英語の経済紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」を朝刊で購読するメリット

ビジネス紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」(The Wall Street Journal)を、英語版で、あえて紙媒体で購読する。時代に逆らった提案のように聞こえるかも知れませんが、なかなかどうして、侮ることはできません。

英語の新聞・雑誌の定期購読は、(1)継続的な多読を促して英語リーディング力が鍛えられる、(2)ビジネス分野の話題やボキャブラリーを集中的に増強できる、そして(3)政治・経済・ビジネス分野の世界情勢をいち早く知識に収める、という英語+ビジネスにとって格好の素材です。

そして、せっかく購読するなら、「アメリカで最も影響力の高いメディア」と呼ばれるウォール・ストリート・ジャーナルを候補に挙げないわけにはいきません。

WSJは世界の中心に位置するビジネス紙

The Wall Street Journal(WSJ)は米国ニューヨークのウォール街から発信される、アメリカを代表する経済新聞です。アメリカ国内の発行部数は長らく第1位の座にあります。

中心的に取り扱う分野は経済、金融。加えて政治やITといったビジネス関連の話題です。世界中の実業家やビジネスリーダーに読まれています。

ウォール・ストリート・ジャーナルの知名度や影響力はアメリカ国内に留まらず、「世界を代表する経済紙」として扱われることも珍しくありません。

日本でも朝刊が届く

ウォール・ストリート・ジャーナルは日刊紙ですが、東京に印刷所を構えているため、都内中心部なら国内紙の朝刊と同様に毎朝最新号が配達されます。関東圏なら半日~1日程度の時間差で配達してもらえます。

リアル紙媒体のメディアに日本語版はなく、購読対象は英語版です。ただし定期購読するとオンライン版(有料)の日本語メディアにも追加料金なしでアクセスできるようになります。


WSJの紙面のココがイイ

英字新聞や英語ビジネス誌としてよく知られたメディアは、WSJの他にもいくつか挙げられます。たとえばタイム(TIME)エコノミスト(The Economist)ブルームバーグ(Bloomberg Businessweek)など。

各紙にもそれぞれ特長があり、長短は一概には言えませんが、この辺の新聞雑誌と対照することでWSJの特徴や良さがかえって際立ちます。

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WSJはアメリカ英語の日刊紙

TIME や The Economist は週刊誌であり、そしてイギリス発のメディアです。どちらも米国にも多くの読者がいるとはいえ、表現はイギリス英語寄りです。また、文章や単語のレベルはやや難しめの傾向があります。

Bloomberg Businessweek も週刊誌です。アメリカ発のメディアではありますが、長文や特殊な構造の文章がやや多めで、単語や表現もどちらかといえば難度が高めです。

週刊誌には1週間分の情報が詰め込まれます。個々の記事はテーマに沿って深い分析や考察が経られており、分量も内容も濃く充実しています。これは「読み応えがある」ということでもありますが、英語初学者にとっては「読み疲れしやすい」「挫折を誘発する」という側面にもつながります。

WSJの英文は意外と堅苦しくない

WSJは世界的メディアとしての権威あるイメージとは裏腹に、英文そのものは平易です。難解な単語はめったに登場しない、むしろできるだけ基礎単語を使用して紙面を構成しようとしている向きが感じられます。

読む人を選ばない文章、と言えるかも知れません。こうした側面も多くの人に読まれている要因でしょう。

テクニカルタームを多く吸収・習得したいという観点からは、他紙の方が有利といえる場合も出てきますが、「多読の練習を通じて英文に慣れるための素材」としては、WSJに軍配が上がることの方が多いでしょう。

経済英語を丁寧に学べる

実際の英文を例として挙げてみると、こんな感じです。どれも学校で習ったレベルの単語ばかりで驚きます。

New Rules Curbing Wall Street Pay Proposed(April 22, 2016)

The plan also would require a minimum period of seven years for the biggest firms to “claw back” bonuses if it turns out an executive’s actions hurt the institution or if a firm has to restate financial results.

