英語の名詞は可算名詞と不可算名詞に分けられます。可算名詞は1つ2つと数えられる「数」的性質を指し、不可算名詞はそういう風に数え上げられない「量」的性質のモノやコトに適用されます。
可算名詞と不可算名詞は、それぞれ文法的な性質や文章上での扱いが少し違います。そして、不可算名詞は、日本語の文章感覚では捉えにくい部分です。しっかり把握しましょう。
不可算名詞の感覚や考え方そのものは、そう難しいわけでもありません。特徴や性質を把握し、納得して、表現に慣れてしまえば、無難に突破できるはずです。
不可算名詞は、食べ物・飲み物・生活用品などの中に意外と多く含まれます。「食パン1枚を頼んだつもりだったけど1斤きた」とか「ワイン1杯を頼んだつもりがボトルで入った」という誤解も、あり得るといえばあり得ます。
名詞の可算・不可算の扱い方と見分け方
英語の《可算名詞》は、単数・複数を区別して扱います。単数で扱う場合は冠詞を付けて述べたり、複数で扱う場合は語形を変えたりします。可算名詞の方が英語としては標準的といえます。
可算名詞の中にも単複の区別がなく扱いに注意を要する単語があります。
英語の中の「可算名詞なのに単数形と複数形の区別がない」要注意単語
英語の《不可算名詞》は、それ自体は1つ2つと数え上げられない名詞です。おおむね、個数を数えるのではなく「量的に測る」種類の物体か、あるいは、数量では捉えられない抽象的な概念などが、不可算名詞として扱われます。
不可算名詞はそれ自体を数え上げられない
名詞が指し示している対象が、「1つ、2つ、3つ、~」という風に、それぞれ個体を識別して数え上げることができる場合、それは《可算名詞》と判断できます。
単位としての個を持たず、ひとつふたつと数えることができない種類の名詞は、基本的に《不可算名詞》と判断できます。
たとえば水(water)、空気(air)、砂(sand)などは、明確に個体を分割・識別することは難しく、1つ2つと個々に数えることは困難です。こうした性質を持つ名詞は不可算名詞と判断できます。
液体・気体・粒子状の物質はだいたい不可算名詞です。coffee、milk、wine、beer、gasoline、gas、oil、salt、sugar、rice、pepper、など。
容器を使った「計量」を前提する物質は不可算名詞
それ自体をひとつふたつと数え上げることのできない物質の多くは、容器に分けて収めて計量されるという共通点があります。
液体も気体も粒子状の個体も、それ自体は流動的であり個体の識別は困難ですが、容器を使って一定量を取り出す(量の範囲を限る)と個体を区別できるようになります。
コップ1杯、小さじ1杯、お米1合、などを容器から取り出すイメージで捉えてみるとよいでしょう。このイメージは不可算名詞を数える際の cup of ~ のような表現と捉える手がかりとしても役立ちます。
具体的な形で捉えられるものかどうかで判断する
名詞の多くは可算名詞であり、物質として存在しているもの、具体的な形を持ったモノです。逆に非物質や具体的な形を持たないものの多くは不可算名詞として扱われます。
すなわち、具体的な形が規定できるかどうかという点は、可算名詞と不可算名詞と判断する手がかりになります。
試しに、名詞の視覚的イメージを思い描いてみましょう。そのイメージが具体的・固定的な姿で思い描けない(抽象的・象徴的なイメージになってしまう)場合は、その名詞は不可算名詞として扱うべきである可能性がかなり濃厚です。
また、その名詞が示す対象をそれ単独では中々思い描けない(容器に入れた形でないと具体的な輪郭を伴ったイメージにならない)場合も、不可算名詞の可能性が濃厚といえます。
具体的なイメージや輪郭が不分明なモノは不可算名詞かなと推定できますが、逆にイメージが思い浮かぶ場合は可算名詞になるのかというと、必ずしもそうとは限りません。輪郭をもった姿で想起できる不可算名詞の対象もあります。こういう対象には、もう少し違った手がかりが必要です。
抽象概念は不可算名詞
名詞の指し示す対象が、物質的に存在するモノではなく、観念として捉えられる抽象的な概念は、不可算名詞と判断できます。
たとえば音楽(music)、幸福(happiness)、情報(information)、文芸(literature)、人生(life)などは、実体のない概念であり、それ自体を数え上げることはできません。つまり不可算名詞です。
抽象的な概念はほぼ問答無用で、不可算名詞と判断できます。ただし、概念に種類や区分を設けて(1種類、2種類という感じで)数え上げられる場合には、可算名詞として扱われる場合があります。
