英語の作文能力を日常生活で身に着ける「英語日記」のススメ

英語の勉強は、おおむね《読む・書く・聞く・話す》の4要素を基本として区分されますが、さらに根底・根本の部分には《言表する》という要素があることを見過してはなりません。言表とは「自分の考えを言葉で言い表す」「言語化」のこと。すなわち英作文です。

英作文スキルは語彙力や読解力の向上だけでは身につきません。地道な実践的練習を通じて英語の文章感覚を養っていく必要があります。これは決して一朝一夕に実現できるものではありませんが、諦めずに取り組んでいけば誰でも達成は可能です。

日常生活の中で少しづつ、そして確実に英作文に取り組むための方法として、「英語で日記をつける」取り組みがおすすめです。

日記というと文学的な内容をつらつらと美文でつづるようなイメージがあるかもしれませんが、体裁を繕う必要はありません。その意味では、いっそ「日記」ではなく「記録」や「覚え書き」と捉えてもよいかも知れません。

継続を第一の目標として、とにかく気張らずに楽な構えで取り組むことが先決です。内容の濃密さ・充実度はあとから自然に育ってきます。

→掃除に洗濯、日常生活の行動を英語でいえますか?

英語日記をつけるメリット

日記は、日々の暮らしの中に「文章をしたためる」活動を織り込める最適な習慣です。日記を英語でつけることにより、生活の中にちょっとした「英語で文章を書く」環境を設けられます。英作文の習慣はなかなか設けられない希有な機会です。

筆者は2度ほど短期海外留学をした経験があり、その中で英語で日記を書く習慣を身につけました。留学中の日記習慣は、プライベートの時間も極力「日本語を頭から追い出す」英語漬け生活の実現に貢献してくれました。海外留学の効率がとても上がったと実感しています。

留学中に限らず日本国内の暮らしでも、英語日記には数多くのメリットがあります。
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考えを自分なりの英語で表現する練習になる

英語で日記をつけると、教科書通りの定型文におさまらない、オリジナルな表現をする練習になります。自分で考えたことを自分で英語に変換する練習を繰り返すことは、「私は英語ができる」「何かに頼る必要がない」という自信の大きな源になります。

限られた語彙・知識の中で表現をやりくりするのも大事な訓練です。初心者でも中級者でも、自分なりの英語力・語彙の範囲内であえて辞書を引かずに言いたいことを表現しようとするのも、英会話力やとっさの英作文力を上げるうえでの非常に良い練習になるでしょう。これを繰り返せば、英語でのコミュニケーションのどんなピンチもなんとか乗り越えられるだろうという余裕につながります。

たとえば、「救急車を見た」と書きたかったとします。しかし、救急車を表す英単語を知らない・思いつかない、という初心者の場合は、たとえばこんなふうに工夫して表現することができるでしょう。

I saw a car which was driving a suffering patient to hospital in a hurry.
苦しんでいる病人を急いで病院に搬送している車を見た。

もちろんこの表現で「救急車」を100%表現できているわけではありませんが、英会話の中であればたとえば赤色灯を回しながらサイレンを鳴らすジェスチャーや擬音語を付け加えれば間違いなく通じるはずです。ambulanceという単語が出てこないからといってモジモジと黙り込むところを想像してみれば、たとえ上のような不完全な表現であってもトライすることが大事であり、またトライすることが大きく状況を切り開くということが理解できるでしょう。

英会話というのは、たとえ語彙や知識が理想的でなくとも「伝われば大成功」です。英語日記は筆者の中に、そういった現実的かつ積極的な態度を切り開いてくれました。そして筆者の英語力はそこを起点に大きく伸びていったのです。

ちなみにロングマン英英辞典でambulance(救急車)は以下のように表現されています。

a special vehicle that is used to take people who are ill or injured to hospital
病人や怪我人を病院に搬送するために使われる特別車両

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生活に密着した語彙・知識が増える

実践的な英会話力を身につけるには、限られた語彙・知識でやりくりするのが大事です。その一方で、語彙・知識が増やせるときにはコツコツ増やしていくのが英語力底上げのコツです。

英語日記を使った英語学習では、わからない単語があったときに手持ちの語彙・知識で表現しようとする練習と、新しい単語・文法をその場で調べて覚えようとする練習を併用するのが良いでしょう。英語日記は内容が実生活に密着したものになることが多いので、実践的・実用的な語彙・知識を楽しみながら増やしていくことができます。

綴りを覚えやすい(手書きの場合)

