make は英語の基礎中の基礎といえる動詞です。その意味・用法は非常に幅広く、《make=作る(?)》程度の把握ではとうてい理解しきれないような用法も多々あります。これは是非 make の根本的なニュアンスから理解しなおす必要があります。
英語の基本動詞は訳語と1対1に対応づける覚え方では使いこなせません、言葉の根本にある芯の部分、すなわち「コアイメージ」を理解しましょう。根底のイメージが掴めれば、いちいち訳語に惑わされることなく英語の正しい意味・用法が使いこなせるようになります。
→基本動詞MAKE
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今回も「PEN英語教師塾」より、日本における英語のコアイメージ学習法の第一人者・田中先生による、目からウロコの講義に基づくレッスンです。
make の日常的用法 (make it なんとかする)
「時間に間に合う」の文脈の make it の用例の場合は、「作る」という一般的な直訳ではなく、「なんとかする」という訳が適しています。
20分しかないけどなんとか間に合うだろう
運転手さん、5時までになんとか空港に着けますか?
なぜこのような訳になるのかをコアからひもといて理解していきます。「時間に間に合う」用例の make it は、「間に合う状況をなんとかして・なんとしても作る」から来ているのですが、この「なんとかして・なんとしても」のニュアンスの根源となっているのが make のコアです。
make のコアは「何かに手を加えて何かをつくる」
make のコアは、「Aに手を加えてBをつくる」というニュアンスだと言うことができます。
「A(素材)」と「B(産物)」という2つが、make を理解する上で重要です。
「素材」が明言されず、当たり前の前提として想定されるだけの用例も多いです。
make の基本的使い方 ー「素材」と「産物」を意識
「Aに手を加えてBをつくる」が make のコアですが、こうした make のコアの感覚は、「Aが姿・形を変えてBになる」とも言い換えることができます。
She made [a delicious cake]. (彼女は美味しいケーキを作った)という用例では、Aは当たり前の前提として省略されていますが、
「[A(薄力粉、卵などの素材)]に手を加えてB(ケーキという産物)をつくる」
「[A(薄力粉、卵などの素材)]が姿を変えてB(ケーキという産物)になる」
といった形で解釈することができます。
前提として省略されているであろう素材を補ってみると例えば
She made [a delicious cake] from eggs, flour, milk and sugar.
といった感じになります。
「素材」を明示する場合
make の「素材」を明示する場合の「から」は前置詞 from / out of で表すことが多いです。
古着から紙を作ることが可能だ
彼らはブドウからワインを作ります
「素材」を明示しない場合
「素材」を明示しない make の用例も多くあります。素材が明記されていない make の用例には、当たり前の前提として省略されている素材を想定すると、make のニュアンスをより深くとらえることができます。
うるさくするな
→ 話し声や歌声・喧嘩などが大きな騒音(a big noise)の「素材」 として前提されていると想定できます。
彼女はいつも自分のベッドを整える
→「最初のぐちゃぐちゃの状態(素材)」に手を加えてきちんと整える、という感覚で理解できます。bed をきれいに整えることを bed making と言いますが、「ぐちゃぐちゃな状態」が前提になったうえで make が使われていると理解できると奥深い表現に見えてきます。
make のさまざまな用法
make A of B
make A of B を of のコアのニュアンスも加味して表すと、「AからBを作り出す」という意味になります。用例のバリエーションは比較的限られており、熟語的に make something of という形で使われることも多くあります。
東京の新しい生活を意味あるものにしなさい
(東京の新しい生活から何かを作り出しなさい)
新しい部長のことが理解できない
(新しい部長から何を作り出すべきかわからない
それを最大活用しなさい
(それから一番多くのものを作り出しなさい)
私をばかにするな
(私から「a fool」を作り出すな)
make の対象が抽象物である場合
make の用例のうち、対象が抽象物であるものは多いと言えます。
Could you make an appointment for lunch? (ランチの日程を決めてくれる?)という用例を詳しく見てみると、
Could you make [an appointment for lunch]?