抽象的な概念を指す名詞であっても、文脈上の扱いが「抽象的な概念」を指す語としてではなく「具体的な物事」を指す語として用いられる場合には、可算名詞として扱われる場合がままあります。たとえば irony は「皮肉」という意味では不可算名詞ですが、「皮肉な言葉」という意味で用いる場合は可算名詞扱いにもなります。
本質的には、可算か不可算かという性質は単語そのものの特性ではありません。文脈上その単語が指し示している対象そのものを正しく捉えてこそ可算・不可算が見極められる、といえるでしょう。
いわゆる集合名詞は不可算名詞
集合名詞は、単語自体に集団・複数の意味合いを含み、単独で(単数形でも)複数形に準じて扱われる語です。集合名詞はそれ自体1つ2つとは数えられず、自ずと不可算名詞になります。
たとえば、人々(people)や家具(furniture)などは集合名詞であり不可算名詞です。
集合名詞は対象を集団として包括的に含んでおり、個を示すものではありません。その意味で、多分に概念的な語でもあります。そう考えると不可算名詞として扱われることへの違和感は解消されるでしょう。
集合名詞も個々の事例として他と区別したり数え上げたりする場合は可算名詞として扱われます。たとえば people は「(個々の)民族」という意味で用いられる場合は可算名詞になります。
英語で「人(々)」を表す person(s)とpeople(s)の微妙な違いと使い方
最終的に形を変えるかどうかで判断する
固形の物質であり、個体として数え上げられそうなカタマリがあっても、可算名詞でなく不可算名詞として扱わる名詞があります。たとえばチーズ(cheese)やパン(bread)やケーキ(cake)などは基本的に不可算名詞です。
※ ケーキはホール単位で扱う場合は可算名詞だったりします
チーズやパンが数えられないという考え方はなかなか理解に苦しむ部分ですが、納得できる要素はいくつか見いだせます。
- 形が本質的には流動的であり、必ずしも一定でない
- 分割したり変形させたりしても本質が損なわれない
- 分割したり変形させたりして扱うことが半ば前提となっている
もっと分割して利用する前提のモノは不可算名詞
日本人感覚で捉えると、不可算名詞であることに違和感を感じてしまう名詞。とくに食品にはその手の名詞が多くあります。この違和感を解消する手がかりとして、「最終的にはもっと細切れにして用いる」という前提を考えてみるとよいかもしれません。
チーズもパンもケーキも、購入した段階ではある種のカタマリですが、実際に食べる際にはさらに切り分け、小分けにします。そう考えると、切り分ける前の塊は1個2個と数えられない不可算名詞であることも納得しやすいのではないでしょうか。
食肉(meat、beef、pork、chicken)、ハム(ham)、バター(butter)、ジャム(jam)、マーガリン(margarine)、豆腐(tofu)なども不可算名詞です。
素材・材料として使用する前提のモノは不可算名詞
食品でなくても、最終的には形を変えて使用するもの、すなわち材料・原料として認識されるモノは、不可算名詞として扱われます。
たとえば紙(paper)、木(wood)、レンガ(brick)などは基本的に不可算名詞です。ただし材料ではなく新聞(paper)や森(wood)のような意味で用いられる場合は可算名詞です。
不可算名詞は「単位」を手がかりに数える
不可算名詞は、それ自体は文字通り「数えられない」名詞なのですが、部分的に切り出して切り出した単位ごとに1つ2つと数える場合はあります。「1杯の水」「一切れの肉」「一握の砂」のような場合です。
不可算名詞を取り出して扱う場合は、それと明示する単位を添えて表現する必要があります。単位の表現方法はもっぱら 《単位+of+名詞》の形です。
たとえば「1杯」なら a cup of 、「ひと握り」なら a handful of と表現できます。
単位の表現は結構な種類があり、把握はなかなか大変です。しかし日本語の助数詞の扱いに似たところもあるので、要領が分かれば扱い自体は簡単です。
「容器」を使用しないモノは「a piece of ~」で表現できる
不可算名詞を数える際には、基本的に、cup(of)のように切り分け方の基準(容器となるもの)を明示する必要があります。が、特に基準となる容器を用いない「部分」「かけら」を示す場合は、a piece of ~ で表現してしまえます。
- a piece of bread:パン1切れ
- a piece of cake:ケーキ1切れ
