英語の助動詞は全体的に面倒な品詞です。特に would なんて本当に本当に厄介です。意志とか推量とか、丁寧な表現とか、どうしてそういう意味になるのか全然ピンと来ない部類の表現です。
でも、だからこそ、ちゃんと使いこなせれば英語的な表現やニュアンスがバッチリ獲得できます。ぜひ攻略しましょう。
助動詞のように抽象的で意味の広い言葉を、本当の意味で使いこなせるようになるには、訳語を用法ごとに把握していくような表面的な学び方では不十分です。それでは英語の言語感覚はつかめません。
英語ネイティブスピーカーと同じ言語感覚で英語を扱えるようになるには、言葉では直接に言い表せないレベルの抽象的なニュアンスとして言葉を把握する必要があります。いわゆる「コアイメージ」です。
しかしながら、すでに日本語を十分に使いこなせている身であるなら、まずは日本語を手がかりに情報を把握して、その上で英語感覚に則って情報を整理していくという流れが最も効率的でしょう。
日本の英文法の教科書は、実は日本人にとってはすごく学びやすい形で情報が整理されています。すこし遠回しな気がするかもしれませんが、あえて学校英語から入り直す、それは決して無駄ではありません。
過去
would は、過去のことについて触れていることがわかる表現と共に用いられる場合、決まって過去の習慣や過去の強い意志を表現します。
過去の習慣(よく〜したものだ)
特に頻度を表す副詞が登場する文脈では、過去の習慣の意味で would が用いられます。
頻度の副詞は often、sometimes,、always、usually などです。
彼は学生だった頃、よく一人で旅をしたものだった
過去の強い意志(どうしても〜しようとした)
would はもともと will の過去形であり、will の意味合いを肩代わりすることがあります。would も will の主な意味のひとつである「強い意志」を踏まえて「(過去の)強い意志」を表現する場合があります。
たいていの場合は would に強勢をつけて読まれます。
私はそのドアを開けようとしたが、どうしても開かなかった
私たちは彼を説得しようとしたが、彼はどうしても自分の見解にこだわった
will が含む「(意志)未来」や「拒絶」といったニュアンスで、will の過去形として would が使われる場合もあるのですが、これらの例は必ず that 節の中で使われます。つまり、「(過去の)強い意志」の用法は、will の過去形という扱いを半ば離れて would の用法として独立しています。
丁寧
英語には、「時制をひとつ過去にずらすことで現実との距離を表す」という性質があります。助動詞 would はもともと助動詞 will の過去形ですが、ここにも「現実との距離」の法則が適用されており、would は will に現実との距離≒婉曲さ、控えめさを加えたようなニュアンスを持っています。
英語の世界でも、婉曲さや控えめさは丁寧さとつながるので、助動詞wouldは丁寧なニュアンスを表したいときに使われます。
依頼(〜してくださいませんか)
Would you〜? という形の疑問文で would が用いられると、「丁寧な依頼」を表します。
少しだけお時間いただけないでしょうか
あとでもう一度お電話いただけますか
Would you〜? の表現の丁寧さの度合いは、かなり高い部類といえます。Will you ~ ? や Can you ~ ? よりも丁寧さは上。とはいえ最高に丁寧な言い方という程でもありません。
ものすごく畏まる場面(初対面の人で、あからさまに目上の人で、難儀な頼み事)なら、さらに丁寧度を増した Would you mind 〜ing ? のような表現の方がよい場合が多いでしょう。それほどでもなければ Would you〜? が十分に適切でしょう。
丁寧な勧誘(〜なさいませんか)
文頭が Would you から始まり、かつ like、love、care for のような「好む」「欲しい」といった感情を示す動詞と共に表現される文では、「丁寧な勧誘」の意味合いが表現されます。
Yes I’d love it!
紅茶を一杯いかがですか
はい、ぜひお願いします
No, thank you.
ジャムをもう少しいかがですか
いえ結構です
控えめな意志(〜するつもりがあります)
ある条件や仮定のもとの帰結節にあたる内容で would が使われると、「控えめな意志」の意味になります。
こちらの文例では if に導かれる仮定法の条件節と共に would が用いられています。
もしあなたが私を必要ならば、いつでもそちらに行って助けましょう
以下の文例では、「もしあなたが言葉をかけるなら」の条件・仮定が示唆または省略されていると考えることができます。
彼にどんな言葉をかけるつもりですか
控えめな主観(〜ではないでしょうか)
difficult などといった否定的な表現とともに、遠回しに断りを入れるような would の用例もあります。
私どもがあなたの見解に同意するのは難しいかと存じます
現在
現在のことに言及する would の文章は、もともとは仮定法だった用例です。条件節と共に、または条件や仮定が示唆された形で使われます。
現在の意志(もし〜するつもりがあれば)
if に導かれる条件節の中で使われる would の中には、「現在の意志」を示すものがあります。もともとは仮定法の文例で、助動詞 will が if 節の中で時制がひとつ過去にずらされたものとも捉えられます。
少しお待ちいただけるようであれば在庫を確認してまいります
現在の弱い推量(おそらく〜だろう)
推量の助動詞 will をより婉曲にしたものとして would が使われることがあります。現在のことについて will よりもより弱く控えめに推量する意味があります。
Oh, that would be nice.
