用場面は限られます。not の有無によって訳出のニュアンスが微妙に変わる等の機微があり、扱いを極めようとすると手こずる用法です。
彼女は彼が悲しまないようにと彼に本当のことを言わなかった
彼は試験に落ちないようにととても熱心に勉強した
雨が降ったときのために傘を持っていったほうがいいですよ
万一のことに言及(万一〜なら)
Ifに導かれる条件節の中では、should は「万が一の事態」「もしもの時」といった「条件」の意味合いを示します。
万一雨が降ったら彼らは来ないだろう
もし質問があった場合はお気兼ねなく私にご質問ください
If を省略してshould の位置を転倒させた言い方もできます。ただし、やや文語的な表現です。
もし必要だと思ったら私に電話してください
控えめ・婉曲(まあ〜でしょうけど)
はっきり断定することなく、遠回しに意見や立場を述べる文にshouldが使われる場合もあります。どちらかというとイギリス英語的な表現です。
まあ彼が正しいんでしょうけど
まあ私もそんなふうに思いますけど
shallの過去形としての用法
助動詞shallが過去の文の中で使われると、時制の一致で過去形shouldになります。助動詞shouldとの区別に注意しましょう。
単純未来(〜だろう)
that節の中で、単純に(過去時点での)未来のことについて言及する使い方です。これはイギリス英語的な使い方で、アメリカ英語ではwould で表現されることが多いです。
私はすべてのことが良くなるだろうと思った
未来の意志の表明(〜するぞ)
that節に導かれて、(過去時点での)未来における「ぜひとも〜するぞ」といった意志を表現します。話者の強い感情が感じさせられる用例です。
私は彼女に、君は自分のしたことを後悔するぞと言った
未来の意志の確認(〜しましょうか)
過去の文のif節の中で時制の一致によるshouldが使われると、(過去時点での)未来の意志について尋ねる意味合いになります。
「人 asked me if 人 should 〜」は「人asked me, “Shall I 〜?”」と書き換えることができます。
彼女は私にお手伝いしましょうかと尋ねた)