- a piece of chalk : 1本のチョーク
- a piece of furniture:1点の家具
- a piece of advice:1言の忠告
- a piece of news:1本のニュース
- a piece of paper:1枚の紙
飲み物を数えるとき
water、tea、coffee のような液体・飲料は、「容器」に着目しましょう。
a cup of~
紅茶やコーヒーなどカップに入った飲み物を数えるときは a cup of~ の形をとります。飲み物に限らず、カップに入った材料を数えるときも使えます。
コーヒーを2杯いただけますか
小麦粉1/4カップを冷たい水1カップに加えなさい
a glass of~
コップやグラスに入った飲み物を数えるときに使えます。
ワインを頼むときはグラス1杯なのか、ボトル1本なのかを注文時にしっかりと明示する必要があります。
コップ1杯の水
赤ワインをグラス3杯お願いします
a can of ~
缶ジュースや缶ビールなど、缶に入った飲み物を数えるときの表現です。もちろんフルーツの缶詰やペンキ缶などにも使えます。
缶ビールを2本買ってきて
このレシピにはツナ缶が1つ必要です
a bottle of ~
ワインや瓶ビールなど瓶に入った飲み物に対して使えます。ペットボトルを数えるときにも用います。
ペットボトルの水2本
やかんに入ったものは a kettle of~、バケツに入ったものは a bucket of~という表現が使えます。
「飲み物」に対応した数え方があるのではなく、飲み物が入った「容器」を数えるということを覚えておきましょう。
単位で数える
「容器」だけでなく、「単位」を手がかりにして数える言い方もありま。
1リットルの牛乳
イギリスやアメリカで使われているヤード・ポンド法に、pint(パイント)、quart(クォート)という単位があります。pint は473cc、quart は940ccです。それぞれ約500cc、約1リットルと覚えると便利です。
→ 英語圏で使われている長さや重さの単位、その体系と表記と意味
ハイネケンをジョッキ1杯
ウィスキーを2リットルほど
他にも1滴を表す表現として a drop of~ があります。「a drop of rain(ひとしずくの雨)」という形だけでなく、「a drop of compassion(少しの思いやり)」のような表現もとります。後者の場合は通例否定文を伴います。
パッケージ入りのものを数えるとき
ポテトチップスのように袋に入ったものは a bag of potato chips、シリアルや箱入りのチョコレートは a box of cereal、a box of chocolate と表せます。
ビンに入ったものを数えるとき
ジャムや瓶詰めピクルスなどビンに入ったものは a jar of~が使えます。
生活用品を数えるとき
シャンプーや衣服、ガソリンなど日常生活には不可欠なものも、数えるときは注意が必要です。
シャンプー、石鹸、歯磨き粉を数えるとき
それぞれが入っている「容器」や「形」を思い浮かべてみましょう。シャンプーはボトルに、歯磨き粉はチューブに入っており、石鹸は板のような棒状の形をしています。
シャンプー1本
歯磨き粉2個
石鹸3個
石鹸にはチョコレートを数えるときにも使える a bar of~が使えます。他に使用頻度は少ないものの a cake of~という表現もあります。ここでのcakeはスイーツのケーキではなく、「押し固めらて作られた小さくて平らな物」という意味です。
衣服を数えるとき
まず、cloth は「布」という意味を持つ不可算名詞です。テーブルを拭くふきんや、汚れを拭き取るぞうきんをさすときは可算名詞として用いられます。cloths は後者の意味の場合での複数形。「服」を表す単語は clothes で、複数形で用います。「衣類」というものを表すため、「two clothes」のように数詞を伴うことはありません。ちなみに clothe は clothes の単数形ではなく、衣服を着させるという意味の他動詞です。不可算名詞 clothing も「服」という意味です。
cloth を数えるときは便利な a piece of~ を用いることができます。
1枚の布
ふきんでテーブルを拭いてくれませんか
clothing を数えるときは a piece of~、そして an item of~もしくは an article of~が使えます。後の2つは a piece of~と比べて少し固い表現です。