→ 双方のスケジュール(素材)に手を加えてランチの約束の日程(産物)を作る
→ 双方のスケジュールを調整してランチの日程の約束をする
といった感じに解釈できます。
make+抽象物 の用例は他にも
a decision(s)
a promise(s)
a difference(s)
a mistake(s)
an effort(s)
money
a statement(s)
a choice(s)
a contribution(s)
といったようなものがあります。
役員会は重要な決定をした
私の主治医は生活スタイルを変えることを提案した
今やほとんどの人が簡単にオンラインで金稼ぎを始めることができる
チョムスキーはグローバリゼーションを批判的に分析する初期の努力を行った(先駆けであった)
makeの応用的用例をコアから理解する
少し読み取りの難しい応用的な用例も、make のコアからアプローチすれば理解しやすくなります。
make A(物) into B(物)
John made grapes into wine. (ジョンはブドウをワインにした)という用例について考えてみましょう。
John made grapes into wine は、今までに挙げた用例とは少し違った理解を必要とします。makeの対象は grapes のみではなく、 grapes into wine だと言えます。ジョンはブドウをmakeしたのではなく、「ワインをブドウにするという状況」を make したわけです。
比較のために John made wine from grapes. について考えてみると
となります。ジョンはワインを作った。詳しく言うならブドウから、という感じになり、makeの対象はwineのみとなります。
make A(物) B(物)
make grapes into wine の作りを理解すると、つまずく人も多い 「make A(物) B(物)」も理解しやすくなります。
私はこの町を若者にとってよりよい場所にするつもりだ
われわれは那覇を国際観光の都市にする
make [物 be 物] の意味関係
make [this city a better place for young people] の部分に動詞を補ってみると、BEが補えるのがわかります。
「この町=若者によってよりよい場所 という状況」を作る がこの文例の芯の意味だと言えます。
All work and no play makes Jack a dull boy. (勉強ばかりして遊ばないと子供はつまらない子になる)ということわざがあります。これに動詞を補うと
となります。「ジャック=つまらない少年 という状況」をつくる といった形に解釈できます。
make A(人) B(物)
「make A(人) B(物)」も少しわかりにくい用例のひとつです。これも訳し方を丸暗記するのではなく、make のコアから理解しておくと解釈がしやすくなります。
お茶を一杯淹れて
テッドはナオミにとって良い夫になった
make [人 HAVE 物] の意味関係
make のあとに名詞・名詞節が続く用例には、動詞を補うときにBEでなくHAVEを使うのが適当なものもあります。
Make me a cup of tea. (お茶を一杯淹れて)に動詞を補うと
となります。テッドは「meがお茶をHAVEする状況」を作って、と言っているわけです。
Ted made Naomi a good husband. (テッドはナオミのためによい夫になった) は特に解釈のしづらい例文ですが、これもHAVEを補うと考えると理解しやすくなります。
テッドは「ナオミが良い夫をHAVEする状況」を作った、というのがこの文例のコアの意味です。テッドが男性名であり、女性名を持つナオミの夫だという前提が想定できる以上、ナオミが良い夫を持っている状況を実現するためには、テッドが良い夫になる必要があります。このため、この文章のナチュラルな訳は「テッドはナオミのために良い夫になった」といった感じのものになるわけです。
make A(人) B(物) は、補える動詞がBEかHAVEかで意味が異なる
テッドとナオミの例文について、もう少し掘り下げてみます。
Ted made Naomi a good husband. の場合は made [Naomi HAVE a good husband]
というふうにHAVEを補うこととなり、テッドは「ナオミが良い夫をHAVEする状況」を作った、という形で解釈できます。では、Ted made Naomi a good wife. だったらどのような解釈ができるでしょうか。
テッドはナオミを良い妻にした
この場合、wifeの語から女性を指しているということが分かるので、女性名を持つナオミが good wife になるのだと考えることができます。ですからここでは、made [Naomi BE a good wife] というふうに、BEを補う必要があります。テッドは「ナオミが良い妻になる状況」を作ったわけです。
make 名詞A+名詞Bという構文では、補える動詞が have になるのか make になるのかによって意味合いが大きく異なることが理解できたと思います。
make 名詞 +形容詞 (人・物を〜な状態にさせる)
make 名詞+形容詞で、「人を~の状態にさせる」という意味になります。make 名詞+形容詞の構文も、動詞を補って解釈を深めることができます。
彼女はいつも私を幸せにする
→ She makes [me BE happy]
彼女は「meが幸せであるという状況」を作る
彼の辛い言葉が私を本当に悲しくさせた
→ His harsh words really made [me BE sad].
彼の辛い言葉は「meが悲しいという状況」を作った
make名詞+動詞 (人・物に〜させる: 使役用法)
make名詞+動詞で「人・物に〜させる」という意味になり、使役用法と呼ばれます。使役用法には、「(なんとしても)人・物に~させる」という、強制力のニュアンスがあります。この強制力のニュアンスにも、makeのもともと持っているコアが関係しています。
お母さんに(なんとしても)ほうれん草を毎日食べさせられる
→ お母さんは「me が毎日ほうれん草を eat する状況」を作る
愛は人に(なんとしても)過ちを犯させる
→ 愛は「あなたが過ちを犯す状況」を作る
行動が(なんとしても)言葉を反映するようにしなさい
→ 行動は「あなたの行動が言葉を反映する状況」を作る
あなたのすることは(なんとしても)私を夜中に泣かせる
→ あなたのすることは「me が夜中に泣く状況」を作る
make の強制力
make の持つ強制力について詳しく見てみましょう。
Mom makes [me eat spinach every day]という用例では、ママは「なんとしても me が毎日ほうれん草を食べる状況」を作る、という形になっています。
make のコアは、「何かに手を加えて何かを作る」でした。この、「手を加えて」という部分が、「なんとしても」という強制力の意味へと転化していきました。
get me to eat や have me eat も「me に〜させる」という意味に訳すことができますが、ニュアンス的には make me eat のような強制力は持ちません。
Love will make you do wrong. (愛で人は間違ったことをしてしまうことがある)という例文からも、「愛」が正常な判断を狂わせてしまって、人に強制力をもって悪いことをさせてしまう、というようなニュアンスを読み取ることができます。
make+形容詞 の決まり文句
使用頻度が高い「make+形容詞」の決まり文句がいくつかあります。
make sure; make certain
必ず十分な支援者がいるようにしなさい
必ずあなたのパートナーを本当に知っているようにしなさい
be made clear, be made available, be made public
受身+形容詞の熟語もいろいろあります。
これは次のセクションで明らかにされるでしょう
ビデオはウェブサイトで公開されている
議事録は一度も公開されたことがない
be made whole (open)
be made whole というと、「望ましい状態が回復される」という意味です。be made open は、「公開される」という意味になります。
壊れた橋は復旧された
サイトは10年前に公開された