昔ながらの手書きで英語日記を書いた場合、自然と綴りを意識するので正しい綴りを覚えやすくなります。PCによる入力や自動校正の普及で、漢字や英語の綴りをきちんと意識しながら文章を書く機会は減ってきていますが、やはりビジネスでもいまだに手書きが要求される場面は残っています。発音法則とのつながりや語源感覚を理解するためにも綴りを覚えることは大事なので、億劫でない人はぜひ手書きで英語日記をつけてみましょう。

英語力の向上・維持になる

人間の脳は生命維持にとって重要なことから順に覚えていくので、「普段の生活で使わない知識」はどんどん忘れていきます。英語力を向上したい場合も、一度上げた英語力を維持したい場合も、ともかく毎日のように生活の中で英語に触れていくことが重要です。英語日記は生活の中に自然と英語に触れる時間を作ってくれます。

英語意識・英語脳の醸成になる

日本語で日記やブログを書いている場合、自然と「これはネタになるな」「何かネタはないかな」と探すようになります。これと似たことが英語日記でも起こります。まずは「これを書こう。これは英語でなんて言うんだっけ」と考える「英語意識が培われます。これが習慣化すると表現したいことを初めから英語で考える「英語脳」が成長してきます。

筆者の場合、高校の頃にジス・イズ・ア・ペンしかわからないぐらいの英語力でオーストラリアに渡り、ある家庭にホームステイさせてもらいました。このとき、環境からほぼ日本語を追いやって日記も英語で書いていたら2週間めのある日に英語で考えている自分に気づき、心底驚きました。

Well, what I have to do next is…
さて、私が次にしなきゃいけないことは…

環境からほぼ日本語を断つことは、日本で生活している限りなかなか難しいこと。しかし、もともと英語力に自信のない状態であっても、ともかく毎日英語に「漬かる」ことが本人を驚かせるほどに英語力を上げてくれることは確実です。

ちなみに「日記」は英語で言うと?

「日記」にあたる英語にはdiaryとjournalがあります。

diaryは日記、日誌という意味です。語源はラテン語で「1日の(記録)」という意味があります。

journalも日記、日誌という意味です。diaryよりもやや文学的な内容のものを指す場合が多いです。語源はラテン語でdaily(毎日の)の意味があります。


英語日記を続けるコツ・方法

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ともかく続けることを最大の目標に(スモールステップ)

英語日記をつける目的は、「毎日繰り返し英語に触れる機会をつくる」ことです。ですから内容や量、文法が完璧である必要はまったくありません。ともかく続けることを最大の目標にしましょう。

ヒトの脳には、「やり始めることでやる気が出る」「小さなことを成し遂げることでやる気が出る」という仕組みがあります。モチベーションを維持するためには、「ごく小さな目標でいいからともかく達成し続ける」ことが何より大事なのです。この理論を学習に適用したのがスモールステップ学習法です。学習上の目標を「難なくできる最小単位に区切り、それを着々とこなしていくことで最終目標に近づくものです。英語日記はスモールステップ学習法の実践に最適な素材の一つです。

なんでも書く

なんでもかんでも、数秒から5分程度の短い時間でササッと書きつけましょう。

出退勤や外出の記録を「in」「out」などとつけるのもいいですし、絵が好きな人なら軽いスケッチにちょこっと英語でタイトルなり解説をつけるのも楽しそうです。映画が好きな人なら映画の感想、仕事に疲れている人は仕事の愚痴、調べ物好きなら今日知ったこと。少しポエティックな表現が好きな人ならその日の風景を見て思ったこと、料理好きや食いしんぼさんなら食事の献立、バリバリビジネスパーソンなら明日のスケジュールもおすすめです。

名言が好きな人なら1日1個英語の名言を書き留めるという形でもいいですし、音楽が好きなら洋楽の歌詞のワンフレーズを集めるのもいいですね。写しとるだけでもいいのかと疑問に思う人もいるかもしれませんが、この程度でいいのです。手書きで書き取ることで自然と少しずつ単語や文法構造が頭に入っていきます。大事なのは1日に1回必ず英語に触れる時間を作り続けることです。