試着室には3点まで持ち込み可能です
服がいくつか床に散らばっている
靴や靴下、手袋など2揃いで1つのものを数えるときは、a pair of~を使います。また、ズボンやメガネ、はさみ、お箸なども a pair of~を伴います。
今朝、ペアになる靴下が見つけられなかった
ズボンを2本と、シャツを3着詰めた
紙を数えるとき
紙切れのような大きさや形が関係ないときは a piece of~を、コピー用紙のような定型のものには a sheet of~を使います。
1枚の紙を2つ折りにした
ガソリンを数えるとき
ガソリンを数えるときは基本的に gallon という単位を使います。1ガロンは約4リットルです。
→英語圏で使われている長さや重さの単位、その体系と表記と意味
ガソリンは1ガロンいくらですか
ちょっと特殊な単位の表現
《動物の群れ》の表現
「1匹、2頭、3羽」など動物の数え方は日本語に多くありますが、英語においても群れをさす特別な表現があります。不可算名詞を数える際の表現ではないですが、英語表現の幅を増やすために見ていきましょう。
a flock of
羊、ヤギ、鳥などの群れ
羊やヤギを数えるときは a flock of~が使えます。
シェパードが羊の群れを集めた
※sheep は単複同形ですので、複数形になりません。他にも cattle(牛)、deer(鹿)、fish(魚)などがあります。
空を飛ぶガチョウの群れ
ガチョウには鳴き声に由来する a gaggle of~という表現も使えます。
a herd of
牛、馬、象などの群れ
群れで生活する同じ種の動物の巨大な集団のことを a herd of~といい、牛や馬、象などに使うことができます。
牛の群れ
a pack of
狼や野犬などの群れ
犬や狼などの共に狩りを行う動物の群れのことを a pack of~といいます。
猟犬を狩りに使う
a school of
魚、イルカ、クジラなどの群れ
水棲生物の群れを指す場合は a school of ~ が使えます。大ざっぱにいえば魚群、および海獣群。メダカの群れもこれに該当します。
イルカの群れ
a swarm of
昆虫の群れ
ハチやアリ、バッタなど、集団で動く昆虫の群れは a swarm of~で表現されます。この a swarm of ~ は、いわゆるパパラッチの集団に対して用いられることがあります。虫のようにぶんぶんつきまとう連中というニュアンスが感じられます。
死んだ鹿にアリがたかっている
a flight of
鳥の群れ
鳥の群れには a flight of birds などの表現が使えます。
鳥に関しては a flight of~ 以外にもいろいろな単位表現があります。
- a gaggle of geese ― ガチョウの群れ
- a game of swans ― 白鳥の群れ
- a colony of seagulls ― カモメの群れ
a group of
(汎用的)動物の群れ
動物の群れを数える場合にどういう語を使えば適切か、思い浮かばなかったり迷ったりした場合には、a group of ~ と表現してしまいましょう。
group は「集団」を指す語で対象が何であれ無難に使えます。
もっともっと奥深い「a … of ~」の表現
可算名詞・不可算名詞にかかわらず、何かを数えるときの特別な表現を見ていきましょう。
a blade of~
細長い草の葉を数えるときに使えます。
1枚の草の葉
a puff of~
煙や息、空気などに空に舞い上がるものに対して使う表現です。
一陣の風が私の帽子を吹き飛ばした
a speck of~
小さい点や、かけら、量をさす speck を用いた表現で、汚れやちりなどに使えます。
彼の家にはちりひとつない。
a train of~、a chain of~
「一連の」という意味を持ちます。
一連の考え
一連の出来事
a wisp of~
雲や煙、蒸気などの細くて薄い線をさします。
一条の黒煙が空に上っていった。
a galaxy of~
お金持ちや有名人などの華やかな集団に使う表現です。
スターの一団
a copy of~
書籍や書籍などの部数を数えるときに使う表現です。
出版社からこの本を10部取り寄せた。
英語初学者は可算名詞・不可算名詞をあえて気にしないことが英会話上達のコツ
英会話の上達のためには、間違いを怖れず、尻込みせず、どんどん話して会話に慣れることが肝心です。
可算名詞と不可算名詞を言い間違ったからといってコミュニケーションに問題が生じるなんてことはめったにありません。そのくらいの姿勢で臨みましょう。