休憩しましょうか?
ああ、いいですね
誰が彼を信じるでしょう、彼は嘘つきですよ
このハンマーで間に合うでしょう
非難(いつも〜する)
比較的特殊な用例として、非難の文脈での would の使い方があります。過去のことに言及しているわけでもなく(willの時制の一致でない)、仮定法の文の中にあるわけでもない would の中には、「非難」の would があることを覚えておきましょう。
「いつも〜する」という非難の用例の would があるということが頭にないと、特に always などの頻度の副詞が省略されている場合、推量の would と混同してしまう場合があります。注意しましょう。
いつも財布をなくすんだから
おとなしくしていなさい!いつも私の邪魔をしようとするんだから
非難のニュアンスは《助動詞 will の意味を引きずりつつ、時制がひとつ過去にずらされて婉曲な表現になったもの》という観点で捉えると、腑に落ちやすくなるでしょう。過去時制の表現は「現実との距離を出す」文飾です。これによって「そうあってほしくないのに現実にはそうなっている」という話者のいらだちや非難の気持ちが表現される、というニュアンスです。
仮定法
条件節(意志の仮定 もし〜するつもりがあれば)
仮定法の if 条件節の中で用いられる would は、「もし〜するつもりがあれば」という「意志の仮定」の意味を持ちます。
あなたにもしその気があるなら、あなたは成し遂げることができるでしょう
過去の意志の仮定をしたい場合には、動詞の時制の使い方がやや複雑になるので注意しましょう。
彼にもしその気があったなら、彼は彼女を殺すこともできたでしょうに
帰結節(単純未来 もし〜なら…だろう)
if に導かれる仮定法の文の帰結節の中で would が用いられると、いわゆる「単純未来」の意味を表します。
もし彼が本当のことを知ったら怒るだろう
過去における単純未来を表す使い方もあります。動詞の時制に注意しましょう。
頼んでくれたなら電話をかけたのに
ifに導かれる条件節が省略される場合もあります。
あなたのようなリアリストはそう思うでしょうね
(If there was) a realist like you(, he) would think so.
「あなたのようなリアリスト(がもしいれば、その人)はそう思うでしょうね」という文章の、条件節を省略した形です。
帰結節(意志 もし〜なら…するつもりだ)
if による仮定法の文章の帰結節内に would が使われた場合、「意志」を示すことがあります。
もし君が試験に合格できたら、ランチをおごってあげるよ
もし君が生きていたならいくらでも笑わせてあげるのに
ifに導かれる条件節が省略される場合もあります。
彼が正しいと言うつもりはないですねえ
慣用表現
would like to (できれば〜を望む)
I would like to〜 は、I want to ~ の丁寧な言い方です。
使い所は場面や相手により様々ですが、ビジネスシーンでは would like to の方が標準的と捉えておいてよいでしょう。
クレジットカードで支払いたいのですが
would like+完了形 で、「〜したかったができなかった」という意味を表します。
彼に会いたかったのですが(会えませんでした)
Would you mind 〜ing ?
改まった間柄の相手に何か依頼をする場合には would you mind 〜ing ? の表現が使われます。
窓を開けていただけますか
窓を開けてもいいですか、の意味で使わないように注意しましょう。(私が)窓を開けてもいいですか、の場合は Would you mind my opening the window? となります。
トイレを借りてもかまいませんか
would rather〜 than…
would rather〜 than… で「…するくらいなら〜したい」という意味の文になります。
雨に降られるくらいならここにいたい
than 以降が省略される場合もあります。
私はむしろバスで行きたい
助動詞willの時制の一致による過去形のwould
that節に導かれる従属節で would が使われた場合、助動詞 will が時制の一致で過去形 would になっているケースであることがあります。比較的わかりやすい構文なので、しっかり意味を捉えておきましょう。
過去における単純未来(だろう)
祖父は私に「もうすぐいいことが起こるだろう」と言った
過去における意志未来(するつもりだ)
彼は「自分はそこに行くつもりだ」と言った
過去における習性(するものだ)
その子は、男の子は男の子だ(からしょうがない)よ、と言った
過去における拒絶(しようとしない)
彼は「このドアはどうしても開かない」と言った
助動詞willの用法について詳しくは、以下の過去記事をご参照ください。
英語の助動詞「will」の教科書的な意味の区分と用例集 | オンライン英会話コラム