1行でもいい、「書けない」と書いてもいい

数単語でできたたった1行でもいいのです。箇条書きでもいいのです。何より続けることを最優先に考えましょう。どうしても書くことが思いつかないときは、

Dear Diary, I have nothing to write about today.
日記さん、今日は何も書くことがありません。

とだけ書いておきましょう。それだけでも毎日確実に英語に触れることができます。

何か邪魔が入って中断したときは、

Sorry I have to go now.
ごめん、もう切り上げなきゃ。
※最近ではチャットを切り上げるときによく使われます

子どもが邪魔してきたときには

Oh my kid is interrupting me. Bye now.
ああー子どもが邪魔してる。じゃあね。

など、書けないときは書けないときで、「なぜ書けないのか」を英語にして書くようにします。これでどんなときも書き続けられるようになりますし、英会話を切り上げなければならないときの表現のストックを作るのにも役立ちます。

完璧でなくていい

せっかく英語日記を書くなら文法もきっちり、時制の一致や複数形を… などと考える人もいるでしょう。しかし、文法を完璧にしなければと気負ってしまうとそれがプレッシャーとなり、「完璧に書けそうにないから今日はやめておこう」となりがちです。文法が不完全でも間違っていてもかまわず、何かひとことでも書くことを最優先にしましょう。

完璧主義で「絶対に毎日書かなければ」と気負ってしまうタイプの人は、あえて「数日間ぶんまとめて書いてもいい」と自分に許可を与えるようにします。こうすることで、たった日欠けてしまったからといって「ああもうだめだ! どうせできないからやめよう!」と投げ出してしまうケースを避けることができます。

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自分に合った方法を見極める

英語日記を三日坊主にならずに続ける方法の基本は、日本語で書く場合と同じです。情報は探せば非常にたくさんあります。むしろ、情報が多すぎるゆえの弊害が出てくることも。書き手によって真逆のことを主張していたりして、自分はどうしたらいいのかと迷ってしまうのです。世に溢れる情報の中から自分に合った方法を見極めることを最初の1ステップにしましょう。

思うままに書く vs 自分なりのテーマ・雛形を決める

思いついたままに書きつけるのが快適に感じる、アイデア豊富なタイプの人は、テーマや形式を定めずに自由に書くのが良いでしょう。

凝り性で1つのテーマを掘り下げるのが好きな人、そんなに毎日多様なアイデアが沸いてくるわけではない人は、自分なりのテーマや雛形を決めることをおすすめします。料理、スポーツ、映画、読書など、趣味分野でテーマを絞ると書きやすいですし、雛形を作ってそれぞれの項目を埋めるだけという方法にするのも続けやすいです。

雛形が決まっていて毎日の振り返りを助けてくれる日記帳もあります。5分で書き終わるのがウリです。(販売サイトは英語)

The Five Minute Journal – Intelligent Change Inc.

テーマを絞る場合はそれだけで長く続けると語彙の偏りが出てくる場合があるので、ときどきテーマを変えるか、複数のテーマを併用するとより良いでしょう。

いいことだけ書く vs つらいことを書く

日々のストレスは、「感謝の気持ち」を持つことである程度解消されるそうです。いっぽうで、愚痴を吐き出すこともストレス解消の効果があります。

あえて毎日のポジティブな面に光を当てたほうが元気の出る人は「今日の良かったこと」や「今日の感謝したいこと」を、愚痴を吐くことで気持ちが切り替えられる人は「今日つらかったこと」を書くようにしましょう。

もちろん、いいこと・つらいこと両方を書いてもかまいません。自分にとってより心地良い方法を選ぶことで、より楽しみながら英語日記を続けつつ、日記を書くこと自体による精神安定効果も引き出すことができます。

見られてもいいことだけ書く vs 見られたくないことも書く

周囲からのリアクションがモチベーションになるタイプの人は、ブログなどのSNSで、周囲に見せてもいいことだけを書いて反応をもらう方法がしっくりくるでしょう。

手書きの日記をそっと誰にも見せずにしまっておきたいというタイプは、思う存分みっともない自分をさらけ出すような書き方をすると続けるモチベーションが高まるかもしれません。

クローズドなSNSで、英語で愚痴を書きつけて仲間と溜飲を下げあうのもいいですね。

高価なグッズを揃える vs ありあわせのもので始める

形から入ったほうがやる気が出るという人は、あえてちょっといい日記帳やペンなどを購入して、自分を後戻りできないように追い込みましょう。

形から入るとそれだけでやった気になって満足してしまうタイプの人は、なるべく「さりげなく」始めるのがコツです。ありあわせのものでも良いので、まずは今日から、1行からで英語日記を始めてみましょう。

好きなメディアを使う

人の目が気になるし、スタンダードなやり方がいいという人は、昔ながらの紙の日記帳にひっそりと書きつけましょう。ゲーム感覚で気軽に始めたいという人は日記アプリを使うのも良いです。