【訳】
規制案はまた、特定の幹部の行為が原因で会社に甚大な損害が出たり、決算を修正発表したりした場合、金融機関はその幹部の賞与を少なくとも7年分「クローバック(回収)」することを義務付けるとしている。(WSJで学ぶ経済英語 より)

デジタル版では、経済ニュースをもとにした、経済英語学習の記事もあります。この記事の中では、経済用語である claw back の意味の説明、また wouldcouldmight の使い分けの説明がなされています。

ちなみに、claw back とは直訳すると「爪をたてて戻す」ですが、「苦労して取り戻す」という意味で使われます。経済用語として覚えておくと良いでしょう。

お堅いばかりでなくユーモアもたっぷり

ビジネス紙ということで堅物のイメージが先行しがちですが、紙面を読んでいると、ちょっとクスッとしてしまうような軽妙な見方や言い方もちらほら登場します。

とりわけ本紙(アメリカ版)の「A-hed」という掲載欄は、世界の文化事情などを紹介するコーナーで、日本で言うところの「3面記事」のような緩めの記事が掲載されています。

Saudi Arabian Women Love Bumper Cars (But Not for Bumping)
サウジアラビアの女性達はバンパーカーが大好き(だけどぶつかり合うのは嫌い) ― June 20, 2016

Bumper Cars(バンパーカー)とは、遊園地などに設置されている、ぶつけ合う前提で周囲にクッション材が装着されたゴーカートのような乗り物です。

サウジアラビアでは女性が自動車を運転できない、そのため行楽施設のバンパーカーが人気を博しているらしい。記事には全身を黒で覆った大人の女性が遊具に興じる写真が添えられてあり、可笑しさを醸し出しています。それだけに、傍目には奇異に映るサウジアラビアの国内事情の複雑さが一層深く感じられます。


デジタル時代にあえて朝刊を取るメリットは

ウォール・ストリート・ジャーナルはデジタル化を早期に推進したメディアでもあります。オンライン版の購読を申し込めば同じ情報は手に入る、それどころか日本語版メディアにもアクセスできます。それでも紙媒体で新聞を購読するメリットがなくなったわけではありません。

紙面が広いと目を通しやすい

デジタル版とプリント版(紙媒体)の最も大きな違いは「画面」と「紙面」の差でしょう。これはサイズとレイアウトに関わってきます。

デジタル版の閲覧方法にはPCからウェブサイトにアクセスしたり、スマホやタブレット型端末からアプリを開いたりといった方法があります。しかしどちらの方法にしても、画面サイズに限界があります。流し読みするには何度かスクロールしなければなりません。しかも英語メディアは字が小さい。

新聞は一面を広げて上から下まで見渡せます。ヘッドラインの文字サイズや掲載位置によって重要度(優先的に読むべき記事)も一目で分かります。ナナメ読み・つまみ読みにはもってこいです。小さい字を追って目をこらしても、PCのディスプレイを凝視するよりは目が疲れません。

選り好みしない読み方ができる

デジタル版では基本的に記事ごとに個別のページが設けられています。記事見出しから各記事にアクセスして読むスタイルを取るため、今ひとつ興味がもてない見出しはスルーしてしまいがちになります。

新聞の場合、特に能動的な行動を取らなくても、一通りの記事にざっと目を通せます。いきなり記事の末尾部分だけ読むことも容易。戻見返すことも容易です。

ただ、掲載欄によっては左右の幅がかなり狭く(1行につき数語程度)、縦に長く何行も連なって掲載されている文章もあります。そうした文章はオンライン版の方が読みやすく感じるかもしれません。慣れ不慣れという側面もありますが。

なお紙面はカラー刷りに対応したので、洋風のオシャレな包装紙として使いたいかどうかは好みが分かれるところでしょう。

新聞をとればデジタル版も付いてくる

ウォール・ストリート・ジャーナルの購読プランは「デジタル版」と「プリント版+デジタル版」の2種類に分かれます。つまり、プリント版は基本的にデジタル版とセットになっています。

プリント版の方が割高ではありますが、デジタル版とプリント版を組み合わせて活用できれば最も柔軟に読めることは疑いありません。

  • 居間やトイレでプリント版を流し読み
  • 通勤中はポッドキャストでリスニング
  • 気になる記事はデジタル版で再確認
  • デジタル版の日本語メディアで訳を対比させつつ読み解く

等々。

配達タイムラグは事前に確認を

ウォール・ストリート・ジャーナル(プリント版)は、東京都内の中心に近い区域なら早朝に配達してもらえますが、その周辺や近郊は配達時間がずれ込んできます。

「半日や1日くらい配達が後れても速報には違いないから平気」という考え方もあれば、「1日前の情報なんて」という考え方もあります。地域別の配達時間は事前に確かめておきましょう。

 

 




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