キーボード入力に慣れていて手書きは億劫という人はPCでEvernoteなどの情報ストレージサービスを使ってサクサク書いていくのがおすすめです。人の目があると書くモチベーションが上がる人は、ブログやTwitterなどのSNSを活用しましょう。

紙の日記帳だけが日記なのではありません。自由な発想で、「自分にとって毎日続けやすいメディア」を選んで>、英語日記を始めましょう。

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自分がハマる仕掛けを自ら組み込む

世の中のゲームには、夢中になってやってしまう要素、ハマる要素がたくさん組み込まれています。これはゲーミフィケーションと呼ばれ、最近では学習アプリや学習プログラムに取り入れられています。英語日記でも自分でゲーミフィケーションの要素を取り入れて、「ハマる」英語日記習慣を作り上げましょう。

勉強だと思わず楽しみながらやる

子どもは「勉強しなさいと言うと勉強しない一方、「これはやるなと言ったことに限って夢中になって繰り返して、いつのまにか驚くほどに上達していたりします。この傾向は大人でも同じ。ヒトの脳は、自分がやりたいと感じたことを続けるようにできているし、それによる学習効果も大きく出るようにできているのです。

英語日記は勉強だと思わず、「人生上の夢や目標の実現に近づくひとつの手段」と考えましょう。目標は「カッコよく英会話をこなす自分」でもいいですし、「意識改革を終えてビジネスで成功する自分」でもかまいません。日記は自己改革ツールの重要なひとつであり、英語日記は日記のひとつです。英語日記に夢や目標の実現を組み込んで続けることができれば、英語を身に着けながら自己改革もできて一石二鳥。ぜひ、楽しみながら続けていきましょう。

ときどき普段と違う書き方をする

人がギャンブルにハマるのは、自分の行動の結果がランダムな形で返ってくるからだそうです。10回中必ず3回目と4回目に当たりが出るゲームよりも、10回のうちいつ何回当たりが出るかわからないゲームのほうが、人はドキドキしてハマります。これをギャンブル理論といいます。

これは特に生真面目なタイプの人に有効なのですが、ときどきあえて普段の書き方とはまったく違う書き方をしてみましょう。普段の自分のワクから飛び出す解放感は心地よく、大きなリフレッシュになりますし、疲れてきたらハジければいいのだという担保があれば、ちょっとしたスリルを楽しみながら続けられるでしょう。

あとで読み返して楽しめる・役に立つ内容にする

日記を続ける大きな楽しみのひとつは、あとで読み返すことです。感情の動きを詳細に記録していれば、自分はこのときこんなことを感じていたのかと感慨深いですし、天気を欠かさず記録していれば気象記録としても価値のある日記になります。Evernoteを使っている人は、Webクリップなどに英語で感想や概要を書きつけておけば、あとから資料として役に立てることもできます。自分が毎日価値のあるものを書いているのだという意識は、英語日記を続けるモチベーションアップに大きく役立つでしょう。

1日のタイムスケジュールの中に組み込む

子どもの頃、タイムスケジュールを書いてみたら生活リズムが整ったり、勉強が続きやすくなったりした経験のある人もいると思います。何かを続けるのに非常に効果的な方法のひとつが、1日のタイムスケジュールの中にその活動を組み込んでしまうことです。これは英語日記でも同じです。帰りの電車の中、入浴のあと、あるいは起き抜けなど、1日の中で必ずできるスキマ時間を見つけて、そこに英語日記タイムを入れ込みましょう。

ひとつの英語日記タイムを、前日までの内容を読み返して知識面の補強をする復習タイムと、今日のぶんの日記を書くタイムに分けて実践してみると、より学習面での効果が上がります。午前中に10分、午後に10分など、1日に何回かに分けてもよいでしょう。ただしこの方法は初めからやろうとするとプレッシャーになって挫折するので、英語日記生活がしっかり軌道に乗ってきてからがおすすめです。


気負わず続けることが大切

日記は継続が大切、そして英語学習も継続が大切です。

英語日記を続けるには、気負う必要はまったくありません。関連の情報が世の中に溢れているということは、それだけ挫折する人が多いということを示してもいます。英語日記を挫折してしまう人はとてもたくさんいるのです。過去に何度挫折していたとしても気に病む必要はありません。失敗してもその分自分が成長するのだからいいやと考えて、気軽にリラックスして始めてみましょう。楽しみながらやっているうちに、いつのまにか英語力がアップしている自分に気づくかもしれません!




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